キリアイの再就職   作:藤沢 南

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第20話

マニウス新国王は続ける。

 

「命令その2だ。その『アリーメン』の、作り方を完璧に勉強して、ウラノスに持ち帰れ。レシピはあるにはあるのだが、アリーメンは発案者であるアリエル・アルバスが作った物じゃないとここまで美味しくはならない。」

 

「つまり、そのアリエル・アルバスという者が作ったアリーメンを完璧に再現する、ということですか。」

 

「そうだ。出来が良ければウラノスに店を出せ。余も時々食べに行きたい。」

 

「ある意味…言葉は悪いのですが。産業スパイ、という風にも聞こえます。」

 

「その通りだ。パトリオティスでつちかった技術を存分に生かし、今度は平和のためにスパイ活動をせよ。ただし、アリエル・アルバスを拉致してウラノスへ連れて来い、とは言っていないぞ。彼女と人間関係を築いた上で、作り方を教われ。そうでないと、完璧な味にはならぬ」

 

「イグナシオさんを回復させたら、すぐに取り掛かります。」

 

「よし、これより貴様は、余の直属の部下だ。バレステロスは遠い。資金が足りないようなら、遠慮なく申せ。」

 

「ははっ。良き仕事をいただき、感謝にたえません。」

 

キリアイは、2つの仕事が非人道的、屈辱的なものでない事をマニウス新国王にいたく感謝した。しかし、新国王は彼女に釘をさした。

 

「決して楽な仕事ではないぞ。…アリエル・アルバスはアルバス重工業の若き経営者でもあるということだ。多島海戦争で活躍した飛空士カルエル・アルバスの妹でもある。繰り返すがその女と信頼関係を築かなければ、アリーメンの作り方を完璧にマスターするのは難しいだろう。多忙なアリエルがアリーメンを時間を作ってまで教えてやりたい、と思えるまでの友人関係を築けるか?やれるか?」

 

「頑張ります。殿下のために。」

 

「…違う。貴様の新しい人生の為に()頑張れ。余は貴様のパトリオティスとしての能力でどこまでアリーメンを再現できるかしか興味はない。頼んだぞ。それから、貴様の呼び名はキリアイでいいのか?本名はなんだ?」

 

「…本名についての記憶はなくしました。その名はゼノンが付けたものです。でも、いいです、この世界でその名で呼んでくれた数少ない友人がいますので。私はキリアイです。キリアイとしてこれからも生きていきます。」

 

キリアイの目には、未来を夢見るような一筋の光が宿っていた。

 

「よし、キリアイ。今後は余と新しいウラノスのために働け。」

「ははーっ!」

 

キリアイは元気よく返事をして、イグナシオの部屋に向かった。 

                                                完

 


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