これは俺の(私の)新しい友人(繋がり)の物語   作:雨宮季弥99

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カイテンペ様。誤字報告ありがとうございます。


深くなる繋がり
第4話


 俺が時渡の力でロンドンに行ってから半月ぐらいが経った。俺はあれから変わらない日々を送っているが、ふとした瞬間に羽鳥の事を思い出してしまう。

 

(……羽鳥、今は何をしているんだろう?)

 

 確か年は15歳とか言ってたっけ。俺とそんなに変わらない歳だけど、学校はどうするんだろうか? あのエリアスって魔法使いもどこまで信用できるんだろうか……? どうしても気になる。

 

「おい夏目。最近ボーッとしてる事が多いけど、どうしたんだよ?」

 

「え? ……ああ、なんでもないよ西村」

 

 羽鳥の事を考えている俺に西村が声をかけてきた。そんなにボーッとしていただろうか?

 

「なんだよ、何でもないにしては妙にボーッとしてるぜ? なんだ、好きな女でもできたのか?」

 

「何!? 誰だよ、多軌さんか!? それとも別の人か!?」

 

 北本の言葉に反応した西村が更に詰め寄ってくるが、俺はそれを躱しながらも、彼女の事を考えずにはいられなかった。

 

「やれやれ、まったく、あの二人は……」

 

「おや、夏目様。お帰りなさい」

 

「お、帰ったか夏目」

 

 二人の追及を躱して帰ってきた俺を部屋で迎えたのは先生と時渡だった。

 

「時渡、来てたのか」

 

「はい。そろそろ羽鳥さんの元へ行きたいと考えているのではと思いまして」

 

「……よく知ってるな、そんなの」

 

 妖なのになんでそんなの知ってるんだろう。まぁ、ちょうど良かった。

 

「……そうだな、遊びに行ってもいいかもしれないな」

 

「かしこまりました。では……少し時間を置いてからのほうがよろしいでしょう。向こうはまだ夜中ですので」

 

 そう言えばイギリスとの時差は大体9時間ぐらいなんだっけな。けっこう面倒な時差だな、ちゃんと準備をしないと。

 

 

 

準備を整え、時間も確認した俺は時渡の力でエリアスさんの家の前に飛んだ。すると、家のからエリアスさんが出てきた所と鉢合わせした。

 

「ん? ……確か夏目……だったね。何の用かな?」

 

「突然お邪魔してすみません。羽鳥は元気にしていますか? 少し顔を見たいと思ったんですが」

 

 俺が聞くと、エリアスさんから微妙に……嫌な感じがしだした、なんだろう? 羽鳥に何かあったのか?

 

「悪いけど、チセは今体調を崩していてね。会わせるわけにはいかないんだ」

 

「あ、そうだったんですか。すみません、そんな時に来てしまって」

 

「そう言うわけだ。悪いけど今日は帰ってくれないか?」

 

「ええ、そうします。先生、時渡、かえろう……あれ?」

 

 二人のほうを向いたが、そこに先生の姿がなかった。

 

「夏目様。斑ならあそこに」

 

 時渡が指さした方向には、家の扉の中でシルキーさんに抱きしめられている先生の姿があった。いつの間に!?

 

「ぬううう……食い物で吾輩を釣るとは卑怯なぁあ」

 

「先生、何やってるんだよまったく……すみません、シルキーさん。羽鳥の体調が悪いとのことなので俺たちはこれで失礼を……」

 

「……」

 

 そう言って先生を離してもらおうとするが、シルキーさんはイヤイヤと首を振る。困ったな、どうしようか……。

 

「ん? ……チセのお見舞いにいくなら離すだと? アホウ! そんな事言ってないでさっさと離せ!」

 

「え? 羽鳥のお見舞い? でも……」

 

 妖同士だからなのか先生はシルキーさんが何を伝えたいのかわかるみたいだけど、どうしようか……。エリアスさんは俺が羽鳥に近づくのを嫌がってるみたいだけど……。

 

「えっと……羽鳥のお見舞いをしてもいいでしょうか?」

 

「……仕方ない。銀の君をいつまでも心配させるのも本位じゃないからね。でも、余計な事はしないでくれよ?」

 

 そう言うとエリアスさんは俺たちを置いて歩き出したから、俺は急いで後を追う。少ししてシルキーさんから解放された先生が時渡を背中に乗せて追いついてきた。

 

「時にエインズワース殿。羽鳥さんはどう言った状態なんでしょうか?」

 

「魔法を使ったときに魔力を使いすぎたんだ。今は森の中で休ませている。魔力が回復したら目を覚ますけど、それまでは様子見だね」

 

「なるほど……」

 

「魔法……ですか。本当に魔法使い……なんですね」

 

 魔法使いか。名取さん達のような祓い屋と違ってそれこそファンタジーに出てくるような事ができるみたいだけど、羽鳥は一体どんな魔法を使ったんだろうか?

 

「そうだよ。まだ信じられないのかい?」

 

「あ、いえ。なんと言うか……実感が沸かないというか」

 

「まぁ、無理に信じる必要はないよ」

 

 そう言うとエリアスさんは歩き続ける。なんだろう、なんか俺嫌われる事したかな?

 

「ふん、愛想のないやつだ。夏目、さっさと行くぞ」

 

「あ、ああ」

 

 先生に言われて俺は気を取り直してエリアスさんの後を追っていく。そのまま俺たちは森の中を進んでいき、やがて大きな朽ちた古木が目に移った。

 

(大きい……日本じゃ中々見られるものじゃないな)

 

 その古木の大きさに目を奪われている間にエリアスさんは歩き続け、そのまま古木の根の前で足を止めた。俺はそのときようやくそこに羽鳥が寝ているのに気づいた。

 

「羽鳥……」

 

 エリアスさんの後ろから彼女の寝顔を見てみるけど、普通に寝ているだけにしか見えないな。……にしても、鳥はわかるとしてこのモコモコした生き物はなんなんだろう? こっちの妖なのか?

 

 少しの間そうやって羽鳥を見続けていると、後ろからかすかに物音がした。エリアスさんもそれに気づいたのか、立ち上がって後ろを見る。俺も振り向くと、そこには見たことのない男性がいた。

 

「なんだサイモン。また来たのか?」

 

「心配ぐらいはさせてくれてもいいだろう? ……それより、そこの少年は誰なんだい? 君にこんな友人が居るとは聞いたことはないが」

 

「あ、初めまして。夏目貴志と言います」

 

 サイモンさんが怪訝そうな目で俺を見てきたので、俺は慌てて挨拶する。

 

「魔法で間違ってここまで飛んできた日本の少年だよ。まぁ友人ではないね、偶然知り合っただけさ」

 

「魔法? 君も、魔法使いなのかい?」

 

「いえ、夏目様は魔法使いではありません。私の力でここまで飛んできたのです」

 

「え!? うわっ! なんだこの丸い猫と……妖精? ……じゃないよな」

 

「む、なんだこいつは」

 

[うわ! 喋った!]

 

「こら、先生……すみません。えっと、俺達は……」

 

先生に驚くサイモンさんに謝りつつ、俺はここに来た経緯と羽鳥達と知り合った経緯を話す。すべて聞き終えたサイモンさんは驚いた表情のまま俺たちを見つめた。

 

「それはまた……凄いね。東洋の隣人たちについては詳しく知らなかったけど、そんな力を持ってるなんて」

 

「隣人?」

 

 聞きなれない言葉に首をかしげると、サイモンさんがこちらでは人ならざるものを隣人と呼ぶのだと説明してくれた。

 

「なるほど……こちらでは妖達の事をそう呼んでいるんですね」

 

 まさか妖がそんな風に呼ばれてるなんて。イギリスってこんな国だったのか。

 

「しかし、君は日本人なのにこちらの言葉がとても上手なんだね。あの国は英語が苦手だと聞いていたけど」

 

「え? 俺、日本語で話してますよ? サイモンさんが日本語上手なんじゃ……」

 

「んん?」

 

 互いの言葉に俺は困惑する。俺、正直英語は得意じゃないし、そんな話すなんて……。

 

「ああ。それは僕が魔術をかけておいたからだよ。言葉が通じないなんて不便で仕方ないだろ?」

 

「そうだったのかい。まぁ、確かに言葉が通じないと不便だからね」

 

「……そんな事までできるんですね」

 

 本当に、まるでお伽噺で出てくる魔法みたいだ。名取さん達が使うような妖達と戦うための術とは違う。それとも、俺が知らないだけなんだろうか?

 

 そんな風に思っていると、不意に森の中の空気が変わった。そして、誰かの声が聞こえる。その声に気付いたエリアスさん達も声の下方向を向く。そこに居たのは小人のような妖と、犬に手綱を引かれた馬。そしてその背に乗っている綺麗な女性だった。

 

「な……!?」

 

 突然現れた妖達。だけどなんだ? あの女性は単なる妖じゃない。かつて出会ってきた神達のような、そんな気配を感じる。

 

「夏目様、おとなしくしましょう。彼女はこのブリテンに住まう妖精達の女王。逆らえばどうなるか」

 

「……よく知ってるね。そう、彼女は妖精女王ティターニアだ」

 

 時渡とエリアスさんの言葉に俺は思わず体が強張る。それだけ強大な存在が、いったい何の用なんだ?

 

「ふふ。私を名前で呼ぶのはお前ぐらいよソーン」

 

「王はどこに?」

 

「はしゃいでうるさいから置いてきたわ。今日はお前とお前の雛の顔を見たくてね……あら?」

 

 エリアスさんと話していたティターニアが不意にサイモンさんに振り向く。そしていくつか話したと思うと、不意にサイモンさんの姿が掻き消えた。

 

「な……!?」

 

「ふむ。森の他の場所まで運ばれたようだな」

 

 驚く俺に先生が声をかけてくれた。危害を加えられたわけじゃないのか、良かった。

 

 安堵している俺の前にティターニアとエリアスさんが話をしだす。そうしているといつの間にかチセの隣に男性……ティターニアの夫であるというオベロンが姿を現し、チセを見下ろしていた。そこからさらにいくつかの話がされている間、俺達は完全に置いてきぼりだ。

 

「ところでソーン。彼は誰なのかしら?」

 

 そう思っていると不意にティターニアが俺のほうを向いてきた。

 

「……彼は日本から来た夏目だよ。チセのお見舞いに来ただけだ」

 

「あ……初めまして。夏目貴志と言います」

 

 突然声をかけられ戸惑いつつも挨拶を返すとティターニアとオベロンが俺に近づいてきてジロジロと俺を見てくる。な、なんなんだ?

 

「……君、不思議だねー。スレイベガとは違う。でも、同じかそれ以上の力を宿してる」

 

「それに、その懐から感じる物も強い力を持っているわね。およそ、人が使うには強過ぎる物ね。貴方、人間じゃないのかしら?」

 

 ティターニアの言葉に思わず俺は反射的に懐に入れている友人帳を庇う。

 

「……偉大なる王達よ。どうかその辺りで。この少年はまだ年端もいかぬ人の子です。王達のような偉大なる存在に声をかけられれば緊張もするというもの」

 

 時渡が声をかけると二人も少し後ろに下がって切れた。だけど、視線は相変わらず俺に向けられている。

 

「ふーん? 面白いね。君も、そこの猫も。強力な力を持っているのに、契約もしていないのに人間と一緒にいるのかい?」

 

「ふん。私はこやつと約束をしているから仕方なくだ」

 

「契約だけが私達を繋ぐ縁ではありませんからな」

 

「先生……時渡……」

 

 先生達の返答を聞いてもオベロン達は笑みを浮かべたままこちらを見ていたが、不意にオベロンがチセのほうに近寄った。

 

「うん、君達とももう少し話してみたいけど。まずは目的を果たそうか」

 

 そう言うとオベロンはチセに手をかざす。すると不意にオベロンの周りにまるで煙のような魔力が纏わりだし、それがチセに向けられた。すると、少ししてチセが目を覚まし、起き上がった。

 

「先生。あれは……?」

 

「単純に魔力を注ぎ込んだようだな。だが、相当な量だ。流石は王と呼ばれるだけある」

 

 先生が答えてくれている間、チセはオベロンの存在に戸惑っていたが、エリアスさんに声をかけられ彼のもとへ行く。そこで俺の事にも気づいたのかこちらを見てきた。

 

「な、夏目君!? な、なんで貴方も……!?」

 

「ああ。チセのお見舞いに来たんだけど……」

 

 俺がそこまで言うと、チセは嬉しそうな顔を浮かべたけど、次の瞬間顔を真っ赤にしてエリアスさんのマントの中へ隠れてしまった。

 

 それからエリアスさん達はいくらか話をしてたけど、どうもオベロンもティターニアも人間臭いなぁ。特にオベロンのほうは。

 

「……さて、今日は馬鹿もいるしそろそろお暇するわ。新しい魔法使いの雛と、とても興味深い人間にも会えたしね」

 

 そう言ってティターニアは馬に腰を掛ける。

 

「ねぇ、貴方……夏目と言ったわね。どこに住んでるのかしら?」

 

「えっと……日本に住んでいます。ここから遠く離れた島国です」

 

「ああ、あそこね。確かに遠いけど……よかったらまたこっちに来なさいな。貴方も歓迎するわよ」

 

 そう言うと、ティターニア達は去っていった。完全に去っていったのを確認してから、俺は大きく息を吐いた。

 

「……はぁ。疲れた」

 

「全くですね。ああ言った力のある存在は機嫌一つで何をするかわかりませんからね」

 

「ふん、軟弱な」

 

 先生はそう言うけど、多分あれは先生でも勝てないんじゃないのか? いや、そもそも戦いたくもないんだけど。

 

「さて、それで君達はこれからどうするんだい? チセへのお見舞いも済んだし、そろそろ帰るのかい? 僕としてはチセは病み上がりだから家でゆっくり休ませたいんだけど」

 

「あ……そうですね。それじゃぁ俺達はこれで……」

 

「ま、待って夏目君!」

 

 時渡に頼んで帰ろうとするとチセに呼び止められた。

 

「その……折角来てくれたんだから……お茶でも飲んで行ってほしいの」

 

「え? でも、羽鳥は病み上がりなんだし、今日はおとなしく寝てるほうが……」

 

「お、お願い……だから……」

 

 エリアスさんのマントの中から赤くなった顔だけ出しながら言ってくるチセの姿に俺は断りづらさを感じ、エリアスさんに視線を向ける。

 

「……エリアスさん、大丈夫ですか?」

 

「……仕方がないね。でも、チセの体調が悪化すると判断したら帰ってもらうよ」

 

「わかってます。羽鳥、それじゃぁ、お邪魔させてもらうよ」

 

「うん……ありがとう」

 

 こうして俺たちは森を出てエリアスさんの家に向かった。途中でサイモンさんと会い、軽く言葉を交わした後にサイモンさんも教会へ帰って行った。

 

 

 

 家に帰った私はシルキーが用意してくれていたクリスマスプディングを夏目君達と一緒に食べた。先生はシルキーに抱きしめられながらだったけど、料理自体は満足してたみたい。夏目君も美味しいって言ってた。ここに来てからエリアスとシルキー以外の人たちと一緒に食べた食事は、とても心地よくて、ついつい食べすぎた私は夏目君を見送った後に自室でベッドに倒れこむ羽目になった。

 

「うう……お腹苦しい……」

 

「病み上がりだっていうのに食べすぎるからだよ。まったく」

 

 ベッドに寝転がる私の頭上からエリアスの呆れた声が聞こえてきた。

 

「……でも、シルキーの料理おいしかったですし……夏目君にあんまり心配させるのも悪いんで……」

 

 病み上がりの私に気を遣わせるのも嫌で夏目君の前では元気に振る舞ってたけど、やっぱりまだ調子が良いとは言い切れない。

 

「……ねぇチセ。君にとって夏目はそんなに気にする存在なの?」

 

 不意にエリアスの声音が変わった。

 

「……どういう意味ですか?」

 

「言葉通りの意味だよ。夏目はこないだ会ったのが初めての他人だろ。なのに君はどうも彼のことを気にしすぎてる気がするんだ。なんでなんだい?」

 

「……それは……」

 

 なんだか今のエリアスは怖い。それが私の口を閉じさせてしまう。

 

「……まぁいいや。取り敢えず君はもう寝なさい。明日からは魔法使いとしての勉強を始めるしね。お休み、チセ」

 

 そう言うとエリアスは軽く私の頭を撫でて部屋から出て行った。

 

(……夏目君、また、来てくれるかな?)

 

 今度会う時は体調の良い時に。そして、できれば今度はもっと色々とお話しをしてみたい。そして、今度は寝間着じゃなくてちゃんとした服装でお話しした。そう思いつつ、私は眠りに落ちていった。

 

 

 

 

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