Witch Defense Forces(WDF)(完結)   作:ハヤモ

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作戦内容:
制圧後、砲兵隊が海岸に陣取りNOAHを砲撃。
残存地上戦力は護衛に回れ。
備考:
陸でも出来ることをやる。

終わりへ向けて。


81.審判の日

◆sectorΩ

只野二等兵視点

 

 

「スゴい……光景だ」

 

 

どこをどう行って、戦ったのか覚えていない。

だが俺たちは海岸のネウロイを駆除した。

そうして生き延びた兵士は口々に呟くのだ。

この悲惨な光景に気がついたから。

 

海岸側は赤黒く染まり、死体が満遍なく横たわる。

血の甘ったるく生ぬるい臭いと感覚が世界を支配する。

 

これが俺たちが望んだ結果なのか。

否。 それに付随した結果だ。 分かってる。

 

俺たちの世界も、こうだ。 今更なんだ。

 

分かっているつもりでも……最悪だよ。

特に死体の海の上に立っているとさ。

 

 

「大丈夫だ……まだ俺は」

 

 

生きている。

 

その事実が、疲労に紛れる理性が、俺を立たせる。 身体に息を吹き込ませる。

血塗られたTZストークを改めて握りしめた。

戦争は続いている。 まだ安心出来ない。

 

オッサンの陸上戦艦なラーテの威力は凄まじかったが、後から来たタイタンとブラッカー、ネグリングとニクスのミサイル攻撃がシメとなったか。

だが、それも陸上の話。

黒海上空の巣は以前健在。

生きている限り戦わねばならない。

 

 

「周囲を制圧したと伝えろ」

「ハッ!」

 

 

離れたところ。

Storm1隊長が指示を出し、スカウト隊員が連絡を取っている。

 

おお……来てくれたのか。

 

無線を受けてから、どれくらいの時が経ったのか。

対して経ってない気もするし、経った気もする。

 

なんであれ、来てくれたのは嬉しい。

俺は隊長に走り寄ると敬礼した。

 

 

「お待ちしておりました」

「待たせたな。 良く頑張った。 もうひと踏ん張りだぞ」

 

 

肩を叩き、励ましてくれる隊長。

そうだ。 もう少しだ。 ここまで生き延びたんだ、最後まで生き延びてやる。

 

 

「ところでWDFは?」

「NOAHに突入した。 海岸の空は509のウィッチ隊が受け持つ」

「……そうですか」

 

 

そうなのか……。

この辺に来てくれると思ったんだけど。

やはり決戦兵器ポジションだよな、その……キスで減衰してたとしても。

 

 

「大丈夫だ。 あの子達は強い」

「そうですよね。 帰りを信じてます」

 

 

そう願うしかない。

海の上、歩兵隊の出番は無い。

 

暗雲を見る。

増援の戦闘機やウィッチ隊が突撃しては、怪異と撃ち合っていた。

EDFが改修した戦闘機のパイロットの一部はウィッチなのか。

戦闘機にビームが直撃して直ぐにキャノピーが吹き飛び、イスごとウィッチが飛び出してくると、ユニットを起動。

機械化航空歩兵として戦闘を継続している。

スゲェ。 メ●ス●かな?

 

 

「我々にも出来ることはあるぞ」

 

 

観戦する俺に、隊長が言う。

ナニか。

携行ミサイルは航空ウィッチに回されてる筈だけど。

そう思っていると。

 

 

「うん?」

 

 

背後からデカい大砲を運んだトラックがゾロゾロやってきた。

 

 

「砲兵隊? 此処から巣を砲撃するつもり?」

 

 

不整地で良くやるよ。 他に使えるビークルが無かったのかも知れないが。

 

 

「よぉ若造。 また会ったな!」

 

 

トラックから砲兵隊のオッサンが出てきた。

オッサン率が高まっている。 高まってない?

 

 

「久しぶりです。 エトワール作戦ぶりですかね?」

「それくらいだろうな。 まぁ、どこ行ってもやる事は変わらん。 大砲をブッ放つだけだ」

 

 

勇ましい事で。

砲兵隊が死体をどかし、展開していく。

デカい大砲の仰角を調整。 巣に向ける。

 

 

「現地にエアレイダーは行かないんだろ?」

 

 

オッサンがStorm1に尋ねる。

この状況だ。 歩兵が無理に行っても足手まといだろう。

 

 

「俺は行かないが、501とWDFがいる」

「ウィッチーズか。 お嬢さんが誘導してくれるってなら良いが」

 

 

下手に撃つとウィッチに当たるからね。

暗雲の中だ、ここから弾着観測は難しい。

 

 

「ヘリを飛ばしてでも向かって欲しいとこだな」

「無茶言うな。 制空権の無い敵の根城だ、ヘリが棺桶になりたくないんでね」

「お嬢さん達を信用して良いのか?」

「して貰えるか?」

「……分かった。 Storm1が そこまで言うなら付き合おうじゃねぇか」

 

 

どうやらウィッチが誘導兵になるらしい。

出来るのだろうか。

軍曹ちゃんと曹長ちゃんは経験あるかもだが。

いや信じよう。

俺に出来るのは、それくらいだ。

 

 

「決まりだな。 で、お前ら歩兵隊は? 暇なら手伝え」

「そうさせてもらう。 護衛という形でな」

 

 

そう言って指を指す隊長。

その先には、航空ネウロイがワラワラと向かってきている光景だった。

 

 

「なるほど。 頼んだぞ」

「頼まれた。 只野、戦闘用意!」

 

 

仕事の時間らしい。

俺は弾かれるようにTZストークを構える。

 

 

「了解」

 

 

ホント……信じるだけじゃダメだよな。

 

 

 

 

 

◆作戦司令部

 

 

「司令官! 航空ネウロイが我が方の砲兵隊を目掛けて攻勢を仕掛けてきました!」

 

 

無線機をカチカチと動かしていた通信士が、皆に聞こえる声量で叫んだ。

 

 

「やはり別働隊がいるか! 各隊には砲兵隊を死守するよう伝えよ! 絶対にネウロイを陣地に入れるな!」

 

 

海岸の守備隊を壊滅させられたNOAHは、予め決められたかのような素早い反応を見せてきた。

 

出て来た航空ネウロイの目標は ただ1つ。

疲弊した本隊と共にいる砲兵隊の撃滅である。

 

ネウロイの思考は分からないが、恐らく遠距離攻撃による一方的に殴ってくるEDFに対して、一時的にでも有利になるべく、NOAH護衛戦力を除いた戦力を遊撃部隊のように出撃させ、嫌でもEDFを野戦に持ち込ませる算段か。

ひとたび懐に飛び込めば、砲撃も中断するだろう。

それに、守備隊との戦闘で傷付いた本隊にトドメを刺すチャンスもある。

そうなれば、sectorΩは瓦解。

そのまま他方面に散らばる連合軍の無防備な横腹を滅多刺しに出来れば、人類は敗北ないし大打撃を受け、立て直すのは困難になる。

 

しかし、そんなネウロイの動きを見逃す司令官ではない。

指令を受けた歩兵隊は激しい攻勢に耐えていた。

 

 

《空中戦だ! 負けられないぞ!》

《スプリガンのチカラ、見せてやれ!》

《Storm4を援護する!》

《黒海でも酷い目に遭うのは同じかよ!》

 

 

ウィングダイバーの精鋭部隊スプリガン隊ことStorm4は、遮蔽物の無い空でビームを撃ち合う。

ウィッチの様に長くは飛べないが、踊る様な動きで攻撃を回避しつつ一方的に殲滅していく。

それでも着地のタイミングが発生、そこをレンジャーである軍曹チームのStorm2がカバーする。

 

 

《俺だってクイーン相手に生き延びたんだ! これくらいなんだ!》

 

 

オマケで只野二等兵。

 

そんな彼らが空に気を取られている隙を突き、地中に未だ潜んでいたネウロイが這い出て来た。

 

 

《地中から まだネウロイが!》

《任せろ》

 

 

そこをフェンサーの精鋭グリムリーパー隊ことStorm3が突撃。

卓越した高機動、槍捌きで群れの懐に突風の如く飛び込んではネウロイどもを反撃の余地の欠片すら与えず粉砕していく。

 

 

《ワイヤーみたいな切れ味の糸を飛ばす銀βと比べたら、これくらい!》

 

 

オマケで只野二等兵。

 

だが、横腹に横槍じゃゴルワァと連合軍を相手にしていたネウロイが反転してくる。

 

 

《こちらスカウト! 別方面からネウロイが接近中!》

《ルーデル大佐、空爆頼む。 座標───》

 

 

そんなヤツらにはエアレイダーのStorm1が無断出勤中の某ウィッチに座標伝達、EDF製ナパーム弾を投下して貰う。

この世界には存在しない強力な灼熱は怪異を海岸ごと焼き払ってしまう。

強靭なネウロイ装甲で覆われたコアも、熱伝播によりダメージを受けて崩壊した。

 

 

《炎にハメられながら撃たれて消えろ!》

 

 

オマケで只野二等兵。

 

ストームチームによる防衛は盤石な防衛力として機能していた。

勿論、只野二等兵のような一般兵士の練度も凄まじく、ネウロイを砲兵陣地に1体たりとも寄せ付けない。

 

ネウロイはEDFを舐めていた。

新型を生み出しはしたが、それで対処出来ると過小評価していた。

なんなら洗脳紛いの、エゲツない能力すら行使して。

その上で消耗戦になれば勝てると踏んだのだ。

 

確かにEDFもだいぶ消耗した。

辛い戦いを強いられている。

対空ミサイルの余剰もなし。

レンジャーの場合、ほぼ小銃のみで対空対地戦闘。

対してネウロイは航空戦力もあれば伏兵も準備していた。

人類の本隊は既にボロボロ。 雑多な武装、満足に完全武装出来ない傷だらけの残党兵。

 

だが、その残党兵たちの戦闘能力を怪異は知らなかった。

 

たがが残党。 されど残党。

 

彼ら地球防衛軍の"人類最後の意地"が、本営たる船団を撃沈せしめ、圧倒的な文明力と戦力を誇る要塞級司令船を墜とし。

 

満身創痍の身体をひきずって。

 

神さまにすら歯向かった事など。

 

 

《くたばれえええええッ!!》

 

 

只野二等兵の声を無機質な無線が何度も拾う。

無線の向こうでは、彼に倒されている怪異が無数にいた。

 

只野二等兵のように、あの場にいなかった兵士も確かにいる。

だが、そんな"ただの兵士"の戦闘力すら並の人間の比ではないのだ。

 

ネウロイに恐怖があるかは分からない。

だがもしあるならば。

 

今の彼らは死神に違いない。

エゲツないのは、節度を超えているのは怪異ではない。

 

魔法少女を改造し。

模倣ながら人造神を生み出し。

人間同士で殺し合いをしながらも。

"地球防衛"という欺瞞に満ちた正義を掲げ。

怪異をも飲み込まんとしているバケモノ。

 

紛れもない人間だ。

 

 

「海岸は守りきれそうです!」

「宜しい! 砲兵は攻撃に集中!」

 

 

間も無く最終砲撃が始まろうとしている。

合図は魔法少女と人造神による呪詛詠唱。

この世界の人間が、バケモノに願う偽りで飾る平和への言葉。

 

必要な事だ。

記録されない歴史だ。

 

 

 

 

 

◆NOAH

 

暗雲の中。

先行していた501部隊は懸命に戦った。

鬨の声を上げ、戦った。

黒の洪水に飲まれないよう、必死に闇の中を泳ぎ続けた。

 

 

「ネウロイの反応!」

「サーニャさん! 方向を随時教えて!」

「サーニャ! 私が守るからな!」

 

 

潜水していた怪異も、彼女らを溺れさせる為に浮上する。

 

 

「え……? ウィッチ……?」

「ありゃEDFの航空機……!」

「そんな!」

 

 

ウィッチ型ネウロイ。 高機動型ネウロイ。

EDF空軍のKM6戦闘爆撃機型。

或いは重爆撃機フォボス。

 

 

「あの大きな舟は……まるで神話の……!」

 

 

そして、大きな方舟。

 

姿に狼狽え、動揺し、それでも人類の為と信じて戦い抜く少女たち。

 

 

「狼狽えるな! 親玉は舟だな、倒すぞ!」

 

 

人類の為……。

彼女たちウィッチは、まだ子どもだから信じ抜いて戦えた。

その純粋な心は、魔法の ひとつ だ。

ウィッチをウィッチたらしめる要素のひとつかも知れない。

だからこそ、大人になると魔法が使えなくなるのやも知れない。

 

でもEDF司令官たち大人が思ったように、正義はひとつでは無いのだ。

ならば当然の様に他者の正義を受け入れ難く、悪とみなせるから、争いが生まれる。

なのに国家という他人同士が戦争をしないのはネウロイという、共通の敵がいるからだ。

 

もし。

もし目前にいる共通の脅威が消えた時。

人類は どうする?

 

バケモノは人間を憂いた。

だがもう、趨勢を見届ける事はしない。

この星は、この世界の人類の星だ。

不法移民は希望なき地球へと去ろう。

エイリアン達も かの者 を失い去った時、そうしたのかも知れない。

 

 

「こちら軍曹! 援護します!」

「並びに曹長。 弾着観測を開始。 砲撃に注意せよ」

 

 

そんな かの者 紛いの 白銀のウィッチはWDFとして仕事を果たそうとしていた。

 

世界を守る、魔女を守るチカラは方舟を、沈めようとしている。

刹那的には両方を守る結果になるだろう。

 

だが将来的には どうだろうか。

 

人類にとって、沈むのは黒い希望か。

 

それとも白い絶望か。

 

 

 

 

 

◆sectorΩ

只野二等兵視点

 

 

「ウィッチから砲撃要請!」

「撃てと伝えろ!」

 

 

ドカンドカンと天を打つ何門もの大砲。

とうとう巣への砲撃が始まった。

 

地上じゃなくて暗雲の、空中にいる敵に当てなきゃならないし難しいだろう。

暗雲の所為でここから観測も出来ない。

軍曹ちゃんと曹長ちゃんに任せるしかない。

 

俺は波濤となり寄せてくるネウロイに撃ちまくりながら、皆の無事を願う。

 

あっ! 弾が切れたぞ!?

 

 

「誰かストークの弾」

「あ!? ネェよ、ンなもん!」

 

 

軍曹のぶっきら棒部下が ほざく。

ですよねー、聞いてみただけだよ畜生!

 

 

「落ちている武器を拾えば良い!」

 

 

若い部下が、弾薬をばら撒きながら乱暴に言う。

 

 

「戦い続けろ! そうするしかない!」

 

 

皮肉屋な部下も言う。

弾が無いなら そうしてでも戦い続けねば。

TZストークも所詮は武器。 使い捨て。

弾がなくなれば役に立たない。

貴重品に違いないだろうが、ここは戦場。

俺は潔く捨てると、その辺の赤黒く染まった長モノを拾った。

 

変色してようと感覚で分かる。

いつものPA-11だと。

 

やっぱコレか。 しっくりくる。

使い方も染み付き、信用も置ける銃だ。

ただの兵士が持つ得物としては、相応しいじゃないか。

 

 

「安心して良いよな!?」

 

 

誰に言うでもなく構える。

弾倉を抜き中を見て残弾確認、流れのままにスライドして初弾を弾き飛ばして新たな弾薬を銃身に送り込む。

離れたところにいるネウロイに照準を合わせ、トリガーを引いた。

弾丸が吐き出され、ネウロイを撃ち抜いた。

いつも通りだ。 劣悪な環境でも確実に動作してくれた。

そうじゃなきゃ困る。

 

 

「安心しろ! あの子達も強い!」

 

 

軍曹も言う。

軍曹の持つブレイザーが怪異を蒸発させていく。 残る怪異は数えられる程度だ。

 

 

「弾着!」

 

 

暗雲の中、煌く刹那の光。 複数の爆発。

当たったらしい。 効果は知らん。

 

 

「同一諸元! 効力射ァッ!!」

 

 

効果、あったらしい。

 

実際に知れるのは、現場にいるウィッチだけだ。 俺たちEDFじゃない。

だが信じるだけだ。

 

若い砲兵が撃ちまくれと叫ぶ。

同時に機関砲かよってくらい連続で大砲が火を噴いた。

天を、地を、全てを揺るがす大砲撃だ。

 

 

「弾種は問わん! 詰めまくれ!」

「ありったけ! ありったけダァ!」

 

 

榴弾、カノン砲、口径問わず全ての大中小の大砲がひっきりなしに火を噴いていく。

もはや、無線ナシに会話は不可能だ。

EDF製だからか、砲身が溶ける事はない……なんて事もないのか。

一部は冷却の為に黒海の水をぶっかけて冷やされている。

海岸は蒸気が立ち込め、何も見えない。

ただ、無線越しに伝えられる座標を信じて撃ち続けている。

専用回線で俺には聞こえないが……砲兵隊も軍曹ちゃん達も戦っているのは分かる。

 

 

「味方に当たってないよな?」

「なんかズレてません? い、いえ!」

 

 

おいこら。

不安になる様な事を言うんじゃないよ。

 

いちおう言っておこう。

自分さえ良ければ良いという思考に堕ちるほど、誤射を甘く見てしまう。

 

 

「もし軍曹ちゃん達に当てていたら、ガスバーナー炙りの刑ですよ」

「ざけんな。 こちとら嬢さん達を信じて撃ってんだ。 文句あんなら嬢さん達に言いな」

 

 

むぅ……。

それもそうか。

なら俺も信じて待つしかない。

陸の人。 陸にいなきゃ ただの人。

 

 

「そうですね……隊長?」

 

 

ここでStorm1隊長が気まずそうにソッポを向いているのに気がつく。

何故に。 ナニかあった?

 

 

「気にするな」

「そう言われましても」

「お前が気にするのは彼女達の無事だ。 それと戦闘中に俺の目の前に来てビーコンを当てられる可能性を危惧したり、空爆や砲撃地点になりそうな場所に飛び込まない事だ」

 

 

やけに具体的だなオイ。

戦時中にナニがあったんだ。

 

 

「とにかく、彼女たちを信じろ。 それしかない」

「分かりました」

 

 

了解するしかない。

地を這う歩兵だしな。

空飛ぶエリート様には敵わないワケだし。

 

 

「くっちゃべってねぇで、こっち手伝え!」

「口じゃなく手を動かせ!」

「援護して下さいよ!」

 

 

軍曹の部下に叱られた。

ごもっともだ。

軍隊をクビにならない為にも、人間をクビにならない為にもな。

 

俺はまた了解すると、トリガーを引いた。

それしか仕事が無いなら、そうするしかない。

 

 

 

 

 

◆NOAH

 

暗雲を突き抜けて、無数の砲弾が降り注ぐ。

雨粒にして大きすぎるそれらは、オーバースペックの異界チート弾。

多くは黒海の海面に衝突して無意味な水柱を立てていく。

だが密度の高い雨粒だ。

土砂降りの中、傘もナシに濡れずにいられる人間がいないように、中にいたネウロイは撃たれる他ない。

 

 

「砲撃地点から離れろ!」

「はみ出たネウロイを攻撃して!」

 

 

曹長ちゃんは砲兵隊に指示を出して……今や崩れゆく方舟を見届けるだけ。

軍曹ちゃんは、有り余る膨大な魔力を取り巻きにぶつけ、消していく。

 

 

「相変わらず……EDFは凄いな」

「私たちの味方で良かったですわ」

「……ウィッチ型ネウロイは」

「宮藤。 もう過ぎた事だ……忘れろ」

 

 

もう銃はいらない。

その域に達した。

 

内部のネウロイが浄化されるサマを、方舟が黒海へ沈むサマを。

人類の悲願にして悪の象徴たる怪異の根城が消えていくサマを見られたのは、巣の内部にいた501とWDFだけだ。

 

 

「……あっ」

 

 

爆炎が闇を払う中。

最後のウィッチ型ネウロイが、手を伸ばす姿が宮藤の瞳に映る。

それは直ぐに爆炎の渦に消えてしまったが、脳裏にはっきりと焼き付く光景だった。

 

それは助けを求める手だったのか。

それとも人類を倒そうとする手だったのか。

 

 

或いは。

"人類を救おう"とした手だったのか。

 

 

それは誰にも分からない。

だが、優しく時に頑固な宮藤に考えるキッカケを生み出したのは間違いない。

それは他の者達にとってもそうだった。

 

やがて核を砕かれた方舟。

海に浮かばなければ海底に横たわる事すら許されず、爆散。

大量の光粒子となり、跡形もなく消えていった。

 

 

《砲弾、残弾ナァシッ!》

《撃ち切った。 満足だ》

《今日の仕事はコレで終わりだ》

 

 

それを合図として魔法のように暗雲が晴れ上がると、黒海の真ん中にいるのはウィッチーズだけとなった。

 

 

《か、勝った……?》

《やったのか……?》

《ウィッチーズ、EDFがやったんだ……?》

《……EDF》《EDF》《EDF……ッ》

 

 

各戦線で戦っていた連合軍も、ネウロイが消えて……晴れた空を見上げて口々に呟いていく。

 

やがて、それは ひとつの掛け声に繋がった。

 

 

《EDFッ! EDFッ! EDFッ! EDFッ!》

 

 

兵士達は立役者を称え合い叫びあう。

歓喜は涙となり、国籍も服も体格も違う兵士同士が気持ちを1つに抱き合った。

この瞬間、人類は一瞬でも ひとつ になる事が出来たのだろう。

 

その声はウィッチーズを囲い、確かに聞こえた。

 

喜びは確かにある。

悲しみもある。

気持ちは複雑なままに。

 

だけどそれは、少女たちが また ひとつ大人になれた証でもあるのだ。

 

 

「さぁ、帰りましょう」

 

 

ミーナは振り返った。

笑顔は陽で照らされ、いつもより大人びて見えた。

 

 

「軍曹さんも、ね。 只野さんが待ってるわ」

 

 

また軍曹ちゃんも、穏やかに笑みを返す。

それを見た曹長ちゃんも……同様だ。

 

子どもらしい、無邪気な笑顔は浮かばない。

 

役目を終えたWDFも、大人になれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ってください! 空中に何か……人影が見えます。 ネウロイの様です」

「バカな……まるで あの時の再現だ!?」

「漆黒の……巨人?」

 

 

 

 

……next




アッサリ塩味。
ズルズル増量するよりかは。

次回は纏める感じかも。
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