落第騎士の令和剣客浪漫譚   作:caose

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 珠雫ファンは要注意


叱責

 「ここは?」

 「起きたわね珠雫?」

 珠雫が目を覚ますと目の前にアリスがいた。

 起きた場所は消毒液の匂いから察してここは保健室だと確信すると

珠雫は恐る恐るこう聞いた。

 「あの・・・試合は?」

 「貴方の負けヨ、生徒会長が勝ったわ。」

 「!!」

 珠雫はそれを聞いて一瞬目を見開くが落ち着いてこう続けた。

 「そ・・・そうですか、残念だなあ七星剣武祭出場できなくて

まあ来年受ければ良いですしもう生徒会長がいないから

私とステラさんとアリスのメンツで優勝」

 「一輝君はどうなの?」

 「・・・・・」

 アリスの言葉を聞いて珠雫は顔を俯かせるとアリスはこう言った。

 「あの戦いの中で一輝君だけだったわよ?生徒会長の技の正体知ったの?」

 「え?」

 珠雫はそれを聞いて嘘だと思っているがアリスはこう続けた。

 「凄いわよ彼、一度見て分かったどころか対応策まで考えちゃうんだもの。

全く彼の実力に底はないんじゃないかなって思っちゃうのよねえ。」

 嫌んなっちゃうわねとそう言うと珠雫はそれを聞いて・・・憎たらしく

こう言った。

 「ふん、あんなの大したことないです。魔力なんてない癖に偶然が続いただけ」

 「運も実力の内って言葉知ってる?」

 「・・・・・」

 それを聞いて珠雫は黙りこくるとアリスは珠雫に向けてこう聞いた。

 「ねえ珠雫、一つ聞いて良いかしら?」

 「何です?」

 「どうして彼を・・・一輝君を毛嫌いするの?」

 そう聞いたのだ、これまで授業でも度々あったが何やら珠雫が一輝に対する視線が何やら・・・訳アリの様な目をしていたからだ。

 だからこそ聞きたいのだ、どうしてそこ迄毛嫌いするのかを?

 そう聞くと珠雫は暫くして・・・吐き出すかのようにこう答えた。

 「・・・嫌いなんです。」

 「嫌い?」

 「ええ嫌いなんですよ彼の考えも!戦い方も!!あの声も!!!そして何よりも魔力が無い落ちこぼれの癖に立ち向かうその姿勢も何もかもがです!?」

 それを聞いてアリスは黙るが珠雫はこう続けた。

 「だってそうでしょう!?弱い奴は幾ら強くなっても所詮は雑魚!

雑魚は雑魚らしく私達のように選ばれた素養を持つ者の糧として生きるべきなのにそれをあの男は綺麗ごとを並べて正義感ぶって良い言葉言って

まるで自分こそが選ばれた人間の様な口調でああいう自分の器を知らない野蛮な」

 そう言いかけている珠雫から・・・パン!と叩く音が聞こえた。

 「・・・え?」

 珠雫は自身の頬を摩って・・・自身が叩かれたんだと分かったと同時に

アリスに向けてこう言った。

 「一体どう言う意味ですかアリス・・・!!」

 珠雫はキッと目つきを鋭くしてそう聞くが当の本人は・・・

それすらも感知しない程の絶対零度の様な瞳でこう聞いた。

 「野蛮?私から貴方が野蛮よ珠雫。」

 「ナンデスッテ」

 「貴方は今まで多くの騎士見習いを痛めつけて苦しませてそして

それを遊んで笑うまるで悪童と言っても良い位の外道っぷりだったけど

今のを聞いて確信したわ貴方・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・一輝君が羨ましいんでしょ。」

 「はあ!?何言っているんですか!何故私があんな」

 「彼の言葉には重みがあったわ、あの子供に対しての言葉は私達ですら

共感するほどのそして何よりも・・・あの輝きに貴方は羨ましかったのよ。」

 「一体何言って」

 「そして何よりもあの強さ、破軍学園生徒会メンバー迄無傷で倒すあの実力と

それをひけらかさない大人びたあの心意気こそが

貴方が欲している物じゃないかしら?」

 違うかしらと聞くと珠雫はこう聞いた。

 「例えそうだとしても何故私が叩かれるのか意味が」

 「貴方は力を何だと思っているの?」

 アリスがそう聞くが珠雫はハン!と鼻息荒らしてこう答えた。

 「力?そんなの簡単ですよ、汚らしくて弱いくせに口だけは達者な連中を

黙らせて従わせるのが力!圧倒的にして無慈悲な力!!名前を聞くだけで

怖れおののき服従を選ぶ事しか出来なくさせるのが力ですよ!!?」

 そう言うと珠雫は更にこう続けた。

 「大体あの男を見ていると思い出すんですよ!魔力が無い癖に剣の道を

進もうとする愚兄に!!」

 「兄・・・お兄さんがもう一人いたの?」

 アリスがそう聞くと珠雫はこう答えた。

 「ハン!あんなの私の兄じゃアリマセンヨ!!弱いくせに曽祖父と同じく

騎士になりたいなどと夢を見ていた只の阿呆ですよ!?

父からも『お前は何もするな、何もしなくていい』と言ってくれてたのに

諦めもしない愚図が!家からも家族からも親類たちからもいらない人間扱いして

10年前の新年会から姿を見せなくなってその後からあらゆる力を使って

消してやって清々しましたよ足手纏いがいなくなったおかげでね!!どうせあの男なんて他の奴らと同じでその内力ある人間にへこ凹頭を下げる

私の知っている大人になり下がる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「もういい加減にしなさい黒鉄。」

 アリスが静かに・・・されど怒りを露わにしてそう言うとこう続けた。

 「力ある人間にへこ凹頭を下げる?それは貴方がこの国に於いて

『黒鉄』と言う家だからであって世界から見れば貴方なんて只の愚図よ。」

 「なんですって!?」

 「其れと言っておくけど貴方は今までそう言う人間しか見なかったから

そう思っているだけであって大人は皆が皆そんな連中じゃないわよ?」

 「そんなの見ただけでは分からない」

 「分かるわよ、こう見えて私って人を見る目は十分にあるしそれに

彼がそういう人間にならないって分かるから。」

 「その根拠は何なんですか?」

 珠雫がそう聞くとアリスは笑ってこう答えた。

 「周りの環境ね。」

 「環境」

 「そうよ、貴方が見ていたのは『黒鉄』と言う家の力で媚び売って

家の格を上げただけの只の腰抜けだと思うけど彼は違うわ。強い人間、弱い人間、頼りになる人に頼られる人、強さだけを求めるものと弱さを嘆く者、

そういう多くの人達の背中を見てきたんじゃないかなって

私はそう思っているのよ。」

 アリスはそう言うと保健室から出る前にこう聞いた。

 「所で聞くけど私からしたらアナタモ彼らと変わらないわよ、

家の力だけでちやほやされたとしても何れはボロは出るしそうなったら

貴方は結局の所その人たちと変わらない貴方の知っている大人たちと

同じになるわよ。」

 「!!!」

 それを聞いて珠雫は目を大きく見開くがアリスはこう言って出て行った。

 「それじゃああたしは出るけどこれだけは覚えておきなさい、力に溺れた人間は結局の所その力で身を滅ぼすって事を。」

 そう言って出ていくのを見た珠雫は窓から見る景色を見てこう呟いた。

 「・・・そんなのありえません。『黒鉄』が滅ぶなんてそんな事があったら

この国の滅びと言う結末しかないんですよ・・・哀れなアリス。」

 そう呟くが彼女はそれがどう言う意味なのかをその身をもって知るのは・・・

七星剣武祭代表決定戦が終わった後・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・それが『黒鉄』の没落の日だと知った時には全てが

手遅れであったと気づかされるのだ。




 次回は会長との出会い。
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