日本国召喚 独立艦隊の奮闘 作:yyyyyyyyyyyyyyyyyyy
パーパルディア皇国 外務局―――
パーパルディア皇国のもとに、少しずつ日本の情報が集まってきていた。まず国旗は白地に赤丸であること。ということは、フェン王国沖で監察軍艦隊を退けたのは日本軍の可能性が高い。だが、詳しい情報は謎のままだった。あまりにも早く全滅してしまい、生き残りもおらず、魔写を残す事さえも出来なかったのだ。
唯一の手がかりは、ポクトアールの通信だけだった。それによると敵はかなり巨大な船で、魔導砲と思しき装備をつけているようだ。だが、その砲門数は多くないらしい。そのため、大量の船で一斉に奇襲し、運良く攻撃に成功したのだろう、という結論になってしまった。そもそも文明圏外国の軍艦に魔導砲が搭載されているということすら半信半疑だった。そもそも、監察軍の戦列艦は旧式艦の寄せ集めであり、本国の軍に比べれば数も質も大きく劣る弱軍なのだ。負けたとしてもまぐれだろう。よって、
・文明圏外国の中では優れた軍事力を持っている。
・決して舐めてはいけないが、皇国が勝てない相手ではない。
第一外務局は、そう結論づけた。
そしてパーパルディア皇国 皇都エストシラント―――
皇帝ルディアスの住むパラディス城にて、帝前会議が行われていた。この会議にて、皇帝直々の命令により、フェン王国への攻撃が決まった。彼らは皇国の提案を断ったうえ、生意気にも監察軍を一度退けている。
そもそも他国に理不尽極まりない要求をし、断られようものならすぐに軍を差し向けるのはここ十年程度、皇国の常套手段だった。それにこの命令には、日本と近づいた国は第三文明圏最強の国家たるパーパルディア皇国が直々に滅ぼす、というプロパガンダの意味も込められている。
このような政策は属領・属国全てを恐怖で支配している皇国からすれば当然のやり方であるが、日本人からすれば野蛮きわまりない、あまりにも非道で醜い政策だ。とても列強の一員とは思えないほどに。だがそんなことは彼らには関係ない。
そして、皇国軍最高指揮官アルデの了承により、フェン王国への侵攻が正式に決められた。
フェン王国 ニシノミヤコ 日本国派遣艦隊居留地建設現場―――
「おーい、今日はもう終わりにしよう。」
作業員に一人の男が声をかける。ここの作業統括責任者である、高橋信だ。現在佐世保にいる高橋京介の実の兄でもある。工事の進捗は極めて順調、一ヶ月後には完成する見込みだ。彼は仕事場を後にし、夕食を食べるため繁華街へと向かう。まるでタイムスリップしたかのような気分にさせてくれるこの国を彼は気に入っていた。最近では日本人の観光客も多く見かける。フェン王国の民は礼儀正しく誠実な性格の者が多く、両国の仲は良い。
信は暖簾をくぐり、時々利用する店に入る。
「よう兄ちゃん。噂で聞いたんだが、あんたあの工事現場の監督なんだって?知らなかったよ。」
気さくな主人が話しかけてくる。
信も、
「はい、実はそうなんですよ。後一ヶ月もすれば完成すると思います。」と笑顔を浮かべる。
料理をいくつか頼み、出された料理に舌鼓をうつ。決して派手さはないが、素朴なほっとする味だ。
料理を終えた主人がまた彼に声をかける。
「俺ぁ、この間の軍祭であんたの国の船をみたよ。とんでもねぇ力だ、これでもうパーパルディアのクソッタレなんか怖くねえぜ」
そういって店主は豪快に笑う。
信は誇らしい気持ちになった。弟の艦隊がこの国を守ってくれる。そしてその準備をするのは自分なのだ。気分が良くなった彼は少しだけ酒を飲んで、宿舎へと帰って行った。
翌日、皇都エストシラント 第三外務局―――
日本国外務省職員である朝田、篠原と、第三外務局長カイオスとその部下達が会談を行っていた。今まで門前払いをくらってばかりだったというのに、突然局長との会談となった。朝田と篠原は若干面食らっていた。
カイオスが口を開く。
「本日はいかようで?日本の使者殿。」
「はい、私たちは不幸な行き違いから衝突してしまいました。して、関係修復と国交樹立の可能性を模索しに参りました。」
だが日本は、皇国の性質から戦争を回避するのはかなり難しいのではないのかと判断していた。それでも平和国家として、なるべく争いは避けたい。外交はもはや最後のチャンスだ。正当防衛とはいえ、日本は一度皇国軍と交戦してしまっている。
だがスタートダッシュは最悪だ。朝田の言葉にいきなり皇国の人間が噛みつく。
「何だとぉっ!!監察軍に攻撃を仕掛けておいてっ!!不幸な行き違い!!??ふざけているのかっ!!!」
だが朝田は怯まない。眉毛一つ動かさず、冷静に言葉を紡ぐ。
「先に攻撃を仕掛けて来たのはあなた方です。私たちは降りかかった危険を排除したのみです。そもそも文明国でありながら突然攻撃をしようとするから悪いのです。非はあなた達にあるのは明白です。」
「なんだとおっ!!!」男の目は血走っている。
カイオスが制し、話し始める。
「なるほど、関係修復ですか...。失礼ながら私を含む皇国民は、日本について殆ど知りません。それこそ名前だけ、という具合です。」
これに朝田は笑顔を見せ、鞄から紙を出して手渡す。
「今はこんな物しかありませんが、どうぞ。写真付きです。」レポートをカイオスに手渡す。
カイオスの目の色が変わる。そこには信じがたい情報が記されていた。国土面積は皇国よりも狭く、特筆すべき事はない。だが人口は一億二千万人とある。皇国の七千万人よりも多い。さらに驚くべき事が書かれていた。
カイオスは思わず聞く。
「失礼、朝田殿。転移とはどういう事か?」
だがこれが本当であれば、日本について今まで認知しておらず、最近になって突如現れたことも辻褄が合う。だからといってこのような神話のような話をはいそうですかと納得できるわけではない。
「原因については、目下調査中ですが、まだ分かっていません。最後にお願いなのですが、特使を日本に派遣していただきたいのです。皇国大使の目で、直に日本を感じていただきたいのです。」
血気盛んな部下を黙らせ、カイオスは考え込む。
「申し訳ありませんが、内部事情によりすぐには決められません。宿はこちらで手配しますので、二ヶ月ほど待っていただきたい。準備が整ったら手紙を出しますので、今日はひとまずお開きとさせて下さい。」
「なるほど...分かりました。」朝田も了承する。
「ふっ...。では、二ヶ月後が楽しみですな。」
カイオスは不気味な笑みを浮かべる。こうして、初めての会談は終了した。
「カイオス様、なぜあのような丁寧な対応を?文明圏外国など、いつも通り脅してしまえばよいのです。」
部下は少し不満げだ。カイオスは答える。
「ふふ...。私に少し考えがあってな。不満もあるだろうが、皇帝陛下のためだと思ってくれ。」
部下はおとなしく従った。この国において皇帝は絶対なのだ。
それから2週間後、年が変わった1月18日―――
フェン王国より200km地点、そこにはとてつもない大艦隊が、東に向かって航行していた。パーパルディア皇国がついに動き出した。懲罰攻撃などという手ぬるいものではない。滅ぼすための艦隊だ。合計324隻の艦隊は、帆に風を受けつつフェン王国へと向かう。指揮官のシウスは海を睨む。前回は監察軍が破られている。油断してはいけない。彼は手をぐっと握った。フェン王国に危機が迫っていた。
東京 総理官邸―――
官邸は大騒ぎだった。人工衛星により、パーパルディア皇国からフェン王国に向かって大艦隊が向かっていることが分かった。フェン王国には日本人が多くいる、彼らを守らなければならない。だが、退去命令を出したところで向こうは電話もない国、情報が伝わる速度はどうしようもないほどに遅い。フェン王国を守るための駐屯地は完成間近だった。だが、皇国の行動が予想よりも速かったため、現地にはまだ戦力はない。日本から船を出すには遅すぎ、飛行機は余裕が少なく、全員を救助するには心許ない。
「くそっ!!!」
川島は頭を抱える。こういった有事の際、いつもこの国は対応が遅すぎる。こうしている間にも皇国艦隊はフェン王国に近づいている。
危機はとうとう目の前まで来ていたのだった。
ありがとうございました。お兄さんの名前は、「まこと」と読みます。
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