と、そこへ。
『トントン。』とドアをノックする音がした。
「兄貴か。」
返事はない。ドアの向こうの人物は分からない。アオサギは問いかけた。
「好きな花は?」
「十二月の薔薇。」
「よし。」
確かにシラサギの声だった。しかし、…。ドアを開けた瞬間、
「な?何する?兄貴!」
アオサギはいきなり羽交い締めにされ、手刀を喰らった。しかし急所を外したせいか、意識は失っていない。アオサギはしびれ震える手で拳銃をホルスターから取り出したが、
「ゾキューン」
…新手がいたのか!そうアオサギが認識した瞬間、シラサギの背後にいた茶髪の女が硝煙の煙を吐き出す拳銃を構えていた。
気づいた時には、アオサギの拳銃は吹き飛ばされ、右手にはさらに強烈な痺れが残った。
「パトリオティスNo.7。貴様の右手はもうしばらく使い物にならん。投降しろ!」
次の瞬間、瞬く間に距離を詰めたシラサギがアオサギに手錠をかけた。
「兄貴、裏切りやがったな。」アオサギは後ろ手のまま悪態をつく。
「…キリアイの言葉を借りよう。時代は変わったんだ。お前やキリアイは時代の流れに乗れず、消えゆく存在なんだよ。この俺やこちらのヘザーのように、うまく時代に乗っかって生きる柔軟性がお前やキリアイには欠けていた。ま、キリアイは新時代に対応しようと努力はしていたがな。あいつは運がなかった。それだけのことよ。」
そして、シラサギの背後で発砲した女性が逮捕令状を見せる。
「生き残ったパトリオティス全員に対して逮捕状が出ているのよね。でもNo.6だけはさっさと帰国して自首したから、こうやって私たちウラノス警察の仲間になった。うまく生きるというのはこういうことよ。ちなみに私はウラノスの元
ヘザーは軽く笑いながら、拳銃をしまった。
キリアイとアオサギは、しばられたままワゴンに乗せられ、どこかに連れて行かれる事になった。すでにキリアイは目を覚ましていたが、彼女は抵抗することはなく、うつろな瞳で向かいにいるアオサギを見つめていた。
「…なあキリアイ、お前看護師になったんだって?」
「…。」
キリアイは答えない。ただアオサギを力なく見ている。
「まいったなぁ。俺、転職するなんて発想ないから、アオサギの誘いに乗って、アキレウス参謀総長の元で工作員として今後も働こう、キリアイを手土産にすればいい、なんて甘い話に乗ったばかりにこのザマよ。」
「…。」
「結局のところ、俺らは戦争がないと生きていけない人間なんだよ。戦争が終われば、こうやって消されていくんだ。俺、もう抵抗する気もなくなった。…煮るなり焼くなり、好きにしてくれって感じだ。」