人は、生まれながらに平等じゃない。
これが齢4歳にして知った社会の現実。
ちょうどその頃、僕は、一人の少年と出会った。
その少年は、とても楽しそうに、笑っていた。
僕は、緑谷出久。
どこにでもいる"ヒーロー"にあこがれている少年。
その、始まりの物語。
緑谷出久:ファーストオリジン
〜そして赤髪は動き出す〜
◆
事の始まりは、中国軽慶市。
発光する赤子が生まれたというニュースだった。
以降、各地で超常が発見され、原因も判然としないまま時は流れる。
何時しか、超常は日常に、夢は現実に。
世界総人口の約8割が、何らかの特異体質である『個性』を宿す超人社会となった現在。
混乱渦巻く社会の中、嘗て誰もが夢見た職業が、脚光を浴びていた。
その職業こそ、
ヒーロー
誰もがあこがれる職業。
勿論、僕もあこがれている。
だが、一度、挫折しかけた。
◆
物心ついたときから、僕はとある動画ばかり見ていた。
それは、とあるヒーローの鮮烈なデビューだった。
とある大災害、彼は一人で多くの人を救い出した。
『もう大丈夫!! 何故って? 私が来た!!』
その名は、オールマイト。
今日、『平和の象徴』と呼ばれる、最高のヒーローである。
何時しか、あんなヒーローになりたい。
どんな人も笑顔で救ってしまうヒーローに。
『諦めたほうがいいね』
その願いは、早々に砕かれた。
人類総人口の8割が『個性』を持つこの社会で僕は、
無個性だった。
その現実は、ひどく高すぎる壁だった。
ヒーローにはなれないという、壁。
諦めたくなかった。
だが、誰も分かってくれなかった。
無個性だからと、馬鹿にされた。
親も、救いの手を出せなかった。
『ごめんね出久!! ごめんねぇ!! ごめんねぇ!!』
あぁ、違うんだ、違うんだお母さん……
あの時、僕が言ってほしかったのは……
◆
「うっ、グスッ、うぅ……」
その日も僕は、ボロボロだった。
理由は簡単。歯向かったから。
『没個性』といじめられる子を見捨てれなかった。
だけど、無理だった。
当たり前だ。没個性以前に僕は無個性。
そして相手は『爆破』という、強個性を持った幼馴染。
彼、かっちゃんは才能の塊、誰も勝てなかった。
そして僕は、またボロボロのまま家へ帰る。
母をまた悲しませる。
そうなるはずだった。
「すげぇーカッコイイな!! お前!!」
それは、泣いている僕の上から聞こえた。
見上げれば、滑り台の上に一人の少年が座っていた。
その髪は、まるで紅蓮のように紅い。
彼の放つ雰囲気は、同じ子供とは思えない。
だが、その表情は、誰よりも子供っぽかった。
◆◆
「で? なんで泣いてんだよ?」
「君さっきの見てたんじゃないの!?」
現在、僕とその少年はベンチに座って話していた。
「? 見てたけど泣く理由が分からねえ」
「……僕、個性がないんだ……」
何故か僕は話していた。誰にも吐かなかった、弱音を。
「……ヒーローにあこがれていた……だけど……みんな言うんだ……『無理だ』って……
個性がないと……夢を見るのも許されないのかな?」
「何いってんだ?! アハハハハ!!」
少年は笑っていた。彼はベンチから降り、腕を広げ語りだした。
「人が夢を見ちゃいけない!? そんなことあってたまるか!! そんな時代があるなら、その時代はクソだ!!」
「いいか!?
人の夢は!! 終わらねえ!!
そうだろ!?」
気がつけば、涙が溢れていた。
きっと、僕はひどい顔をしているのだろう。
だが、止まらなかった。
始めて、夢を肯定された気がしたから。
「! やっべ! そろそろ帰んねえと! じゃ!」
「え!? ちょ、まって!!」
聞きたかった、彼の口から。
僕でもなれるのかを……
「あ! そうだ!」
「なれるといいな!! 最高のヒーローに!!」
その日、僕の道は決まった。
「……あ、名前聞き忘れた……」
◆◆◆
「……ヒーローかぁ……いいな!!」
しかし、少年、緑谷出久は知らなかった。
自らが、一人の少年の道を決めたことを。
「じいちゃん!! 俺決めた!!」
これは、無個性の少年、緑谷出久の物語ではない……
「俺、ヒーローになる!!」
後に、『皇帝』と呼ばれるヒーローとなる少年、
皇シャンクスの物語である。