今回は長めんそうめん人間ドラマ満載です。
「カオリは……………………俺の………………妹だ………」
龍臥がその女性の名を、関係を口にする。
「妹と言っても…ただ、あいつが勝手に俺を兄だって言って……ようは幼なじみさ……」
「幼なじみ……」
武はその言葉に反応してしまう。彼自身もその言葉には思い当たるものがあるのだろう。
「名前は……
遥と茜も、その話を真剣に聞いていた。
「あいつと一緒にいると……元気になれたんだ…昔は…………」
「昔は……?」
遥は不思議に思う。
そう、先程から全て過去形で話しているのだった。
「その……香織さんは……今は……?」
茜が恐る恐る質問する。
返ってきたのは予想通りの返答だった。
「……っ………し…死んだよ。」
涙ながらに龍臥が言う。
「………バカだったよあいつは……テストも俺より点数悪くて……幼なじみの俺を残して勝手に死んで……」
龍臥の発する声が少しずつ震えてくる。泣いている。そう誰もが分かっていた。
「病死……か?……」
武がその質問に入った瞬間、龍臥の顔が鬼のような形相に変貌する。
「刻永君……?」
「……殺……されました……!!」
「「「っ!!」」」
その場にいた全員が息を呑んだ。
「ちょっと……そんな……犯人は……?」
茜が信じられないという顔になりながらも、龍臥の話を聞こうとする。
「中学3年の頃だった…当時あいつは………大学生と付き合っていた…。アプローチしたのはそいつからで、執拗な絡みが嫌で香織は仕方なく付き合ったんだ。………………ただそれが間違いだった……」
龍臥が大粒の涙を流し、震える声で話し続ける。
「そいつは……ただ遊びだったんだ……っ……好きでアプローチしたん………じゃない……」
「……」
「……そ”い”つ”は”あ”ろ”う”こ”と”か”!!……仲間と一緒に香織を放課後拉致して!!乱暴した後に殺したんだ…………っ……。」
「なっ………!?」
武は驚きと怒りが混じった顔になる。
遥は口を抑えて涙目になっている。
茜は目を見開いた。
「…………そいつらは捕まって……でも…………未成年だったからって……たった2年で釈放されて…………」
龍臥の息がどんどん荒くなっていく。
「なんで香織だったんだって…………問い詰めた!そしたら……『初めて見かけた時に目が合ったから』って………!!!どうしてあいつだったんだよ……!!なんでッ!!!……」
顔を手で覆って、蚊が泣いたような小さい声で泣く。
「……あいつは、俺が小学3年の時いじめられていた。いっつも俺が庇ってやって…そんときに約束したんだ……」
「約束……?」
遥が尋ねる。
「…『私だけじゃなくて、みんなを守れるヒーローになって』って……。俺は『勿論だ』って……」
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---元の世界 10年前---
ここはある公園。横浜市の都会とは言えないが、それに近い場所にあった。
ある少女が泣いている。
「…………っ………えぐ……っ…」
その傍らに立つ少年は、優しく少女に話しかける。
「ほら香織、あいつら追っ払ったから、もう泣くな。」
しかし少女は泣き止まない。
「…それだ!それがあいつらがいじめ続ける理由だよ!あいつら香織の
そう言って少年は少女の涙をハンカチで拭いてやる。
少女は少年を見つめる。
「な…なんだよ…」
いつまで経っても少女は少年を見つめるので、少年は照れくさくなる。
「……して」
「へ?何?」
「やくそくして、もういじめられないようにするから、つよくなるから…。だから……」
少女が決意の目で言い切る。
「螳ョ逕ー莠ォ
少年は意外だった。今まで、目の前にいる少女が自分にそう言ってきたことがなかったからだ。
「……も、もちろんさ!おれはりっぱな大人になる!それに、おまえもいつまでたっても泣き虫だから、おまえももちろんまもってやるよ!」
「なきむしじゃないもん!」
「うっそだー。いま泣いてんじゃん!」
「ないてない!」
少女が頬を膨らませて言い張るものだから、少年は吹き出してしまう。
その後二人は笑いあった。子供の無邪気な笑顔で……
「やくそく、ね!」
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「-俺はあいつを守れなかった……俺は…ヒーローなんかに……なれないよ……」
茜も武も暗い顔をしていたが、遥は違った。
歩み出して、龍臥の近くへ寄る。
「あなた……本当にそう思ってる?」
遥の目は『甘ったれるな』という意思があった。
「え…?」
「そうやってウジウジしていて、どうにかなると思っているのって聞いてるの!!いい?今は今、昔は昔って考えて割り切りなさい!」
遥は龍臥の頬を叩く。
龍臥は何が起こったのか一瞬理解できなかった。
「お姉ちゃん!ちょっと…それは」
「涼宮中尉!待って下さい!…」
二人は止めようとするが、遥は止まらず続ける。
「それにあなたは、ここに来る前、数回ともBETAと戦ったんでしょう!?それは何のために!?」
「それは…BETAが…現れたから…」
「あなたは何のために戦ってるの!!?」
「仲間や……子供達の…笑顔のために…みんなを…………
龍臥がハッと気付く。
遥が龍臥の隣に腰掛け、優しく続ける。
「わかっているんでしょう?あなたは無意識にも、彼女との約束を守ろうとしているのよ。それが一番の…香織ちゃんへの供養にもなる。」
「あなたは強い。力だけじゃなくて、その約束を守ろうとする『心の強さ』があるの。だからあなたは…今まで通りでいいの。ね?」
「涼宮……中尉……」
「それに、人に話すと心が軽くなるでしょ?いいのよ。私でよければ、相談に乗ってあげるから。」
「涼宮…中尉………っ……遥…さん……っ」
武と茜は二人を残して部屋を後にする。
「膝貸してあげるから……まずはちゃんと泣きなさい…ね…?」
龍臥は泣き続けた。遥の膝の上で。
遥は黙って龍臥の頭を撫でてくれた。優しく、安らぎをくれた。
そして 、龍臥は自分の身にあったこと--別世界の人間であることを告白した。
「---それで、今に至る訳です……」
遥は龍臥を優しい目で見つめている。
「信じられませんよね……こんな突拍子もない話……」
それまで黙っていた遥が口を開く。
「……私は信じるわ。あなたが辛いことを体験してきたことも、ここじゃない何処かの人だってことも。」
「中尉……」
「あれ?さっきまで『遥さん』って呼んでくれたのに。弟ができたみたいでよかったよ?」
「いえ…一応上官なので………。……中尉……」
「何?まだあった?」
龍臥のこの世界に来て…初めてのわがままを告げる。
「涼宮中尉を……『遥さん』と……呼ばせてもらってよろしいでしょうか……?」
少し短い沈黙が続いた。
しばらくすると遥が微笑みながら応える。
「もちろん。あ、でも他の部隊がいる時はメリハリつけてね?」
「…ありがとうございます」
二人は絆を深め、龍臥は人の温もりを改めて知り、決意した。
これからも『
たとえ相手が人間であろうとも、大切な仲間達を守るために。
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「---どうした、刻永少尉。急に中隊を集めて。」
「伊隅大尉…今ここに集まって頂いたのは、みなさんへ謝るべきことがあり、それを伝えるためです。」
龍臥の目には迷いはなかった。記憶の中の声を……妹のように可愛がった彼女の声を思い出す。
「より圧倒的な兵器を求めた国連軍は…俺の機体を譲渡するよう言ってきました。それに、国連軍は俺の機体を譲渡しなければ、この中隊を解体するという条件を提示してきました。」
皆が龍臥を見つめる。驚愕と疑問の目で。
「……中隊のみなさん!申し訳…「わかっている。」!?」
「話は副司令から聞いたばかりだ。中隊長の私にそんなこと言われても、と思ったがな。」
伊隅大尉は夕呼から聞いていたらしい。
「この中隊が解体されるのは私は不服であり、心が痛む。このメンバーこそが伊隅ヴァルキリーズだからな…」
「…」
「だから、刻永少尉!私からも皆に謝罪させてほしい!」
「!?大尉…!?」
「皆、刻永少尉と私のわがままを聞いてほしい…国連軍に…刻永少尉の戦術機は譲渡しないことを…!!」
シン…と全員が静まり返る。
「……もちろん、ですよ。」
「国連軍の言いなりは嫌だしね〜」
「宗像中尉…柏木少尉…」
龍臥は意外だった。中隊の解体となれば、反対されると思っていたからだった。
「はぁ…ま、いいわ。どうせその機体も奪われるんなら、最後まで抵抗って言うし。」
「大尉に着いていくだけですから…」
「刻永〜…私も同じだからね!」
水月も祷子も、茜も同じ思いだった。
「心配すんな龍臥!俺達も…」
「私達も同じ……」
「刻永、そういう時はもっと早めに相談頼むわよ」
「あうぅ〜…でも……これが伊隅ヴァルキリーズですっ!……なのかな?」
「そなただけで抱え込む必要はない。武も同じく一人で抱え込んだことがあった。みんながいるぞ。」
「いいねー。一丸となった感じ。」
「武…彩峰…榊…珠瀬…御剣さん…鎧衣…」
遥は龍臥を見て、応援しているように頷く。
「--という訳だな…行ってこい。刻永…」
「みなさん………ありがとうございますッ!!!」
ブリーフィングルームを出て、司令室へ…
そして…司令官へ、オルタネイティヴ5派への返答を伝えに行く。
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「国連軍の方々へ伝えて下さい。私は…ガンダムを渡す気はありません!!……」
夕呼はニヤリと笑う。
司令官がふう、と息を吐く。
「私もその思いだ。刻永少尉。君の戦闘データを見た時に思った…君ならば…この世界を変える力になれると……!」
「司令官……!」
みんなひとつなのだ。龍臥はそう実感した。このように世界が手をとりあえば、BETAに勝てると思った。
……必ず責任はとる。龍臥はその気でいた。
「司令官、もし機体を強奪に来た際は……」
一呼吸し、覚悟を決め、続ける。
「俺が奴らを撃退します。オルタネイティヴ5の計画通りになど……させません!!」
---横浜基地ハンガー---
ここにはネェル・アーガマから移したモビルスーツが整備されている。
その中にひとつ、異様な雰囲気を醸し出す機体があった。
黒い装甲に黄金の一本角……その機体に吸い寄せられるように、一人の女性が近付いていく……
「…孝之……?」
to be continued
龍臥はお気に入りキャラです。さて…ここから怪しくなっていきますよ?いいですか!?せーのっ!ああ〜『NT-D』の音ぉ〜!
次回もお楽しみに…