やはり俺が鬼殺隊士なのはまちがっている。   作:辻谷戒斗

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『やはり俺が鬼殺隊士なのはまちがっている。』第二話になります。
それでは、今回もよろしくおねがいします。


第二話 最終選別

 俺が煉獄さんのところに引き取られてから、約一年半の歳月が流れた。

 この一年半で、俺は様々なことを学んだ。

 鬼のこと、鬼殺隊のこと、剣術のこと、呼吸のこと……。

 本当に大変だった。何度も、何度も挫けそうになったほどだ。

 ……っていうか多分、煉獄さんが厳しすぎるんだよな……。他の所がどんな感じなのか知らんけど。

 何度も死ぬかと思ったもん。本当に。現に俺以外の煉獄さんに弟子入りした人たちは、あまりの厳しさに逃げ出して行ったし。

 だが、そのおかげで急速に成長することが出来た。

 煉獄さん曰く、『それは君の才能故だ!』らしいが、絶対にそんなことはない。俺の才能など、あってもたかがしれているだろう。

 呼吸法も教えてもらった。俺が教わったのは、煉獄さんが使用している炎の呼吸だ。

 本音を言うと、名前を聞いた時に俺にこの呼吸が合うとは思えなかったが、教わってから使ってみると意外としっくりきた。これもまた煉獄さん曰く、『うむ!比企谷には炎の呼吸の適性があるようだな!もっとも、色変わりの刀を使ってみなければ分からんが!』らしい。

 だが、”炎の呼吸 奥義 玖ノ型 煉獄”だけは何度やってもうまく出来ない。

 この一年でどうにか形にはなったが、完成には遠く及ばないのだ。

 一度煉獄さんの”炎の呼吸 奥義 玖ノ型 煉獄”を見せてもらったが、格が違う。俺にできるとは到底思えないものだった。

 

 そしてそんな俺は今日も、煉獄さんの屋敷で千寿郎と共に木刀を振っている。

 煉獄さんは昨日から任務に行っていて、この屋敷にはいない。

 ここにいるのは煉獄さんの父である槇寿郎さんと、煉獄さんの弟である千寿郎だけだ。

 ……まぁ、槇寿郎さんとは一度か二度、顔を合わせたくらいで全く話したことがないのだが……。

 そんなことを考えながら剣を振っていると、背後に人の気配を感じた。

 振り返ってみると、任務から返って来た煉獄さんがいた。

 

「任務ご苦労さまです。師範」

 

「え?あ!お疲れさまです!兄上!」

 

「うむ!只今戻った!しかし、よく気付いたな比企谷!やはり君は視線に敏感なようだ!この才能は必ず役に立つだろう!」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「そこでだ!比企谷!」

 

「は、はい。何でしょうか、師範」

 

「君に最終選別へ行く許可を与える!絶対に生き残り、鬼殺隊の一員となって帰ってくるのだ!」

 

「……は?」

 

 

******

 

 

 俺は今、藤襲山にある周りに藤の花が咲き誇っている道を歩いている。

 急に最終選別へ行く許可が出たのは驚いたが、ここまでくれば自分にできることをするだけだ。

 しばらく歩いて階段をのぼると開けた場所に出た。

 そこには、多くの剣士がいて最終選別の開始を待っていた。

 その剣士の中には少女もいる。特に目を引いたのは長めの黒髪で顔を少し上に向けている少女だ。

 彼女は藤の花を後ろに凛と佇んでいて、その光景はまるで一枚の絵画のようだった。

 ……み、見惚れてなんかないから……。いや本当に。

 そんなことを考えていると、小さな子どもが二人現れ、同時に口を開いた。

 

「「皆さま。今宵は最終選別にお集まりくださってありがとうございます」」

 

「この藤襲山には、鬼殺の剣士様方が生け捕りにした鬼が閉じ込めてあり、外に出ることはできません」

 

「山の麓から中腹にかけて鬼共が嫌う藤の花が一年中、狂い咲いているからでございます」

 

「しかしここから先には藤の花が咲いておりませんから鬼共がおります」

 

「この中で七日間生き抜く。それが最終選別の合格条件でございます」

 

「「では、行ってらっしゃいませ」」

 

 ……ついに、この時がきた。

 ……覚悟を決めろ。鬼とはまだ戦ったことがないが、訓練通りやればいいんだ。煉獄さんより強い鬼なんて、そうそういない。大丈夫だ。

 ……流石に比べる相手が悪すぎるか……。

 周りの剣士たちがどんどんと最終選別の舞台へと向かっていく。

 俺もまた、その剣士たちと同様に舞台に向かって一歩を踏み出した。

 

 

******

 

 

 足を動かして、林の中を駆け抜ける。

 とにかく東だ。東へ向かえ。ここで生き残るにはそれが最善だ。

 鬼は太陽が出たら動けなくなる。なら太陽がでる東にいたほうがいいはずだ。

 ……七日間。この鬼の巣窟で、七日間生き残る。

 ……落ち着け。あの厳しい鍛錬を乗り越えてここにいるんだ。大丈夫。絶対生き残れる。

 

 ……っ!視線に悪意!

 いる……!近くに鬼が……!

 俺は足を一気に止め、日輪刀を抜いて周りを伺う。

 この視線の数……二……いや、三か……?どこだ……?

 ……右か!

 

「グアアアアア!!」

 

「っ!」

 

 飛び出してきた鬼の攻撃を、日輪刀で防ぐ。

 それでも鬼の一撃に耐えきれず、後ろに飛ばされてしまう。

 そしてその飛ばされた先でも、視線と悪意を感じた。

 俺はとっさに後ろを向いて、二体目の鬼の攻撃を受け止め、反撃で鬼の腕を切る。

 

「ギャアアアアア!!くそっ!切りやがったな俺の腕をおおおお!」

 

「おい!邪魔すんじゃねえ!こいつは俺の獲物だ!」

 

「ああ!?うるせえな!こんなもん取ったもん勝ちだろうが!」

 

 そういう間に、俺が切った鬼の腕はどんどん再生していく。

 そして、腕が完全に再生しきった瞬間、鬼たちは同時にこっちに向かって走ってきた。

 

「ギャハハハハ!俺がいただきだあ!」

 

「馬鹿言え!俺だあ!」

 

「……どっちでもねえよ」

 

 俺は向かってくる鬼たちに向かって日輪刀を構える。

 ……呼吸を整えろ。集中しろ。

 

”全集中 炎の呼吸 壱ノ型 不知火”

 

 俺は”全集中 炎の呼吸 壱ノ型 不知火”を使って自ら鬼に近づき、こちらに向かって来ていた鬼たちの頸を切った。

 ”全集中 炎の呼吸 壱ノ型 不知火”は相手に近づいて切る、炎の呼吸の基本の型だ。

 頸を切られた鬼たちは、一瞬何が起こったか分からなかったようで激しく動揺していた。

 そして頸を切られたことを認識すると悲鳴をあげて崩れ去っていった。

 

「もらったあ!!馬鹿な奴らだ!俺みたいに隠れて隙きができた時に襲えばよかったのによお!!」

 

 ……ああ。お前がいるのも分かってるよ。背後の……上だろう。

 俺はその声と視線が感じる方に振り向き、少し体をずらして側面に向かって技を繰り出す。

 

”全集中 炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天”

 

 俺の背後の方から飛んできた鬼の頸を、横からこの技で切る。

 いくら鬼といえども、空中で方向転換をすることは出来ない。できるとしても、異能持ちぐらいだろう。

 なら飛んできた鬼の頸を切るには、その横から刀を下から上、もしくは上から下に振り抜けばいい。

 もっとも、素早く横に動き、技を繰り出さなければいけないが、来る場所が分かっていれば、そこまで難しくはない。

 この鬼もまた、先程の鬼たちと同じように崩れ去っていった。

 

「ふう……」

 

 ……取り敢えず、これでもう近くに視線と悪意は感じなくなった。目視でも、鬼を確認出来ない。

 俺は刀を鞘に戻し、また東に向かって走り出す。

 ……それにしても、他の剣士を一切見ないな……。皆は東に向かってないのか?

 ……いや、人のことを気にしている場合じゃない。ここで生き残るためにも、自分のこと以外は考えるな。

 

「っ――!!」

 

 何だこのとてつもない悪意は!今までの鬼とはわけが違う!なぜここまでの悪意を持った鬼がここにいるんだ!?

 前方から、この悪意が流れてきている。迂回すべきか……?

 ……いや、それは早計だ。どのような鬼なのか確認してからだ。

 異能持ちの鬼なら、迂回しても気づかれる可能性がある。

 木の陰に隠れ、その悪意がある方を見る。

 

「何だべこの鬼!?こんな鬼がいるなんて、聞いてないべ!」

 

「本当だよ!なんでこんな鬼が!」

 

「こんなんどうしろって言うんだよ!助けてくれ隼人くん!」

 

「あ、ああ!待ってろ!絶対に俺が倒すからな!」

 

 そこにいたのは、四人の少年の剣士と、手だらけの異形の鬼だった。

 おいおい……なんであんな鬼がここにいるんだ?あんなもん、そう簡単に勝てないぞ。

 そしてその、倒すと言った少年が残りの三人の少年を助けるために、三人に迫っていた手たちに向かって技を繰り出した。

 

”全集中 風の呼吸 弐ノ型 爪々・科戸風”

 

 刀から放たれた四つの斬撃が、三人に迫っていた手すべてを切る。

 ……風の呼吸か。だが、そこまでの速さも、技術も感じない。まだ未成熟と言ったところだろうな。合っているのかどうかも怪しい。

 ……まぁ、俺も人のこと言えないけど。”炎の呼吸 奥義 玖ノ型 煉獄”はまだ完成してないし。

 

「皆!俺の後ろに!」

 

「助かるわ〜」

 

 ……あの三人はこの試験を軽く見ているのか?自分の力で生き残らなきゃ意味がないだろうが。

 たとえ生き残ったとしても初めての任務で死ぬだろ。まぁ任務に行く気がないなら別だが。

 そしてあの隼人とか呼ばれてた奴も七日間三人も守りきれるわけがない。

 そんな間にも多くの手が彼らに迫る。

 また、隼人というやつが技を繰り出した。

 

”全集中 風の呼吸 肆ノ型 昇上砂塵嵐”

 

 彼はこの技で迫ってきていた手を切り刻んだ。

 すると、彼らの後ろの地面二箇所が少し盛り上がった。そして、そこから手が出てきた。

 後ろにいた三人は隼人とか言うやつに任せきりだったので、刀を直していた。

 俺はとっさに刀を抜き、技を繰り出す。

 

”全集中 炎の呼吸 壱ノ型 不知火”

 

 地面から出てきた手をこの技で近づいて切る。ただ俺が切れたのは一箇所だけだ。もう一箇所は……。

 

”全集中 水の呼吸 肆ノ型 打ち潮”

 

 もう一箇所の手が切られる。切った人物は、あの時目を引いていた少女だった。

 

「……お前ら、刀ぐらい抜いとけ。」

 

「本当にね。試験だということを分かっているのかしら?」

 

「あ、ああ……」

 

「悪い……」

 

「助かった……」

 

「……ありがとう。君のおかげで助かったよ。雪乃ちゃんもありがとう」

 

「……別に助けたわけじゃない」

 

「この男と同感ね。それより雪乃ちゃんと呼ばないで葉山くん。虫酸が走るわ」

 

「……ごめん。雪ノ下さん」

 

「……何の話をしているのか知らんが、来るぞ」

 

 目の前からたくさんの手が迫ってきている。俺と少女は左右にずれて、手を分散した。そして各々の場所で、各々の技を繰り出す。

 

”全集中 炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり”

 

”全集中 水の呼吸 陸ノ型 ねじれ渦”

 

”全集中 風の呼吸 参ノ型 晴嵐風樹”

 

 各々の技で手を切るが、手は切っても再生してしまう。このままでは埒が明かない。

 ……どうする。どうするのが最適解だ?ここでこいつを倒すために戦うのは最適じゃない。ここで体力を持っていかれたら、残りの七日間がきつくなる。逃げるべきだ。

 じゃあどう逃げる?全員散り散りに逃げたほうがいいだろう。だが、誰かはこいつの背後に逃げたほうがいい。逃げるのにも空きが必要だ。

 ……よし。ここは……。

 俺は作戦を決め、手を切りながら彼らのところに戻る。

 少女も彼らの方に向かってきているようだ。

 全員が近くまで来た時、俺は口を開いた。

 

「作戦がある。だが、余裕はないから手短に話すぞ。まず、手を多く切れたらお前ら五人が散り散りに逃げて鬼の注意をそちらに向ける。その後手がお前らに向いてすきができた時すぐに俺が近づき鬼の一番大きい右腕を根本から切って鬼の背後に行ってそのまま逃げる。どうだ?」

 

「だ、だがそれだと君が一番危険に……」

 

「そんなことねえよ。すきができてるわけだし、背後に回れればそこまで危険はない」

 

「……注意を引く囮に五人もいらないでしょう。私が左腕を切るわ。これであなたの危険も少し軽減されるでしょう?」

 

「……いいのか?」

 

「問題ないわ」

 

「……分かった」

 

「雪ノ下さんまで……。彼はともかく雪ノ下さんは……」

 

「いい作戦じゃん!とにかく、俺らにはあんま危険ないんだよな!?」

 

「……ああ。そうだな」

 

「よっしゃあ!なら任せろ!隼人くんもそれでいいよな!」

 

「……ああ。分かったよ」

 

「よし。じゃあ、俺が合図を出したら頼む」

 

 手がまた迫ってくる。俺はその手を根こそぎ切るために大きく振りかぶって技を繰り出す。

 少女もまた、俺とは少し左側にずれた場所で手を切るために技を繰り出した。

 

”全集中 炎の呼吸 伍ノ型 炎虎”

 

”全集中 水の呼吸 捌ノ型 滝壷”

 

 俺と少女の技によって、手の量が一気に減る。ここだ。

 

「今だ!」

 

 俺の合図で四人が散らばる。鬼は再生した手を、逃げた四人にそれぞれ向けて放つ。

 この瞬間に俺と少女が一気に駆け出す。それに気づいた鬼はすぐに残った手で応戦してくるが、この程度では俺を止めることは出来ない。

 俺と少女は向かってきた手を切りながら進み、飛んだ。そしてそれぞれ一番大きい左右の腕の根本に技を叩き込む。

 

”全集中 炎の呼吸 参ノ型 気炎万象”

 

”全集中 水の呼吸 弐ノ型 水車”

 

 俺と少女はそれぞれの技で腕の根本を切って、そのまま鬼の背後に着地する。

 そして、そのままの方向に向かって走り出した。この方向は東だ。当初の目的の方向に戻ったな。

 後ろから悪意、殺気を感じた。振り返ると先程の鬼の手が迫ってきていた。どうやら、まだ手が届いてしまう範囲にいたようだ。

 少女もそれに気付いたようで、振り返って技の準備をしていた。

 俺もまた、技を繰り出す準備をする。

 

”全集中 炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり”

 

”全集中 水の呼吸 壱ノ型 水面斬り”

 

 俺たちは技で手を切り、また走り出す。

 しばらく走ると、悪意と殺気、視線を感じなくなった。

 

「……どうやら撒いたみたいね」

 

「そうみたいだな……」

 

「……このあたりで別れましょう。一緒にいてもお互い邪魔になるかもしれないから」

 

「……そうだな。そうしよう」

 

「……生きていたら、また会いましょう」

 

「……おう。じゃあな」

 

 俺と彼女はそう話し合った後、俺は右斜め方向へ、彼女は左斜め方向へとそれぞれ駆け出した。

 




 すみません……。『やはり俺がもう一つの現実で戦うのはまちがっている。』を投稿する予定だったのですが、思った以上にこちらの執筆が進んだので先に投稿させていただきました。
 個人的に、この作品書きやすいんですよね……。

 八幡は炎の呼吸を使うことになりました。
 ……皆さんの言いたいことはわかります。八幡ってどう考えても炎のイメージじゃないですよね……。
 しかし、これは私の考えですが、八幡は心に小さくても確かに炎を宿していると思うんです。誰かを包み込むような、優しい炎を。
 あくまで個人的な意見ですので、このあたりは気にしないでいただけると嬉しいです。

 ヒロインですが、雪ノ下雪乃の予定です。
 胡蝶しのぶも考えたのですが、個人的にこうしたいと思いましたのでこうさせていただきました。
 雪乃の使用する呼吸は水の呼吸です。
 ちなみに葉山は風の呼吸となります。

 そして、この最終選別は炭治郎と同じではありません。炭治郎よりも一年前の試験です。つまり、八幡は炭治郎の先輩になるわけですね。

 ここで、大正コソコソ噂話。
 葉山と雪ノ下は幼馴染だそうですが、呼吸も違いますので育ても違うそうですよ。
 そしてこの二人の確執は一体……?

 そしてこれは全く関係ないことなのですが、オリジナル小説を新たに連載し始めました!
 タイトルは、『聖と邪の竜機戦争』です。すこしでも気になった方は、下にリンクをはりますのでぜひご一読ください!

 小説家になろうリンク
 https://ncode.syosetu.com/n9691go/

 カクヨムリンク
 https://kakuyomu.jp/works/1177354054890905587

 ノベルアップ+リンク
 https://novelup.plus/story/954880000

 アルファポリスリンク
 https://www.alphapolis.co.jp/novel/860644940/876355238

 それでは、ここまで読んでくださりありがとうございました!また次話、または次の作品にてお会いしましょう!
 ここまでのお相手は、辻谷戒斗でした!
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