現役高校生はつらいよ(男はつらいよって面白いよね)
---武サイド・司令室---
龍臥と速瀬中尉が出撃してから早5分が過ぎた。無事なのだろうか心配になるが、あの速瀬中尉が付いていて…更には戦術機の足元にも及ばないモビルスーツがある。そう考えると心配は無用であると自分に言い聞かせ、喉の辺りのモヤモヤを…不安を落ち着かせる。
しかし妙な胸騒ぎがする。夕呼先生は二人に無線を送っていて手が離せないらしく、今は俺がしっかりしなければ。
---『…ッ!来ました!水月さん!……博士、それじゃ』
そう聞こえたという事は戦闘が始まったのだろう。先生も注意喚起などの言葉を送って通信が終了する。
……先程の会話で何か嫌な感覚に陥ったのは何故だろうか…確か、『第4計画を消す』とかなんとかって……。そんな事考えていても埒が明かない。今は二人を待つしかないか……
「白銀少尉、少しいいか?」
そう言ってきたのは中隊長、伊隅大尉。
「ええ、かまいませんが……何でしょうか?」
何について聞かれるか、もしくは何か言われるのか不安になるが今の状況よりかはだいぶマシだろう。
「刻永少尉についてだが…彼は何者なのだろうな……基地に停めてある戦艦や戦術機といい……先程月詠中尉が言っていたが私達も知りたいからな。少尉は彼と接点があるのだろう?」
正直言うと、このことは秘密にしておきたかった。しかし何も言わないのは逆に不自然であると判断し、少しの真実を混ぜて話すことにした。
「俺とあいつは似たような境遇にあって…それでも諦めずに戦い続けているんです…一番辛い筈なのに……。しかし彼は言いました、『地球の味方だ』って…その言葉や龍臥を俺は信じています。あいつが何者だろうと」
大尉は納得したように軽く頷く。
「…わかった。時間をとらせてすまなかった、確かにそうだな。刻永少尉が誰であろうと、私の部下なのだからな」
大尉はそれを言うと去っていった。こんな感じで人々が信じ合えばBETAとの戦いに勝てると思うのだが……それが出来ていないから、今の状況になっている。
夕呼先生が早歩きで駆け寄ってくる。そして中隊みんなを集めだした。
「おかしい点があったの。確かに第5計画のヤツらは機体の確保を目的としていた…それなのに完全武装をして、かつ即攻撃に入った…。つまりヤツらは機体の確保ではなく、破壊が目的だということになるわ」
「しかしそれでは…彼らに利点がないのではないのでしょうか?」
委員長が疑問に思い質問する。それについて他のメンバーも同感のように頷く。しかし先生はその質問を予想していたかのように答える。
「そこなのよ。アイツら、機体の破壊によって第4計画の主力を潰す気よ。そして第5計画を進めて、BETAとの決着をつける…地球を見捨ててね」
オルタネイティヴ第5計画…阻止しなければならない計画であり、人類全てを救うためにも第4計画を終わらせる訳にはいかない。
「そしてその第5計画促進派の部隊と戦闘しているのが、速瀬中尉と刻永少尉ですか…」
「水月…龍臥君…大丈夫よね…」
「二人なら大丈夫ですよ…そんな気がするんです!」
宗像中尉と涼宮中尉が心配そうにつぶやく。それをカバーするように茜が励ます。
「まあ何にせよ…二人が勝つことを祈るしかないという訳か……。…タケル?どうした…」
冥夜が俺に声をかけ、俺は夕呼先生に歩み寄る。
「先生……俺は、この基地でも戦闘準備に入っていつでも迎撃出来るようにするべきだと進言します」
「……確かにね…第5計画の目的が確実になるまでは、そのほうがいいかもね。いいわ、中隊は戦闘準備を。伊隅、後はよろしくね」
「はっ、了解しました。……聞いたな、行くぞ」
中隊全員が戦闘準備を始める。それぞれが準備を進める中、俺の予想が正しかったかのように基地のサイレンが鳴り響いた。
『レーダー確認不能の戦術機が横浜基地に接近中!繰り出す、戦術機が当基地へ接近中!』
「なっ……!早すぎる!刻永と中尉はどうしたんだ……!?」
「タケル〜!大変だよ!モニターで確認したら、米軍の最新機ラプターが……!」
「!?…ラプターって…対戦術機特化のかよ…!やっぱり奴ら……」
美琴がそう伝えてくれ、元207訓練小隊の面々は焦るばかりだった。
「またか…何故そこまでトラブルが発生するのだろうな……白銀少尉。」
「月詠中尉…まだいたんですか…」
「フ…いては迷惑か?何、嫌な予感がしたのでしばらく留まっただけだ。……ラプター…12.5事件では味方だった機体が今度は敵とはな…」
「月詠…そなた、どうする気だ。まさか戦う気では……」
冥夜が月詠さんへ問う。
「仮にも私は近衛隊…国を守るのは我々の仕事です。それに、冥夜様も戦うのであればお守りするのも私の役目……私1人ではありますが、それなりに戦えるでしょう」
これは思った以上にいい結果になりそうだ。月詠中尉がいれば百人力。武御雷があれば…ある程度戦えるかも……
「では、そういう事でありますので…私も戦闘態勢に入らせていただきます」
「……月詠…気を付けるのだぞ…」
冥夜が去り際に言葉をかけ、その言葉に微笑みながら「冥夜様もご無事で」と応える。
俺達も吹雪へ乗り、戦闘態勢へ入る
『ヴァルキリー1より…聞こえるか、中隊は敵機が攻撃を仕掛ける前に横浜基地敷地内へは通すな!クーデター事件からの対人戦が続くが、個々の腕を信じて戦え!……中隊全員、生き残れ!』
『『『『『『『『『「了解!」』』』』』』』』』
吹雪がハンガーから出撃し、望遠レンズでズームしていくと11機のラプターが確認できた。
『嘘…レーダーにも映ってない…そんなに戦術機特化の機体を作って……何がしたいの米軍は…』
『どうでしょうね…BETAとの戦いが終わった後を考えているのかもしれない……』
柏木が米軍に対し考えているのを風間少尉が共に考え、ある程度の答えを見出す。
『……っ!嘘…ロックオンされてる…大尉!!』
茜がロックオンに気付き、大尉へ指示をもらおうとする。
『全機散開!ロックされたら振り切れ!性能面でもこちらはXM3を搭載している点で有利だ!』
大尉が散開命令を出し、各機体がそれぞれ移動する。ラプターが市街地を通り過ぎ、俺達との接触まで残り5kmとなった時……先生から無線が入る。
『白銀、刻永達には残り5機は囮だったって伝えたわ。もうすぐ来ると思うけど、それまで持ちこたえて!』
「はい!気をつけます…………ノイズが入るんですが、もしかしてこれも……」
『おそらく敵の妨害ね。それでもここまでの距離なら問題ないわ。…二人との通信はほぼノイズだらけだったけど……』
先生との通信を終え、戦闘態勢へ。接触まで……900m……500m……すぐそこ…!!
「うぉぉぉぉおおおッーーーーー!!」
ラプターが突撃砲を撃ってきたが、XM3の『キャンセル』により回避の後すぐ長刀による攻撃を開始する。ラプターの右腕に当たったが、やはり基本的な性能が高い敵機の方が有利だった。当たったはいいものの装甲が硬すぎてかすり傷しか与えられない。
『うわっちょっ……!!』
茜も同じことになっているのだろう、混乱の声が聞こえる。
すぐ近くで爆発が見え、確認すると柏木が120mm弾の攻撃を受けていた。吹雪の脚部が爆発し、既にバーニアが使えない状態だった。これでは回避もできない……
『ッ!!うっ…くそっ……!』
「!!柏木ィィーーーーーッ!!」
汗が止まらない。すぐそこに仲間がいるってのに助けに行けない……。手が震えてくる。
ダメだ……間に合わない!目の前のラプターが救助に行かせてくれない!
どけよ、なんでお前らは人間同士銃口を向け合うんだよ……人類の敵はただひとつだろ!?
もう誰も……
ラプターが柏木に向けて銃口を向ける。
「もう……やめろぉぉぉッーーーーー!!!」
突然柏木の前のラプターが何者かの攻撃を受け、爆発し左腕が吹き飛ぶ。その後、俺の目の前のラプターも管制ユニットごと大爆発する。
「何が……起こった……?ラプターの衛士は…死んだのか……」
辺りを見回すが、戦車らしきものも無い。戦術機の増援も見当たらない。すると、建物の上に2機、戦術機……否、モビルスーツが立っていた。それは龍臥が教えてくれた『ジェガン』というモビルスーツで、
『全ク……何故人ハ過チヲ繰リ返ス?』
『……坊ヤダカラサ……』
「……は?」
ひとつはバズーカらしきものを持った白色のジェガン、もうひとつはマシンガンと斧を構えた赤いジェガンがそこに居た。なんの意図があるのか理解しがたい言葉を話す声が聞こえ、思わず声をあげてしまった。
間違いない……柏木を救ってくれたのはあれらだ……
龍臥の戦艦に配属されているモビルスーツ小隊…
『ハロ小隊』だ
ハロ小隊のピークはここです。次回は月詠と冥夜の共闘です