マニウス新国王は続ける。
「命令その2だ。その『アリーメン』の、作り方を完璧に勉強して、ウラノスに持ち帰れ。レシピはあるにはあるのだが、アリーメンは発案者であるアリエル・アルバスが作った物じゃないとここまで美味しくはならない。」
「つまり、そのアリエル・アルバスという者が作ったアリーメンを完璧に再現する、ということですか。」
「そうだ。出来が良ければウラノスに店を出せ。余も時々食べに行きたい。」
「ある意味…言葉は悪いのですが。産業スパイ、という風にも聞こえます。」
「その通りだ。パトリオティスでつちかった技術を存分に生かし、今度は平和のためにスパイ活動をせよ。ただし、アリエル・アルバスを拉致してウラノスへ連れて来い、とは言っていないぞ。彼女と人間関係を築いた上で、作り方を教われ。そうでないと、完璧な味にはならぬ」
「イグナシオさんを回復させたら、すぐに取り掛かります。」
「よし、これより貴様は、余の直属の部下だ。バレステロスは遠い。資金が足りないようなら、遠慮なく申せ。」
「ははっ。良き仕事をいただき、感謝にたえません。」
キリアイは、2つの仕事が非人道的、屈辱的なものでない事をマニウス新国王にいたく感謝した。しかし、新国王は彼女に釘をさした。
「決して楽な仕事ではないぞ。…アリエル・アルバスはアルバス重工業の若き経営者でもあるということだ。多島海戦争で活躍した飛空士カルエル・アルバスの妹でもある。繰り返すがその女と信頼関係を築かなければ、アリーメンの作り方を完璧にマスターするのは難しいだろう。多忙なアリエルがアリーメンを時間を作ってまで教えてやりたい、と思えるまでの友人関係を築けるか?やれるか?」
「頑張ります。殿下のために。」
「…違う。貴様の新しい人生の為に
「…本名についての記憶はなくしました。その名はゼノンが付けたものです。でも、いいです、この世界でその名で呼んでくれた数少ない友人がいますので。私はキリアイです。キリアイとしてこれからも生きていきます。」
キリアイの目には、未来を夢見るような一筋の光が宿っていた。
「よし、キリアイ。今後は余と新しいウラノスのために働け。」
「ははーっ!」
キリアイは元気よく返事をして、イグナシオの部屋に向かった。
完