考えていたストーリーに大幅な変更・修正を行い、時間も作ったので更新しました。不定期更新ですがまだ読んでいただけると幸いでございます。
これにて甲21号作戦編完結でございます!
ちなみに、主人公はNT設定ですが操縦力は素人同然なのでガンダム世界だとほぼ弱いです。
それではどうぞ…
「柏木ィ!!応答しろぉ!!」
龍臥は必死に彼女に対し呼びかけるが、以前応答は無い。
(信じろ…俺ならできる……守れるッ)
そう自分に言い聞かせ迫る敵から凄乃皇、僚機を遠ざけていく。決して味方機へ被害を出さぬように、ビームの出力を最小限に抑える。ビームマグナムの異常な火力を抑えてはいるが、一発発射する度に周りへの衝撃と舞い上がった瓦礫が視界をいっそう悪くする。
(クソっ!マグナムは使えば使うほど不利になる一方だ……)
マグナムをバックパックに戻し、トンファーに切り替える瞬間を戦車級が狙ったかのように飛び付いてくる。バルカン砲で撃ち落とし、周囲を警戒するが遅かった。その瞬間に飛びかかった戦車級が大量に機体に張り付き、装甲を食い破ろうと歯を剥き出しにする。
ヤバいと感じた龍臥はすかさずテューポーンシステムを起動し、張り付いた戦車級を焼き殺していく。
(危ねぇ……テューポーンシステムが無かったら……死んで…!?)
死は一度体験したが、それとは比べ物にならない程の最悪な結末なのではないかとゾッとする。
背後に嫌な感覚を感じ取り、振り返ると凄乃皇と柏木機に戦車級が張り付いていたのだった。龍臥が気を取られている間に出し抜かれた。
凄乃皇はまだしも、柏木機は無防備状態。今やられたら確実に無事では済まない。バルカン砲を一体一体撃ち込んでいくが、20体は張り付いているため全て取り除くのは時間がかかる。
龍臥は閃いた。危険だが、これしか仲間を守れない。早速、メインモニターを操作し機体のメインシステムの出力を最大に設定する。
その瞬間、僚機に張り付いていた敵が一斉にドラゴニュートに振り向く。
作戦は成功した。戦車級に限らずBETAは基本的に高性能のコンピュータを狙う。NT-Dやテューポーンシステムを積み込んだこの機体に興味を持たないはずがなかった。
さらに、凄乃皇と僚機から更に遠ざけるため機体を後向きにブースト、それを追いかけた戦車級が機体から離れる。
(よし、後はこいつらを!)
ビームトンファーとビームサーベルを最大出力に切り替え、敵を薙ぎ払う。案の定一瞬で蒸発し、とりあえずは危機を乗り越えた―――はずだった。突然背後に巨大な気配を察知、振り向くと要塞級が3体見下ろすように佇んでいた。
「…………次から次へと……」
龍臥は呆れるように吐き捨てながら機体を急上昇、ビームトンファーを一体の頭部に突き刺す。しかし他の2体が触角を飛ばし、回避運動をとるが、掠ったために右腕部のマニピュレーターを破壊されてしまう。
「嘘だろッッッ!!?マズイって!!」
要塞級の触角から出る溶解液で腕の装甲もドロドロに溶けてしまい、もはや使い物にならなくなってしまった。絶体絶命、その時凄乃皇からバリアが発生する。
「ラザフォードフィールド……?まさか……」
龍臥は最悪の結末を想像する。
突如その考えを決定づける通信が入る。
『刻永、すぐにその場から撤退しなさい。事情は後で伝えるわ』
「博士……まさか…大尉は…………!」
ワイプに映る夕呼の頷きを見て、龍臥は確信する。
「そ……そんなの、良くないですよ…いくら……いくら大尉が…決めたからと言って……」
動揺を隠せずにいると彼女は続けて話す。
『あなたもその損傷では撤退が最優先よ。まだ片腕があるからと言っても、まともに戦えないのなら戦場では邪魔なだけよ』
「…………しかし」
『柏木のことは残念だけど……』
「え」
龍臥は言葉が詰まる。まさか、とは思うが。
「博士……柏木機は大破していますが……まだ生きて」
『脳損傷、脊髄損傷、肋骨骨折…主に要塞級の攻撃でやられたのね。他にも色々あるけど、聞く?』
夕呼の発言に驚きを隠せなかったが、気になっていはいた。柏木からの応答が一切無かったことから想像はできる。しかし本当かどうか事実を飲み込めない。
「いえ、了解しました…でも、せめて遺体の回収はさせていただきます。それは止めないでください」
『……いいわ。じゃあ撤退しなさい、いいわね』
「了解」
通信が切れると同時に、龍臥は残った左腕で柏木機を抱え、推進剤を使い切るほどの速さでその場を後にする。
前を見ているが、下を向いて泣き出したい程だった。視界がぼやけ、自然と涙が溢れてくる。仲間の死の悲しさと非力な自分への怒りが混ざった涙だった。
いくつかの混線した他部隊の通信が途切れ途切れ聞こえてきたが、そんなものに気を取られていられなかった。数週間の仲だったが、共に目的を持った真に心が通じた仲間だった。その分、込み上げてくる気持ちが抑えきれない。
横からの光線級の攻撃を感じ、抱えた僚機を傷付けない完璧な回避運動をとる。皮肉なことに今必死に守っている仲間は生きていない。彼の心に大きな傷ができたのだった。
気が付くとメインモニターは作動しておらず、真っ暗なコックピットの中だった。
深呼吸で気持ちを落ち着かせる。しかしいつまで経っても気持ちは晴れない。あの時の、香織が死んだ日の事を思い出してしまい余計に悲しくなってしまう。
あのトカゲが言っていた事をもう一度思い出す。『決まった歴史を変えるのは困難』『歴史を無理に変えると元の世界に帰れなくなる』。何が正しいのか、何をすればいいのか…全くわからなくなっていた。
突然光が射し込み、眩しくて思わず目を細める。
「龍臥…………」
目の前には水月が立っていた。何か言葉を投げ掛けようとしているようだったが、言い出せない様子だった。
「すみません…………俺………………みっともない所を見せました…………」
そう言いながら無理に軽い微笑み顔を作り、席を立ちコックピットから降りようとした途端、水月に抱き抱えられた。
胸元に顔を押さえつけられ、強化装備越しに豊満な胸の柔らかな感触と温もりを感じる。
「中尉、やめてください…………俺は」
「やめてよ、そういうの」
龍臥が言い終わる前に話し出す水月。
「無理に笑うの、バレバレだから。そういうのは、隠さなくて泣きたい時に泣きなさい」
もっともである。
「それに……私の前では素直でいてもいいんじゃない」
「……水月さん…………すみません…………でした…」
「そういう時は、『ありがとうございます』よ」
水月が微笑む。龍臥は遂に涙を流してしまった。後悔と悲しみの涙を。
「すっきりした?どうよ、私のハグは」
しばらく経って龍臥は、随分と恥ずかしい事だったのではないかと思い返し赤面する。
「あ…ありがとう…ございました。おかげで立ち直れそうです」
感謝の意を込めた言葉をかける。
「私だって、みんなも悲しいわよ。でも一人で悩むのは違う。みんな同じ気持ちなんだから吐き出してスッキリしなさい!」
そう言いながら龍臥の背中をバンと叩く。
艦の甲板に出て佐渡島の様子を見たかったが、伊隅のとる最期の行動・佐渡島ハイヴを島を巻き込んでの自爆は余波が凄まじい。隣には柏木機の無惨な姿があったが、それは非常に勇ましく、誇らしい、何とも言えない美しさがあった。兵士としての仕事を最期まで終えた勇姿がそこには確かに残っていた。
伊隅の最期の立ち会いに向かうため、急いでその場を離れる。
巨大なモニターの全面には、伊隅が映し出されている。その顔は以外にも清々しく思えた。そのモニターの前には中隊のメンバーが揃っている。本来、私的な通信は不要なのだが戦艦・国東と最上のふたつに、帝国側の指揮官達が要請し、有線の秘匿回線を繋いでくれた。全員何も言わずに伊隅へ向かい敬礼を行う。
伊隅はそれぞれ部下へ言葉をかけており、最後は龍臥の順。
『――――刻永』
伊隅が話し始める。
『貴様はこの戦いでよく成長したといえる。だが、ここから先…自分だけでは解決できない事も必ずある。だからその時は、仲間を頼れ。ただ独りで戦う事はできない。貴様なら……人類の勝利に向かう事ができる。
共に戦えて良かったぞ、少尉』
「大尉……―――――お世話になりましたッ!」
(大尉…………柏木………………短い間でしたが、共に戦えて光栄でした。ありがとうございました!!)
龍臥は静かに敬礼を行った。彼女らの魂に、安らぎが訪れる事を願って。
12月25日-AM:11:00
龍臥達A-01部隊は帰ってきた。あの戦場を生き延び、横浜基地へ――――。
帰ってきて直ぐに軍服に着替えた後、司令室に招集される。司令室に着くと、そこにはラダビノット司令の姿が。
「諸君、よくぞ困難な任務を達成してくれた。私は諸君を誇りに思う」
そう言い司令は話を切り出す。
「一方で伊隅大尉、柏木少尉を失ったことは誠に残念でならない。二人の人類への貢献を鑑みれば、本来二階級特進をもって軍葬を行うべきものだ」
司令は顔色を変えずに話を続ける。
「だが我々オルタネイティヴ計画に携わる者にはそのいずれも許されない。公式には軍事訓練中の死亡として記録される」
実際、オルタネイティヴ計画に関わっている龍臥達はその情報漏れを防ぐためにあえて機密情報扱いとなる。
納得いかないものではあるが、それが軍隊なのだ、と龍臥は考える。
「人類は僅かではあるが勝利に近ずいている。諸君のより一層の奮戦に期待する!」
「「「はい!!」」」
司令の言葉に中隊全員が応える。
その後、水月は司令直々にA-01部隊の指揮官に任命される。彼女が指揮官ならば亡き大尉も任せられるはずだ。
司令室を後にした中隊は、桜の木を墓標にした遺体も何も無い部下のみの非公式の部隊葬に参列した。柏木の遺体はあったのだが、それは別の場所で弔われる。
今国全土は佐渡島ハイヴ消滅を祝ってお祭りムードとなっている。その中で帝都では亡くなった兵士へ弔いの盛大な式典が行われるらしい。
(俺は……何も出来なかったな…ただ戦って、作戦通りに動いて……)
龍臥は後悔の念に押しつぶされそうではあったが、亡くなった二人を思い出すとそう思ってもいられなかった。
その弔い後、水月から中隊全員へ今後についての話があった。自身が指揮官であるが中隊名は変えず『伊隅ヴァルキリーズ』のままのこと。それが二人が残った証と信じて。
「―――それじゃあ解散!今日くらいしっかり休むようにね!」
「「「了解!!」」」
長いようで短かった一日が終了した。
武は夕呼に呼ばれたため向かうが、龍臥に聞きたいことがあったため少し話をする。
「龍臥……あの『ゼロシステム』って言ったけか?あれなんだけど」
龍臥はハッとする。何か見えたのか、何を見たのか問い詰める。
「いや…横浜基地……なんだけど、何か……ヤバそうな…一瞬しか見えなかったんだけど……」
「……ついに……か」
龍臥が最も恐れていた事が発覚する。それはあの――未曾有の被害を出した最悪の戦い…
『横浜基地防衛戦』そのものだった。
甲21号作戦編、これにて完結。ありがとうございました。それでは次回もよろしくお願い致します!