Witch Defense Forces(WDF)(完結) 作:ハヤモ
やはり こうなったか。
交渉は無理のようだ。
こうなったら、やる事ひとつだ。
我々が戦い続ける限り勝率はゼロでは無い。
戦時、ストームチームが教えてくれた。
……戦闘を開始!
手段は問わない。
戦闘への参加も自由。
戦意ある者だけが参加せよ!
備考:
機密情報038。
サテライトブラスター起動。
機密情報038は前作に出てきた衛星兵器ですが、当作中にも無理やりねじ込んでみたり。
◆黒海
只野二等兵視点
ルーデルに抱えられて、黒海中央へ。
全面から風を受け、背中に おっぱい の感触を浴びつつ空を飛んでいるのは新鮮だったけど、味わってる場合ではない。
案の定というか、戦闘が開始されており、軍曹ちゃんと曹長ちゃんが激しい攻防を繰り広げている。
光弾が飛び交い、打ち消しあって、時に海面に着弾して水柱を形成している。
もうあれ……人類が目撃して良い光景じゃないよ。
いろんな意味で。
世界に残る神話って、実話なんじゃないの?
少なくとも俺らの世界に残されていた黄金船の神話は そうだったろうし。
「やべぇ漏れそう」
で、思わず出た言葉がコレ。
お姉さんに抱えられた男が発して良いモノじゃないよ。
でも早漏で良いよ。 死ぬより良い。
「次、余計な事言ったら落とす」
「俺は爆弾じゃないよ? 無駄な投下は女王様の名が泣くよ?」
「泣くのは只野だろ」
「分かった俺が悪かった」
ルーデルの表情は分からないが、赤くなってるんじゃないだろうか。
見てみたいが、今はそれどころじゃない。
俺はTZストークを構える。
スコープ越しに巨人を見た。
レーザーは届いている。
よし……この辺で良いだろう。
「この距離で旋回して欲しい」
「外すなよ」
「外しようがない。 この銃の性能は良いんだ」
距離はソコソコ離れている。
ヤツと軍曹ちゃん達の流れ弾が来ないのを願うしかない。
「じゃあ……死のうか」
ネウロイ死すべし慈悲はない。
俺はトリガーを引きっぱなしにした。
青白いマズルフラッシュを焚き、フルオートによる無数の弾丸が漆黒の巨人へ吸い込まれ、いつものように爆散……しなかった!
「ナニィッ!?」
表面が抉れただけ。
しかも直ぐに再生。
今までのネウロイだったら、貫通していたぞ!?
「距離による減衰はあるけど、こりゃないだろ!」
いや冷静になれ。
WDFの2人に猛攻されて無事なのだ、普通じゃないだろ。
「喚くな! 来るぞ!」
ルーデルに叱られ、ハッとする。
ヤツは怒ったのか、こちらに手を向けて……光弾をマシンガンのように連射してきやがった!
「避けろ!」
「言われるまでもない!」
と、回避行動をするルーデルだったが。
ミラージュのように誘導性があり、虚しくユニットに被弾。
俺という重荷、シールドを張らないほど弱まった魔力もあったか、くそっ。
「うぐっ!?」
黒煙を空に撒き散らしながら、高度が下がる。
下は水とはいえ、叩きつけられたらヤバい。
いや、身動き出来なくなるのが1番ヤバいか。
「もう良い! 切り離してくれ!」
「いや、まだだっ」
ナニ言ってんだ。
俺を切り離して身を軽くし、少しでも岸に寄れば生存確率は稼げる!
「諦めるなって!」
「何も諦めてない……よし、今か」
と、俺を離して別れた。
自由落下を始める俺の体。
笑顔を見せ、滑空するように離れていくルーデル。
「うおおおッ!?」
「後は任せた!」
まさかの責任放棄!?
いや、あの爆撃女王だ、切り離しのタイミングにナニか意味が!
「仁さーんッ!」
と、白い影が俺を抱きしめたと思えば、空へと舞い上がる。
チカラ強く、やわこい感触……この感じは。
「軍曹ちゃんッ!」
戦っていた軍曹ちゃんだった。
久し振りに会った気分。
「間に合って良かったです!」
ありがとう。
で、言い難いんだけどルーデルは……。
『こちら曹長。 大佐はコチラが預かった、後は頼む』
という曹長ちゃんからの無線で安心した。
うん、複数の意味で助かったな。
俺が他の女を心配したら、怖い目に遭いそうな気がしてきた。
まぁ、その。
空中で歩兵の受け渡しをする時点で怖い目に遭ってるが。
戦闘と制裁の恐怖よりマシ。
「任されました。 さぁ、ふたりの共同作業といきましょうか」
夫婦の共同作業みたいに言うな。
俺は言わないけど。
そんなふざけた会話にキレたのか。
巨人は流星群の如く空からビームの雨を降らせてきた!?
「ヤバッ! ナニこの攻撃!?」
人間卒業試験扱いされる弾幕シューティングゲー並みの密度!
思わず叫ぶも、改造された軍曹ちゃんは ひょいひょいとかわしていく。
俺を抱きしめたままで。
「ふふん。 その程度問題になりませんね」
うわ軍曹ちゃん強い。
最小限の動きで避けたよ、冷静に。
だけど攻撃が効かないんだよな……どうしよう。
『ストームチーム。 戦闘に参加する』
隊長から無線が!
戦ってくれるのは嬉しいけど、どうやって。
狙撃銃で狙える距離じゃないし、海上を超えて来るしかない筈だが……。
うん?
なんかユニットのエンジン音が。
思わず振り返る。
「は?」
501のミーナと。
彼女に抱えられたStorm1がいた!
それと坂本に抱えられたStorm2!
バルクホルンに抱えられたStorm3!
シャーリーに抱えられたStorm4!
他の者は援護の形!
人数的に隊長格のみだが、やはりヤバい!
「「「「来たぞ」」」」
「なんか来たー!? スゴい絵面ッ!?」
テンパるのも仕方なくね?
英雄達がケモ耳生やした女の子に運ばれてるんだよ?
「良く運べますね!?」
特にフェンサーのStorm3。
バルクホルンが怪力の固有魔法とはいえ、重量はハンパない筈だぞ!?
「問題ない。 チームストワンによる万全の整備と改造のチカラだ」
「ストワンってなんだあああ!?」
「501の整備隊だ。 俺が調教した」
「ナンだ調教って!? いつの話!?」
「501に潜伏して2日目くらいだな」
「かなり初期だったあああ!?」
戦場なのも忘れて叫び散らす俺。
最終決戦の雰囲気じゃねぇ。
「むっ! 来るぞ!」
隊長が叫ぶ。
また我に帰ると、ヤツがミラージュを飛ばしてきやがった!
避けられない!
だが、そこはWDFの軍曹ちゃん!
強靭な魔法陣……シールドを張って防ぐ!
「私が皆を守ります!」
「エライぞ。 よし、戦闘開始」
隊長が指揮を執り始めた。
物凄い戦闘態勢だ。
501も良く付き合ってくれるよ。
宮藤の件と、今までの付き合い、何より隊長のカリスマだろうか。
「バルクホルン! ヤツの頭上まで行って死神を投下!」
「りょ、了解した!」「頼むぞ」
「坂本! 少し距離を置いてヤツの周りを旋回しコアを特定! その間に軍曹はブレイザーを!」
「了解」「任せろ!」
「シャーリー! 戦闘の合間を縫い、スプリガンを切り離せ! 飛行が出来なくなったら抱え上げるのを繰り返してくれ! 素早い君にしか頼めない!」
「わかった!」「海の上、良い舞台だ」
「只野! 撃ちまくってヤツにダメージを与えるんだ! 機動は軍曹ちゃんに任す!」
「イエッサー!」「2人なら怖くないです」
おぅ……馬鹿げていると思った俺を恥じた。
マトモな指示が飛んでいく。
こりゃガチでやらねば無作法というもの。
「ミーナ! 俺を抱えたまま旋回! 他の者は援護だ、その指示はミーナに任す!」
「分かったわ」
「本部、情報部! 支援頼む!」
『こちら本部、了解した』
『情報部も了解』
「オペ子!」
『ひゃいっ!?』
「大丈夫だ。 俺たちに任せろ」
『は、はい! 信じてます!』
後方支援も取り付け、各自行動を起こしていく。
取り敢えず俺は攻撃だ!
「うおおおおおッ!」
撃って撃って撃ちまくる!
ヤツは怯まない、だが手は止めない!
引きつけられているだけでも、かなり役に立つ筈だ!
「はぁっ!」
スプリガンがランスのビームで、巨人を貫く。
が、直ぐに再生する。 だが攻撃の手は止めない。
周りでも、手が空いている宮藤、リーネ、ハルトマン、ルッキーニ、ペリーヌ、サーニャ、エイラが撃ちまくる。
囲まれる事で、狙いを付けられず立ち止まってしまう漆黒の巨人。
そこの脳天に、投下されたグリムリーパーがブラストホール・スピアをかます!
「ふぅんッ!!」
強烈な一撃!
頭部が吹き飛び……すぐ生えた!?
キモい再生能力だ!?
「ダメか……離脱する!」
死神は、そのままドボーンッと海に落ちた。
質量ある筈なのに、それほど大きな水柱が立たなかった。
謎である、いや、今は目の前の敵を倒さねばならない。
「見えた! ヤツの左胸に当たる部分だ!」
坂本が叫ぶ。
固有魔法でコアが見えるのだったな、弱点が分かったのは大きい。
心臓の部分か。 また生物的な……だが!
「集中砲火ッ!」
容赦しない!
俺、軍曹、手の空いている皆でその部分を撃ちまくる!
なのにダメだ! 再生能力を超える攻撃にならない!
「くそっ!」
そこに隊長がビーコンを照射。
光の点が収縮すると。
『バルジレーザー照射!』
軍事衛星サテライトW1による太いレーザー光がヤツに注がれる!
全身に光を浴び、銃火を浴び……だが、まだ倒れない!
「なんてヤツだ」
「かの者以上だな。 再生能力だけだが」
隊長と軍曹が驚いた。
え、マジで? かの者よりコイツヤバいの?
『こちら本部。 ヤツは歩兵の火器では手に負えない。 今、情報部が総司令部のデータベースにアクセスした。 その中にあった秘密兵器を起動させている、暫く耐えてくれ』
……それ、実在するんでしょうね。
情報部が「存在しません」とかツッコまない?
「なら信じて耐え忍ぼう。 皆、回避優先だ」
言うが早いか。
ヤツが再び流星群を降らせてきやがった!
「なんだ!?」
「流れ星!?」
「ネウロイのビームです!」
いけない!
軍曹ちゃん以外には、これは厳しい筈!
「私が守ります!」
軍曹ちゃんが大きなシールドで皆を守ろうとする、だけど。
「きゃあっ!?」
「うわっ!?」
破られてしまい、そのまま流星群が皆を襲う!
避けられても防げないか!
「ぐっ!?」「きゃあああ!?」
「防ぎ切れないーッ!」
皆もシールドを張って防ぐものの、ビーム出力が強すぎるらしく、皆は撃墜されてしまった。
ボチャボチャと雨粒のように水面に落ちていく面々。
まるで濁流に飲まれたみたいに、一瞬で。
「みんな!?」
「戦闘を継続しろ只野二等兵……ッ!」
「私たちに構わないで……!」
どうやら命は無事か。
『きゅ、救助艇を派遣済みですっ! 出来るだけ中央から離れてください!』
オペ子さんとやらが指示を出した。
あまり彼女の事は知らないんだけど、成長しているんだろう。
昔聞いた感じだと、ポンコツだったらしいからね。
「ごめんなさい……WDFなのに、皆を守れない……ッ!」
「軍曹ちゃん! 誰も死んでない! 寧ろこれからだ! ここでヤツを食い止めるんだ!」
弱気になる軍曹ちゃんに喝を入れて、俺はTZストークを再度撃ちまくる。
そうだ、まだ終わってない。
何も終わってない。
終わらせてやらなきゃ、なんねぇんだ!
「喋りもしなきゃ交渉もしない! 巣を破壊されようと降参もしなければ抵抗の一択! 消えろ! 消えろ! 今直ぐ消えろ! それがお前の選んだ道なんだァッッ!!」
───まるでEDFだな。
戦って、戦い続けろ。
この星から追い払え……だったかな……。
「ッ!」
必死に撃ちまくってくる相手。
それを軍曹ちゃんが避けまくる。
激しく動く中、それでも俺は弾幕を張って抵抗を続けた。
互いに無駄だとしても。
それでも。
追い払え。 戦い続けろ。
この星を代表して。
それは、コイツも……いや。
関係ない。 もはや。
俺は宮藤みたいに優しくはなれない。
死にたくも、当然ない。
だが俺はコイツとは違う。
もうヤツには仲間がいない。
俺にはいる。 だから叫ぶ。
叫ぶ事が、出来るんだ。
「情報部ッ! 早くしろぉ! 間に合わなくなっても知らんぞおおお!!」
真面目にやってやってんだよコッチは!
『機密情報038ハッキング完了! 操作権移譲! スタンバイモード切替! 地球と当該座標のデータリンククリア! 空間転移用意良し! サテライトブラスター起動! 砲身修正! 座標入力終了! 出力臨界! 照射開始ッ!』
少佐のクールな印象とは真逆の、気迫ある声と物凄い速さで聞こえるタイピング音と声。
ターンッ、と最後にエンターキーを押したかのような音が響いた刹那。
───ドゴォンッッ!!
黒海の中央に、光の槍が突き刺さった。
サテライトW1の比じゃない、凄まじいエネルギーを込めたモノだった。
『サテライトブラスター大破! 再度の発射は不可能です!』
それは一瞬だけだったが、かの者を貫く。
黒海の海底深くにすら刺さっただろう。
その勢いは津波となり、救助艇と海岸にいる残存部隊を流していく。
「みんなーッ!?」
情報部ナニしてくれてんだ!
みんな巻き込まれたぞ!
津波とはいえ、この大津波。
下手すると命にかかわる。
無線からは数多の悲鳴からの沈黙。
「仁さんッ! まだ終わってないです!」
ハッとして かの者 の方を見る。
まだ浮いていた……コアだけが。
『只野二等兵!』
『只野!』『只野さんッ!』
司令官、少佐、オペ子の声。
『やれッ! 只野二等兵ッッ!!』
Storm1隊長の叫び。
そうだ。 やる事は ひとつだけだ。
「今度こそ終わりだああああッ!!」
撃ちまくる。 撃って撃って、撃ちまくる。
残弾全て、ヤツにくれてやる!
コアはヒビが入り、それでも必死に耐えて、それでも限界が来て。
やがて砕け散り、光の粒子となって四散した。
残弾はゼロだった。
「はぁ……はぁ……これで、終わり」
世界が白けた。
が、直ぐにまた、歓声が上がる。
ストームチームと501の声も聞こえて、俺は脱力した。
「お疲れ様でした……帰りましょう」
俺を抱えた軍曹ちゃんが労ってくれる。
あの時と一緒。
「本部……これより帰投します」
また歓声が聞こえた気がした。
俺は口角を上げる。
俺は1人じゃないんだって思えたからだ。
やっつけ感。 いろいろと。
ボチボチ物語も終わりに。
衛星……たぶん、今頃になって情報が発掘されたのでしょう。
使い所さんを渋っていたら総司令部が壊滅しちゃった的な。