日本国召喚 独立艦隊の奮闘 作:yyyyyyyyyyyyyyyyyyy
オリジナル展開です。
数日後―――
「...まだかなあ。」
先程から、一人の男がそわそわと歩き回っている。ここはムー国海軍の最も大規模な軍港である。この男、技術士官マイラスは先ほどからずっとこんな調子だ。
後ろに控える部下が呆れて言う。
「もう、マイラスさん。いつまでそうしているつもりですか。そんな事していたって日本が早く来る訳ではありませんよ。」
「いや、まあその通りなんだが、ずっと楽しみにしていたし...。」
頭をかきつつマイラスは弁解する。
今日はムーとしても大事な日であり、海軍基地では軍楽隊が控えており、高級将校の顔もちらほら見かける。
その時、部下の通信機が音を立てた。彼は少し話をして、にっこりとマイラスに向き直る。
「マイラスさん、お待ちかねのお客様が来ましたよ。」
「なにっ!!どこだっ!!」
マイラスは海を睨む。
数十秒後、船の姿が海の向こうに見えてきた。
「来たあっ!!」
年甲斐も無く大はしゃぎしている彼を苦い顔で見つめる部下も、心の中では気分が高揚してきていた。
そして、日本の艦隊はどんどんと近づいてくる。
数十分後、日本国艦隊の艦船は全て指定された場所へと入港し、錨を降ろして停泊した。
それに合わせ、歓迎の演奏が始まり、ムー海軍の兵士達もぞろぞろと集まってくる。
そして、一隻の戦艦からマイラスの見知った顔の男が出てきた。吉川も彼を見つけると笑顔で手を振る。
演奏も終わり、吉川も船から下りて挨拶に来た。
ここでマイラスの上官である一人の若い軍人が歩いてくる。
彼は吉川と向かい合い、自己紹介を始める。
「初めまして。私はレイネル・シェーファーと申します。気軽にレイと呼んでください。
階級は大佐、今回の日本艦隊出迎えの責任者です。よろしくお願いします。」
吉川も返す。
「初めまして。こちらこそよろしくお願いします、
レイ大佐。私は吉川晃輔と申します。私達は特殊な軍に所属しているので、階級は原則としてありません。ですので、対等な相手として接していただければそれで結構です。」
「分かりました、そうさせて頂きます。さて、そろそろ本題に入りましょうか。」
「そうですね。ではご案内します。ついてきてください。」
そう言って吉川は歩き出すと、後ろから何人も彼の後をついてくる。その顔は随分と楽しそうだ。
軍人魂が騒ぐのだろう。
戦艦の前に立ち、説明を始める。
「まず、これが戦艦『ドレッドノート』です。今回の供与・貸与艦についての詳細なスペックはこのノートにまとめてありますので、ご覧ください。」
受け取ったノートをレイ大佐は開き、思わずため息をもらす。
「おお...これは凄い...。まさに革命的だ。速度、火力、射程など数々の性能で今までの戦艦を上回るのか。」
「ただし、欠点もいくつかあります。それについても明記してあるので、よく確認しておいてください。」
また少し移動する。
「こちらは、もう一隻の供与艦、『サウスカロライナ』です。ドレッドノートと比べ、低速ですが合理的な砲配置をしており、バランスの良い艦ですね。つづきまして、貸与艦の説明に入ります。こちらへ。」
さらに進む。そこには先ほどの二隻よりも大きい戦艦が五隻並んでいた。
「この五隻の戦艦の名前は、手前から順に『エジンコート』『ヴァリアント』『ロイヤル・オーク』『レパルス』『フッド』と言います。『エジンコート』は弩級戦艦の最終形、『ヴァリアント』『ロイヤル・オーク』は超弩級戦艦、そして『レパルス』『フッド』は巡洋戦艦です。これらの戦艦は二年半ムー国に、技術研究の一環として貸与します。」
「おお..!大きい!!凄いぞ!!」
歓声が飛び交う。
「これで今回の供与・貸与艦は全てですね。レイ大佐、注意事項なのですが、貸与艦の彼女達が嫌がることはしないようにお願いしますね。」と、耳打ちする。
「ええ、当然しないように注意をはらいますが...そこまで気にすることなのですか?」彼は不思議そうな顔をして五人の艦娘たちを見つめる。
「気を付けてください..怒らせると誰も手をつけられませんので」
吉川は真剣な表情で告げる。
「わっ、分かりました。細心の注意を心がけます。」
「是非お願いします。では、説明はこれで終わりです。もしよければ今停泊している軍艦をご案内しますよ。」
「よろしいのですか!?是非お願いします。」
二人とマイラスは船のタラップを上がっていった。
その後、吉川達はムーに一泊し、翌朝出港した。
ムーに残る艦娘達と別れ、艦隊はイルネティア王国へと向かう。
イルネティア王国 王城―――
「本日昼頃、日本の外交官を乗せた艦隊が来航します。」宰相が王に報告する。
国王は息を吐き、不安げな表情だ。
「そうか...間に合ってくれたか。しかし、彼らは我らの助け船となってくれるのだろうか...」
国王の表情はどこか影を落としたように暗い。
無理もないことだ、と宰相は思う。王国は今とある国に脅迫を受けていた。植民地化に応じろ、と。
二ヶ月以内に決めろと言い放ち、従わねば滅ぼすとまで言ってきた。当然そんな要求は呑めないし、呑む気もない。だが、あいつらの乗っていた船はとてつもなく大きく、まるで勝てる気がしない。彼らの最後の望みはパーパルディア皇国を退けたまだ見ぬ日本に託されていたのだ。
同じ頃、イルネティア王国沖―――
「なんだかなあ...」
吉川はぼんやりと海を見ながら呟いた。
後ろから艦娘「ペトログラード」が少し心配そうに声をかける。
「どうしたんだコウスケ、ムーを出てからずっとそんな調子じゃあないか。」
彼は振り返り、
「いや、何というか、何かありそうな予感がするんだよ。そもそも向こうも文明圏外国とはいえ、ここまで遠く離れた国にいきなり接近してくるなんて、何か事情があるような気がするんだ。どうも怪しい。」とぼやく。
「そんなことを今考えていても仕様がないだろう。どうせ着いたら分かることだ。ほれ、紅茶を淹れてやったぞ、飲め。」と、彼女は吉川にロシア式の紅茶が入ったマグカップを渡す。
「おう、ありがとう。まあそうなんだよなぁ。しかしこの辺りも意外に冷えるんだな。」
マグカップのジャムを溶かしつつ、吉川は呟いた。
「うむ、そうだな。祖国ほどではないだろうが確かに冷える。」
二人並んで熱い紅茶を飲む。
「何事もなければいいが...」
艦隊はイルネティア王国に近づく。
数時間後―――
「陛下、日本の艦隊は無事到着しました。」
国王は、城から港を眺める。
「おお...あれは、この間の船より大きいのではないか?これは期待できるかもしれん。」
彼らは会談の準備をすべく、部屋から去っていった。
そしてその頃、イルネティア王国に向かう一隻の巨大な船があった。
艦内で誰かが呟く。
「さて、イルネティア王国とやらは素直に応じるかな...それとも抵抗してくるか。どちらにせよ、あのような小国が我らを止められるはずもないが。」
不穏な影は王国に近づいてゆく。
さらに数時間後―――
会談は順調に進み、国交や通商条約の締結などが決まった。
(良かった...どうやら何事もなく終わりそうだ。)
吉川がそんな事を考えていたとき、イルネティア王国の担当者が突然切り出してきた。
「どうか...お願いがあります。我が国を滅亡の危機から救っていただきたいのです。」
いきなりの発言に、日本側は全員が目を白黒させる。
「それは、どういう事でしょうか。突然そのような事を言われましても困ります。」
「これは失礼しました。詳しく話しましょう。およそ二ヶ月ほど前のことです。―――その国、グラ・バルカス帝国は我が国にやってきました。」
「―――!」
場の空気が変わる。
「知っているのですか?」
イルネティア王国の外交官が尋ねる。
「はい。我々もかの国を認知しております。」
「なるほど。続きを説明します。帝国は我が国に――」
王国の外交官は、帝国の要求と威嚇について伝えた。そして、日本に助けてほしいと言うことも。
「・・・・・・・・・・」
日本側は険しい顔で押し黙ったままだ。そもそも現在日本は戦争状態にあり、更に敵を増やす事はなるべく避けたい。そもそも日本からすれば戦争をしている事自体がイレギュラーなのだ。
その上、パーパルディア皇国とは違い、グラ・バルカス帝国は戦艦を持っている。間違いなく皇国よりも手強い相手だ。
その様子を見て、王国側は焦りの表情を見せていた。
「どうか!どうかお願いします!このままでは我々は滅ぼされてしまいます!」
「うーん...これはすぐにはとても決められない案件です...一度本国に持ち帰って...」
「そ、そんな!そうなってはもう遅いのです!あと一週間ほどで奴らは来てしまいます!」
外交官は勢い余って立ち上がる。
しかしその時、ノックもなしにドアが開かれ、若い職員が入ってきた。その額は汗に濡れ、肩で息をしている。
これに外交官が怒鳴る。
「おい!!今は大事な会談の最中だぞ!何の用件だ!」
「申し訳ありません!ですが、大変です!!!
奴らが...グラ・バルカス帝国の船が!!!!」
この報告を聞いた外交官の顔が一瞬で白くなってゆく。
「何ぃっ!?早すぎるぞ!」
「本当です!!港に向かってきています!」
「なんということだ!!」
廊下を職員達が次々と通り過ぎていく。
蜂の巣をつついたかのような大騒ぎだ。
完全に流れにおいて行かれた日本側は呆然とこの様子を見ていた。少し間をおいて、吉川は大きなため息をつく。
「あぁくそ、やっぱり何かあったか!」
諦めたように姿勢をだらんと崩す。
外交官の真壁も苦い顔をしている。間違いなく面倒ごとに放り込まれたのだ。彼の胃はキリキリと痛む。
「とりあえず、待機しておきましょう。必要あれば、不本意ですが仲裁に入る用意も。」
そう言って座り、お茶を飲んだ。
一方、キルクルス港―――
「なっ...何だこの戦艦は。」
「こっ、こちらよりも大きいのか!?」
艦橋では船員が慌てている。それは外交官ダラスと艦長ラクスタルも同じだ。帝国は完全にイルネティア王国をなめており、グレードアトラスター一隻で今回も十分だと思っていたのだ。ところが港には、明らかにこちらより大きい物も含め戦艦が八隻も停泊していた。
「まずいな...」
ラクスタルは呟く。港だけでなく、沖合にも戦艦や巡洋艦と思われる軍艦の姿が見える。これは、いくらなんでも一隻だけでは敵わないだろう。
その上こちらを囲むように停泊している二隻の戦艦はどうみてもグレードアトラスターと同等、つまり46センチクラスの主砲を装備している。これを喰らえばこちらもただでは済まないに違いない。
彼らは当然知らないが、今回派遣されている艦船は
クレムリン級二隻、レピュブリク級二隻、ライオン級二隻、レーニン級二隻の戦艦八隻と、プエルトリコ級大型巡洋艦三隻に、ブルックリン級軽巡洋艦三隻だった。
「艦長!!あの艦の国旗を確認しました!」
船員が連絡にやってくる。
「どこだ?」
「日本国です!!あの旗は日本のもので間違いありません!」
「やはりか...噂は、本当だったのか。」
ラクスタルは情報局から、日本が同レベルの戦艦や空母を持っているかもしれないという話を聞いていた。これまで戦ってきた敵を見るに、にわかには信じがたい話であったし、何より距離が遠く離れているので、まさかこんなにも早く出くわすとは想定していなかったのだ。
ひとまずイルネティアにこれはどうした事か問い詰めるため、使節団は船を降りていった。
ラクスタルも艦橋から出て行こうとすると、部下が声をかけてくる。
「艦長、どこへ?」
「いやなに、外に出て写真を撮っておこうと思ってな。これはグラルークス陛下やカイザル大将のお目に入れておかねばならん。」
そう言って、彼は甲板へと向かった。
一方、停泊している日本艦隊も、突如現れたグレードアトラスターに注目していた。
旗艦「ペトログラード」以外の艦娘達は艦内で待機している。そのため、通信で会話をして暇をつぶしていた。
会話の内容は当然、グレードアトラスターについてだ。
『何でここに大和さんがいるのかしらぁ?』
『いや、違うぞレピュブリク。見たことのない国旗を掲げている。あれは恐らく以前聞いた、グラ・バルカス帝国のグレードアトラスターとかいう戦艦だろう。』
『ということは敵?沈めていいの?』
『そんなわけが無いでしょう!』
女子達の雑談は盛り上がる。
そして帝国使節団は王城に入り、ついに日本とも接触することになるのだった。
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