あ、因みにこれバージョンは結構前の奴なんで、二刀流とかありません。
取り敢えず、謎の男は敵ではない事が分かった。話す言語は本当に謎、いや、そもそも話していたかな…?まあいい。とにかくここは私の知る世界ではないのだ。まあ、アビスのことだ。どうせ帰還していない探窟家の方が多いのだから、こんなこともあるだろう。
因みに、謎の男はスティーブと言うらしい。彼に聞いたわけでも何でも無いが何故だか理解出来た。これも謎だ。
スティーブは、何故か私を見かけるとジャガイモを貪ったが、急いで家に入ると何故か私に様々な物を渡した。
大きなステーキ、パン、リンゴ、ニンジン。変わり種では小麦や石炭など。何故か宙に浮いた為に受け取らないと吸い込まれるように彼に回収された。……今どこにしまった?
だがこちらを歓迎しているらしく、大人しく彼の案内に従い周囲を見て回った。
見れば見るほど牧歌的で自然豊かな景色で、アビスに籠りがちだった私からすれば中々に癒やされた。
最初は牛の牧場。そこにはかつて見たこともある牛がのびのびと……などしておらず5メートル程の柵内にぎっしりと詰め込まれていた。これを見た瞬間は珍しく頭が真っ白になったものだ。囲っている木の柵は木材らしい柔らかさだったのだが、接合部などどこにも見当たらず、まるで彫りだして作られたもののようだったから驚いた。牛も牛でこの状態で生活出来ているのが謎で仕方ない。ここまで密集されていると目にも耳にも喧しくてしょうがない。
待った、何故小麦を与えるだけで一瞬で仔牛が産まれるんだ。そして仔牛はそれでいいのか。……いいらしい。
次は畑。こちらは先程のカオスに比べるとマトモだった。確かに範囲はそれほど広くは無かったが、これも一人暮らしであると考えればむしろ広い方だろう。
…成長速度には目をつむる。これでいて私の知るものと何の違いもないのが逆に恐ろしい。
収穫した小麦でパンを作っていたのだが、小麦3つを横に並べるとパンに変化した。……しっかり焼きたてのパンだった。
後は下に続く洞窟。今日は中には入らない様だが、こちらの方が私には馴染み深い。
家の周辺にあるものといえばそれ位で、他に目立つものは無かった。現在は溜まった疲れを落とす為に彼の家で寛がせてもらっている所だ。この椅子も見た目に反して座り心地は良かった。
備え付けられた窓から外を眺めると、例の彼が1メートル程のジャンプを繰り返しながら走り去っていった。膝も曲げずに疾走する姿はアビス産の原生生物を彷彿とさせた。
落ち着いて観察してみると中々いい家だと分かる。狭すぎず、最低限の生活器具は揃えてあり、簡素に纏まっている。そしてそんじょそこらの攻撃では壊れないのにもポイントが高い。この性質を使った装備なんかも探窟家としては欲しいかもしれない。
まあ、木造なのにあちこちに松明が乱立しているのはどうかと思うが。
さて私としては特段戻ろうとは考えていない。探窟家を目指した理由だって大したものでない上、何か心残りがあるわけでも無いし。未知ならここにも溢れているからね。
ポコッ
壁を突き破って家に入るのは如何なものかな?
「ああ、そういえば私の装備を知らないかい?まあ言葉は通じていないが……そうだねぇ」
軽く服などを指し示して伝えると、把握したのか、チェストから私の装備をポイポイと投げ渡してくる。
「重い」
今迄千人楔の力に頼った弊害か。いや、この装備はそもそもそちらの力に合わせて調整しているのだから今の私が身につけても重荷にしかならない。
まあアビスに潜るという訳でもない。早急に必要にらならないだろう。今は仕舞っておくと言うと、ベッドのそばに新たなチェストが置かれた。使えということらしい。……千人楔、あるのか。
軽く腹が空いてきた。どうやらいつの間にか昼時になっていたらしい。勝手に他人の家の食料を食い漁る、なんてことはしない。するとしても勝手知ったる仲間程度だ。…とはいってももう生き残ってる奴なんていないに等しいが。
するとこちらのチェストに何かしらを入れているらしい。離れた後に見ると、ステーキ、チキン、焼き豚から、先程のパンが入っていた。
「へえ、中々うまいじゃないか。調味料は入れないタイプなのかね」
声を掛けてみるが、やはり通じないらしい。私の方を向いたかと思うと家の壁を破壊し始めた。よく分からない行動だが、それは人の自……成程増築しているのか。
私がランチタイムを終える頃には、新たな部屋が一つ作られていた。急造だというのに周りと調和が取れている。
破壊だけなら、私達の様な分類にも出来るけど、ここまで素早くしっかりとした建築技術には正直目を見張るものがある。これなら深層でも快適な拠点が造れるかもしれない。
「おや、私の部屋かい?ありがたく……違う?」
問いただす間もなく、あっという間に内装は移動され、生活感の漂う一室になった。どうやら彼がこの部屋を使うらしい。私は客人の様な対応を取っているのだろう。
完成の舞なのか、ピョンピョンと跳ねながら腕を振り回し、首と腰も鬼の様に激しく動かしまくっている。
「…その首と腰はどうにかならないのかな」
暫くそうしていたかと思うと、急に何かに気づいたように焦り始め、外へと飛び出していく。
「どれ、何か面白いことでもないかねぇ」
ガチャリ、と後に続くと、家主と緑色の珍生物が追いかけっこをしていた。……何だコイツ。あ、爆発した。成程、そういう原生生物か。どうやらここにも脅威はあるらしい。
「大丈夫かい?」
爆発で出来た穴を覗きこむと、首をぐるんぐるんと振り回し、謎のアピールを繰り返していた。何を言いたいのか一向に理解できないが、ここまで動けるなら充分だろう。
ステーキは手づかみで食うもんじゃないだろ。
時は過ぎ、夜。今ある千人楔を全て刺し終えた頃にそれはやって来た。
『ア゛ー……ヴー』『カラコロカラコロ』
窓越しに人の影が見えると思ったら、弓を持った骸骨や、死体が闊歩していた。中には昼に見かけた緑の生物もいる。隣の彼は慣れているのか、特にリアクションも無く何かの台に色々な物を置いては回収しを繰り返していた。
「へえ…。私も不思議なことにかけては慣れているつもりだったけど、少し驚いた。何故死体が動いているんだ?アビスですら生物としての規格を外れたものは無かったというのに」
死に体でも生きているのは、寄生した虫が脳内麻薬を過剰分泌させ生命維持をしているから。どんなものでも透けてしまう生物は群体がアジの群れの様に大きく擬態していたから。奇形の生物は場に対応した進化によるもの。
全て、研究すれば何から何まで分かってしまうものばかりだ。しかしこれはどうだろう。死体も骸骨も、どうやって動いているのか。目に見えない生物が操っているのか?それにしては無駄な動きがある。さらには目を向けた先で現れる瞬間も捉えた。
周囲に何もない場所で、他の物体に何の影響も起こさないままそこに死体が出現した。謎だ。
そもそも死体が操られていると言うなら見渡す限りが死体で埋まり、地面から現れているとするなら家主の穴掘りで見つかっているだろう。昼には現れないのも面白い。
もう少し眺めていたい気もするが、家主が寝ろと急かすので仕方なく眠ることにした。……やわらかい。私が使っているのとは大違いだ。
朝方、目が覚めると死体共が燃えていた。どうやら日光に弱いらしい。全身が炎に包まれ、またたく間に消滅し、そこには宙に浮く肉が残された。オイ。そうはならないだろ。
そして骸骨は日陰に入ってしのいでいた。脳味噌が無い方が賢いというのはどういうことやら。
待った、家主。何を見つめて………流石にそれは私でも引く。
オーゼンが驚く箇所やその反応が全く分からない。正直リアクションと地の文ですごい推敲させられるわ