「…は?」
目の前にいる詩菜(仮)の発言に茫然としていた僕がやっと発した言葉が静寂を破った。
至極当たり前な反応だと思う、そりゃそうだ、気が付くと目の前に狐耳と尻尾を付けた巫女さんがいて、いきなり「私は貴方が可愛がっていた狐です。」なんて言ったのだ。
今の僕はさぞお間抜けな顔をしているのだろう、詩菜(仮)は相変わらず得意げな顔をしている胸に手を当て、「言ってやったり。」とでも言いたそうな見事なドヤ顔を決めている。
今にも「フフン♪」なんて言いs…
「フフン♪」
あ、言った。
それはともかく、何で彼女は自分が詩菜だなんて言ったのだろう…
「え…ちょ…どうしたの?」
こっちがあまりにも反応が薄かったのか心配そうに聞いてきた…
「え…ああ、ちょっと外の空気を吸って来て良い?頭の中を整理したいから…」
「え…あ…うん…」
僕は襖を開けて神社の境内に出る、僕はため息を付いて状況の整理を始める。
大体、何でこんなことになったんだ…、僕が事故ったからか…!?
いや、落ちつけ、幾らなんでも安直すぎる、じゃあ、何なんだ…
中々考えに整理がつかない…どうした物か…
…っと待て、もし彼女が僕を騙そうとしていたとして、彼女の言う事を信じてこのままずるずる行ったらありえない額のお金を要求されるのでは無いのか…?
その考えに至った僕はクラウチングスタートの耐性を取ると、自宅に向かって全力で疾走した。
丁度最初の角を曲がった時に詩奈の「え…あ!ちょっと~!!」と言う声が聞こえた。
走る、はしる。
後ろを振り返ること無く自宅を目指して全力疾走、何となく、本当に何となくだが、後ろを振り返るとあの巫女が僕の後ろを追いかけて来ている気がして後ろを振り向けない…いや、振り向こうとしたくない。
今後ろを振り向いたら絶対いる、振り向いたらオワリ…何がオワリなのかは解らなかった、解りたくなかった…
息が切れても気にせず走る。だんだんと自分の家が見えて来た。
僕は玄関の扉を吹き飛ばす程の勢いで扉を明け、叩きつけるようにそれを閉めると鍵・チェーンロックとドアの起こせる完全防犯の形態にして、やっと息を落ち着かせることが出来た。
「はぁ…はぁ…ふぅ…やっと着いた…」
僕はため息を付いてゆっくりと振り向き扉を背にした…
「全く…何だったんだ…あの巫女さん…新手の新興宗教か何かの勧誘だったのか…?」
全く、僕みたいな金を持ってそうにない高校生を狙ってどうするつもりだったんだ…?
嗚呼、今にもあの巫女さんの声が頭の中でリプレイされそうだ…
「本っ当、何なのよ。いきなり走って逃げるなんて…ちょっと酷すぎるんじゃないの!?」
居間に着いたところでそんな声が聞こえた…と同時に僕は思考が止まる、パソコンで言うフリーズを起こした。
「全く、ろくに話も聞かないなんて。"人の話は最後まで聞く物"だよ、遥人君♪」
思考が回復した僕はとてつもない恐怖心に取り付かれていた。
それもその筈だ…なぜなら…
"先ほど撒いた…つまりは逃げていた対象である狐耳の巫女が僕が帰るより早く僕の家に着いていて、僕の家にあった湯呑でのんびりとお茶を飲んでいた"のだから…
あんまり話が進んでない気が…
…アレ…?