「顔を自身で砕く・・・一体何を?」
カナタはそれを聞いて顔を青くしながらそう聞くと一輝はこう答えた。
「其の儘の意味です、般若が何故面を付けているのか?
それが理由だったのです。」
「この面は私の素顔その物を・・・隠すためだ。」
そう言いながら般若の面が砕けて・・・露わになったのは・・・
・・・・・人とは呼べない程凄惨な顔面であった。
「その顔は・・・一体。」
一輝は般若の顔に対して顔を青くした状態でそう聞くと般若はこう答えた。
「フフフ、この顔は私の任務に於いて必要不可欠なものでな。
結構気に入っているのだ。」
「任務?・・・ですか?」
「そうだ、私は密偵方。第一の任務は戦闘ではなく諜報工作だ、その為
私はあらゆる人間に変装しなくてはいけないためあらゆる顔に
対応できるようにするために自分で唇を焼き、耳を落として、鼻を削いで、頬骨を砕いた迄の事だ。」
「自分で・・・何故そこ迄やるんですか?」
一輝がそう聞くと般若はフムと言ってこう言った。
「この顔に対して嫌悪感ではなく純粋な質問とは驚くな、まあ確かに
説明しなければ死んだときに言い訳になりかねんからな。」
そう言って・・・昔話をし始めた。
「お前がどの様な生まれか知らないが私の生まれ故郷のある地方は貧しく子供を売り買いしなければ生きていけない時世であった中で私達は食う事にも
困る者達だ、そう言った村では昔から食い扶持を減らすがために親が子を殺して
其の血肉で生きながらえると言う悪習が未だにある。私の村では
これを『子返し』と呼ばれていてな、私もその一人であった。」
「ですがあなたは生き延びた。」
「そうだな、だが死を免れたとしても『子返し』の対象になった時点で
私の人生は終わったも同然であった。それから先は私は野良の犬猫のように
住む場所などなく当てもなく放浪しながら孤狼の様に人や獣を殺して
其の血肉と金で生活しなければいけないと言う正に
私は獣同然の存在であったが・・・その噂を聞いた蒼紫様が訪ねてきて
こう言ってくれたのだ。」
『お前がバケモノか?その山中で鍛え上げられた脚力とその攻撃力、
俺の下で鍛えてみないか?そして俺がお前を育ててやる。』
「最初そう言ってくれたが当時の私は人など信じずに信じられないだろうと
思うが蒼紫様に弓引いたのだ、そして敗れて気を失った私を蒼紫様は
看病してくれたどころか温かい食事を出してくれた。・・・嬉しかった。」
そう言いながら般若は涙を流してこう続けた。
「こんな人から堕ちた狼の様な私を蒼紫様は温かく出迎えてくれた、
御庭番衆の方々も私を家族の様に・・・一人の人間として出迎えてくれたのだ、
あの時私の中にある人としての心を蒼紫様は蘇らせてくれたのだ。・・・
だからこそ!!!」
そう言って般若は腕から鉤爪を展開してこう続けた。
「こんな孤狼と化した私を一流の隠密に育て、江戸城御庭番衆と言う生きがいと同胞を私に与えてくださった蒼紫様のお役になれると言うのならば顔も命も
私にとっては無用の長物!私は全てを掛けて蒼紫様の為に戦うと
そう決めたのだ!」
そう言うと般若は一輝に向けて攻撃するため二・・・走り出したのだ。
「狂信、彼にとって蒼紫と言う存在は神と同等だったのでしょうね。」
「狂信・・・それは拙者も同じですよ。」
「え?」
「拙者も師匠によって助かった身、この力は全て師匠から教わり
そして己が意志で使っている物。ですけど拙者にとって師匠は全てを
与えてくださった神様のような存在、そういう意味に於いてだと拙者も
般若と同じく狂信者です。」
一輝は自嘲しながら炎に薪をくべていると・・・カナタが一輝に向けて
こう言った。
「其れは違います!」
「?」
「一輝君は何というかその・・・言葉では言い表せれないんですけど貴方の
お師匠さんから教わったその教えは命をかけて尚且つ自分の心を正直に
伝えていると私はそう思っていますので決して貴方は只々その人を崇拝して
崇めているのではなく憧れであると同時に超えるべき壁と思っている
節があったので貴方のは狂信ではなく憧れだと私はそう思っています。」
カナタがそう言ってニコリとしていると一輝はこう呟いた。
「・・・ありがとうございます。」
「?何か言いましたか??」
「いや何も?そして拙者らはまたもや戦ったのだ。」
般若との戦いは死闘である。
鉤爪によるリーチが長くなったことから服に傷がつくことが増えてしまい
血が出まくっている中で一輝は般若に向けてこう聞いた。
「般若!アンタは高荷さんの過去を知っている筈なのに
どうしてこんな事を!?貴方も孤独を知っている筈なのにどうして!!」
「痴れた事ヨ!蒼紫様が最強となるにその様な粗末な事気にしている
余裕などないわ!!」
そう言いながら般若は天井まで高く飛んで頭上から攻撃しようとすると・・・
一輝は自身が持っている・・・鞘に見立てた木刀を抜いてこう言った。
「同じ境遇を知っているならどうして高荷さんを気遣おうと・・・
貴方の師匠の様に手を携えようとしないんだーーーーー!!」
そう言った瞬間に一輝の中にある・・・魔力がまるで爆発したかのように
高まって木刀で鉤爪を・・・破壊したのだ。
「何!?」
「ウォォォォォォォォ!!」
飛天御剣流 双龍閃
そして般若を叩き落すと般若は一輝に向けてこう言った。
「この程度で・・・苦労するか・・・蒼紫様には・・・敵わないな・・・
ハハハ。」
そう言って笑いながら失神する般若に対して一輝はこう呟いた。
「師匠は・・・勝ちます・・・絶対に・・・・!!」
そう言いながら一輝は・・・倒れた。
これが正史ならば『一刀修羅』と呼ばれる技にいつの間にか使っていた事に
気づかないまま。
そして語り終わりて。