翌日、ユリシス宮殿で行われる銃殺刑。クロノ・マゴス一味は全世界を戦争の惨禍に陥れて暴利を貪っていた罪で。パトリオティスもその片棒を担いでいたという事で、連座させられている。
クロノ・マゴス一味は次々と断罪されて行った。
しかし、パトリオティス達には一言ずつ、話す時間が与えられた。シラサギとアオサギは長々と話をしたが、その後で銃声とともに絶命した。
「さあ、言い残す事はないか。パトリオティスNo.5?」
「なんでうちが最後やの?」久々に発するキリアイの声だった。
「パトリオティスで一番序列が高いからだ。そのぐらいの序列はつけるべきだろう。」
「わかった。おおきに。一応うちの実力を評価してくれてんねんな。」
彼女の脳裏に沈黙が流れる。集まった観衆からのヒワイなヤジや暴言も、もはやキリアイの耳には聞こえない。
…こんな気持ちやったんやな。フィオレンティナ。うちもいくで、またあの世では仲良くしてな。
…ハチドリ、あいつだけうまく逃げおおせたな、運やで。最後は。運は実力そのものやで。ミオと仲良くな。
…ミオ、ニナ、楽しかったで。うちが普通の女の子やったら、もっと仲ようなれたのにな。今度生まれ変わったら、仲良くしてな。平和な世界でな。
…こんなクソみたいな人生やったけど、ハチドリとミオが幸せになれるなら、少しは誰かの役に立てたかな、意味があったかなって。そう思えんねん。…
キリアイは微笑をたたえた。
銃口を向ける執行官が、その凛とした微笑みに、膝を折った。銃をすでにしまい込んでいる。いや、執行官は、その知らせに膝を折ったのかもしれない。
キリアイの目隠しが外された。
銃殺係の執行官が、膝を折ってかしこまっている。
「パトリオティスNo.5、シルヴァニアからの国書が届いた。お前の刑は中止する。エリザベート女王のご慈悲に感謝しろ。」
「え?なんやのん?」
「こら、さっさと膝を折れ。お前の命は助けられる。エリザベート女王の国書が届いた。」
「何いうてん!うち、そんな女王様と知り合いやないで!」
「やかましい。ほら、縄も解いてやった。さっさとユリシスの舞台に向かって膝を折れ。あの勅使が持っている文書がお前を助けた。」
「…え?…え、と、ははーっ。」
キリアイが膝を折る。彼女はユリシスの舞台に向けて平伏した。やがて観衆からは満場の拍手でキリアイは迎えられた。そして作戦担当官のイグナシオ・アクシスがキリアイに向かっていく。
「キリアイ。お前の命は助かった。しかし、このままという訳にもいくまい。しばらくお前の身柄を特務班で預かる。ヘザー、連れて行け。」
「はっ。」
茶髪の眼鏡の女性が、キリアイの腕をつかみ、特務班の事務所に連れて行った。