今日のお昼はうどんを作りました。
ふたつの閃光が眩く輝いている中、龍臥はモニターを操作し、ひとつのシステムを起動させようか迷っている。このシステムはBETA相手や戦術機に強大な力を発揮する。
「くっ……これを使えば…」
(バンシィを止められる…しかし水月さんを殺しかねない!)
迷っている暇などないが、その瞬間にバンシィは後ろへ下がり、右脚を振りかぶり蹴りの体制へ入る。
ドラゴニュートのシールドを弾き飛ばし、マグナムを撃つように構える。しかし撃ってきたのはビームではなく、その下に装着されたリボルビングランチャーの瞬光式徹甲榴弾。
ドラゴニュートへ発射されたそれは機体の胸部へ着弾し、炸裂。しかし機体へのダメージは極小。機体の改造に『V2ガンダム』のガンダリウム合金を何重にも重ねて作ったのが正解だった。
そのままバックパックからビームサーベルを取り出し、バンシィへ斬りかかる。
「いい加減に…して下さいッ!!」
バンシィもビームトンファーで防御。再び鍔迫り合いになったが、バンシィはこの至近距離でビームマグナムを撃ち込もうとしてくる。
(完全に殺しに来ている…)
機体をつくるサイコフレームに取り込まれた無数の残留思念…それが彼女を狂わせているものだと分かった時点で、やることは決まっている。
(もったいないがバンシィを…ブッ壊す!!)
アームドウェポンを動かし、バンシィの頭部を掴みそのまま潰そうとする。しかしバンシィはマグナムを発射、ドラゴニュートの肩部分の装甲が炎を上げ吹き飛ぶ。
残りマグナムのEパックは2発。
Eパックの予備を装備させなくてよかったと安心する。水月ほどの腕前ならば龍臥を撃墜できてもおかしくはない。
『いい加減離しなさい!』
「誰がッ!!あなたを連れ帰るんです!死んでも離しませんから!!」
諦めずにバンシィを掴み続ける。バンシィはビームマグナムを捨て、ビームトンファーで斬りかかる。
しかしドラゴニュートへは届かない。龍臥は既にアームドウェポンで掴みながら、間合いをとっていたのだ。
「俺は孝之さんがどんな人かは分からない…ですがひとつだけ…。あなたや遥さんを好きにさせることのできる男性だってことを!!」
『っ…孝之…』
水月が動揺し、バンシィの動きが鈍くなる。
いける。あのシステムを使わなくても!
龍臥はバンシィの頭部を潰しかかろうとした…
その瞬間、龍臥の耳にもはっきり聞こえた。
((そのまま……こっちへ……こい…))
違う、と瞬時に理解した。これはそもそも孝之さんらしい青年の声でもなかった。
明らかに、若い声ではなく中年の声色だった。
「やっぱり…あなたは機体に飲み込まれているッ!!」
直ぐに距離を詰め、バンシィのコックピットが近付いたその時、龍臥はコックピットハッチを開け、水月に話しかける。
「水月さん……!あなたも分かっているんでしょう!その声は…あなたを死に導いている!」
バンシィのハッチが開き、水月が姿を現す。
(まさかこの人…強化装備も着ずにバンシィを操っていた…!?)
「刻永…わかってるわよ!あの声が孝之じゃないってことも!だけど…その声の方へ行けば、孝之に会えるかもしれないじゃない!」
「仮に会えたとしても…何を話すんですか!!好きだってことですか!?それじゃあ…」
「それでもッ!……伝えなきゃいけないの!遥が『好きだ』って…!」
龍臥は絶句した。水月は自分が好きだということを伝えるのではなく、遥の想いを伝えようとしたのだ。
自らよりも親友を優先する。その自己犠牲の想いは人間に必要だ。しかし、それは今じゃない。
「……あなたは本当に馬鹿ですよッ…なんで…なんでそんなに…!」
見ると水月はもうバンシィに乗ってしまったであろう、バンシィが距離をとる。
龍臥もコックピットへ戻り、間合いをとる。
(俺はなんでこんなに水月さんを連れ戻そうとするのか…?大尉達の思いを無駄にしないため?遥さんに頼まれたから?バンシィを取り返すため?)
龍臥は考える。
ひとつの答えが浮かび上がった。自分でも理解出来た。
(あぁ…分かった……俺…水月さんに…一目惚れしてたんだ……)
今更だが気付き、その答えに恥ずかしくなる。
人を好きになったことは…なかった。香織を好きになったことはなかった。妹として見ていたから…
香織の想いには気が付いていた筈なのに、見て見ぬふりをしていた。
今なら香織にもはっきりと言えるだろう。
『想いに気づけなくて、すまない』と---
「ハロハロ、ハロ!」
「ハロ…いたのか…」
気付かなかったことが多すぎる。俺はなんて鈍感で馬鹿なのだ、と龍臥は自分を責める。
しかしもう答えは決まった。
水月に伝えるのだ。この想いを、たとえ両想いではなくてもいい。自分自身に…もう逃げたりしない!
((私もだよ…お兄ちゃん……))
「は…?」
聞き覚えのある声に驚きを隠せない。なぜならそれは…もう会えない人物だった。既に故人であったこと、時空も、世界も違う筈なのだ。
だからありえない。しかし確信した…その声は…
「香織……なのか…?」
((そうだよ、お兄ちゃん…。お兄ちゃん言ってくれたよね…みんなを守るって…約束、守ってくれてありがとう……))
「ど…どこから…話しているんだ!?姿を見せてくれよ…香織……。それに…まだ言うべきことが……」
((ごめんね…前の姿はないの。死んだ時にね…でも、お兄ちゃんにならいつでも会えるよ…いつも、傍にいるから…これまでも、これからも……))
「……香織……お前の想いに気づけなくて……ご…ごめんな……っ…」
身を震わせて泣いてしまう。
今日は泣いてばかりだな…と思い、ハロを見ると…
白い光が伸びていた。
(…ハロ…お前だったのか…香織に会わせてくれたのは…)
「水月さん……っ…あんたが…あなたのことが…」
ドラゴニュートの白い光がどんどん強く、大きくなっていき、その色が変わっていく。かつて起こった『アクシズショック』を思わせるような眩い…虹色の光。
その光が機体を飲み込み、あるシステムが強制的に起動する。
「あなたが好きだ…一目惚れだ…!俺の初めての…恋だ…!」
秘めた想いを声に出して叫ぶ。
「水月さん……あなたが、好きなんだァァァッ!!!」
『システム-テューポーン』
龍臥の開発した、新たなシステム。攻撃のために使用する場合と、防御のための場合…その二つを駆使して戦う新兵器。それがドラゴニュートだった。
両腕のアームドウェポンが変形していき、竜の翼から…『竜神の爪』へ…
バックパックのアームドウェポンは…ひとつの巨大な龍の尾へ…
『竜から神へ』テューポーンは人の上半身がありながら、竜のような翼を持ち、龍の巨大な尾を持つ怪物だ。
神話ではゼウスとの戦いで彼を破り、ゼウスと肩を並べるほどの力を有しているとされた。
その怪物としての強さを持ちながらも、決して己の為には戦わず、人のために戦う。
ドラゴニュートは機体性能を極限まで高めながら、パイロットの思考をダイレクトに反応させることが可能。しかしその副産物として、膨大なエネルギーが溜まる。それは機体が爆破してしまう程の強大なものだが、その発生した余剰なエネルギーを機体のジェネレーターからビームとして放出する。
これがハイヴ攻略を目的としたNT専用機体。
敵を殲滅する、怪物。正に
『……っ…刻…永…』
水月が龍臥の想いに少し動揺する。
今がチャンスだと、ドラゴニュートは機体を急接近させ、システム-テューポーンを発動。機体から放出されたビームがバンシィの装甲を焼き切っていくと同時に、ふたつのユニコーンが虹色の光に包まれていく……
「水月さんッ!!帰って来て下さいッ!!」
『……』
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水月は夢を見ていた。
かつて愛した人が、手を振り自分を呼んでいる。走っているのにも関わらず、一向に距離は遠くなる。
なぜ?と思う暇もなく、辺りが暗闇に覆われていく…
目の前を光がふたつ通り過ぎていく。
その直後、絶対忘れないであろう声が聞こえてくる。
((遥に…よろしく言っといてくれ…水月。生きろ……お前ら……まだこっちへ……来るなよ…。俺達は…ここにいるから……))
「孝之!!!」
その後、後ろから声が聞こえる。自分を呼ぶ声だ。
聞き覚えがある…?ああ、確か新入の子だ…
えっと……名前は…
((水月さんッ!!!))
刻永…龍臥……?
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ハッとすると目の前に見たことの無い、あの純白の機体に似た戦術機がいる。自分は何か機体に乗っているのか?そんな感じの場所だ…コックピットか。
今まで何をやっていたのだろう?
水月は思い出そうとするが、頭が痛むのでやめる。
突然コックピットハッチらしきものが開く。
「……?刻…永…?」
「水月……さん……!!おかえりなさい…」
「…?ただい……ま?」
龍臥は歓喜の涙を流した。
水月はわけもわからず、涙を流す龍臥を見て焦る。
「ど…どうしたのよっ…そんな……泣いて…男の子でしょう!?」
「すみません…なんか込み上げちゃって……」
「……なんか…私のこと…呼んだ?」
(……)
「……いえ、呼んでませんよ?ほら、早く帰りましょう!」
「…そういえば、ここ…基地じゃないわね……どこなのかな……」
バンシィを掴み、ドラゴニュートは空へ上昇。決して光線級の攻撃を受けないように。
(水月さん……あなたに振り向いてもらえなくても、俺は…あなたに伝えることができた。それで…十分です!)
バンシィとドラゴニュートは、ユニコーンモードへ変身、静けさを取り戻した空を飛び、帰るべき場所へ帰る…
(刻永………さっきの………考えておくね…)
to be continued
刻永×水月です。水月ファンを敵に回してしまうことを恐れないスタイル。
恋愛表現は難しいですが、色々と試していきたいと思います。次回もお楽しみに…フッヒイイイイイイイイ(狂乱)