「『伸腕の術』・・・一体どう言う能力だったのですか?」
カナタは一輝の過去である般若との激闘についてどんな能力なのかと聞くと一輝はこう答えた。
「待たれよカナタ殿、未だ話は終わっておらぬ故暫し待たれよ。」
そう言って宥めさせて続きを話した。
「どうした緋村 一輝!その程度か!!」
「あぐ、これはきついですね!」
一輝はそう言いながら何発も喰らっていながらこう思っていた。
「(落ち着け、考えるんだ。これが騎士の能力ではないとするなら
『伸腕の術』には何かしらの絡繰りがあるはずだ!
そこが反撃の糸口になるはずだ!!)」
一輝はそう考えながら般若を見ていた。
「ぐが!何だ一体!?まるで本当に伸ばして・・・・!!」
一輝はそう言いながら般若を見てある事を思い出していた。
『これこそ我が術『伸腕の術』、貴様が私の服を見た時点で術中に
掛かっているのだ。』
「(私の服・・・服・・・・!!もしかしたら。)」
一輝はそう考えながら一端離れると般若は嗤いながらこう言った。
「クククク、これがあの『人斬り抜刀斎』の弟子とは情けない。
これなら蒼紫様が思い描く『最強の称号』を手に入れられるのも
造作ではないな。」
「『最強の称号』・・・何ですかそれは?」
「ふ・・・まあ教えておくか冥途の土産だ、当時『徳川 慶喜』は
『鳥羽伏見の戦い』の際に幕府軍の劣勢が分かるや否や奴は
自分と重臣たちだけで軍艦で大阪城を捨て、江戸に戻ったのだ。
当時未だ戦っている万をも超える兵士を見捨ててな、その後奴は
上野の『寛永寺』にて立て籠って絶対恭順を決めて全権を任されていた
『勝 海舟』と『西郷隆盛』の階段によって江戸城は無血開城となってしまい
我ら御庭番衆は戦うことなく幕末を終えたが・・・蒼紫様はそれを許さなかった。あのお方には確かに新政府から仕官の話が山ほどあったがあのお方は我らに向けてこう言ってくれたのだ。」
『俺はお前達を見捨てて裏切るようなことは絶対にしない。』
「そう言ってくださった、嬉しかったのだあの言葉が私みたいに
身寄りもない者や異能技に特化していたひょっとこやべしみ、嘗ては敵として
お頭に立ち向かった後に我らについてくれた者からすれば
あのお方はまるで太陽のように眩い存在であった。だが時代はそれを許さず
一人また一人と新しい人生を見つけて消えていった同胞達を見送って残ったのは
私を含めてたった4人、なればこそとあのお方はこの様な下種の護衛任務をして迄我々を思ってくださった。そして今日我々は最強の維新志士『人斬り抜刀斎』を
討ち倒し『最強の称号』をお頭がこの手に掴むと言う嬉しい事態となった!・・・済まないがここで終わらせる!!」
そう言って般若が素早く殴りかかろうとすると一輝はそれに対して・・・
只々般若を見ていた。
「(ほう、私の拳に対して最後まで足掻こうとするは中々どうして
良き心構えだ。
故に惜しい逸材だ、お頭に出会っていたら貴様は我らの仲間として・・・
いや、あの『お方』の良き遊び相手になってくれていただろうに。)」
般若は一輝に対してそう思っていた。
それは自分達を親しんでくれていた・・・京都に残したあの少女に対する僅かな心残りも込めて。
そしてその儘一輝の顔面にぶち当てようとして・・・避けられた。
「!!」
「そこ!」
般若が驚いた瞬間に一輝はそう言って半回転して・・・技を放った。
飛天御剣流 龍巻閃
「あが」
「まだまだー-!」
般若の背後を思いっきり打った一輝はそのままもう一度半回転回って・・・
下から斬撃を繰り出した。
飛天御剣流 龍翔閃
「ごおおおおおおおおお!」
般若はその一撃に痛みを感じて顔を隠しながら離れると一輝にむけて
こう聞いた。
「貴様・・・どうやって私の」
「簡単ですよ、貴方の装束は隠れることに最も適していない縞模様。本来ならば山の中等に使うべきものを何故建物の密集する住宅街でも使うのかと
思っていましたが貴方の言っていた術を考えてこう推察しました。」
そう言って一輝はこう答えた。
「『伸腕の術』、その正体は横縞を見ることで起きる目の錯覚だと。そう思って僕は見るべき対象を全体から貴方の拳ただ一つに限定させたんです、
幾ら何でも拳に迄縞模様は付けられないと思っていましたが矢張り正解でしたね。何よりもその般若のお面で自分の視線と表情を隠して技の出どころと
技の放つ位置やその瞬間を見破れない様にさせると言うその徹底ぶりから見て
貴方の服装は一見全ての常識を捨てているように見えて実は効率よく尚且つ
計算高く配慮された正に剣客に対して最も威力を発揮することができる
よく考えられた戦法ですね。」
一輝はそう言うと般若は・・・笑ってこう答えた。
「フフフフフフ、確かにそれもあるが緋村一輝。このお面に与えられた役割は
そんなものではないのだ。」
「?」
「この面は私の素顔その物を・・・隠すためだ。」
そう言いながら般若の面が砕けて・・・露わになったのは。
「それで・・・どんな素顔だったのですかそのお方は?」
カナタがそう聞くと一輝はカナタに向けてこう聞いた。
「カナタ殿一つ宜しいか?」
「ハイ。」
「そなたは・・・大切な人たちの為ならば・・・・・
・・・・・その自身の顔を自分で砕くことが出来るか?」
露わになったのは・・・あの顔です。