日本国召喚 独立艦隊の奮闘   作:yyyyyyyyyyyyyyyyyyy

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第29話 エストシラント沖大海戦 その3

同じ頃―――

 

 

神聖ミリシアル帝国 帝都ルーンポリス―――

 

 

情報局長アルネウスは、部下からの情報を受け、考え込む。

 

 第3文明圏の雄、パーパルディア皇国が一方的にやられている。

 

日本が少なくとも「列強」に数えても差し支えないほどの国力を有する国であることは間違いなく、西からのみではなく、東からも新たな列強国が出現した事に一同は頭を痛める。

 

「ライドルカ、おまえは日本国についてどう考える?」

 

情報局長アルネウスはトーパ王国において、古の魔法帝国の残した生物と日本軍の戦いを直に見た情報局員、ライドルカに尋ねる。 

 

「少なくとも軍事技術については、とてつもないものがあります。先日お出しした報告書のとおり、威力はそこまで高くありませんが、人が持ち運び可能な誘導魔光弾のような兵器を実用化しております。

また、魔王を倒した戦車と呼ばれる陸戦兵器は脅威です。

皇国陸軍と日本がフェン王国で陸戦を行った際、皇国の魔導砲が日本の戦車に命中していますが、同戦車はその機能を損失する事なく、高威力の魔導砲を放ち、極めて正確な射撃で地竜を仕留め、しかも次弾装填がとてつもなく速かったそうです。

とにかく、まだあの国は未知数な事が多すぎますが、パーパルディア皇国の二の舞にならぬよう、外交は細心の注意をもってあたるべきかと考えます。」

 

 

「そうだな。日本国の規模は不明だが、技術の高さだけで考えれば、グラ・バルカス帝国よりも敵対したくない。恐らく皇国は列強から脱落し、第3文明圏は日本の方を向くようになるだろうな。」

 

 

 

グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ―――

 

(ふむ....)

 

カイザルは、情報部より届けられたムーの新聞を読んでいた。日本によるパーパルディア皇国への爆撃について報じられている。崩れ落ちた城と丸焦げになった陸軍基地の写真が一面を飾る。

 

(随分と派手にやったものだ。)

 

新聞を閉じ、そばに控える秘書に声をかける。

 

「すまないが、コーヒーを一杯もらえるかな。」

 

「はい、勿論です。少々お待ちを。」

 

少しして、彼の目の前には湯気を立てるコーヒーが置かれていた。それを口に含みつつ、カイザルは物思いに耽る。

 

(もう少しで、日本とパーパルディア皇国との戦争は終わる。日本の情報が少ない今のところは、無闇に衝突するようなことは避けねばならん。最近何かとうるさい過激派が何もしなければいいが....)

 

 

 

パーパルディア皇国 デュロ陸軍防衛隊基地

 

早朝に、司令ストリームと陸将ブレム、そして海軍司令ルトスを筆頭に、会議をしていた。

 

ブレムは呟く。

 

「まったく、日本にここまで一方的にやられておいて未だに蛮族蛮族と、呆れたもんだ。エストシラントをやられておいてな。」

 

ルトスも苦笑いで答える。

 

「我らより格上の列強であるムーの大使が事前に忠告していてくれたらしいのに、滑稽なことだ。」

 

ストリームもどこかもの悲しい表情で頷く。

 

「やれやれ、我らの装備では悔しいが勝てそうもない。ここが、死に場所ですかな...」

 

 

三人の司令官は死を覚悟していた。

 

同日昼過ぎ――

 

日本が事前に予告していた攻撃の日が今日だ。レーダーの見張り員は常時警戒に当たる。

 

「.....!?あっ!!!」

 

画面の隅に小さな点が映った。これがもしもワイバーンならもっと大きく表示される。事前の報告によると日本は飛行機械を使用しているため、魔力反応はとても小さい、とあった。間違いない!!

 

彼は急いで魔信を入れる。

 

「日本軍と思われる飛行物体接近中!!その数およそ300!!!!」

 

これを聞いたこの基地の司令ストリームは迅速に命令を下す。

 

「ワイバーンロード全騎出撃!!準備が出来た者から上がれ!!対空魔光砲も準備しろ!!」

 

これに部下が難色を示す。

 

「司令!!対空魔光砲はまだ解析も十分に出来ていません、今使うのは危険です!!」

 

しかひ、ストリームは真っ向から反論した。

「馬鹿者!解析も何も、ここで俺たちがやられたら全てが終わるんだ!!なりふり構っている場合ではない!」

 

普段、比較的温厚な彼の思いがけない迫力に根負けした部下は、渋々了承した。

 

そして、倉庫から唯一つの対空魔光砲が引っ張り出させる。これは神聖ミリシアル帝国から密輸入した物で、本来パーパルディア皇国では手に余る代物だ。

 

正式名称は"イクシオン20mm対空魔光砲"といい、神聖ミリシアル帝国では既に旧式化している。

 

それでもパーパルディア皇国の技術ではまともに動かせず、性能も大幅に下がっている。それでもないよりはマシだ。それくらい、皇国の対空装備は頼りないのだ。

 

ワイバーンが負ければ、苦しい状況に置かれてしまうことは明白だ。

 

兵士達は縋るような目で飛竜隊を見送った。

 

 

 

「サラトガ」のレーダー画面にも、飛び立つワイバーンが捉えられていた。

 

サラトガが指示を飛ばす。

 

「前方より敵機飛来、直援戦闘機隊は先行して迎え撃って下さい。」

 

『サラトガリーダー了解』

 

『レキシントンリーダー了解』

 

『ヨークタウンリーダー、了解』

 

『ホーネットリーダー了解』

 

『白龍隊了解』

 

『大鳳隊了解』

 

返事が返ってくる。どれも練度は最高クラス、ワイバーンに後れをとる事は無いだろう。

 

F6Fと紫電改が編隊から離れ、先行する。かつての戦争の末期、激しく戦ったライバルだ。

 

それが今は仲間として同じ空を飛んでいる。

 

『さあ、大暴れだ。とことんやってやろう。』

 

『任せろ。5分以内に全部墜としてやる。』

 

『見えてきたぞ!』

 

隊員の士気は高い。

 

 

同じ頃、飛竜隊も日本の戦闘機を捉えた。

日本軍が今までにない程の強敵であることは誰もが知っている。列強、それもムーよりも強い敵と戦うのだ。生きて帰ることは難しいかもしれない。

 

それでも、愛する家族を、国を守るため彼らは突き進むのだった。

 

 

 

今ここに、パーパルディア皇国と日本の最後の本格的な戦闘の火蓋が切られた。

 

 

 

『全機突撃』

 

サラトガ隊のリーダーが短く告げる。彼らにとって、指示はこれだけで十分だ。

 

敵ワイバーン部隊は密集せずに向かってくる。まとめてやられないようにしているのだろう。

 

竜騎士長ガウスは命令する。

 

「絶対に一対一で挑むな!一騎の敵に五騎で仕掛け、確実に落とせ!!」

 

第三文明圏最強の筈だった皇国竜騎士団にとって、これはあまりにも屈辱的な作戦だ。しかしそれほどまでに余裕はないのだ。

 

「かかれえっ!!!」

 

ガウスの号令の下、飛竜隊は一斉に突撃した。

 

 

 

―――しかし数分後、その結果は余りにも残酷なものだった。最初の一撃でワイバーンは数十騎が落とされた。必死に敵騎に食い付こうとするも、速度も、動きも違いがありすぎた。次々と竜騎士隊はその数を減らしていった。

 

 

最後に一人残されたガウスは乾いた笑みを浮かべる。

 

「悔しいな...ここまでか....」

 

彼は既に被弾しており、肺に血が溜まっているのが分かる。だが幸運なことに、相棒の飛竜は無傷なようだった。血を吐きつつも最後の力を振り絞り、手綱と鞍をほどく。最後の紐を解くと、体がふわりと軽くなり、景色が逆さまになった。ここで相棒を逃がしたところで、ワイバーンロードが野生で生き抜ける可能性は低い。だが、そんな事はどうでもよかった。

 

ガウスは真っ逆様に落ちていった。

 

 

戦闘機隊は再び編隊を組み直す。

 

「よし、任務完了だ。よくやった」

 

『しかし、一人だけ動きが違う奴がいたな。驚いたよ』

 

『ああ。皇国にも骨のある奴がいたんだな。』

 

パイロット達は名前も知らない一人の竜騎士を褒め称えるのだった。

 

 

 

 

―――「竜騎士団反応消失、全滅と思われます。」

 

通信兵が震えた声で報告する。

 

ストリームは腹を括った。他の兵士もそうだ。

 

「何としても一矢報いるぞ!!!竜騎士隊の奮闘を無駄にするな!!対空魔光砲、用意はいいかっ!!」

 

「はいっ、大丈夫です!いつでも撃てます!!」

 

「よし、俺の指示通り撃て!敵を追いかけていては当たらん、敵の通る道の先を狙え!!」

 

「敵騎、来ます!!」

 

報告が飛ぶ。

 

「射程距離に入っても慌てるなよ...」

 

そうこうしているうちに敵の攻撃が始まった。次々と降ってくる何か、そして大爆発が起きる。

 

こちらは何も出来ず、一方的にやられていく。

 

「まだだ...まだ...!!!」

 

一匹の鉄竜が真っ直ぐに向かってくる。与えられたチャンスは、おそらく一回のみだ。

 

「今だ!!!撃てえええっっ!!」

 

次の瞬間、魔光砲には巨大な魔法陣が展開され、赤い光が連続して敵騎に向かっていく。

 

「当たれえええぇぇぇっっ!!!!」

 

ストリームは目を見開き、拳に力を込め叫ぶ。

 

奇跡が起きた。彼の気迫が通じたのだろうか、まるで吸い込まれるように敵騎が赤い光弾に近づいた。次の瞬間、その敵騎は胴体から火を噴き、大爆発を起こして墜落した。

 

「「「「「やった!!!」」」」」

 

そこにいた全員がそう叫んでいた。ここにきて、皇国軍はやっと戦果らしい戦果を挙げることができたのだ。

 

 

だが、運命は残酷だ。

 

今落とした敵の後ろにいた別の敵騎がこちらに何かを発射したのが見えた。それはまるで光る矢のようだった。まっすぐにこちらに飛んで来ていることが何故かはっきりと分かった。

 

ストリームは観念して、飛んでくるそれに向かって手をかざす。

 

(神よ....どうか皆の家族だけは.....)

 

そう祈った次の瞬間、Su-2の放った10発のロケット弾が着弾、対空魔光砲も大爆発を起こした。

 

魔導回路の暴走により、まるで花火のような色とりどりの火花があがる。

 

およそ十分後、全ての爆弾を投下し終えた編隊は空母へ戻っていった。

 

戦闘機隊は一旦別れ、工場地帯と住宅街の上を飛び警告を行う。

 

 

『警告する。我々は2時間後にデュロ工場地帯に対し、艦砲射撃を行う。それまでに避難せよ』

 

 

それを終えると、戦闘機隊も空母へ戻っていった。

 

 

 

デュロ沖  およそ4km地点――

 

「撃ち方やめ」

 

森高はそう命令し、椅子に座る。

 

今まさに敵海軍基地を無力化し、陸軍基地への襲撃にも成功したとの報告があった。

 

だが、どうやら敵が対空機銃を持っていたらしく、一機のSu-2が運悪く撃墜されてしまった。はっきりとした被害はこれが初めてだった。

 

「敵さんも健闘したんだな。」

 

そう呟くと、通信機を手に取る。

 

「予定通り、一時間と五十六分後に砲撃を開始する。事前に通達したとおりの陣形を組み待機。それまで攻撃してはいけないが、警戒は絶対に怠るな」

 

 

そしておよそ二時間後、艦砲射撃によってデュロの工場や関連施設は全て破壊された。事前の警告によりこの砲撃による民間人への被害者はゼロだった。

 

 

 

生産の拠点を失った皇国は、また一歩追いつめられたのだった。

 

 

 

 

 







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