日本国召喚 独立艦隊の奮闘   作:yyyyyyyyyyyyyyyyyyy

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今回は暗めの内容です。


第16話 悲劇は起こる

 

一月十八日、パーパルディア皇国皇軍は、ついにフェン王国の都市ニシノミヤコへの本格的な侵攻を開始した。将軍シウス率いる皇国軍を相手に、フェン王国軍は必死に抵抗した。だが、質でも数でも劣る王国は次第に兵士の数を減らし、ついにニシノミヤコは陥落した。

最終的に、フェン王国は兵士約1000人が死亡、一方のパーパルディアは22人の犠牲にとどまった。

 

 

 

翌日――― パーパルディア皇国 第一外務局

 

日本国大使の朝田と篠原は、突然の出頭命令に困惑していた。そもそも対等な国と国との間で命令とは傲慢きわまりない。

 

第三外務局長カイオスは、皇帝の命令「蛮族に教育を行え」との指示を守らなかったとされ、日本との担当を外されてしまっていた。そのため、朝田と篠原は第一外務局に向かっていた。

 

「外交担当が変わったのはまだいい!だが命令とはどういうことだ。」

 

朝田も篠原もこの対応には不満げだ。この二人は皇国に来てからというものストレスがたまる出来事ばかりだ。

 

 

乗り心地の悪い馬車に揺られ、皇宮の門に到着した。第三外務局よりも遙かに格式の高そうな建物が見えてくる。朝田達は馬車から降り、入り口へと向かう。

 

門番に声をかけると、彼は確認に行き、少しして戻ってきた。

 

「どうぞ、お入りください。」

 

一礼して、二人は入室する。部屋には、一目でわかる程の豪奢な服を着た若い女性が座っていた。おそらく身分の高い者なのだろう。顔立ちは美しいが、その目は氷のように冷たく鋭い。

 

彼女は話し始める。

「パーパルディア皇国第一外務局のレミールだ。

 お前たち日本の外交担当だと思ってくれていい。」

 

「日本国外務省の朝田と篠原と申します。急な呼び出しでしたが、いったい何の用件でしょうか?」

 

「いや、今日はな...お前達に面白い物を見せてやろうと思ってな。」

 

そう言うと、使いの者が巨大なゲーム筐体のような物を持ってくる。

 

「これは、魔導通信を発展させ映像を付けたものだ。これを実用化しているのは我が国と神聖ミリシアル帝国くらいのものだ。」レミールは自慢げに語る。

 

だが朝田達は驚きもしない。大きいテレビのような物だろう。そんなものどこでも見れる。

 

「これを起動する前に、貴様達にチャンスをやろう」

 

そう言うとレミールは朝田に質の悪い紙を渡す。共通語で書かれたそれは、信じられない内容だった。

 

・日本国の王は皇国人とし、皇国から選ばれた者を置くこと

・日本国の法は皇国が監視し自由に改正できるものとする

・日本国は今後皇国の許可なしに新たな国と国交を結んではならない。

・パーパルディア皇国民は日本国民の生殺与奪の権利を有する。

等々・・・・これでは属国以下、植民地レベルだ。認められる訳がない。朝田は呆れて大きくため息をついた。

 

「どういうことですか?国交どころかこれでは植民地です。対等ではありません。」

 

彼は当然の抗議を行う。

 

 

「皇国の力を知らない者の愚かな発言だな。当初粋がっていた蛮族も我が皇都エストシラントを見れば力の差を理解するというのに、お前達は治外法権を認めないという。まるで列強国のような態度だ。この程度で済んでいることをありがたく思ってほしい位だ」

 

レミールは一度言葉を切る。

 

「.....では問おう。大人しく従うか、それとも滅びるか。」

 

朝田はもう腹をくくっていた。本来はこれは国に一度持ち帰るべき案件だ。だが、日本の意志は殆ど既に決められていた。これ以上皇国の横暴に付き合ってまで弱腰の姿勢を続けて何になる。

 

「お断りします。我が国は皇国の植民地にされるつもりはありません。日本が望むのは対等な関係です。」

 

 

レミールは待っていたかのように、悪魔のような笑みを浮かべた。

 

「そう言うと思ったぞ...愚かな蛮族どもめ。やはり教育が必要なようだな。これを見るがいい」

 

そう言って、指を鳴らす。すると、水晶に画質は粗いが映像が映し出される。そこには見慣れた服装の者達が首に縄をかけられ、一列に繋がれていた。日本人観光客と作業従事者だ。

 

「皇国軍は先日、フェン王国のニシノミヤコを占領した。こやつらは、スパイ容疑で拘束している。」

 

朝田は抗議する。

 

「日本人!?彼らはただの観光客だ、スパイな訳がないだろう!!非戦闘員に拘束するなどあってはならない!!即刻開放を要求する!!」

 

彼の顔には今日初めての焦りが見える。ニシノミヤコ陥落の情報は二人には伝わっていなかったのだ。完全に想定外の出来事だった。

 

これにレミールは激高する。

 

「蛮族ごときが私に要求するだと?立場をわきまえぬ愚か者が」

 

通信用魔導具を手に取り、冷たく言い放つ。

 

 

「....やれ」

 

「.......まさか!!?」

 

朝田の目の前で悪夢のような映像が流れる。恐ろしい笑みを浮かべた男が、一人、また一人と日本人の首を切り落としていく。彼らの悲鳴はとても聞いていられない。地獄絵図だ。

 

「やめろぉっ!!!自分達が何をしているのかわかっているのかっ!!!今すぐやめさせろっっっ!!!」

 

朝田は掴みかからんばかりの勢いで叫ぶ。こうしている間にも次々と日本人は殺されていく。

 

 

それをものともせず、レミールは恍惚の表情で告げる。

 

「ニシノミヤコには200人程度の日本人がいたが、首都アマノキにはどれくらいの日本人がいたか?そこにいる者共を救いたければ、アマノキが落ちるまでに皇国の要求を認めろ。最後の猶予だ、有り難く思え。それによってアマノキの日本人と、日本国の運命も決まるであろう。」

 

 

 

朝田は怒りで震える。

 

「ふざけるな!!!何の罪も無い日本人を殺した時点であなた達も、皇国の運命も決まった!!!今回の出来事は日本とその一億二千万人の国民を激怒させるだろう。私たちの国力を知らず、いや知ろうともしないでこんな愚かな行動に及んだ事すら信じられない!!こんな野蛮な列強国など見たことも聞いたこともないっ!!この首謀者には必ず償いを受けてもらう。日本の本当の実力を知ったときのあなたの顔を見るのが楽しみだ」

 

会談は終了した。皇国による虐殺は、政府に伝えられた。そして―――

 

 

 

同日、佐世保鎮守府

 

四人の提督と今日の秘書官達は、執務室で作業にあたっていた。高橋が水でも飲もうと席を立ったとき、部屋にあった電話機からファックスが送られてきているのに彼は気づいた。紙を取り、目を通す。どうやら皇国との交渉は失敗したようだ。ところが―――

 

 

「!?」

 

彼は恐ろしい物を見た。日本国大使が皇国の要求を拒否したところ、皇国の担当者は激高し、日本人捕虜を虐殺したそうだ。もう一枚の紙に、犠牲者の名前が記されているらしい。高橋は嫌な予感がしていた。ニシノミヤコ陥落の話は来ていたが、戦争をしていない国の非戦闘員を手に掛けることはないだろう、と思っていた。震える心をどうにか落ち着かせ、二枚目の紙に手を伸ばす。だが彼の希望は無惨にも打ち砕かれた。見てしまったのだ。

 

名簿の中の「高橋 信」の文字を―――

 

「....あ....ああぁっ」

 

体はカタカタと震え、呼吸が乱れ始める。

 

「おい、どうした京介!」

 

異変に気づいた森高が駆け寄ろうとした瞬間、高橋は叫んだ。

 

 

「っああああああっ!!!??嘘だぁーーーっ!!!」

 

そしてそのまま、糸が切れた操り人形の様に崩れ落ちる。床にぶつかりそうになったところをすんでのところで森高が受け止めた。

 

「おい、どうした京介!!しっかりしろ!!!」

 

森高が必死に声をかけるが反応がない。受け止めがたいショックで彼は過呼吸を起こしてしまっていた。

 

「おい!これを見ろ!」

 

そう言って赤松がファックスを見せる。その場にいた全員が視線を向ける。

 

 

「.......!まさか!京介の兄さんが!!」

 

全員が理解した。日本国艦隊居留地建築責任者であり、高橋京介の兄である高橋信は殺されてしまったのだということを。

 

 

 

気を乱してしまった高橋をひとまず部屋に寝かせ、他の提督は政府への事実確認などをした。だがやはり、残酷にも彼の兄は殺されてしまったのとは確かな情報のようであった。

 

 

夜になり、高橋は目を覚ましたが、部屋に閉じこもってしまっていた。彼に寄り添う者が必要だとして、最も長いつき合いの霧島が部屋に向かった。

 

 

「失礼します。」

 

部屋をノックし、返答があったので、彼女は部屋に入る。そこには頬を赤く腫らした高橋がいた。

 

「霧島...聞いてくれよ、悪い夢を見たんだ。」

 

うつろな目をして話す高橋を霧島は見つめ、一呼吸おいて伝える。

 

「提督......それは、夢ではありません...」

 

高橋の動きがぴたりと止まり、ゆっくりと霧島に向き直る。

 

「やめろよ...嘘だといってくれよ...霧島?」

 

彼の目から大粒の涙がこぼれる。彼が人前で涙を見せることは滅多にない。しかし、自衛隊の厳しい訓練で弱音一つあげなかった彼も、家族の死は耐えられなかったのだ。

 

 

「嘘ではありません...提督のお兄さまは、フェン王国で殺されてしまいました。」

 

霧島はゆっくりと告げる。これを伝えるだけでも彼女は怖かった。愛する提督の心が壊れてしまわないかと。

 

 

だが、涙を流しながらも少し彼は落ち着いたようだ。

 

 

「霧島...少し話を聞いてくれないか?」

 

 

「もちろんです、提督...」そう言って彼の隣に座る。

 

 

「ありがとうよ...おれの兄貴は―――」

 

そう言ってゆっくりと話し出す。自分の過去をあまり話さない高橋であったため、霧島は兄がいることしか知らなかった。

 

彼は、自分が中学生、兄が高校生の時に両親を交通事故で亡くしていた。買い物帰りの両親に、老人の運転する車が信号無視でぶつかったのだ。だが、その時に負ったけがが原因で裁判を前にその老人は死亡し、結局不起訴処分になった。両親を失った京介は深く傷つき、いつしか学校をさぼりがちになった。悪い仲間とつるむようになり、彼は荒れに荒れていた。

 

 

成績の良かった兄の信は、弟を養うために大学進学を取り消し、建設会社へと就職した。彼らの祖父母が二人を引き取ることになり、働かなくてもよいと言ってくれたが、信は結局建設会社に入社した。

それを知った京介は必死の思いで勉強し、なんとか防衛大学校に入学することとなった。

いつまでも兄と祖父母に負担をかける訳にはいかなかったのだ。―――そして、現在に至る。

どれも霧島の知らないことだった。ここまで波瀾万丈の人生を歩んでいたなんて...。今の明るい姿からは想像もつかない。

 

 

「結局俺は...最後まで兄貴に謝れなかった。俺が学校をサボっていても、優しいあいつは俺をいつも慰めてくれた.....。俺は兄貴に迷惑をかけっぱなしで、謝ることすら出来なかった!!」

 

また声が上擦ってしまってきていた。

 

 

「国民を守るための自衛隊に入って、この立場まで来たというのに...俺は...俺はっ...家族一人の命さえ守れなかった!!」

 

霧島は思わず彼を抱きしめる。高橋も少し冷静さを取り戻したようだった。

 

「すまない、霧島...」

 

「いいんです、提督...いや、京介さん。すべて打ち明ければ、少しは楽になります。私はいつも隣にいます。」

 

「そうだった...俺には、まだ家族がいた...お前達だ。ありがとう霧島、だけど...」

 

「京介さん...家族を失う苦しみは私たちにも分かります。戦時中、私は姉妹の中で一番早く沈んでしまいました。この姿となってからは、誰も仲間を失っていませんが、そうなることを考えただけでも恐ろしいです。今は泣いたっていいんです。ゆっくりでいいんです。また、あなたは立ち上がって、私たちを引っ張ってくれると信じています....」

 

 

そう言うと高橋は感極まったようにまた泣き出した。

 

「大丈夫...大丈夫ですよ、京介さん..私たちがいます」

 

 

そうして、その日の夜、高橋は霧島に抱かれたまま一晩中泣き明かした。

 

同じ日に、政府はこの虐殺事件を国民に発表した。

 

この出来事は、長年平和を保ち続けてきた日本と、

仲間の心を傷付けられた鎮守府を本気で怒らせる事になる―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




少しばかりありきたりかもしれませんが、話の転換点として暗い話にしています。
ありがとうございました。

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