日本国召喚 独立艦隊の奮闘 作:yyyyyyyyyyyyyyyyyyy
評価9をつけてくれた護衛艦ゆきかぜ様、暖かい言葉をかけていただきありがとうございます。
第11話 望まぬ衝突
フェン王国での軍祭が開かれる三週間ほど前、第二文明圏 レイフォル国 首都レイフォリア―――
「陛下!!ここはもうダメです!!早くお逃げください!!!」宰相が大声で叫ぶ。列強が一角、レイフォルの誇る美しい首都レイフォリアは火の海と化していた。
「何故だ...?何故、こんなことに...?列強たる我が国が、蛮族の新興国家に何故敗れるのだ..??」皇帝は壊れた人形のように自問自答を繰り返す。
「!!!陛下っ!!!城が崩れます!急いで避難を!!ああっ!!」側近が無理矢理皇帝を引っ張り出そうとしたその時、天井が音を立てて崩れ始める。
「陛下っお早く」運悪く側近の頭上から落ちた瓦礫が彼を潰してしまった。もう皇帝は動こうともしない。
「何故だ...何故なのだ...」その直後、城は完全に崩れ落ち、皇帝も城と運命を供にした。それにより、完全に指揮系統を失ったレイフォルは降伏した。
レイフォリア沖、グラ・バルカス帝国監査軍旗艦 戦艦「グレードアトラスター」
「撃ち方やめ、撃ち方やめ」
命令が下り、砲撃が止む。目標であるレイフォリアは原形を留めないほどに破壊されており、真っ赤な火が夜を照らす。
「もう、これで十分だろう。それにしても何とあっけない...。この程度で列強とは笑わせる。この世界もたかがしれているな。」艦長ラクスタルは双眼鏡から目を離し、そう呟く。
グラ・バルカス帝国、日本と同じく突然としてこの世界へ転移してきた。前世界ユグドで最強の国家であり、世界の支配までもう少しと言われていた。だがそれを前にして突然この世界へ転移してきた。当初は右も左も分からぬまま平和的な外交を行っていたものの、とある国に派遣した帝国の貴族が処刑されてしまったことにより一気に姿勢を変えた。そのパガンダ王国とかいうふざけた国を一瞬で滅ぼしたところ、その親玉らしい国、レイフォルも宣戦布告してきた。列強というから少しは骨のある相手かと思っていたが、最強の帝国軍からすれば羽虫のごとき弱軍だった。彼らを止められる存在はいないだろう。
「よし、本国へ帰還するぞ。任務完了だ」
ラクスタルはそう告げ、グレードアトラスターはその巨体を翻し去っていった。僅か5日で列強が滅ぼされたこのニュースは瞬く間に世界に広まり、たった一隻で首都を壊滅させたグレードアトラスターは生ける伝説となった。この事は日本の耳にも入ることになる。
そして時は戻り、フェン王国軍祭の日―――
「困ったことになった。レーダーが探知した飛竜だが、フェン王国によるとパーパルディア皇国のものである可能性が高い。しかも改良種だそうだ。対空戦闘用意」
赤松が命令し、艦隊に緊張が走る。
皇国監察軍飛竜隊は東洋派遣艦隊に先駆けて攻撃をしようとしていた。二手に分かれ、一組は町を襲い、もう一組は船を襲おうとしていた。
「ガハラ神国の風竜には構うな!俺たちはあの白い船を狙うぞ!降下開始!」隊長の号令にあわせ、飛竜隊は攻撃を開始する。
『提督!奴らはいなさに向かっているぞ!』
長門が叫ぶ。
「まだ撃つな!敵が発砲するまで待て!こちらから手を出すな!」
艦隊はいつでも撃てるように対空火器の照準を合わせる。
『敵機発砲!』ダンケルクが報告する。
「よし、対空機銃だけで反撃しろ!正当防衛射撃開始!」
8隻の戦艦からパッと光弾が放たれる。25mm機銃の弾はワイバーンロードの皮膚をいとも容易く貫通し、一瞬で全てたたき落とされた。
町を襲っていたワイバーンロードもこちらに向かってきたが、数十秒後には仲良く味方の後を追った。運良く相棒のワイバーンから落下し蜂の巣になる運命から逃れた竜騎士レクマイアを除き、全てその命を海に散らした。
「・・・・・・・・・・!!!!!!!」
その様子を見ていた者達はもはや言葉も出なかった。そもそも高速で空を飛び回るワイバーンは、二次元の動きしか出来ない船から落とすことは出来ない。いや、熟練の魔導術師による高位魔法や、列強神聖ミリシアル帝国の持つという対空魔光砲であれば落とせるかもしれないが、だからといって全滅などあり得ない話なのだ。
「な...何という力だ。パーパルディア皇国など比較にもならん。日本が味方で本当に良かった。」どこかの国の使者が呟くと、他の国の者達も頷く。我々はもしかすると、歴史が変わる瞬間を見たのかもしれない。これは驕り高ぶったパーパルディア皇国の終焉の始まりか、と―――
『目標全機撃墜確認しました。』
「了解。よくやってくれたな。幸い、いなさの被害は大したことないようだ。けが人が一人いるが急発進で転んだらしい。」
ダンケルク級2番艦ストラスブールの報告を赤松は聞いていた。ワイバーンの改良種といっても、飛行機に比べれば大したことのない速度だった。今のところ艦隊の脅威となる存在が表れない事に赤松は安堵していた。こうなってしまった以上、もはや皇国との戦争は避けられないだろう。メンツを潰された皇国が黙っているはずもない。
『提督、まだ敵艦隊がこちらに向かっています。迎撃に向かいましょう。フェン王国の水軍が既に向かっていますが、皇国は戦列艦を運用しているらしく、砲を持たない彼らだけでは勝てないと思われます。』
霧島からの通信に、赤松ははっと我に返る。
「そうだったな。よし、同盟国の危機は見逃せん。フェン王国水軍を援護するぞ!全艦出撃!」
佐世保鎮守府艦隊は、パーパルディア皇国監察軍を迎撃すべく、全艦出港した。
同時刻 アマノキ沖、パーパルディア皇国監察軍東洋艦隊司令、ポクトアールは不安に襲われていた。先行させたワイバーンロード部隊からの連絡が一切無く、こちらから呼びかけても反応は無い。どうやら全滅したようだ。だが、第三文明圏最強の練度を誇る皇国軍の飛竜が通信する間もなく全滅するとは考えにくい。唯一の脅威はガハラ神国の風竜隊だが、通信を送る間もなくやられるとは思えない。
(なにが起こっている...?何か恐ろしいものを感じる...この不安は何なのだ....)
「前方より敵艦隊!」
見張りが報告する。「どこの国だ!」
ポクトアールは気を取り直し、前を見据える。
「国旗を確認、フェン王国です!」
「戦闘態勢に入れ!」
(フェン王国の船は特に変わったところは見られないが、何か新兵器を持っているかもしれん)
「魔導砲の射程に入り次第一斉に砲撃せよ!」ポクトアールの指示により、フェン王国とパーパルディア皇国は戦闘に入ろうとしていた。ポクトアールの不安の正体は、すぐ近くまでやってきていたのだった。
ついにパーパルディアとグラ・バルカス帝国が出てきました。ありがとうございました。
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