龍臥が改造したニュータイプにしか操縦できないモビルスーツ…その名を聞いた時、武は再び思い知った。
こいつは人類の切り札になれる-と
龍臥にしかできないことがあるなら、それをサポートするのは当然周りの人間の役目だ。
「龍臥……必ず…速瀬中尉を……」
「ああ!」
二人は拳を合わせあった。戦士の誓い…親友として、戦友として…
「龍臥君、時間は取らないから…少しいい?」
「遥さん……?」
龍臥は遥に呼ばれ、水月が口にした男性の名前を告げる。それは彼女らにとって、忘れられないかけがえのない人物であった。
「鳴海 孝之…私達の…愛した人…」
龍臥はその名前に聞き覚えがあった。転生者として、マブラヴのことは多少知っていたため、関連事項も調べておいたのだ。
「私達はね…訓練校の同期だった孝之君を…好きになっちゃったの。二人同時に。」
龍臥は黙って話を聞いていた。
「でもある日、BETAの侵攻が進んで…私達より早く正規兵に抜擢されたの。そして、この横浜基地の元となった横浜ハイヴ攻略……『明星作戦』で、戦死したの……」
遥の目は何処か遠くを見ているようだった。
「それで、無事帰ってきたら私達のどちらかを選んで貰うはずだった…それは叶わなかったけど」
「…それは…お気の毒に……」
「…いいの。だって戦場だから、いつ死ぬか分からなかったし…それに、私達は誓ったの。私達のどちらが本当に孝之君を好きかって…勝負をするの…だから立ち直れた。水月がいたから……生きる気になれた…」
「……」
「だからお願い …龍臥君…水月を……連れ戻して…お願いします……」
声が震えていくのが分かった。さっきまでは自分が遥の前で弱気になっていた。しかし今は遥が泣いている。
当然、断ることはしない、絶対に。
「遥さん、約束します。絶対速瀬中尉を…水月さんを連れ戻します!」
「龍臥君…ありがとう……っ…」
彼女は涙を流しながら感謝の意を述べた。この涙を無駄にしてはいけない。
それに、だ。孝之さんが戦死したのはBETAによるものじゃない…。米軍が無通告で使用したG弾によるものだった。
龍臥が一番許せないのはそこだった。いくら攻略のためとはいえ、無通告はあってはならない。
龍臥は更衣室へ向かい、ユニコーン専用のパイロットスーツを着用する。
(俺は…もう下を向きっぱなしにはしないんだ……!!)
ネェル・アーガマから横浜基地ハンガーへその機体をハロ達に搬送してもらい、出撃準備を済ませる。
現在時刻17:18……いつもなら何をしていただろうか?テレビを見て…夕飯食って…父さん母さんと笑いあって……
香織と電話していた。
今はそんなこともできない。今は…戦うしかない。守りたいもののため、自分の人生に悔いを残さないために…俺は…戦う!
「龍臥……頼んだ!」
「中隊、刻永少尉に敬礼!」
伊隅が中隊へ号令をかけ、中隊のみんなが龍臥へ敬礼している。
龍臥も敬礼し返す。そのままガンダムへ乗り込み、コックピットハッチを閉める。
全天周囲モニター…これがあれば下からの戦車級の攻撃に気付くだろうか?網膜投射ではないならば、もっと効率よく戦えるだろうか?と考えている間にパイロットスーツを少し脱ぎ、小型モニターに指紋を登録し、龍臥専用機体にする。
パイロットスーツを着直して操縦桿を握る。
(水月さん……必ず…あなたを連れ戻します!!)
「刻永少尉、ドラゴニュート……行きますッッ!!!」
バンシィが空けたであろうか、穴の空いたハッチを出て空へ上昇。
バンシィを追いかけて行く。
「龍臥君…お願い。」
遥は姿が見えなくなるまで見送っていた。心配だからではなく、期待や信頼があった。彼ならやってくれると…
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「孝之…孝之…どこなの……」
バンシィに乗った水月がいたのは、横浜基地のすぐ近く、あの忌まわしいG弾が使用され荒廃した町並だった。
「…っ…頭が…痛い……ん…」
頭痛がする。こんなに痛むのは、孝之が死んで以来だと水月は思った。
その直後、再び声が頭に響いてくる。
((こっちだ……こっち……に…))
突如、警告音。何かが接近してくる。米軍か?国連軍なのか?などと考えたが、水月にとってはそんなことはどうでもよかった。
孝之に会えるのなら…あの言葉を伝えることができるのなら…
接近してきたのは先程考えたもののどちらでもなかった。
「…!速瀬中尉…見つけた!!」
『!何…新しい戦術機…?!』
「速瀬中尉!!その機体に乗っては駄目です!!その機体は…」
『刻永…邪魔しない……でぇッ!!』
ビームマグナムを構え、ドラゴニュート目掛けて撃とうとしてくる。
「速瀬中尉!!その機体は…」
『うるさいわよ!!まだ酒も飲めないガキが!!』
ビームマグナムから低く唸る轟音が発せられ、赤とも紫とも言える光球がビームとなって発射される。
龍臥はドラゴニュートに装備された新装備、Iフィールド発生機を搭載したシールドを構えビームを防御。
このシールドには通常のIフィールド発生機を2重に搭載している。
光線級のレーザーを防ぐことができるのか、それをシミュレーターで試したかったが…試験運用が実戦とは。などと考えながら龍臥は武装を切り替え、攻撃よりも防御を優先する。
両腕に装備されたアームドウェポンシステム…まるで竜の翼と爪のような見た目の武装を展開、そのままバンシィを掴もうとする。
しかしバンシィも黙ってはいない。バルカン砲を掃射し、マニピュレーターを破壊しようとしてくる。
「…させないっ!」
機体を上昇させ、回避。光線級の照射を受けないように高度に気を付ける。
『守ってばかりじゃ…勝てないって!!言ったでしょう!!』
上昇し、止まった所をビームマグナムで撃ちにくるがそのような攻撃はもう予測済みだ。先程と同様にシールドで防御し、アームドウェポンでバンシィの右腕…ビームマグナムを所持している方を掴む。
「速瀬中尉…だから話を聞いてください!!その機体は、パイロットを飲み込んでしまう!恐ろしいんです!早く降りて下さい!!」
『黙ってよ…これがあれば…孝之の声が……聞こえたのッ!!』
(…この人は…っ!!全く……)
「孝之さんの声が聞こえた!?それは違います!!それはBETAに殺された人々の残留思念ですッ!孝之さんじゃありません!」
龍臥は畳み掛ける。
「それに…そんなんで、孝之さんが喜ぶと思っているんですかッ!!?」
『……っさい…うるさいっ!!あんたのようなガキに……孝之の……』
その時--
『何が分かるっていうのよぉぉおおおおおおッ!!!』
突如バンシィの機体全体が黄金に輝き始める。
「なっ…まさか!!!?」
バンシィの装甲はスライドしていき、隠された装甲…全身のサイコフレームが発光しながら露わになっていく。
獅子の角が割れ、顔が変形しガンダムフェイスが現れる!
これがバンシィノルンの……『NT-D』だ。
「俺がニュータイプだからっ……デストロイモードに……!!ドラゴニュート…?バンシィと共鳴しているのか!?」
『孝之のことを知らないのに……何も言わないでッ!!!』
「!!」
バンシィが左腕のビームトンファーを展開し、ドラゴニュートへ刺し込もうとしてくる。
すかさず右腕を離し、アームドウェポンで左腕に掴み変える。
しかしそれが間違いだった。ウェポンを離した途端にビームマグナムを鈍器として使ってきたのだった。
機体に響く鈍い音、重い衝撃。
バンシィは止まらず右脚で連続でキックし、機体を蹴り飛ばす。
しかしここで止まっていられない。
「俺に力を貸せ……ドラゴニュート……速瀬中尉を……連れ戻すって……」
『邪魔…しないでぇぇぇぇええぇぇぇぇ!!』
「遥さんと……約束したんだよオォォォォォッッ!!」
ドラゴニュートも機体が白く発光、深い緑色の機体カラーをサイコフレームの光が白く照らす。
装甲がスライドするだけではなく、スライドした装甲が更に展開し、内部の純白な装甲が突起する。
改造元のユニコーンの形を取り戻しながら、竜の翼のようなアームドウェポンもサイコフレームを展開。バンシィ同様一角を変形、V字アンテナになりながらも竜の角が再現された頭部---『ユニコーンガンダム4号機-ドラゴニュート-デストロイモード』が姿を現す。
「速瀬中尉………水月さん!!!あんたを……止めてみせますッ!!」
ドラゴニュートがアームドウェポンを鞭のように振り上げ、ビームトンファーを起動。そのままバンシィへ叩きつける。
『………ッ!!』
バンシィへの攻撃はビームトンファーによる切断ではなく、ビームトンファーによるビームをサイコフレームに纏わせ、機体へ叩きつけたのだ。
『……やるじゃないっ!!訓練で見せなかった機動ね!!』
いつもの水月のように思えたが、明確な殺意が込められている。これがバンシィの恐ろしさ。絶対に止めなければ。多くの人を殺させる前に……!!
「ぅぉおおおおおおおおおおおおッ!!!」
ふたつのビームトンファーがぶつかり合い、眩い閃光が走る。
そのふたつの黄金と純白の光は関東全体にまで広がった。
to be continued
次回も戦闘が続きます!
はたして龍臥は残留思念から水月を連れ戻せるのか…?
次回も読んでいただけると嬉しいです!!