「アンドロ!」
中庭にシャールカとヘザーがやってきた。この二人はアンドロことシラサギにも優しく接する看護師達だった。
「まずい、病院の看護師仲間だ、アオサギ、キリアイおぶってガラかくせ。じゃ、後でな。」
「おう、兄貴、バレないよううまく誤魔化してくれよ。」
アオサギはキリアイをおぶって消えた。
「おぉ、どうしたの、シャールカ、そして、君は…?」シラサギはアンドロに戻り、気弱な看護師の顔に戻った。
「いやぁね。何度か薬を届けてるでしょう。隣の病棟のヘザーです。いいかげん覚えてね。」
アンドロはバツの悪そうな顔をして二人に接する。ヘザーがアンドロの足元に落ちていた鉄仮面に気づいた。
「あれ、アンドロ、こんな趣味あるんだ。ちょっとかっこいいんじゃない?貸してよ。」
アンドロが言い訳を考えている間に、ヘザーが鉄仮面をひったくる。
「ねぇ、シャールカ、私、似合う?」
ヘザーは鉄仮面が気に入ったようだ。アンドロの顔に冷や汗が光った。
「ちょ、ちょっと、それ返してよ。」
気弱なアンドロに戻り、鉄仮面を取り返そうとするが、ヘザーは、その鉄仮面の中にある小型酸素ボンベに気づいた。
「何これ。ボンベがあるよ。あ、わかった!これ使って水の中に潜るんでしょ。」
「頼む、返して、大事なものなんだ。」
アンドロは泣きそうな顔を作ってヘザーに頼み込んだ、ヘザーはけらけら笑って、アンドロに鉄仮面を返した。
「アンドロ、もう少し私たちに打ち解けなよ。シャールカはうるさく言わないけど、みんなアンドロの事、気にかけてるんだから。特に面倒見のいいフィオレンティナさんとかね。あ、そうそう、私達フィオさんを探しに来たんだよ。午後の回診には彼女がいて欲しいから。アンドロ、フィオさん見なかった?」
よく喋るうるさい女だ。アンドロは無理に笑顔を作って、「知らない。」と答えた。
「知らないって…。フィオさんどこ行ったんだろうね。他当たろうか。ね。」
ヘザーはシャールカを促した。しかしシャールカはアンドロから目を離さない。
「あんた、何、その靴。危ないからしまいなさい。」
アンドロは冷や汗を感じた。すでに靴に仕込んだナイフは仕舞い込んであるはず。…いや、同僚の看護師の登場に焦ったか、ナイフの先っちょが出たままだった。さすがに看護師の2人だ。スパイではないが観察眼が鋭い。アンドロは慌てて靴から飛び出た刃物を全部しまい込んだ。
「それじゃ。あなたも。午後の回診までには戻っておいで。フィオさん見たら、早めに戻るよう伝えておいてね。よろしく。」
シャールカはまだ疑っているような視線を向けていたが、アンドロが気弱な顔を見せたので、そっと彼の肩を叩いた。「仕事戻るよ。」
「ちっ。シラサギの兄貴、ちっとも戻ってこないな。」
アオサギは、キリアイを無造作に地面に叩きつけた。彼女は少し顔を歪めるも、気を失ったままだった。
ここはシラサギのアジトだった。昨日二人は合流してから、キリアイを拉致したらここで落ち合う事にしていたのだった。
「こいつ抱えてここで待ちぼうけというのも、手間になるな。」
アオサギは、警戒心を緩めないまま、捕らえたキリアイと二人、アジトの中で息を潜めていた。
しかし、夜になっても、シラサギが戻ってこない。これは予想外の出来事だった。
「ううん。」
キリアイが目を開けた。アオサギは間髪入れず彼女の首筋に手刀を喰らわし、またも彼女の意識を奪った。
「兄貴、遅いな。いつまでこの毒女のお守りをさせるつもりなんだ。」