「よし、よくやった。シャールカ。」
一週間後、イグナシオとヘドウィグは、帰ってきたシャールカからその偽造命令書を受け取った。明日となった執行日に向けて、キリアイの銃殺を防ぐべく準備に入った。
「いずれ、シャールカには特別手当を出すよう本部長に上げておく。しばらく休め。」
「作戦担当官。」
シャールカはまだ話し足りないようだった。
「なんだ?」イグナシオ・アクシスはシャールカに横目を向ける。
「いえ、特別手当の件はお構いなく。ただ、私には、個人的にご褒美をいただきたいのです。」
「…おい、俺たち宮仕えだろ。俺の一存でシャールカに出世をさせることはできないしな。…ああ、何かおごって欲しいのか?」
ヘドウィグはニヤニヤしながら二人の会話を聞いている。
「いえ、今回パトリオティスNo.5の命が助かったら、担当官にはしばらく毒抜きをしていただきたいのです。…私はいつまでも、担当官の元で働きたい。ですからパトリオティスNo.5に担当官の解毒をしてもらった上で静養し、また特務班に復帰していただきたいのです。バレステロスに帰国するなんて言わないでください。この国にはお二人の力がまだまだ必要なんです。」
シャールカは涙声になっている。このパトリオティス残党の一掃が終わったら、ヘドウィグとイグナシオはバレステロスに戻り、ニナの元で働くということになっている。
「しかし、俺の体に入った毒は、もう抜けないらしいぞ。そんな俺にできることは作戦担当官ぐらいしかない。こんな体の俺を雇ってくれた特務班には感謝している。しかし、これからはウラノスも平和国家として地上の国とうまくやっていかなければならない。俺たちの仕事は終わる。そうだろう。ヘドウィグさん。」
ヘドウィグが応じる。
「イグナのいう通りです。シャールカさん。我々は所詮よそ者です。ですが特務班の一員に加えられて、過分な給料を頂いた。そもそも我々は一応警察とはいえ、残党狩りや戦後処理のためにかなり汚いこともやっています。そんな特務班は、平和な時代が来たら、解散すべき部隊です。我々よそ者はその時に、ウラノスの忌まわしい記憶とともに、消え去るべきなのですよ。これからの新しいウラノスを作るのはあなたのような人です、シャールカ・ハシェックさん。」
ヘドウィグは静かに語った。そして口調を変えて続けた。
「でも、イグナは中年の私から見てもやや働き過ぎの気がしますな。帰国を遅らせてでも、このウラノスでしばらく解毒休暇を取ってはいかがかな。急いで帰国したところで、待っている女性もいるわけでもなし。」
ヘドウィグはイグナシオをからかう。
「ヘドウィグさん、勘弁してください。」
イグナシオは照れて自分の髪の毛をくしゃくしゃにする。ヘドウィグはシャールカに向けて、片目をつぶった。