♩プレアデスデイリーニュースの時間です♩
♩既報で報告いたしました、ゼノン容疑者は取調べの際、8人の工作員の存在をほのめかしました。その内、4人はユリシス宮殿崩落の際に死亡が確認されています。しかし、残る4人の行方は不明、ウラノス警察庁とセントヴォルト警察が合同で行方を追っているということです♩
ユリシス宮殿から薬品類を一通り回収して混乱に乗じて逃げおおせたパトリオティスNo.5キリアイは、全世界のラジオ放送に神経を尖らせていた。
「…情けない大将やな。べらべらしゃべりくさってからに。」
キリアイは耳から受信機を投げ捨て、すぐに踏みつぶした。
…ゼノンは捕まり、イーサン・セイラもレジスタンスに捉えられたと聞いた。
「あとはアキレウスへお礼せんとな。」
キリアイはこの混乱に乗じて逃げたと思われるウラノス参謀総長、アキレウスの行方を追う事にした。ゼノンの命令とはいえ、何度も夜の相手をさせられ、屈辱を強いてきた人物。ウラノスの政体が崩壊している今、アキレウスへの「お礼参り」がやりやすくなっていることは確かだった。
その日の夜は、とりあえずウラノスの自宅に帰る事にした。
ニナ・ヴィエントの召使となってからは、ユリシスの天宮に寝泊りしていたのでしばらく放置したままだった隠れ家のアパート。
キリアイは荷物を置くと、そのままベッドに倒れ込んだ。部屋のラジオはつけっぱなしにしてある。
♩〜ゼノン容疑者は、身柄をプレアデス刑務所に移され…。♩
「うっさいわ。クズ大将。」
キリアイは悪態をついた。その後、日々の過酷な業務からの開放感からか、猛烈な睡魔が彼女を襲った。
『賢い君にはわかると思うけどね。もし平和な世が訪れたら、君達の仕事と存在価値は無くなるんだよ。だから、君たちはこの世界から戦争をなくさないように日々過酷な仕事をこなさなければならない。わかるね。』
キリアイはまだパトリオティスになる前、激しい訓練に耐えていた子供の頃、一度ゼノンに自分の仕事の意義を問いかけた事があった。ミオと異なり、彼女は善悪の関係なく、自分の中で納得のいく理屈であれば、素直に従うところがあった。そのため、数々の体術訓練、薬学、危険物の扱い、銃やナイフの扱いなどを習得する事について、ミオよりも飲み込みが早く、また豚責めのような「教育」もすんなり受け入れるところがあった。
『キリアイに聞くと詳しく教えてくれるだろうけど…あいつもそれで人格ぶっ壊れてしまったからな』
何、何でハチドリとミオの会話をうち、立ち聞きしてん?うち、メロドラマ嫌いやゆうてんねんで。…ま、人格のくだりは当たってんけど。
『失礼しました。キリアイ、では後ほど、閣下と。』
うちは頭を下げたまま、アキレウスのすけべ顔を想像する。任務とはいえ、またかぁと心の中でため息をつく。
『手配終わりました。』
うちはニナ・ヴィエントを除く為の準備を終えた。またうちのせいで消される人物がひとり。
『…大好き。キリアイ。わたし、あなたの事大好き。』
「やめーい。うち、メロドラマ好かんとゆうたやろ!どこへでも行きぃこのバカップル!!」
キリアイは、冷や汗を流しながら目を覚ました。午前2時。変な夢だった。パトリオティス時代に受けたゼノンからの無茶な命令の数々。ハチドリのキリアイへの人物評。今全ての夢を思い出せないだけであの苦しくて発狂しそうな日々が今の夢の中で走馬灯のように駆け抜けていったのだろう。その後、最後にミオからの告白が。
「うち、人から感謝される事に慣れてへんねんな。ミオ、あかんて。うち、ハチドリの言うように人格いかれてしまってんねんで。だから、ミオ…勘弁してくれやほんま…うち、そんな言葉生まれてから一度もかけてもらった事ないんやぁ…。」
真っ暗闇の自室にて、キリアイはひとりごちる。
「あかん、寝よ寝よ。」