水月をチラ見しながら、これからできることを考えてみたが、今は訓練、モビルスーツの整理、そして00ユニットの調律…この3つが最重要事項であると確認する。
「なに?さっきからチラチラ見て…」
「…!あ、いえなんでも…」
水月が龍臥の目線に気付いたのか龍臥に直接聞いてきた。それを聞いた茜が、追い討ちというのか分からないが龍臥にとって他人事ではないことを言い出す。
「えっ!?何、刻永あんた速瀬中尉のこと好きn…」
「はいそこまで…」
遥が龍臥のフォローに入るため茜を止める。
しかし彼女の猛攻は止まる所を知らない。
「えぇ〜?だってさお姉ちゃん、昨日の事だって刻永は速瀬中尉を真っ先に心配して、自分が行くって言ったんだよ?」
「……まぁ…それはね?だって龍臥君の機体だったし…うん…多分…」
遥のフォローが尽きてしまったため、朝食中この後も茜に質問攻めにされてしまった。
---シュミレータールーム---
食事を終えた後の訓練はいつも通りシミュレーションだ。と言ってもハイヴ戦ではなく、戦術機同士の戦闘シミュレーションである。その訓練で龍臥は試したいことがあった。
「武、その新OSでシナンジュを操縦してみないか?」
「え!?いいのか!?」
「もちろん構わないけど、普通の戦術機とは違って高機動だから気をつけろよ?」
「おおお!一度あれ使ってみたかったんだよな!」
武が歓喜しながらシミュレーターに入っていく。
しかし龍臥には狙いがあった。武にただシナンジュを使わせるだけでは訓練にはならない。よって、水月にもあの機体を使わせてみることにした。
「水月さん、バンシィを使ってみませんか?」
「え…」
水月は少し戸惑った。あれは水月にとってトラウマレベルの出来事であったため、迷うのも無理ない。
「今のあなたなら使いこなせますって!」
「…ま、まぁやってみるけど…そう言ってまたおかしくなったら、ぶっ飛ばすから。」
「覚悟は承知です!」
少し疑いながらもシミュレーターに入っていく水月を確認すると、夕呼にそのことを頼みに行く。
「別にいいわよ?使用するシミュレーターの機体データを少し弄ればいいんでしょ?」
「助かります!これで対人戦の訓練にハリがあるってもんです!」
「…もちろん遊びじゃないってことは承知ね?」
「いつでも俺は真剣ですよ、博士。それに、あの時言ったこと、確認できますよ。それは博士にもメリットにもなるでしょう。」
「よくわかってるじゃない。それじゃ、始めるわよ。」
龍臥もシュミレーターに搭乗し、機体データを確認し、今回はF91を選択する。
『ヴァルキリーマムより、これより戦闘シミュレーションの開始を知らせる。』
『ヴァルキリー2、了解』
『ヴァルキリー10、了解しました』
『ヴァルキリー11、了解した』
「ヴァルキリー13、了解です」
『各員、戦闘シミュレーション、開始!』
今回は2対2の訓練であり、メンバーは武と冥夜がペア、水月と龍臥がペアとなっている。
『足引っ張ったら、助けないからね!』
「了解です!水月さん!」
『冥夜!かっ飛ばすぞ!!』
『了解した…が、タケル、なんだその機体は…前に刻永が乗っていた機体ではないか』
『色々あって、使わせてもらってんだよ、お前も龍臥に何か使わせてもらったらどうだ…っと!』
そんな会話をしていると、迷いなくバンシィが武に向かってリボルビングランチャーの徹甲弾を撃つ。
『そんな呑気に会話していると、撃墜するわよ!』
『くっ…流石は速瀬中尉だ…』
『タケル!刻永は何処だ!?』
冥夜が発言したことにより、武は辺りを探すが龍臥の機体が見当たらない。
「大型もいいが小型モビルスーツもいいな…センサーに感じられにくいぜ…」
龍臥はF91を巧みにビルの隙間に潜り込ませ、攻撃の機会を待つ。
『…!建物の隙間とかは…ないだろうか?タケル、そこのビルを撃て!』
そう言われ武がシナンジュのビームライフルを発射すると、見事ビルに命中。ビルの数棟が煙を上げ崩れていく。
その一瞬、影が高速で空へ上昇する。
『…!!冥夜、上だ!』
『むっ!』
二人が上を見上げると、普通光線級のレーザー照射を受けてしまう高度にそれはいた。
ガンダムF91…地球連邦が最後に運用した小型のガンダムタイプ。型式はRXではないが、顔がガンダムに似ているとのことで『ガンダム』と呼ばれている。
「さっすが御剣さんだ!!俺の機体に気付くとは!だが隠れるだけがF91じゃないぜ!」
そう言うと、F91のバックパックに装備された銃身が腰部へ移動し、エネルギーが溜まっていく。
「ヴェスバーを…喰らいなァ!」
ヴェスバー…
龍臥が放ったのは、貫通力の高い高速ビームである。そのビームが冥夜の乗る吹雪を狙う。
しかし、その一瞬に武はシナンジュのシールドを投げ、冥夜を庇う。
『冥夜、無事か!?』
『タケル、すまない!こちらは無傷だ……!』
『だぁからぁ!おしゃべりしてるとッ!!』
水月がバンシィのビームトンファーをシナンジュへ突きつける。
しかし冥夜はそれを黙って見てはいない。吹雪の持つ長刀をバンシィに斬りつける…が、バンシィはシールドを構え長刀を防御。その瞬間にF91がシナンジュに突っ込んでいく。
「俺を…忘れんな!武!!」
『来たか!龍臥ぁ!!』
シナンジュのビームナギナタを展開し、振りかぶってそのまま機体目掛けて斬りつける。F91はそれを難なく回避、バルカン砲を掃射しながらビームサーベルを抜刀、シナンジュ…ではなく吹雪を狙う。
『っ!来るか、刻永!』
『させねぇ!』
『あら、こっちも同じよ!!』
武が阻止しようとするが、それを更に水月が阻止しようとする。バンシィがビームマグナムを撃ち、シナンジュのシールドを破壊することに成功。
『刻永!!今がチャンスよ!』
「助かりました!水月さん!!」
水月の助けを受け、龍臥は吹雪の右腕を切断する。
『まだ…まだ!私は行ける!』
冥夜が諦めず長刀を片方のマニピュレーターで構え、間合いを取る。これは剣道そのものである。
(まずい…たとえモビルスーツと戦術機では性能に差があったとしても、相手が御剣さんなら違う…)
彼女は昔から剣術に磨きをかけていた。それも戦いに反映される。長刀とビームサーベルでは長刀の方が圧倒的に長い。
後ろではバンシィとシナンジュの戦いが繰り広げられている。武が助けに来ることはないだろう。
(勝負は一瞬だ…)
二機が互いにバーニアを吹かし、促進剤を一気に消費するように突っ込む。
その瞬間だけ、その一瞬だけ……辺りが静かになった。
『はあああああああああああああああッ!!!』
「オラァアアアアアアアアアアッ!!!」
鋭い金属音が響き、勝負は決する。
---勝ったのは、龍臥…ではなく冥夜。
あの一瞬でF91のマニピュレーターを斬り、武装解除させたのだ。
「なっ……F91が…!?」
『ふ…許すが良い、刻永。これも立派な戦術でな。』
しまった、と思いながらも後ろを確認するが、そちらはまだ決着がついていなかった。
「だが…まだ負けてねぇッ!!」
『なっ…!!』
F91のバイオコンピュータが作動、ヴェスバーが背後の吹雪を低速ビームで撃ち抜く。吹雪が大炎上しながら爆発する。
『ヴァルキリー11、機体損傷91%!機体大破、撃破判定!!』
『やるじゃない、刻永。あとでその機体もデータちょうだいね。』
「なんですか博士!!わざわざ遥さんのマイク今使ってまで言いますか!?」
『……不覚ッ……』
『--さぁ、さっさと決着つけるわよ!!白銀!』
『はい!龍臥、お前はあとでぶっ倒してやるからな!』
二人の最強クラス衛士の対決。これは見応えがありそうだ、と思いながら見守っている龍臥をよそに、戦いが再開される。
---日本上空---
『--
日本上空--光線級の攻撃を受けないように山を盾に戦術機を搭載した飛行機が飛行している…その機体には『国連軍』のエンブレムが飾られていた---
はああああああああああ!!速瀬を誤字ってたああああああああ!!指摘してくれた方、大感謝です!!