日本国召喚 独立艦隊の奮闘 作:yyyyyyyyyyyyyyyyyyy
中央暦1640年 10月5日 朝7時30分
グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ
「出港だ。」
ラクスタルが告げると、全長263mの体躯を持つ巨大戦艦、「グレードアトラスター」はゆっくりと動き出す。外交官シエリアを筆頭に、帝国使節団を乗せたこの船は今日本に向けて出港した。
同じ頃、帝王グラルークスは帝王府にて使節団が出港したとの報告を受けていた。
「そうか...ご苦労、下がって良いぞ。」
「はっ、失礼します。」
一人になった部屋で彼は考える。
(行ったか....この派遣の結果次第でこの国の動きも大きく変わることだろう。若い頃、世界中を駆け回っていた時が私にもあったな....今は私に出来ることをせねば。)
彼には心配な事があった。彼には二人の子供がいた。双子であり、どちらも男だ。兄の名はグラ・カバル、弟の名はグラ・アデルと言う。おそらくこの二人は次の皇帝の座を奪い合うことになるだろう。
兄であるカバルは決して頭が悪い訳ではなく、むしろ物覚えは良いほうだ。グラルークスがこれからのあり方について語るとそれに賛同していた。一度聞くと中々意見を曲げないのが玉に瑕なのだが。
一方、弟のグラ・アデル。こいつが曲者だった。その性格は暴力的で傲慢。少なくともグラルークスはそう評価していた。そして今や急進派議員の口車に乗せられ、完全に都合の良い操り人形と化している。帝位争いにおいてはおそらくこちらが勝ってしまうだろう。絶対にそれは止めねばならない。グラルークスがいる限り妙な気は起こさないだろうが、なるべく早い内に形を整えておかねばならない。
「うっ!!」
突如グラルークスは咳込み、うずくまる。その手には血がべったりと付いていた。彼は肺を病んでいたのだ。
荒い息をしながら、彼は思う。
(まだだ...まだ、私は倒れるわけにはいかん....)
出港してから数十分後、ラクスタルはシエリアに説明をしていた。
「日本に到着するまで、およそ5週間の予定です。使節団の方々にはそれぞれ個室を用意していますので、そちらで過ごしていて下さい。船旅は何かと窮屈でしょうが、ご了承ください。食事の際には兵士が呼びに行きます。なお、非常に距離が遠いため日本の同盟国であるアルタラス王国にて一度補給を受けます。」
「分かりました。ラクスタル殿、よろしくお願いします。」
ラクスタルは地図を広げる。これはムーにある日本大使館から事前に受け取っていたものだ。
「はい、こちらこそよろしくお願いします。我々は日本の長崎県佐世保という都市にまず向かいます。そこで停泊し、使節団の方には移動していただきます。」
「ほうほう、そこに行くのか。これは楽しみだ。」
そこに突然別人の声が紛れ込んだ。聞いたことのあるその声にラクスタルは思わずはっと振り返る。
「かっ...カイザル大将!?なぜここに!?」
いつの間にか机に座っていたのは、グラ・バルカス帝国大将、カイザル・ローランドその人だった。
「はっはっは、甘いねラクスタル君。こんな面白そうな事を前にして私が何もしないでいるとでも思ったのかね?」
カイザルは豪快に笑う。ラクスタルとシエリアはあんぐりと口を開けていた。完全に想定外の出来事だったからだ。
「い...いえ。失礼しました。ですが、あなたほどの人がこんなことで国を離れて良かったのですか?」
「心配するな。皇帝陛下には正式に許可をいただいているし、留守の間はミレケネスに任せる事にしてある。」
「ミレケネス大将には事前に了承を?」
シエリアの質問にカイザルは少し気まずそうに答える。
「あー、いや、あいつの机に置き手紙を...」
ラクスタルがため息をつきつつ呟いた。
「帰ったらきっと怒られますよ....」
「はは...土産をたくさん買って帰るとしようか...」
カイザルは苦笑いでそう答えるのだった。
その頃、帝国海軍本部―――
「帝国の三将」が一人、ミレケネス・ワイズマンは自身の仕事場に向かっていた。
部屋に入ると、彼女は机の上に一枚の紙切れがあるのを見つけた。
(置き手紙?何かしら?)
それを拾い上げ、目を通す。その表情は次第に厳しいものになってゆき、紙を持つ手にも力が入る。
(あっ...あんの男っ!!!)
その紙には短く「留守番よろしく」と書いてあった。それだけで全てを察したミレケネスは大きなため息をついた。長いつきあいであり、カイザルのほぼ全てをよく知っている彼女はあきらめて今日の仕事を始めるのだった。
(手ぶらで帰ってきたら一発ぶん殴ってやる...)
という思いとともに。
二日後、神聖ミリシアル帝国 首都ルーンポリス
世界最強の国、神聖ミリシアル帝国が誇る首都、ルーンポリス。国の北西部、海洋に面する世界最大級の都市であり、「眠らない魔都」の異名を持つ。高層ビルが立ち並ぶその姿は地球における1920年代ごろのニューヨークの街並みにどこか似ている。
そんなルーンポリスに位置する皇帝の居城、アルビオン城において帝前会議が行われていた。
現在、グラ・バルカス帝国へ派遣されていた情報局員ザマスが話していた。
「という訳で、先進11ヶ国会議についての概要は伝えたのですが、帝国は終始そっけない対応であり、本国の位置や首都名ですら教えないという、国際関係上信じられない暴挙に出ました。
旧レイフォル国首都、レイフォリアを窓口とするとの事です。
なお、レイフォルの首都上空を飛んでいた飛行機械はムーのそれよりも速く、我が国の制空型の天の浮舟に匹敵する速度が出ていました。国力の総力が全く不明な状態ですが、少なくとも技術力は侮れません。」
「では、グラ・バルカス帝国本国の位置は、謎のままなのか。」
「はい...。」
沈黙が場を包む。
少しして、ライドルカが手をあげた。
「すみません、日本国に関する報告の前ですが、1つよろしいでしょうか?」
「何だ?」
「実は、こんな物がありまして...」
ライドルカは前に立ち、黒板に一枚の地図を広げる。
「なっ!!」
「こっ、これは!!!」
そこにいた面々は、そのあまりにも精巧に描かれた世界地図に驚愕した。山の高さ、谷の位置、主な川、主だった街の詳細な位置等極秘にしてきた自国の精巧な地図を凝視する。
「我が国が精巧に描かれた図に驚かれるのもわかります。そして、グラ・バルカス帝国の位置はここです。」
ライドルカは、地図上の一点を指示する。ムー大陸よりもさらに西方2000kmほどの位置に島というには大きく、かといって大陸と呼ぶには少し小さい陸地が見える。それにも山や湖の位置が精巧に記されており、ご丁寧なことに主だった街の位置等も記されていた。
「いったい、これはどうしたのだ?」
「実は、日本国と先進11ヶ国会議について話をした際、この地図を持参してきて、どの部分を通過して神聖ミリシアル帝国に来れば良いか尋ねてきたのです。
他国の領海や、聖地指定をしているような部分を避けて航行するためと申し立てておりました。日本の担当者は、『この地域の地図を持参した』と言っていたことから、もしかすると彼らは、この世界の全容をつかんでいるのかもしれません。領海等調べて回答するため地図を持ち帰って良いか尋ねると、問題ないとの回答であったため、持ち帰る事が出来ました。まさか、通常は極秘事項に認定される地図を、あっさりと入手出来るとは思っていませんでした...。担当者は、先進11ヶ国と関係する国が記された地図を持ってきますと言って、持ってきたため、グラ・バルカス帝国の位置までも丁寧に記載されたものを持ってきたのでしょう。.....正直かなり驚きましたが。」
「何とも驚くべき話だ。では日本国について、話を聞かせてもらおう。」
ライドルカは、日本国に関する説明を開始した。そして数分後、それは終盤にさしかかっていた。
「―――日本では我が国の天の浮舟を越える速度の鉄道が間もなく実用化しようとされており、また自衛隊なる国防組織のもつ戦闘機は凄まじい速度で飛行します。具体的には音速の倍以上を出せるのだそうです。」
会議場はざわついている。事前にある程度の情報は知っていたとはいえ、あまりにも信じがたい話なのだ。
「それは本当なのかね?その話が全て正しければ、日本の技術は帝国を超えていることになるぞ。」
出席者が口々にこんな事をつぶやいていた。
ライドルカは更に続ける。新しい写真を取り出し、黒板に貼り付けると、出席者達の視線はそれに注がれた。
「この写真を見てください。」
「これは...我が国の魔導戦艦?これがどうかしたのか?」
ライドルカは一呼吸おいて話し出す。
「これは...技官のベルーノ殿が日本で撮影した物です。つまりこれは、日本が所有しているものです。そしてこれは、驚くことに『アダマン級戦艦』とのことです。」
「「「「!!!!!!!!!!!!」」」」
部屋にどよめきが走る。アダマン級戦艦は神聖ミリシアル帝国でも一隻のみ発掘されており研究が進んでいたが、ミスリル級よりも更に複雑であり解析は依然として進んでいなかった。
「何故だ?日本は科学文明国で、魔法については素人だと聞いていたが....」
「どうやらそれについては、日本の同盟国、例えばパンドーラ大魔法公国などから技術者を呼んで解析してもらったようです。どの程度まで研究できているのかは不明ですが、少なくとも稼働できる状態ではあるようです。」
「なんと...!!しかしそれを譲り受けることは出来ないのか?我が国としては喉から手がでるほど欲しい代物だ。」
「そうだ、文明圏外国など少し脅せばすぐに差し出すのではないか?」
ここで皇帝が手をあげた。すると、騒がしかった部屋が水を打ったようにしんと静まりかえる。
そして、皇帝ミリシアル8世はゆっくりと口を開く。
「.....ライドルカ、話は聞いた。どうやら日本は思った以上の国であるようだな。して、アダマン級戦艦についてはなんとしてでも手に入れるよう努力してほしい。しかし日本をただの文明圏外国として見てはならぬ。あくまでも対等な相手として取引をするよう尽力せよ」
「ははっ!!!」
皇帝の命により、神聖ミリシアル帝国は日本からどうにかアダマン級戦艦を買い付けられるよう動き出すのだった。
帝国使節団の来日は次回に。
見たい組み合わせは?
-
大和型vsGA級
-
紀伊vsGA級
-
長門型vsヘルクレス級
-
金剛型vsオリオン級