In the Fate/GO   作:7743

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part1

カルデアの廊下をマシュと歩いているうちにわかったことがいくつかある。

 

「おっ、テルオ!こっちの世界に来れたんだな。案内…はマシュがするか。今どこに向かってんだ?」

 

「えっと…どちら様で?」

 

まず、カルデアの職員だと思われる人が普通にいること(今話しかけてきたのはムニエルさんらしい)。

 

次に、サーヴァントだけでなく職員達もオレの件は把握済み。

 

まぁ、確かに魂の物質化なんて大掛かりになりそうなこと、流石のダヴィンチでも一人じゃ無理だったというわけだ。

 

それとオレの私生活モニタリングのために使った聖杯も了承済み…どころか一緒になって見てたという。

 

職員やサーヴァント全員が一斉に見た訳じゃないらしいが大体の人がオレの人となりを理解し、過ごしやすい環境を用意してくれたらしい。

 

「ま、どうなってるかは自分の目で確かめてくれよな!後で俺の部屋にも来いよー?とっておき見せてやるから」

 

そう言い残して

ムニエルさんは何処かへ行ってしまった。

 

…あ。

そういえば行く場所決めずに歩いてきたけど、何処に向かってるんだろ。

 

チラッとマシュの方見る。

アイコンタクトで伝わるだろうか。

 

「…はっ。すみません先輩。私としたことが、先輩と共にある事に満たされ過ぎて、肝心の行き先を決めていませんでした!」

 

伝わった。

絆がMAXなだけあってアイコンタクトだけで意識疎通が可能になってるのか。すごいぞ。

 

で、どうする?何処に行く?

 

「…ど、どうしましょうか…私、先輩と居られれば幸せなので…」

 

「マシュはかわいいなぁ!」

 

「わわっ、先輩!?」

 

よーしよしよしよし!

マシュの頭を両手で包んでわしゃわしゃと撫でた。

 

髪は引っ掛かったりもせずサラサラと手から流れてる。しっかりお手入れしているんだねぇ…。

 

フワッとシャンプーのいい香りが鼻に届く。

…いい匂い。

 

そこはかとなくリンゴの香りがする。

…少しお腹減ってきた。

 

「もぅ…いきなりどうしたんですか先輩…。嬉しかったですけどっ」

 

ぷくっ と頬を膨らませたマシュ。

かわいい。怒りマシュと言った感じだろうか。

 

「ごめんな〜」

 

「口では謝ってても手が止まってないですよ!?」

 

「ごめんごめん」

 

「うぅ〜っ!」

 

かわいい。頬を膨らませたままなのでまるでリスのようだ。

 

でもやりすぎも良くないのでこのくらいでやめておく。オレはパッ と手を離した。

 

「あっ…」

 

マシュは名残惜しそうな声を出したが

 

「で、では先輩。まずは食堂に行ってみましょう!お腹が少し減っているんですよね?」

 

すぐに切り替えて話題を振ってきた。

ちょうど小腹が空いてきたのでオレは素直に頷きマシュの後に続く。

 

…と、急にマシュが止まって裏拳でも放つかのように手を差し伸べてきた。

 

「…先輩っ!手を!」

 

「戦闘時みたいな張り切り方!」

 

撫でられた時からペースが乱れたのか、少し興奮気味で様子がおかしいが、これはこれで良い。

 

衝撃的とかビックリ、というわけでもなく。

楽しい。自然と口角が上がる。

 

「改めて案内よろしくだ」

 

「はいっ!」

 

オレはマシュの手を取って再び歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

【食堂】

 

「お邪魔しまーす…」

 

「先輩。もっと堂々としていいんですよ?」

 

「いや、けどな…」

 

今更。本当に今更だが、オレは流されやすい体質なので…強引に酒盛りに参加させられたらどうしようか不安になってきてな…。

 

ザッ、と食堂を見回す。

 

「現在食堂には…超人オリオンさんと水着姿のカーミラさん…厨房にはブーディカさんがいらっしゃるようですね」

 

「状況的にオリオンが

 カーミラを口説いている感じか」

 

「ああっ!オリオンさんの額にカードが直撃しました!」

 

「…オリオンの方がレベル高いし大丈夫だ。多分」

 

因みに超人オリオンは50。

水着カーミラは40だ。

 

どちらも再臨はしていない。

 

アーチャーの種火もライダーの種火も足りないんだよ…エミヤとマンドリカルドを直前に育ててたせいで。

 

「…アルテミスって確かカルデアにいたよな?レベルは1だけど」

 

「いますね…」

 

…レベルが足りていないから開幕宝具されるかもしれないなこれ。

 

とりあえずオリオンは自業自得って事で。オレ達はその状況を見なかった事にして厨房に向かった。

 

「いらっしゃ…あっ、マスターにマシュ!」

 

「こんにちはブーディカさん。

 昼食をいただきに来ました」

 

ブーディカはニコニコしながらオリオンとカーミラの様子を見ていたようで、こちらに気付いていなかったらしい。

 

「はじめまして…?」

 

「んもぅ何言ってるの?私たち、長い付き合いなんだから…はじめましてじゃなくて」

 

「こんにちは…だな」

 

「正解!ちゃんと敬語も外せて偉いね。お姉さん撫でてあげる」

 

ブーディカの絆レベルは8。

マシュと併用して運用していたことが多くそれなりに絆は高い。

 

そうでなくとも

お気に入りのサーヴァントの一人だ。

 

「あの、ブーディカ。

 そろそろ注文したいんだが…」

 

「あららごめん。

 名残惜しいけど職務は果たさないとね」

 

いやサーヴァントの仕事は厨房で働くことじゃないと思うけど…ま、いいか。

 

オレは無難にカツ丼を注文した。

マシュは…。

 

「ネギトロ丼ネギ多めでうずらの卵(仮)と豆板醤のセットでお願いします」

 

「はーい!ちょっと待っててね」

 

同じ丼ものを頼んだようだ。注文が終わったのでそのままカウンター席に着く。

 

…それにしても、ブーディカの料理が食べられるとはなぁ…。

 

「先輩、ソワソワしてますね」

 

「うっ、バレた。そんなに分かり易かったか」

 

「はい。

 私は先輩のことならなんでもわかりますので!」

 

「へぇー…」

 

「例えば…先輩は甘いものより辛いものがお好きですよね」

 

「おぉ、よくわかってる。あぁ、でも…」

 

 

「「辛すぎるのは食べられない」」

 

 

「…ですよね?」

 

「見事にハモったな…」

 

すごいぞ後輩。セリフを被せてくるなんて…。

まるで漫画や映画のワンシーンみたいだ。

 

オレ実はこういうの大好物なのだがその辺も加味して会話してるのだろうか。

 

「はいお待ちどうさま!ネギトロ丼とカツ丼ね」

 

「「はーい!」」

 

「…ふふっ、本当に仲良いんだから。

 若いっていいわねー」

 

ニヤニヤとこちらを見つめるブーディカ。

どうやら標的はオリオンとカーミラからオレ達に移ったようだ。

 

「い、いただきまーす!」

 

変に突っつかれて

ボロ出す前に食事に手を出す事にした。

 

熱々のカツ一切れを口に入れ、半分噛みちぎる。

ハフハフと熱を外に逃がしながら咀嚼し味わう。

 

…うまい。

 

ゴクッ と嚥下して、食べかけのカツを口に入れ今度はカツの下敷きになって少し味のついたご飯に箸を差し込んで下からすぐあげ、口に運ぶ。

 

カツが口の中でご飯と再会。その喜びを表すかのように旨味が口内を満たしていく。

 

美味い。

 

「いただきます」

 

マシュもオレと同じく合掌してからネギトロ丼に手をつけはじめた。

 

うずらの卵を割ってネギトロ丼の頂上に落とした後、瓶詰めされた豆板醤をスプーンで掬い、トロの山をぐるっと一周させる形でかけた。

 

ここでようやく箸を手に取り、オレとは違って、ご飯達を箸の上に乗せるのではなくしっかりと挟んで口に運んでいる。

 

日本人のオレより

箸の使い方上手いんじゃないだろうか。

 

「〜〜っ美味しいでしゅ…」

 

ぱぁっ と花が咲くような笑顔だ。

うんうんと頷きながらオレも食事に戻る。

特に撫でたりはしない。

 

ご飯食べてる時は静かに。

たとえ友達や親しい間柄でも食事中は余計なチョッカイはいらないのだ。

 

マシュやブーディカもそれを理解しているのか、話しかけてくることはなかった。

 

 

 

 

「ふぅ〜美味しかった。ご馳走様でした!」

 

「ご馳走様でした。

 ブーディカさん、美味しかったですよ!」

 

「お粗末様でした。そう言ってもらえると作りがいがあってこっちもうれしくなっちゃうな」

 

完食。途中七味唐辛子で

味変しながらも楽しくいただけました。

 

「あっ、先輩お口に七味唐辛子が…」

 

「ぅん?」

 

セルフサービスの温かいお茶で一息ついていると、マシュが突然ハンカチでオレの口を拭いて来た。

 

どうも唐辛子が唇についていたらしい。

 

「あぁ、ごめん。ありがとう」

 

「いえ。これしきのこと、

 後輩として当然のことですから!」

 

そしてマシュは拭き取った汚れのついたハンカチを大事そうに懐にしまう。

 

いや、でも流石に申し訳ないかな。

 

 

「そのままじゃ汚い。オレが洗って返すよ」

「いえ結構です」

 

 

即答だった。

アニメだったら処刑用BGMが流れていそうなほど真剣かつスゴ味がある目をしている。

 

「あ…そう」

 

それを何に使うかはわからない。けれど、不用意に触れちゃならない物だと理解できた。

 

「うふふ…先輩の唇…」

 

なんか聞こえた。

……いや聞こえてない。

 

オレは何も聞いていない。

そういう事にしよう。

 

「あ、そういえば支払い…」

 

こういう時は話題を変えるに限る。オレはごく自然な流れで財布を取り出して…ふと考えた。

 

(支払いって円…な訳ないよな)

 

無難に考えればQPだろうけど。

オレは今、日本円しか持っていない。

 

ので、結果的に…。

 

「マシュ。

 オレ今持ってないから建て替えてくれないか」

 

マシュに奢ってもらう事になる。

情さけないが仕方ないのだ。

 

「いいですよ。先輩の頼みなら昼食くらいは奢りますとも」

 

「初めて会った時も似たようなこと言ってたな」

 

「先輩が居眠りをして所長に叩き出されてしまった時のことですね。懐かしいです」

 

もう遠い記憶になってしまったけれど。

色鮮やかな光景として心の中に残っている。

 

フォウ君じゃないが、

まさしく『美しいものを見た』のだ。

 

「ありがとな」

 

「いえ!…そういえばそうですね、先輩にお金…QPを渡すのを忘れていました。明日ダヴィンチちゃんのところに請求しに行きましょう!」

 

「えー?明日もマシュと行動するの?お姉さんもマスターと過ごしたいなー」

 

「む、そうですね…いくら私が先輩の正式サーヴァントとはいえ皆さんのマスターもやっていますし…独占はよくないですね…」

 

…ブーディカの一言で何やらブツブツと呟きはじめたマシュ。

 

ダヴィンチが言うにはここはイベント時空らしいので一応ノルマみたいなのもあるのかもしれない。

 

もしかしてそれも含めて思考を回しているのかな。

 

「ねぇ…マスター」

 

「ん?どしたのブーディカ」

 

そんなマシュを眺めているとブーディカが話しかけてきた。小声で。

 

小声で話すってことは何か大っぴらには

言えない事の可能性もあるのでこちらも合わせて声を小さくして返事をした。

 

「これ、私の部屋のキー…よかったら遊びにきてね?…夜でもいいよ?」

 

「………」

 

手渡されたのは一枚のカードキー。

多分、ブーディカの部屋のロック解除に使える品。

 

そして夜でも遊びに来てもいい…と言うのはつまり。

とどのつまり…そう言う事だよな…!?

 

「赤くなっちゃって…かわいいね〜」

 

「ゔっ」

 

わしゃわしゃ撫でられた後、何事もなかったようにマシュから代金を受け取って厨房の奥へ消えていった。

 

「先輩、どうされました?」

 

「…いや、なんでもない」

 

……大人の女性って凄いなと思いましたとさ。

 

チャンチャン




え?この後本当に行ったのかって?
いくわけないでしょう彼童貞ですよ?
そもそも部屋の位置がわかりません。
…まぁ、その問題もマシュに地図のデータでももらえれば解決なんですけどね。
それでも行きませんけど。
童貞なので。
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