三日後、別働隊で動いていた特務班からの報告が入った。
「パトリオティスNo.6コードネーム『シラサギ』を捕らえました。アキレウス閣下からの呼び出しに応じて出てきた所を確保しました。」
「ご苦労。」
ヘドウィグは報告に応じる。傍らにはイグナシオ・アクシスが書類に目を通している。
「作戦担当官、いや、イグナ。これで俺たちの仕事は終わったな。これから君はどうするつもりだ?かねてからのオファーに応じて、ウラノスの警察に正式に就職するか?それとも、バレステロスのニナ様のもとに戻るか」
ヘドウィグはイグナシオに問いかける。もともとこの二人はニナ・ヴィエントの護衛役としての活躍が高く評価されて、しばらくウラノス警察の顧問として残る事になったのだった。特務班という部隊の専属となっている。しかし、特務班最大の任務であった『パトリオティスの残党を一人残らず逮捕する』という任務もこれで終わりを迎えようとしている。
「あとはパトリオティスNo.8、ハチドリを残すのみか…。」
イグナシオは嫌そうにその名前をつぶやく。ともにニナの護衛を務めた仲間であったが、決して仲は良くなかった。しかし、現在己が意のままに動かせる警察権力をもってハチドリを逮捕するのは気が進まなかった。
「俺もあまりそいつのことを追い詰めたくはない。ミオの面倒を何くれとなく見ていたのだろう?」
短い間の交流だったが、凛とした美しさと意志の強い瞳を持ったミオという女性を、ヘドウィグもまた好意的に見ていた。
「ヘドウィグさん、俺はこの作戦が終わったらバレステロスに帰ります。」
イグナシオの声には迷いがなかった。
「そうだな。俺もそろそろ帰りたくなった。が、俺は
「生真面目なヘドウィグさんには仮病は似合わないですよ。」イグナシオが笑う。
「そうか。お前とも長い付き合いだ。隠せないな。」
「ま、奴らの裁判まではお付き合いしますよ。ゼノンがどう裁かれるか、俺にも見届ける義務があると思います。そのうち、ニナ様やミオにも話す機会があるかもしれないので。」
「そうだな。俺たちはウラノスに残った以上、最後までこの戦争の結末、後始末を見届けて、皆に伝える義務があるだろうな。」
ヘドウィグは重い気持ちで答えた。