せかいの ちゅうしんで あいを さけんだ!▼ 作:ポケモン再熱
そこで私が見たものは……いや、私が生きていたあの世界はなんだったのだろうか。
地名は全く聞いたことがないものばかりだったし、文字も読めるし書けたけど全く見たことがなかった。それに、ポケモンもいなかった。けどその時の私は特に何も思わずその世界を生きていたんだ、間違いなく。物心がついてから……死ぬまでの二十年間を。
誰かの記憶を覗き見したとかじゃない。
転んだ時の痛みは現実だった。
悲しくて泣いた時の涙は温かかった。
嬉しくて喜んだ時の興奮は熱かった。
人肌の温もりも、人が死ぬゆく瞬間の冷たさも、私の手に残っているのだから。
私の名前は悠里。男の子だった。
ポケモンがいないあの世界で、ゲームとして存在していたポケモンをプレイしていた、只の男の子だった──。
────
「ファイニィィィ!」
「ヒュアアァァァン!」
「チラッ! チラチー!」
みんなの声が聞こえる。なんか久しぶりだなぁ……。
酷く焦ってるけど、どうしたのかな……。
そういえば私何してたんだっけ……?
ビートくんを弄って、マリィちゃんとショッピングして、サイトウさんとケーキ食べて……あれ、これ一週間前だったかな。
えと……あ、そうだ、ヨロイじまに来てたんだっけ。それで……確か修行のために鍛錬平原に行って転んで……。
あっ。私転んだんだ。すっごく痛かったなぁ……ん? ちょっと待って。そこから記憶があの世界に飛んでるけど、もしかして私気を失ってたのかな。
じゃあ、そっかぁ。私を心配してくれてるんだね。
ごめんね、みんな。
「……ぅが……」
「サーナイッ!?」
「フィア!?」
「コーン!?」
あれれ? 声が出な……いてててててててッ!!!!!!
あ、頭がぁぁあああ!!!! 痛いぃぃいいいいいい!!!!
目の前が真っ赤だッ! あ、あの石かッ! あの石が私のぉぉぉおお!!!!
あっ。
ユウリは めのまえが まっくらに なった!
『──速報です。今日未明、チャンピオンがヨロイじま鍛錬平原にて転倒し、意識不明。現在搬送先の病院にて入院中とのことです』
私の不注意が原因とはいえ、随分大事になっちゃったなぁ。
ママにはすっごく怒られて心配されたし。……目覚めて初めに見た顔がママの泣きそうな顔は堪えたなぁ。それにみんなも一緒になって私を叱ってくるし……。でもそれだけ大切に想われてるってことだし、悪い気がしないのは内緒にしておこう。
「サーナイッ」
「チラッ」
「ご、ごめんなさい」
そうだよね、サーナイトはトレーナーの気持ちが分かるもんね。チラチーノはサーナイトの反応を見て気がついたのかな。相変わらず鋭いんだから。
「フィア?」
「なんでもないよー」
ニンフィアもずっと私から離れないし、本当愛されてるなぁ。
今、部屋にいるのは私の手持ち四体。
エースバーンとラティアスはお母さんと一緒に入院生活に必要なものを買いに行ってくれている。キュウコンは膝の上ですやすやだ。本当はチラーミィ軍団とかブリムオンたちも側にいたかったみたいだけど、そこまで大きな部屋はないからボールの中で我慢してもらっている。
みんなには本当に感謝している。もしかしたらあの時私はそのまま死んじゃってたかもしれないから。だから本当に──。
「ありがとう、みんな」
そういうと、みんな口々に応えてくれる。
でもね。
『画像』
>>グロくて草
>>可愛くて草
>>犯したい
>>通報した
>>アフィ
>>ブーイ
>>イーブイニキ!?
>>草
>>これがダンデを倒したチャンピオンのご尊顔ですか
>>てかポーズまんまオルガやん
>>マジやんw
パソコンて便利だね。知りたくなかった、こんな知識。どこを見ても私が白目を向いて血だらけで倒れてる画像ばっかだよぉ……。
あの時、みんな私を助けるためにすっごく頑張ってくれたんだ。頭を打った時は動かさないようにするなんていう、うる覚えの私が言ったことも実践してさ。チラーミィ軍団と一緒に周囲にいるかもしれない他のトレーナーたちに助けを求めに行ってくれたし、サーナイトたちも自分の力の限り応急処置してくれたし。本当にありがとう。
……命が助かったんだから、これくらいの代償は安いよね……。
「フィア」
ニンフィアが私の涙を拭ってくれた。
「……ぅ、ひぅ、……ぅぐ……」
泣き終わったら、携帯充電して電話しなきゃ。友達とか知り合いとかポケモンリーグ関係者とか、鬼のように連絡来てるだろうし。
気が重いなぁ。