では……どうぞ
横浜基地を出た二機のモビルスーツは高速でその飛翔する機体に向かう。下手をすれば光線級に狙われかねないため、高度を低く維持して行動する。
「……水月さん、ラプターってどんなのなんですか?」
敵の戦術機についての情報があまりにも乏しいため、国連職員でもある彼女に訊く。
『詳しいことは私達も知らないけど…たしか12.5クーデター事件で何機か目撃したわ。それに……副司令が言ってたようにステルス機能があるって……』
水月が記憶の中を探るように、不確かだが重要な情報を伝えてくれた。
ステルス機能…間違いでなければ厄介なことになる。このモビルスーツやデルタプラスのような機体には全天周囲モニターを採用しており、それはレーダーによって確認した機器の情報をCGとしてモニターに映すもの。
その時点でレーダーに映りにくいラプターであれば、確認するのも一苦労。ニュータイプの力に頼るしか他ないだろう。
「…そういえば水月さん、他の戦術機と違って網膜投影じゃないですが…問題ないですか?」
『言われてみれば……網膜投影は便利だったなぁ。まあ特に問題ないけど…こっちの方が下とか背後の攻撃に気付けるのは大きいわね』
龍臥はその応答に納得出来た。
実の所、龍臥自身も網膜投影の便利さに魅力を感じていた。モニター操作なしで目線で操作可能なのはモビルスーツにも応用できると考えらからである。
ーー突如通信が入る…横浜基地からだと分かると、すぐさま応答する。
『刻永、次が最後の猶予らしいわよ。『即刻機体を譲渡し、降伏せよ』……何よこれ、まるで私達が悪者みたいじゃない』
「実際、これから悪者になるかもしれないんです。この極東の最新鋭基地ーオルタネイティヴ4派と5派の抗争が始まるんですから」
龍臥が呆れながら応えていると、水月が通信に乱入してくる。何か慌てた様子で…
『刻永…落ち着いて聞いて、アイツら…すぐ近くにいるかも…しかも攻撃する気満々よ』
『……?レーダーにも何もないし、それに相手はラプターですよ…そんな分かるものなんですか…?ッ!!!』
水月の方が先に気が付いたのだろう、龍臥も遅れてその殺気に気付く。
機体の強奪が目的なのだが、敵は殺しに来ている。矛盾しているのではないか…と考えている内にある答えに辿り着く。
「水月さん…博士…まさかとは思いますが、奴らは機体奪取が目的じゃなく…オルタネイティヴ4派の主力になりうるこの機体を、あわよくばオルタネイティヴ4派全てを消すつもりなのでは…?」
その答えに二人は息を飲む。
『そ…それじゃただの人間同士の戦争よ!何でそんなことをするわけ…!?』
『おそらくはオルタネイティヴ5派がBETAを殲滅する事を優先しすぎた結果のようね……』
オルタネイティヴ5ーー限られた人間を地球圏から脱出させ、大量のG弾で全ハイヴへ一斉攻撃を仕掛ける…残された人類だけではなく地球そのものも破滅へ導く、その計画は絶対に阻止しなければならない。
「…ッ!来ました!水月さん!……博士、それじゃ」
『気をつけてね…絶対生き残りなさい!そして、守りたいものはたとえ死んでも守りきりなさい…いいわね!』
その通信を最後に、戦闘を開始しドラゴニュートとデルタプラスは接近するミサイルを回避。
(まず威嚇射撃もなくミサイルだなんて…やはり奴らの目的ってのは……)
龍臥はドラゴニュートのアームドウェポンーー彼がそう呼んでいるが『アームドアーマー』のことであり、左右対称に装備されたワイバーンの翼ようなものを持つ。
その翼は展開するとビームを発生させ、ビームブレードとしてもビームシールドにもなる万能兵装である。
そのアームドウェポンを展開し、更に撃ち込まれたミサイルをビームシールドで防ぐと、爆煙が広がる。
その煙を突き抜けドラゴニュートの真横をラプターが抜き去る。
「なっ…気付かなかった……コイツっ!!」
ビームマグナムを構えるが、背後にもう一機のラプター。全部で16機もいたことを完全に忘れていた。
『刻永!避けなさい!』
水月がビームライフルを連射し、ラプターの左肩の装甲に命中。
しかし引き下がらずにラプターは小型ダガーナイフを構え、デルタプラス目掛けて急接近。
しかし水月は焦らず敵機に、器用に回し蹴りを繰り出す。
『来れるならきなさい!部下も基地も、私が守ってやる!』
龍臥は水月の言葉に感動していた。いつもご機嫌にからかってくる3つ程年上の上官が、自分よりも真っ先に敵機を確認し戦ってくれたのだ。
龍臥も男として、この人に応えなければならない。そう思うとドラゴニュートのバーニアを吹かしラプターへ急接近し、アームドウェポンのビームブレードで頭部を切り裂く。そのまま頭部を失ったラプターは堕ち、爆炎をメラメラとあげて大爆発。
(……水月さん…あなたも含め、みんなを守るのは俺の願いです…!そのためなら……たとえ殺人だろうと、やりきってやります!)
「まだ…そこにいるのかああああああああぁぁぁ!!」
『刻永!そっちは……駄目!』
ラプター3機が逃走…水月の注意も聞かず、そのまま追いかけていく。
追い続ける内、気が付くとそこはG弾によって壊滅した横浜市内だった。彼に突然悪寒が走る。
ここはあくまでも、大勢人が死んだ場所。霊感がなくともニュータイプである彼らには安全とは言いきれない場所であった。
『刻……こな……!応……』
水月らしき声が無線に入るが、環境が悪いのかノイズが走る。
その時だった。ラプター4機がビルの間から挟み撃ちの形で襲ってきた。
「……ッこいつら!!」
ドラゴニュートを急上昇させ、攻撃を回避するが既に上にもラプターが。先程水月が肩を破壊した機体がAMWS-21突撃砲を構え待ち伏せている。
「そんなんで……ッ!!俺を殺せるかああああああああ!!」
120mm弾を撃ってきたと同時にビームトンファーを起動し、突撃砲に突き刺す。
突撃砲が小爆発を起こしたのがゴングだったのか、真下のラプター2機がドラゴニュートへ突っ込んできた。しかしそれを黙って見ておらず、すぐさま振り向き、そのまま2機のラプターを縦に真っ二つにする。
『ーー刻永!いた!!』
『ーー
「水月さん!後ろ!!」
デルタプラスに120mmが直撃し、水月が軽く悲鳴を上げる。
それが龍臥を怒らせた。デルタプラスはそこまでヤワじゃないが、勝手に追いかけた自分を心配してくれた上官が攻撃を受けたことに、怒りを覚える。
「ッ!!……ドラゴニュートッッ!!!」
ドラゴニュートはユニコーンモードからデストロイモードへ変身、サイコフレームを虹色に輝かせながらデルタプラスの背後のラプターへ近付き、頭部をマニピュレーターで鷲掴み。
『ー
「
生前所持していた英語検定。それを取得するために鍛えられた英語力を駆使し、相手の無線に応える。そのまま頭部を握りつぶし、また1機戦闘不能にする。
『っ…あんた英語話せたの!?』
「ただ生きてる訳じゃないんでね。」
『ー
『っ!また!』
水月へもう1機ラプターが突っ込んでくるが、デルタプラスがビームサーベルを抜刀、機体の四肢を切断。
デルタプラスとドラゴニュートは背中を合わせ、どの方向からも対応できるように武装を構える。
「……残り11機……!」
『どこからでも…来なさい…』
二人は敵を待つ。しかしいっこうに敵は現れなかった。
『……刻……月…応答…て……』
「ッ!?……博士!?」
『……よ…罠……それ……お……』
さっきからノイズが邪魔をする。もしかしたら……これも敵の作戦か……?
『……囮……よ……!』
その言葉に二人は目を見開く。
しまった。これは敵の作戦通りだったのだ。横浜基地が危険だ。行かなければ!
『刻永!』
「はい!」
2機は全速力で、弧を描きながら横浜基地へと向かっていく。
ドラゴニュートのスペックです
RX-0-4
ユニコーンガンダム4号機-ドラゴニュート
全長:ユニコーン時19.8m デストロイモード時22.4m
本体重量:26t 全備重量:68t
概要:龍臥がユニコーンガンダムを改造した4号機。装甲色はザクのような深い緑だが、それは竜をイメージしているためである。
両腕にアームドウェポンと呼ばれる『アームドアーマーBW(ビームウィング)』を装備。
NT-D発動状態になると、緑色の装甲が展開され純白の装甲が現れる。これは元の機体となったユニコーンの装甲にドラゴニュートの装甲を装着ーつまりNT-D時には装甲がパージされ、裏側にしまわれる仕組みとなっている。
また、そのアームドウェポンは爪状にも変形し接近戦にも対応可能となっている。
龍臥がハロ達と共に開発したテューポーンシステムを装備しており、それは排熱機構としてビームを全身から発するシステム。武器にもなり、防御としても使用出来るこのシステムは対BETAにも対人戦にも効果がある。
武装:アームドアーマーBW ビームマグナム ビームトンファー ビームサーベル×2 ハイパーバズーカ×2 シールドファンネル×3 ビームガトリング テューポーンシステム