SOS団VSスケット団   作:SPIRIT

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今回は初めてハルヒ達が、スケット団の部室へ遊びに行きます。



第2話『宇宙人と宇宙人』

「これが、スケット団に関する資料だよ」

 北高にスケット団がやってきた翌日、SOS団はスケット団に関する資料を熟読することになった。

 長門が配布する資料を見て、キョンは、よくここまで調べられたな、と思った。

 ネットから発掘したと思しきスケット団3人の顔写真も、しっかりと載せてある。

 彼はヒメコの白い顔に、すぐに目が留まった。

「スケット団、正式名称は開盟学園・学園生活支援部。

リーダーのボッスンこと藤崎佑助、

武闘派のヒメコこと鬼塚一愛(ひめ)、

情報通のスイッチこと笛吹和義の3人からなっている。

皆、私達と同い年」

「昨日の3人よね、なーるほどね!」

 ハルヒは例のごとく感嘆の声を上げる。長門はつづけて説明する。

「学園の生徒が楽しい学校生活を送れるように、相談ごとやトラブルの解決など、人助けに取り組んでいる頼れる学園のサポーター集団」

 ほお。

 皆皆目を輝かせた。的屋が据え物を刀で見事切った時の観客の表情である。

「……と言うのは建前で、実際は学園の便利屋扱い。依頼も少ないらしい。

ネットの情報を見る限り、一応皆皆に好かれてはいるみたいだけど」

 輝いた皆の目が、あっという間に沈んだ。

 がっかりさせるな、とキョンは思った。

 まあ依頼人のペットをここまで追いかけるあたり、確かにやることは便利屋っぽいが。

「そうなの?」

「涼宮の退屈を満たせる要素なのかどうかは、はっきり言って分からない」

「近づくのはやめた方がいいんじゃねえのか?」キョンはハルヒに苦言をしてきた。「つまるところ、さほどの部活ではないってことだ。それに他校の部だし、向こうにだって迷惑がかかるだろう」

「何言ってんのよ! 有希の調べてきたことはあくまで表の情報!! 実際に近づいてみなけりゃ、分からないところもあるでしょ!!」

 いや、ネットの情報は裏情報だろう。それにわざわざ調べろと言ってきたのは誰だ。キョンははっきりとそう思った。

「私もちょっと、今回は賛成できかねる。あっちの件もあるし」

 長門が意外にも、反対してきた。

「有希……?」

「鬼塚について調べたけど、彼女は中学時代、『あおば中の鬼姫』と呼ばれた伝説の不良だったらしい。

ホッケースティックでバッタバッタと喧嘩相手を倒していたという話」

ハルヒ以外、周りの空気が凍りついた。

「あの人が……」

 キョンも声を上げる。

 みくるはおびえながら、

「そ、そんな怖い人と接しなければいけないんですかぁ……?」

 明らかに涙目で、震えた声で言う。

「深追いすれば、キレられる可能性もある」

「ふん」ハルヒはプイと顔をそむけて、「そんな時はそんな時よ。それに虎穴に入らずんば虎子を得ずと言うでしょう」

「まあとりあえず」古泉が笑顔を苦笑いに変えて、「相手の感情を刺激しない程度に接していきましょうよ。暴力沙汰になれば、向こうだって都合が悪いでしょうし」

「古泉君の言う通りね。気をドッカーンとでかくすれば、怖いものないわよ」

 ハルヒは例のごとくがなった。

 かたやキョンはうつむき加減で考え込んでいた。

 自分の通っていた中学があおば中に近く、友人たちに『鬼姫の縄張り』をいくつも教えられ、近づかないように諭されていたものだった。

 その時は、いや、今の今まで、鬼姫はもっと荒くれて頑丈な大女だとおもっていた。

 だけど今回、鬼姫と呼ばれた少女は……。

 金髪で、色白で、華奢で、何より自分が一目ぼれしてしまった人物。

 信じられなかった。

「とにかく、出発するわよ、そろそろ開盟学園の放課後のころだし」

 ハルヒはたった一人、駆け足でSOS団のアジトを飛び出してしまった。

 後の皆も、古泉はニコニコと、みくるは震えながら、長門は飄々と、そしてキョンはしぶしぶとついていく。

 

 

 開盟学園は北高から歩いて5分ほどのところにあり、さほど疲れるものではない。

「さて、開盟学園到着ね」

 開盟学園の授業が終わる時間帯を、ハルヒは調べていたらしい。

 ちょうど放課後に、ハルヒ達SOS団は、開盟学園の校門にたどりついていた。

 校庭ではサッカー部やソフトボール部のメンツが、懸命に練習に励んでいる。

 そこから駆け足で入口にたどりつく。

「おや、おめえら、服装を見る限り北高の生徒だな」

 白衣を着て、無精髭を生やした中年の男性教師が、入口近くを通りかかって、けだるげな声で言った。

「先生、スケット団の部室ってどこですか!?」

 ハルヒが言う。

 あまりに直接的すぎる。まずはどうして他校の生徒がこの学校に来たのかを説明するのが普通だろう。

「んあ? そうだな、向こう行って真っすぐ、右手の部屋だ。『スケット団相談受付中』という貼り紙があるからすぐわかる」

 って教えるんかいな。どこの馬の骨ともわからぬやつに。この先生も不真面目だな。

 キョンはちらりとそう思った。

「おめえら、ボッスン達とは友達かい」

「実は私達、世界を面白くするための涼宮ハルヒの団体、えすおー……むぐっ!」

「俺達はボランティア団体SOS団の者でして、スケット団の活動に非常に興味をもちまして、見習いたくて調べてるんですわ……」

 ハイテンションでがなるハルヒを、キョンが口をふさいでフォローした。

「なるほど」教師はにやりと笑い、「実は俺は、そのスケット団の顧問をやってるんだよ。中馬鉄治というんだがな。俺の作った薬が、スケット団の依頼解決につながることも多い」

「薬!?」

「今までも人格が入れ替わる薬とか、幼児化する薬とかを発明して、スケット団の依頼解決の手助けをしている」

「うわー!!すごいじゃないですか」

「びっくりですー!!」

 ハルヒとみくるが、目を輝かして顔を近づける。

 オイオイ眉唾だな、ドラえもんじゃないんだから。それにそんな薬が依頼解決につながるんか?

 キョンは思ったが、そこまでは言わず、

「またまた、すごいですね……」

「是非とも見せてくださいよ!! 今すぐ!!」

 目を輝かせてハルヒは言うが、中馬は相変わらずけだるげな感じで、

「今はあいにく材料が切れて未完成。ま、完成したら実験台を引き受けてくれや」

 皆、拍子抜け。

「是非とも完成したら教えてください! さっそく実験台になりますんで!!」

 ハルヒは頭を下げると、中馬に教えられた方向に駈け出した。

「おいおい、実験台引き受けちゃっていいの……?」

 キョンは呟きながら、ハルヒについていく。

 無論、ハルヒもキョン達も、道行く2人の女の子の会話には気づかなかった。

「あれは、北高の生徒達……?」

「そうみたいですね」

「どうやらスケット団に興味があるみたいだが、どうする?」

「……」

「一応、安形会長に話したほうがいいかもしれないな」

「……そうですね。場合によっては、私の家の力を借りたほうがいいかもしれません。」

「NSK(何・しに・きたんだか)……」

 

 

『北高SOS団……』

 スイッチの呟きに、ボッスンとヒメコは反応した。

「んあ?」

「昨日のあの変な子たちのことかいな」

『ああ、あまりに暇だったんで調べてみたんだがな。ハルヒ達のことについて』

 依頼の来ないスケット団の部室では、ただ静粛な時間だけが、ゆっくりと流れている。

 ボッスンとヒメコは、スイッチのノートパソコンを覗き込む。

 何やらサナダムシが腹を下したような感じのように書かれている『SOS団』の文字がディスプレイに写っている。

 その下に、SOS団5人の顔写真も載っている。

『表向きは「生徒社会を・応援する・世界づくりのための奉仕団体」だが、実際は「世界を・面白くする・涼宮ハルヒの団体」の略ということらしい』

「はあ……うさんくせえ奴らだなあ」

 腕枕をしながら、ボッスンはぼやく。

「まあ、学園の便利屋のうちらが言えた義理でもあらへんがね」

 ヒメコは自嘲的に言う。

『団長は校内一の変人と呼ばれている涼宮ハルヒ、副団長は古泉一樹、マスコット・朝比奈みくる、無口キャラの長門有希、平団員のキョンからなっているようだ』

「ちょっと待ちぃ。『キョン』って、変わった名前やなあ」

『「キョン」というのは愛称。本名は知らない人が多いらしい。まあそれでも通ってきたらしいんだがな。

朝比奈みくるは俺達より1つ年上、後のメンバーは皆俺達と同い年。

校内外の超常現象について探しだす日課がほとんど。

目標は「宇宙人や未来人や超能力者を見つけ出し、彼らと遊ぶこと」らしい。

活動費は文芸部からネコババしているとか』

「はあ?……ますます怪しげな奴らだ」

『実際に、涼宮ハルヒには考えたことが現実化する神のような能力があるとか、

宇宙人や未来人や超能力者が、このメンバーの中に混じっているという噂もあるがな。

無論俺は信じていないが』

「相変わらずお前の情報網はすげえな。それにしても怪しいこと極まりねえなあ、SOS団……あいつらに俺達をアピールしたのはまずかったかなあ」

「たのもーっ!!!!」

 ボッスンのぼやきは、ハルヒのがなり声と扉が開くドンという音にかき消された。

「ノックもせえへんのか……」

『噂をすれば……』

 

 

「遊びに来ましたよー!! スケット団!!」

 元気なハルヒの声である。

「言っとくが、今は依頼ねえからな。別に面白いことも何もねえよ」

 机に座って頬づえをつきながら、ボッスンはハルヒに毒づいた。

「はあ? 何よそれ! せっかく私が興味を持ってここに来たというのに、何で依頼がないのよ!?」

「俺に聞くなよ!!」

 けだしもっともだ。キョンは思った。

 どうやら長門の言う通り、暇な時間が多いらしい。

「ったく、いっつもこうして暇を持て余してるの!? この部活は!?」

「しょうがねえだろ! 大体依頼がねえってことは、それだけこの学園が平和ってことじゃねえのか!?」

 おいおい、それは自慢にならねえって。キョンは思う。

「早い話が、この部は失業状態ってことじゃない!! 何よそれ!」

「あんたなあ! 人をばかにするのもええ加減にせえへんか!?」

 ハルヒの自分勝手な言いっぷりに、額に血管を浮かべたヒメコが、ホッケークラブを肩にかついでずかずかと進んできた。

「あ、ヒメコ、暴力はよそうな……」

 たしなめるボッスン。

 ひっと涙目で腕に抱きつくみくるを見て、キョンはハルヒとヒメコの間に割って入り、

「ま、待ってくださいよ……。ええと、ヒメコさん。

こいつは学校の退屈な日々が我慢できなくて、こんな部を思いついて、変な行動を積み重ねて、こうして貴方達の部活に興味を持ってここまで来てるんですよ。

何か派手なものを一つ二つ見せれば、ハルヒも満足すると思いますよ。」

 ヒメコの白い顔に頬をあからめつつ、怒りの矛先が今度は自分に向かないかと、彼は冷や汗をかいた。

 しかしながらヒメコは、機嫌を直しつつホッケークラブを下におろし、

「……ま、そうやな……。ほならスイッチが、何かいいものを持ってるかもしれへんな。

発明が趣味やし」

「発明?」

 ハルヒの目が輝き、いつも無気力なキョンもちょいと興味を持った。眉唾だが。

『依頼解決のために、使えそうと思って作ってるんだがな』

「いや……」キョンは冷や汗を流し、「スイッチとやら、その声何とかならないか? どうも俺とそっくりな声を聞くのは気持ち悪いもんで……」

「まあまあ、キョン君」今度はヒメコがキョンをたしなめる。「そんなに過剰反応しなくてもええんやないか? 大体小説で言っても何も分からへんし」

「ちょっと待って、何で俺の名前、もとい仇名を知ってるんですか?」

「うちのスイッチが全部調べてくれたんねん。SOS団のことも、あんたのことも」

無表情でパソコンを動かすスイッチを見て、こいつ何者だとキョンは思った。

『……仕方がないな。万が一このシステムが故障した時に代用する声紋アプリがあるんだが』

 スイッチがカチャカチャとパソコンを動かすと、

『アー、アー、テスト、テスト』

 急に彼の声が、ヘリウムガスを吸ったかのような、甲高い間の抜けたものになった。

「……何だか犯罪者の変声みたいだけど、まあいいや。

で、発明品と言うのは何だ?」

『まあしばし待ってくれ』

 スイッチは部屋の隅っこにあるロッカーから、大きな段ボール箱を引き出した。

 

 

 スイッチは段ボールの中から発明品を取り出す。

『トゥルルットゥルー♪ 「Fu☆Fu☆風香ちゃん」ん―』

「「ドラえもんか!」」

 キョンとヒメコの声が重なった。

「あ……。突っ込みかぶっちゃいましたね、ヒメコさん」

「いやいやキョン君、お互い仕事やからもしれへんしな。気にせんといてや」

 顔を見合わせ、キョンは余計に顔を赤らめた。

 突っ込みが被ったことに、彼女も照れている。

 そのはにかんだ表情を見て、キョンは熟したリンゴのように紅潮した。

 さて、改めて皆が『Fu☆Fu☆風香ちゃん』を覗き込むと、

「アーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」

 部屋中にみくるの悲鳴が響いた。遠くの壁に激突して尻もちをつく彼女。

 発明品を見て、キョンもぎょっとなった。

 ピンク色の髪で目が大きく、顔こそギャルゲーの美少女と言った感じだが、首から下がない。

 代わりに下からいくつもの黒いコードが生えている。

「……何だ、このナ○首……」

『友達の小田倉君のために作った、ラーメン冷まし機だ。』

「……なんじゃそりゃ」

「へえ、面白い発明品ですね」

 半ば呆れ気味のキョンに対し、古泉は興味シンシンに聞いている。多少笑顔がひきつっているが。

 ハルヒの顔を見ると、唖然とした表情。

 スイッチは風香ちゃんの頭を運び、首の下にあるアタッチメントを、デスクライトのような黒い台に取りつけ、コードをすべてつなげると、

『試しに使ってみよう。ここにカップラーメンがある。隣に風香ちゃんをセットして、起動』

 ボタンをぽちりと押すと、

『ラーメン熱いねー♪ 熱いねー♪ やけどしちゃうねー♪』

 首だけの風香ちゃんがしゃべり始めた。

 アタッチメントが動いて頭部が前に傾き、風香ちゃんは『ふー♪ ふー♪』とカップめんに息を吹きかける。内部に扇風機があり、それで風を送っているのである。

『ラーメン冷めた? 麺かたこってり?』

 可愛い声でぺちゃくちゃとしゃべる風香ちゃん。

「……いや、これちょっと気持ち悪いって。大体何で首だけなのよ……」

 ハルヒも多少引いている。

 キョンも、これはよほど豪胆な人間しか使えないだろうと思いつつ、後ろで怯えまくってるみくるを肩越しに見た。

「でもまあ、そう簡単に作れるものでもないですし、いいんじゃないですかね」

 ひきつり笑いをしながらフォローをする古泉。

 その横で、長門は目を輝かせながら顎に手を当てて、ずっと風香ちゃんを見ている。

『まあ実際、小田倉君にも「正直これはない」と言われて突き返された。

ともあれ、あまり気持ちが悪いと言われるのも心外だ。ではこれはどうだ。頭部シリーズ第二弾』

 スイッチは再び段ボールの中をほじくり返し始めた。

「頭部シリーズって……」

 またろくでもないものだろう。キョンは段ボールの中を覗き込んだ。

『トゥルルルットゥルー♪ マーンドセールゥー♪』

「だからドラえもんかって」

 スイッチに突っ込みつつも、その『マンドセル』をみて、キョンは危うく胃がむかつきかかった。

 本物のマンドリルの頭にランドセルのようなひもがついた、奇妙な物体である。

「……スイッチ、これは何だ……?」

 嫌にマンドリルの顔がリアルである。

『これは立派な鞄だぞ。デザイン性の高い鞄がほしくて開発した。

機能的なランドセルと、色鮮やかな色で知られるマンドリルの頭を合わせて作ったものだ』

「っていうか、マンドセルって言いたかっただけじゃねえのか……?」

マンドセルの口は、そのままマンドリルの口にあるらしい。そこから小物を入れるスイッチ。

「いや、口がそのまま鞄の口なんかい。生々しいことこの上ないだろ」

『いや、頭頂部からも出し入れできる』

 スイッチはマンドセルの頭頂部(つまり、傍から見たらマンドリルの頭の毛)を開き、ポケットティッシュを詰め込む。

 その分ゴムでできたマンドセルの頭部が、むくれるかのように膨らんだ。

「いや、だから生々しいんだよ……」

 キョンが部屋の隅っこを見ると、とっくにみくるが卒倒して床に転がっている。

 古泉の苦笑いがさらにひどくなり、変人のハルヒですらドン引きの表情で発明品を見ていた。

 そりゃあな……。

 ため息をつくキョンが胸をつかれたのは、今まで黙っていた長門が声を出した時であった。

「……どっちもなかなかいい発明品だと思う。私は風香ちゃんもマンドセルも2つともほしい。笛吹、どうにかできないの?」

 長門が、感情のない声になるべく感嘆の思いを入れてしゃべった。

 目が輝いているあたり、本当に感銘を受けているらしい。

 ドン引きの空気が、皆の周りを席巻する。

 カラスが「アーホー! アーホー!」と鳴き始めた。

『……別にあげてもかまわないが、条件が1つだけある』

 スイッチは長門に、交渉を持ちかけた。

「条件? 何でも。」

 長門は真剣な目で、スイッチと視線を交わした。

 

 

「しかし大丈夫かいな、SOS団に発明品を渡してもうて」

 SOS団が去った後、ヒメコが心配げにスイッチに尋ねる。

『大丈夫だろう。大体依頼解決には使えそうなものでもないしな。さすがに自分でも引いたものだし』

「作る前に気づけ」

『これを渡す代わりに俺達から手を引いてくれるという約束だから、儲けものだろう』

 スイッチは飄々と答えた。

「ま、そうだな……つーか頭部系統を気にいるとは……。

あんなのを気にいること自体おかしいけどな。お邪魔虫がいなくなること自体得と言えば得だろう。さて、依頼を待つとするか。」

 ボッスンはうなずきながら、持ってきた携帯ゲームを取り出して遊び始めた。

「あいつ……もう来んのかいな……?」

 1人呟くヒメコ。

「ヒメコ?」

「キョン君や。ちょいと地味やけど、SOS団の中では良識あるほうやからな……」ヒメコは窓を開け、北高がある方角を見つめた。「案外宇宙人や未来人や超能力者って、あいつかもしれへんで……。能ある鷹は爪を隠すというし。」

「見方が穿ちすぎだろ。大体宇宙人や未来人や超能力者って普通いないぜ。いるとすればあの長門ぐらいさ」

『そうだな』

 日は傾き、空はオレンジ色になっている。

 

 

 風香ちゃんとマンドセルをスケット団からもらい、持って帰ったSOS団。

「ま、これだけでも儲けものよ!」

 ハルヒはとりあえず喜んでいたが、正直キョンはドン引きしていた。

 最初はハルヒの発案で、SOS団をより目立たせるために、アジト入り口の両脇に2つ並べておいておいたのだが、

「しかしどういう事よ! SOS団に華をつけるために入口においておいたのに、『公序良俗に反する』って!」

 すぐさま先生たちから苦情を言われ、部屋にしまうことになった。

「まあ正直傍から見たら、女の子とマンドリルのサ○シ首だからな……。正直卒倒した人もいたと思うぞ」

 ぼやくキョン。

 案の定、みくるは部屋の端っこで、マンドセルと風香ちゃんを見据えたまま、魂が抜けたかのように虚脱して震えている。

「でも笛吹さんがせっかく苦労して作ったんだから、それは評価してもいいんじゃないですかね。

この風香ちゃんはラーメンだけでなく、お茶にも応用できますしね」

 ニコニコと話す古泉の目の前で、風香ちゃんが『ふー♪ ふー♪ ラーメン冷めた?』といいながら緑茶に息を吹きかけている。

 慣れてしまったらしい。

「笛吹は意外と発明の才能あると思う。このマンドセルも使いやすい」

 長門は無表情で、マンドセルのサイド部分から(つまり、傍から見たらマンドリルの口の中に入れるような形で)自分の荷物を詰め込んでいる。

「……何でこんな気持ちの悪いものをお前といい、古泉といい、使ってるんだ……」

 もはやキョンは、呆れてものも言えなくなっていた。

「……案外期待外れね、スケット団。もうちょっとおもしろいものだと思ったんだけど」

 ハルヒはため息をつきながら、窓の外を見つめ、ぼそりと呟く。

「そんなもんだろ」キョンは肩をすくめて、「案外一皮むけば、大体どんな派手そうな部活でもやってることはつまらないものさ」

 茜色の空を、キョンとハルヒは見つめていた。

「スケット団の追っかけ、やめようかな……」

 呟くハルヒに、キョンは中馬先生との約束はどうするんだと思いつつも、

「いいんじゃねえの? 他校に迷惑をかけるばかりだし」

 うなずきながら言った。

 長門は自分の荷物すべてを、自分のかばんからマンドセルに詰め込んだようだ。マンドセルはまるでむくれたかのように膨らんでいる。

 そのまま長門は、空になった自分のカバンを肩にかけ、マンドセルを背負って部屋を出て行く。その姿はさながらマンドリルの頭部をしょっているかのよう。

 キョンはそれを見て、ぎょっとなりつつ、

「……本当にお前といいスイッチといい宇宙人だな……。

っていうか俺達、今頃学校のみんなからキ印と思われてるだろうぜ……」

 キョンはやれやれと呟きつつ、でもまあこれで、他の学校へ行かなくてもすむ、他人に迷惑をかけなくてすむと安心感を覚えつつあった。

 ただ1つ。

 もうヒメコさんには会えないのか。

 と残念な思いを一点抱きながら。

 過去に鬼姫と恐れられていた彼女は、多少血の気の多いところもあるが、女の子らしいところもある。

 本性は朝比奈さんと同じで、案外気のいい子なのかもしれない。

 再会できるか否かは天任せか。

 

 

続く

 




 はいどうも、SPIRITです。
 この作品をかくと決めてから、構想を少しずつ決めて話をつくっていますが、どうも難航するばかり。
 一旦思いつくと後はすらすら書けるんだけどね。

 今回の話もSKET DANCEの『バッド・サイエンティスト』(アニメでは第27話『おねえさんとバッド・サイエンティストといっしょ』)に毛が生えた形での話になっちゃいましたけどね。コメディパートを意図的に入れて軽く明るく、青春応援歌らしくと思いながらやっています。(この点でも自然体で書いた前作『Cross Ballade』とは一線を画す形です。)
 ともあれ力及ばず、納得いく出来栄えではなかったり。
(もともと自分は人を笑わせることは苦手だしな。)
 それでも、SOS団とスケット団が、少しずつ距離を縮めていく予定でいますよ。

 ちなみに
 ハルヒ×ボッスン
 キョン×ヒメコ
 長門×スイッチ
 という組み合わせを考えていまして、キョンとヒメコはいずれ恋仲になる予定でいます。
 ボッスンとハルヒの関係も大体決まってるんですけど(やっぱり恋人関係がいいのかな)、長門×スイッチの出番がなくって、今回はそれを強調したつもりでいるのですが……どうでしょう?
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