日本国召喚 独立艦隊の奮闘 作:yyyyyyyyyyyyyyyyyyy
その頃、ムー国 近海―――
「おおお、速い、速いぞっ!!」
巡洋戦艦「フッド」の甲板上で、マイラスがうれしそうに叫ぶ。その様子を見かねた部下が大慌てで彼を呼んだ。
「マイラスさん!?そんなところにいたら落ちてしまいます!!すぐ戻ってきてください!!」
「いやあ、悪い悪い。つい夢中になってね。うわっ!」
大きな波があたり、マイラスはずぶ濡れになってしまった。もう少し大きい波だったら危ないところだった。
「長生きできませんよ...」
部下はあきれ顔だ。
現在、ムー海軍は日本国より提供された各艦の試運転を行っていた。どの艦も今までの戦艦を大きく上回る高性能だった。
「何ノット出ていた?」
「33.4ktですね。」
「何と..この巨体でラ・カサミの倍近く速いのか。」
世界最大級の巡洋戦艦の性能に驚くマイラスだった。
その後も、各種戦艦の試験が行われ、どれもムー海軍のこれまでの常識を打ち破る性能を見せた。
これを踏まえ、より優れた戦艦を建造すべくムーは心も新たに動き出すのだった。
イルネティア王国 王都キルクルス―――
三国の代表達はそれぞれ向かい合うように座っていた。
部屋にはぴりぴりとした空気が漂う。
帝国外交官のダラスは問う。
「これはどういうことですかな...イルネティア王国の外交官どの。未だに新しい国と国交を結ぶとは...
―――これはつまり、帝国の要求に逆らう、ということでよろしいので?」
口調こそ高圧的だが、彼も心中穏やかでない。
(くそっ...このままイルネティアを手に入れる手筈だったというのに、日本が邪魔だ。)
イルネティアの外交官は若干怯えつつも答える。
「今回は日本国から国交締結の提案をしてきました。我が国としても断るのは無礼であり、受けるのは国家として当然のことです。」
これは嘘だ。だが本当のことを伝えると都合が悪いため、日本側の提案でこうすることにした。これは外交官真壁の提案だった。
「言い訳はよしていただこう。この行動、明らかに帝国への反抗を意味する。つまり、こちらの要求に応じない...滅ぼされたいということか。」
「くっ....」
イルネティアの外交官は怯む。やはり帝国は怖い。
ここで吉川が間に入った。
「いずれにせよ日本とイルネティアは国交を結んだ。我々には同盟国を守る義務がある。」
「日本か...部外者が口を挟むな。これは帝国と王国との話だ。」
「部外者ではない。我々の友好国に手を出すのはやめていただこう。」
「何だと...調子に乗るなよ。小国が二つ手を組んだところで大したことはない。まとめて滅ぼしてやる。」
ダラスが立ち上がるが、吉川も負けじと応戦する。
「少なくともあなたは現在の状況が見えていない。たった一隻では今の我々には勝てない。もしもこのまま攻撃を始めるつもりなら、あなた達には永遠に海の底で眠ってもらうことになるだろう。」
「なんだとぉっ!!」
頭に血が上ったダラスは吉川に詰めより、彼の襟首をつかむ。
「ダラスさん!!落ち着いてください!!」
彼の部下らしい若い男が必死に制止するが、彼はやめようともしない。
吉川はあくまで冷静だ。席を立ち、ダラスを上から強烈に睨みつける。
「彼の言うとおりだ、一度落ち着け。あんた、本当に現在の状況がわかっているのか?あんたらの戦艦は確かに強力だが、流石に我ら14隻に勝てはしない。」
「くっ!!!」
ダラスは歯ぎしりする。立ち上がった吉川は思った以上に背が高く、凄まじい身体だ。彼自身の体格は決して貧弱ではないが、吉川相手には見劣りする。
「まずはこの手を離してもらおう。」
そう言うと吉川は自身の襟を掴んだままのダラスの腕をつかみ返す。
「ぐあっ!!!??離せっ!!」
吉川は静かにその手に力を込める。リンゴを片手で容易く粉々に砕ける彼の握力に、ダラスの顔は苦痛に歪む。
ようやくダラスの手が彼の襟から離れると、吉川も手を離した。
ダラスの顔は真っ赤だ。
「くそったれが!!帝国を敵に回したことを後悔させてやる!!」
そう言うが早いか、彼は部屋を出て行った。それに続き、帝国の使節団も慌てて彼の後を追った。
まるで嵐が過ぎ去ったかのような出来事だった。
静かになった部屋で、吉川は椅子に座るとふーっと息を吐く。そして、
「ペトログラード。一応警戒態勢に入れと留守番してる奴らに伝えといてくれ。撃たれたら撃ち返して良い。」
イルネティアの外交官が謝る。
「申し訳ない...まさかこんな事になるとは」
真壁は答える。
「気になさらないでください。あとは我々にお任せを。」
「すいません...よろしくお願いします。」
少しして、日本使節団も退出した。
戦艦「グレードアトラスター」内―――
「くそっ!!くそったれが!!!あんな艦隊など全て沈めてしまえ!!艦長!!攻撃だ!!攻撃しろ!!」
艦に戻ってからもダラスの癇癪は収まる様子がない。
一方で艦長ラクスタルは冷静だ。
「落ち着いてください。いま下手に攻撃を行えばこちらが負けてしまいます。一度本国に戻りましょう。今の我々では戦力が足りません。」
ラクスタルの説得により、帝国使節団は渋々帰国した。
この出来事により、帝国の警戒対象に日本が加わることになる。それも、神聖ミリシアル帝国以上の脅威としてだ。グラ・バルカス帝国は、神聖ミリシアル帝国が自国を上回る規模の戦艦や空母を保有していないことは確認していたが、日本の戦艦はグレードアトラスター以上の全長と同等クラスの砲を持つことから、最警戒対象としたのだ。
幸運なことに戦闘は起きず、日本の艦隊も無事に帰路についた。戦艦「ペトログラード」の中で、吉川はため息をもらす。
「あーあ、こんな面倒臭い事になるとわかってたんなら引き受けなきゃ良かった。」
「あれはどうしようもないよ、コウスケ。まさかあんなに短気だとは思っていなかったよ。お前は悪くないさ。とりあえず今は日本に帰ろう」
ペトログラードが励ます。
「そうだな、今はとにかく無事に帰ろう。佐世保についたら俺が奢ってやるから飲みに行こうぜ。」
「おっ、それはありがたい。いくらでも付き合ってやるぞ。」
「そうこなくっちゃ。にしても帝国のあいつ、随分と気が短いよなあ。あいつ、外交官に向いていないんじゃないか?」
「ははは、違いないな。もっとも今回はただ運が悪かっただけかもしれん。」
艦隊は日本へと帰って行った。
数日後―――
グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ
「ほう...これはすごいな。」
椅子に腰掛けている一人の男が呟いた。その視線は一枚の写真に注がれている。それはイルネティア王国でラクスタルが撮影したものだ。そしてそれを興味深げに見ているその男こそ、「帝国の三将」の一人である、カイザル・ローランドだった。
彼とラクスタルは今、帝都のとある喫茶店で話をしていた。カイザルは別の写真に目を通す。
「うーむ、どれもこれも間違いなく我が国と同等かそれ以上の技術だ。全く、思いがけないところで強敵が現れたものだ。ラクスタル君、君は日本についてどう思う?」
「間違いなく現在分かっている中で最も警戒すべき相手です。今回私が目撃した戦艦は八隻、その内四隻はグレードアトラスターよりも大きかった。それに、そのような巨大戦艦を運用するのには我が国もそうであるように、かなりのコストがかかります。
そのような物をたかが国交締結のために何隻も運用するなど、なかなか考えられません。」
「ふむ。確かにそうだ。グレードアトラスター一隻だけでもかなり財政を圧迫するというのにな。」
「それと、この写真を見て分かるように、大量の対空装備が施されています。彼らも航空戦力をメインとしているのでしょう。ですが今回だけで八隻もの戦艦を派遣してきたというのならば、更に本国に主力が控えている可能性が高いと考えます。」
カイザルはコーヒーを一口飲み、腕を組んだ。
「なるほど...よく考えているな。どうやら日本国は別の世界から転移してきたと主張しているらしい。つまり我々と同様、この世界ではイレギュラーな存在だ。ということは我々もそうだったように、日本もこの世界の水準とは隔絶した技術を持っているかもしれん。我々の常識で考えてはダメだな。」
「となると、帝国を上回る技術を持っている可能性も...。」
「十分あり得るな。常識の範疇で捉えてはいけない。幸いだったのは日本は平和主義国家らしく、自身やその同盟国に手を出さなければ基本的に動かないらしい。イルネティア王国は諦めて賢明だったということだ。」
「ですが、日本はムーとも国交を結んでいます。ということはムーに手を出すと日本も...」
「参戦するかもしれない。これは皇帝陛下とも話し合ったが、一度作戦を見直す必要がある。」
「そうですね。油断は禁物です。」
「そろそろ出よう。今日は奢ろう、私が誘ったのだからね。それとラクスタル君、君は最近働きすぎだから、休暇を取らせておいた。一度ゆっくり休みなさい。」
「ありがとうございます!」
会計をすませ、ラクスタルが礼を言うとカイザルは手を振って去っていった。
同じ頃、日本ではついに工業都市デュロを叩くための準備が始まっていた。
なんだかグラ・バルカス帝国は原作よりまともになってしまいました。
ラクスタルさんとカイザルさんは個人的に好きなキャラクターです。
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