Witch Defense Forces(WDF)(完結) 作:ハヤモ
海岸の怪異排除急げ。
制圧しても、休んでいる暇はない。
出来る範囲で良い。
NOAHへ突入する空軍を援護せよ。
……ッ、同士討ち!?
備考:
同じ分野なら、EDFの方が勝る。
可愛い女の子が酷い目に遭う。
それが好きな紳士もいるよね。
◆sectorΩ上空
只野二等兵たち地上部隊が奮戦する中、空でも激戦が繰り広げられた。
陸軍が進撃すると、防衛戦力としてNOAHから多くの航空ネウロイが飛び出してきた。
まるで蜂の巣を突いた騒ぎである。
「"Black Bee"が出てきました!」
「lock-on! 完了次第撃て!」
509ウィッチ隊が現代兵器群……エメロードを構える。
電子機器が遠方から迫り来る黒い怪異を捉えると、電子音が鳴り響く。 刹那。
「撃ちまくれーッ!」
遠距離から一方的に撃ちまくる。
この世界には未だ無い、高性能誘導弾が空に白煙の畝を作り上げると、回避行動するネウロイを情け容赦無く追尾、爆発。
準備砲撃の如く空を爆風が蹂躙。 暗雲の中、横一列状に煌めき怪異を蹴散らした。
「センサーが敵を捉えています!」
「かなりの数です!?」
それでも多く残った怪異が反撃に転じてくる。
ウィッチ隊に支給されているゴーグル・ディスプレイに投影されている歩兵用簡易センサーには多くの赤丸が表示されていた。
「ミサイル残弾ナシ!」
「捌ききれません!」
「くっ! これ程とは……さすが魔王城だな」
隊長格がネウロイの群れを睨む。
NOAHは人類の総攻撃に備えて、予想以上の航空戦力を配備していたのだ。
EDFに痛い目に遭わされてきたネウロイは、序戦で高火力をぶつけられるのは織込み済みである。
だからガチ殴りに対抗する術として、EDFの兵器を模倣したり数で勝負に出て来たのだった。
「空になった武器は捨てろ! 各隊自由戦闘開始!」
「了解!」
「散開!」
隊長格が叫ぶと、無線を通じて各小隊ないし分隊長に伝播。
ただの鉄箱と化したエメロードを投げ捨てると、分散してネウロイに接近していく。
多くの子は、重量の問題からミサイルの予備を持たない。
代わりに小銃類を持ち込んでいる。
距離を詰め格闘戦に移行した。
この世界の、いつものドックファイトだ。
だがEDFの小銃である。 負ける気はしない。
そう意気込み殴り込む509を、やや後方にいる501は観戦し、ネウロイ戦力の度合いを指し測る。
厳しい戦いは避けられそうにない。
「EDFの兵器を使ったロングレンジ攻撃でも、まだ倒せないヤツがいるなんて」
「ネウロイにとっての本陣、牙城なんだ。 耐え得る戦力を蓄えていても変じゃない」
後続の501……ハルトマンとバルクホルンが睨む。
皆、弾帯を肩に巻きユニットには増槽。
EDFの軽量リキッドアーマーも着込む。
肩にはEDFの重火器も背負い重兵装。
航空ウィッチは重火器を多く携行しない。 重いと飛べない以外にも、燃料と魔法力を余計に消耗し、機動力の低下を招くからだ。
先程の509部隊が、予備のミサイルを持たない理由がそうだ。
だが今回、継戦能力を稼ぐ為に持ち込んだ。
また、デメリットをカバーする為に彼女らのストライカーユニットはStorm1式の万全な整備と改良がされている。
ほぼ いつも通り……否、以上に性能を発揮できる。
「みんな良い?」
確認を取るように、ミーナが言う。
「509がネウロイ守備隊を引きつけている間、私たちはNOAHへ突入。 本体を撃破します。 ネウロイにとって本拠地です。 堅固に抵抗してくる事が予想されます。 覚悟だけはして下さい」
「そんなの、とっくにしてるさ!」
シャーリーが真面目に叫ぶ。
皆も今更なんだ、と頷いた。
「そうね。 でも」
ミーナは一拍おいて言うのだ。
「誰一人落伍する事は許しません。 皆の帰還をもって任務成功とします!」
「「了解!!」」
覚悟を持って、皆は暗雲へと突撃していく。
だが彼女らは若い。
若くして多くの戦さ場を経験した。
それでも現実は常に覚悟の上を行く。
ジークフリート線。 大人の悪意。 WDF。
まだまだ現実は多くある。
怪異もまた、現実を隠す。
多くは誰も知らない。 それが事実であった。
◆sectorΩ上空
509部隊ウィッチ
撃って撃たれて、誰かが落ちて。
自分の隊も僚機も分からず、がむしゃらに戦った。
手に持つ多砲身銃、M3レイヴンSLSで撃ちまくり、ネウロイを片っ端から倒していく。
「はぁ……はぁ……くっ!」
倒しても倒しても巣からはネウロイがやってくる。 キリがなかった。
だけどこっちだって援軍が来るんだ。
戦線を維持して、歩兵隊に敵が行かないようにしなくちゃ。 頑張れ……頑張れ私。
そんな時。
異変を知らせる無線が響く。
「ウィッチ!? ウィッチの形をしたネウロイを確認!」
「えっ!?」
動揺を隠せない声。
私は思わず我に帰り、周囲を見回す。
確かに……ウィッチの形をしたネウロイが飛んでいた。
機動、姿、黒く塗り潰されたシルエットのようだけど、ユニット部分も模倣されていて、ウィッチのソレだった。
「そんな! 似すぎてる……撃ちたくないよ!」
「バカ! やらなきゃやられるぞ!」
仲間内で揉める声。
だけど、それも長くは続かない。
「きゃああああ!?」
悲鳴、そして銃声。
戦場で起きる恐怖は、何も死だけじゃない。
こういった……謎。
「う、ウィッチ型ネウロイが攻撃してきました! 落伍者1名!」
「撃ち返せ! 迷いは捨てろ!」
「ッ!」
そうだ。 やらなきゃやられる!
私は銃を構え直す。
ネウロイめ!
私たちの戦意を削ぐ行為をして!
許さない!
「墜ちろーッ!」
弾幕を張り、前方のウィッチ……いや、ネウロイを撃つ!
撃たれたネウロイは、素早い旋回で回避した。 まるでウィッチのように。
「……ッ、迷うもんか!」
心を無にして、撃ち続ける。
だけど、油断した。
目の前の光景に気を取られて、残弾の把握が出来てなかった。
───カチッ。
弾が切れた!?
「り、リロード!」
慌てて空のマガジンを投げ捨て、予備を叩き込んで前を向いた瞬間。
ウィッチ型ネウロイが目の前にいて。
黒い手で、ガッと頭を掴まれた。
「うっ……!?」
身動ぎすると、手を離して何処かにいった。
良かった……あのままビームでも撃たれたら死んでいた……。
でも、何がしたかったんだろうか。
いや、そんな事より今。
「このっ! ふざけた真似を!」
"ネウロイ"の飛んで行った方向に銃口を向けて……"ウィッチ"だった。
「ッ!」
慌てて銃口を下ろし、別の方向へ。
いけない。
残弾把握といい、混乱している。
危うく友軍誤射までするところだった。
「落ち着いて私……! "敵"を撃つのよ!」
そう言い聞かせると、頭が段々と冴えてきた。
よし、大丈夫。 訓練通りやるだけ。
センサーを見る。
"青丸"が敵……その方向に銃口を向ける!
「墜ちろニセモノめ!」
ズダダダダッ、とネウロイに弾丸のシャワーを浴びていく。
バラバラになった。 何故か粒子になって消えない。 けど無力化したなら良い。
「次!」
"実弾兵器"を"手に持った"ネウロイを倒す。
ネウロイの癖に悲鳴を上げて堕ちていく。
でも同情しない。 手を止めたら死ぬ。
次で最後。
もっといた気がしたんだけど、仲間が倒してくれたに違いない。
なら、私でフィニッシュだ。
「消えろ!」
ネウロイの癖にシールドを張ってきた。
だけどEDF製の弾丸で押し切って、遂にバラバラにしてやった。
「やったよ! 見たかネウロイ!」
周囲に"黒い子"が集まってくれた。
みな、私に えがお を向けてくれた。
……かお ないのに どうして わかるのか
ふしぎ だ な ぁ?
あれ。
なんだか あたま が
ふにゃ ふにゃ してきた。
はりきり すぎた のかも。
そんな わたし を 慰めるように ぽん って。
ひとり が 頭 に 手を やった。
不思議と意識がはっきりしてきて……。
「………………へ?」
気が付くと、私はネウロイに囲まれていた。
え、じゃあ、私が倒したのは?
ネウロイじゃないの?
ネウロイじゃないなら……ウィッチ?
「あ、ああ……ああ」
一気にチカラが抜ける。
手から銃が落ちる。
「ち、ちが……いや、違わない……? え? え?」
理解出来ない。
だって、ネウロイとウィッチの区別がついた、ついた筈だ。 間違ってない。 いや間違えた。 なんでどうしてどうやって。
そして本能が理解する。
私は仲間を殺した。
「いやあああ!!?」
喉が潰れるんじゃないかという悲鳴を上げて、私は私で、私じゃなくなった。
それを用済みの合図だったのか。
本当のネウロイが一斉に私にビームを撃つ。
すると私は私がしたみたいに、私がバラバラになる光景を見て闇に堕ちた。
◆作戦司令部
「ウィッチ型ネウロイと交戦した部隊が全滅しました!」
蜂の巣を突いた騒ぎを起こしたのは、EDF司令部でもあった。
ウィッチ型ネウロイと交戦した509の小隊が全滅したという。
戦闘意欲が削られるにせよ、あまりに早過ぎないかと司令官は変に冷静になる。
「情報が欲しい。 少佐」
「はい。 既にスカウトウィッチから送られてきた画像を解析、推測の域ですが纏めました」
戦略情報部の少佐は相変わらず淡々と、しかし仕事が早かった。
「ウィッチ型ネウロイの1体が、509の隊員と接触。 すると隊員が同部隊を殺害し始めました」
司令部に画像が送られ、司令官は直ぐに観察する。
画像は鮮明で、ウィッチの表情がよく分かる。
光を失い虚ろな目。
だけど表情はしっかりしており、意識はあるように見える。
「これは……説得されたワケでもあるまい」
「はい。 恐らく洗脳です」
「洗脳? 一瞬でか?」
思わず疑問符が出る司令官。
怪異、底が知れない存在だ。
思えば霧を出すヤツもいた。
チャフをばら撒くヤツもいるという。
姿形のみならず、そういった能力があっても おかしくないのかも知れない。
「専用の脳波モニタリング装置を備えていない為、正確には分かりません。 ですが分析したところによると、そうと結論付けます」
「クローンエイリアンに取り付けられていた装置を連想させるな……なんにせよ、倒さねばならない」
やる事は変わらない。
プランが変わるだけだ。
司令官は直ぐに兵士達に繋ぐと、指示を出す。
「ウィッチ型ネウロイは洗脳紛いの事を仕掛けてくる、格闘戦は極力避けろ。 ミサイルを使って遠距離から戦え。 補給部隊にはミサイルを用意させる、それを使え」
そういうと、部下が言われるまでもなく補給部隊に連絡。
追加のミサイルを更に用意させた。 行動が早い。
「遠距離からなら、安全に対処出来る筈だ。 ミサイルの余剰はなくなるが仕方あるまい」
それに罪悪感も減る事を狙う司令官。
主に10代のウィッチの負担を減らそうとしての事だ。
優しい、ではなく そうするべきだろうと。
戦争とは死の匂いを消す歴史でもある。
ミサイルやロボットの遠隔操作による遠距離攻撃が可能になる事で、相手の表情や形を見ずに済み、結果として人を殺している感覚を減らせる。
罪悪感がなくなれば、残忍にも多くの敵を倒しやすい。
EDFの世界で、ドローンが禁じられていたのも その一環だろう。
それが議論される事もあるが、この場においてはそれどころではない。
やらなきゃ死ぬ。
机上の理論と現場の現実が合わない事は様々な分野である事だ。
緊急事態下では特に役に立たない事も多い。
「出来れば海岸を制圧後、対空用として陸上兵士に持たせるつもりだったが。 ニクスとネグリングで持たせるしかない」
「隊員は今日まで生き延びてきました。 それこそ数多の飛行型を駆除している実績があります。 十分対処可能です」
「そう信じよう」
別に海岸に陣取って、胡座をかく為ではない。
制圧後、砲兵陣地を押し上げて、NOAHを砲撃する予定を組んでいる。
その際、砲兵陣地を守る為に使用する予定であった。
だが状況には臨機応変に対応しなければ。
いつもそうだった。
これくらいで惜しむ司令官ではない。
「海岸の制圧状況は?」
「パットン将軍の戦車隊と、合流した我が軍のネグリング部隊、戦車隊が戦闘を継続しています。 間も無く制圧完了予定です」
「宜しい。 砲兵隊に連絡。 NOAHまで射程の無い大砲を海岸まで運び込むよう伝えろ。 海岸で生き延びた地上部隊は、そのまま砲兵隊の護衛だ」
「了解。 伝えます」
司令官は無線を切り、再び黒海の地図を見ては様々な線や文字を書き込んでいく。
だがやはり、それらも机上の理論、いや空論でしかないのは否定しない。
怪異が更なるチカラを隠している可能性。
それを否定出来ないのもある。
なにより、ストームチームが再び奇跡を起こしてくれる保証もまた、ないのだから。