Witch Defense Forces(WDF)(完結)   作:ハヤモ

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少佐の部下:
あの日と同じ……。
いえ、分かってます。
正銘の神じゃないって。
戦闘可能な者は攻撃を開始して下さい。
残された戦力を結集し、最後の戦いに挑んで下さい。
健闘を祈ります。
備考:
神だとしてもネウロイの神だ。
人類には必要ない。


82.判決

◆とある兵士の日記

 

黒海の暗雲が払われた時、人類が決定的な勝利を得たと感じた。

少なくとも、あの場にいた生存者たちはそうだ。

人種も国も乗り越えて、俺たちは涙して喜んだ事は間違いない。

だけど違ったんだ。

戦争は終わっていなかったんだ。

オストマルクやオラーシャの事じゃない。

他の戦線じゃなく、黒海の戦争だ。

あの海の中央に501部隊と白銀のウィッチがいて。

その上に漆黒の巨人が浮いていたんだ。

ネウロイなのは分かる。

総じて奴らの色は闇を固形化したモノどもだ。

だがアレは。 アレだけは異様だった。

威風堂々とした姿だった。

その後の戦いも相まって、仲間達は言った。

 

神だと。

 

神話とは、こうして生まれるのかと俺は思った。

だが立ち会えた奇跡が素晴らしいかと言えば、そうでもない。

 

鮮血で彩られた舞台を、更に上書きしてくるバケモノ相手に、どれくらい正気でいられた人間がいたことか。

立ち向かうなんて、狂気の沙汰だ。

それなのにアイツらは歯向った。

当然のようにだ。

(中略)

それでも、誰かが戦い続けていたのを知っている。

あの覇気は凄まじかった。

ただものじゃない。

英雄とは、ああいうヤツをいうんだろう。

 

 

 

第二次ネウロイ大戦:ネプチューン作戦

生き延びた兵士の日記より抜粋

 

 

 

 

 

◆黒海 海岸

只野二等兵視点

 

なんでこう……。

EDFってのは、安心すると悪い事が起きるんだよ。

世界が仕組んだ罠だね。

よほどEDFが嫌いらしい。

 

黒海中央、501とWDFの頭上に浮いている漆黒の巨人が視界に入った時から、ふざけるなよマジでと思う。

どこぞの犯人だ。 主張し過ぎだ。 し過ぎて逮捕出来ないヤツだよ。

逆に刑事側が皆殺しされるんだろ?

冗談であってくれ。

 

 

「隊長。 アレ、ネウロイですよね?」

「だろうな」

 

 

淡々とStorm1隊長は答えた。

それは同意見だ。

 

 

「まるで旗艦に搭乗していた かの者 だ」

「かの者?」

 

 

俺はNO.11撃墜作戦の時は いなかった。

だから、知っているのはストームチームや先輩達だ。

 

 

「想像の域での話になるが、司令官に当たるヤツだった。 ソレにソックリだ」

 

 

なら、さっさと殺して終わりで良いんじゃないか。

そう思ったのは、他の面々もらしい。

生き延びた先輩達……ブルージャケットが やって来て、決意を新たにしている。

主兵装はKFF70だ。

 

 

「あの時の死神!」

「怖い……怖いが、もう逃げるか!」

「戦力なら ある」

「どうせニセモノだ! 狼狽えるな!」

「ネウロイめ、神を模倣しやがったか!」

 

 

恐怖と怒りが入り混じる叫び声。

よほど強かったんだろう、かの者とやらは。

 

だけどさ。

神を模倣って……EDFも やらかしてるからね。

その下に浮いてる白銀の子がいるでしょ?

WDFっていうんだ、知らない?

 

 

「EDFのビークルを模倣するのは分かる。 戦場で大破、放棄したモノから情報を盗めば良いからな。 だが、かの者の情報は どこで手に入れた? 死体の記憶から? まさかWDFから?」

 

 

一方、ブツブツと言い始める隊長。

なんだ なんだ。

考えている余裕があるのか、今?

 

 

「撃破しましょう。 それしかないでしょ」

「そうだな。 本部」

『抵抗……いや、射殺を許可する』

 

 

本部もナニか逡巡した様子だったが、すぐ倒すよう言ってきた。

遠慮はいらないな。

殺せ。 生物かは知らないがな。

浮いているばかりで まだ攻撃してこないが、いつ攻撃が始まるとも知れない。

先手必勝。 ネウロイだし迷わずに済む。

 

 

『501、シルバー。 そこにいるのはネウロイだ倒せ』

 

 

最も近いウィッチーズに指示を出す本部。

連合も同意見だろう。

俺も言える立場なら、そうする。

だけど。

 

 

「了解し「嫌です!」」

「ッ!?」「宮藤!」

 

 

ミーナの返答を遮る宮藤の声。

叱るよな声を上げる坂本。

他の面々は息を飲むのが分かる。

 

 

「だって! だって攻撃して こないんですよ! 無抵抗なんです! 意志の疎通が出来るかも知れないじゃないですか!」

 

 

俺は頭を抱えた。

無線越しに頭を殴られた気分だ。

かつてのエイリアン交渉団の様な末路が見える見える……。

 

 

「宮藤! 相手はネウロイだ! 人類の敵だ!」

「バルクホルンさん! 銃を下ろして下さい!」

「そこを退け宮藤!」

「退きません!」

「芳佳ちゃんっ!」

「宮藤さん! いい加減になさい!」

 

 

501まで内輪揉めかよ。

やっぱ子どもだな……いや、大人でも こうなったか。

エイリアン交渉団みたいな。 結果が分かってから非難するのはセコいが、ありゃ交渉の余地あるのか?

ネウロイは生物かも怪しいのだ。

戦争を仕掛けた目的も一切不明なのに、対話が出来るとは思えない。

隣人と相対する時、銃や爆弾を用いたヤツもいただろうよ。

それを踏まえて考えろ宮藤軍曹。

君は優しい。 だが時に戦場では命取りだ。

狂ってる?

違う。 相手が狂ってるんだ。

 

 

「私、分からないよ。 なにが正しいの?」

「……ルッキーニ」

 

 

南島でのやり取りを、また繰り返すルッキーニとシャーリー。

正義は人の数だけあるんだよ。

平和に終わるなら越したことはない。

だけど。

繰り返すようだが、平和を破って包丁を向けてくるヤツに両手万歳して交渉出来る可能性は どれくらいか。

そのまま刺されたら どうする。

そうなってからじゃ遅いんだ。

 

 

「私は」

 

 

軍曹ちゃんの声が聞こえる。

 

 

「私はWDFです。 ウィッチを守るチカラでもあります……私が話してみます。 501は万が一に備えてさがって下さい」

 

 

軍曹ちゃん……与えられた名前の役目を果たそうとして。

健気だが、だけど ここまで来て なにか あったら。

 

 

「軍曹だけ残せない。 私もWDFだ、残ろう。 給料泥棒なんて言われたくないしな」

 

 

曹長ちゃんまで。

義理堅いな。

EDFに肉体改造されて酷い目に遭ったのに。

まだ続けようとしてくれている。

 

 

『許可でき……ハァ。 分かった、シルバーに任せる。 501は直ちに撤退せよ』

 

 

本部まで折れやがった。

疲れた声だが、命をかけている事実は変わらない。

ナニか2人にあって死んだら、殴り込むからな。

 

 

「わ、私も残ります!」

 

 

宮藤。

また会った時、俺にぶたせるなよ。

二等兵が軍曹を? 知るか。

軍規なんかクソ食らえ!

 

 

『宮藤軍曹。 これはEDFが君に出来る最大の譲歩だ。 それを踏まえて欲しい』

 

 

流石にソレは許可しなかった。

原因を作った子も残らせて、死ぬ時は共に死んでくれ。

なんなら、絶望の地球に拉致してα型に生きたまま喰わせるぞコラ。

……過激な思考になった。 駄目だな、落ち着け。 良くも悪くも宮藤は子どもだ。

そして優しい子だ。

WDFも、もっと言えば司令官も。

可能性を捨てるな。 希望は必要だ。

 

 

「行くわよ宮藤さん」

「了解、しました」

 

 

ミーナが言い、宮藤が了解して無線が一旦切れた。

俺は海岸で眺めてるしかないのか。

1番無力で行動してないヤツじゃん俺。

そんな俺が こんなグチグチ考える資格はなかったよな……はぁ。

 

 

「只野。 怖い顔しても仕方ない」

 

 

隊長の声で我に帰る。

いや分かってるけどさ。

心荒れるじゃん、身近だった子が殺されるかも知れない時に。

 

 

「出来る事をするんだ」

「どうするんです」

 

 

尋ねる俺。

どうしようもない。

俺たち歩兵だぞ、海の上の敵に出来る事なんて。

 

そうイジけてると。

隊長は無線で瞬時に様々な方面へ連絡を取り始める。

レッドスモークも炊き始めた。

 

 

「空飛ぶ乗り物を用意する」

「航空機? そんなの」

 

 

もう無いんじゃ、と思った時。

隊長は上を指差す。

 

 

「あるじゃないか。 機械化航空歩兵、ウィッチという魔法の箒が」

 

 

釣られて晴れた空を見る。

ああ……そうだ。 この世界は そうなんだ。

 

 

「コイツをもってけ只野」

 

 

ポイと投げ渡されるはTZストークと弾倉。

綺麗にされており、水色のラインが空同様に美しく輝いている。

 

ははっ。

さしずめ魔法の杖だ。

 

 

「いつのまに拾って直してくれたので?」

「まあな。 といっても、綺麗にして弾を補充すれば良かっただけだったぞ」

 

 

思わず笑みを浮かべる。

隊長は頷き「行ってこい」と言ってくれた。

ヘルメットの下の表情は見えないが、声色で分かる。

隊長も笑顔なんだって。

 

 

「只野。 また会ったな」

 

 

空から声を掛けられた。

顔馴染みになったスカーフェイスの お姉さんが飛んでいる。

 

 

「手を伸ばせ。 空を飛ばせてやる」

「宜しくお願いします。 ルーデル大佐」

 

 

そしてウィッチのチカラが、箒がある。

WDF。

それは今の俺にも当て嵌まるんじゃないか?

 

 

 

 

 

◆黒海中央

 

漆黒の巨人と相対する軍曹ちゃん。

付き添う曹長ちゃん。

 

緊張の面持ちをする白銀の魔女に対して、漆黒の かの者は のっぺらぼうだ。

EDFの世界でも そうだったが、それでもアッチは言語の様なモノを喋っていた気がする。

 

だからって交渉出来るかは別問題だ。

そもそも、ネウロイは喋るのか。

身振り手振りで 伝えようとするナニかはあったかも知れないが、目の前の巨人は その様子が無い。

 

 

「あの」

 

 

口を開いた……"開けた"のは軍曹ちゃん。

 

 

「もう戦わなくて良いんですよね。 戦いは終わったんですから」

 

 

巨人は何も言わない。 動かない。

ただ、軍曹ちゃんと曹長ちゃんの遥か背後……連合軍が受け持った海岸にて、無抵抗の小ネウロイ残党狩りがされているサマだけが流れゆく。

 

 

「私は、アナタたちネウロイが、どうして人類を攻撃してきたかは分かりません。 でももし、私のカラダのように理不尽な目に遭って怨みを抱いたなら……気持ちは分かります」

 

 

海岸から物体が飛んでくる。

シールドを張れない お姉さんウィッチと、ぶら下がっているのは異界の兵士だ。

 

 

「でも! でも……もう、許してあげて欲しいんです。 人間にも良い人が沢山います。 私と曹長さんは、只野さんって素敵な人と会えました。 こんな体になっても優しくしてくれました!」

 

 

ここで始めて巨人が動いた。

右手を軍曹ちゃんにかざす。

それはまるで、理性の無かった頃の軍曹ちゃんで。

かの者 の 攻撃の前兆のソレだった。

 

 

「ッ!!」

 

 

気が付いた曹長ちゃんは軍曹ちゃんを体当たり。

この場から離れさせる。 刹那。

 

 

バシュンッ!

 

 

光弾が曹長ちゃんを覆い尽くす。

ウォーロックの時と同じだった。

 

 

「曹長さんッ!?」

「曹長ちゃん!」

 

 

悲鳴を上げる軍曹ちゃん。

紛れて 叫ぶ ひとり の兵士。

また黒焦げになったのか。 生きてるのか。

不安が全体を覆う中、煙が晴れて……やがて状態が分かる。

 

 

「やってくれたな」

 

 

そこには かの者 と 同じく片手を上げる曹長ちゃんの姿が。

強力なシールドを張っており、白い肌には傷1つ無い。

だが、穏やかな表情は捨て去っており、戦意を剥き出しにした魔女が そこに 鎮座していた。

 

かの者は、そんな曹長ちゃんに……いや、人類に無慈悲にも再度攻撃を仕掛けようとしている。

手にエネルギーが充填していく様子が目視でも分かりやすかった。

 

 

「残念だが"有罪"だ。 お互いにとってな。 なら生存権を掛けて……消し合うしかない。 まるで最初からのように。 弱い生き物が淘汰され、強い生き物が生き延びる自然の摂理のように」

 

 

WDFは今度こそ戦いを終わせる為に。

なにより世界と、この世界に生きる魔女を守る為に戦闘態勢に入る。

 

 

「軍曹、応戦だ。 迷いは捨てろ」

 

 

黒海の中央にて、再び戦争が勃発。

神を模倣した者同士、人智を超えた戦いが始まった。

 

だが、バケモノは。

WDFは決して彼女らだけではない。

 

無謀にも飛び込んでくる、ただの兵士も また、WDFだ。

 




かの者 同士。 ニセモノ同士。
だけど片やEDFがいる。 只野二等兵がいる。
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