日本国召喚 独立艦隊の奮闘 作:yyyyyyyyyyyyyyyyyyy
その頃、佐世保鎮守府―――
「さあ、いよいよグラ・バルカス帝国の使節団が到着するぞ。」
通信を切り、森高が振り返る。
「俺ちょっと野次馬行ってくるわ。」
「あ、じゃあ俺も!」
そう言うが早いか、吉川と赤松は部屋を出ていった。残された森高と高橋は執務室にあるテレビに目をやる。昼のワイドショーは生中継でグラ・バルカス帝国使節団の到着について報道している。ヘリコプターが間もなく接近するグレードアトラスターの姿を捉えようとしていた。
「グレードアトラスター」艦橋内―――
「ラクスタル君。私はどうやら幻覚が見えるようになってしまったようだ。グレードアトラスターが2隻いるぞ。」
「カイザル閣下、ご安心を。私もそのようです。日本に着いたら2人で病院に行きましょうか....。」
この会話にシエリアが慌てて入る。
「お二方とも、落ち着いてください。あれは幻覚などではありません!」
これにカイザルは笑って返した。
「はっはっは、シエリア君、言われなくとも分かっとるさ。何が起きてもおかしくないと分かっていたとはいえ、それでも目の前のこれは信じがたいんだよ。それによく見ると、あの戦艦はうちの物とは少し違うようだしね。まあ似ていることには変わりないが。」
「そうですか....ん?この音は?」
耳の良い彼女は、遠くから聞こえてくるバタバタバタ....と言う音に気づいた。すると、見張りが声を上げる。
「前方より奇妙な形の航空機が近づいてきます」
先ほどよりレーダーで捕捉していた、やけに遅い航空機のことだろうか。
「奇妙な?今度は何だ?」
再び彼らは双眼鏡で外に目をやる。空には見張りの言うとおり、見たことのない奇妙な形の航空機が飛んでいた。あれが連絡にあった、報道機関の航空機なのだろうか。
ラクスタルは呟く。
「あれは...我が国で開発しているオートジャイロのような物でしょうか。それにしては随分と洗練された形をしていますが。」
そのヘリコプターは東都テレビの物だった。リポーターは上空から元気よく話す。
『放送局、放送局、現在佐世保沖上空!見てください!すごい光景です!「大和」と「武蔵」がグラ・バルカス帝国の戦艦と並んでいます!』
東京のとある大衆食堂のテレビではその光景が映されていた。そこで食事をしていた人たちは思わず画面に見入る。
「すごい光景だな...。」
「ああ、にしても本当にそっくりだな。言われなければ見分けがつかない。」
そして先ほど部屋を出て行った吉川と赤松は零式水上観測機に乗り込み、グレードアトラスターへと向かっていた。
「おい晃輔!お前、あの戦艦見るのは2回目だろ!?」
赤松が後ろから叫ぶと、吉川も答える。
「ああ、その通りだ!見えてきたぞ!」
海の向こうに、大きな艦影が見えてくる。赤松はもう一度叫ぶ。
「よっしゃ、歓迎してやれ!」
「任せろ!」
吉川も元気に返すと、一気に操縦桿を引く。すると機体は上昇を始め、それと同時に尾翼の辺りから赤い煙が放たれる。そしてそれが出終わる時には、空には大きなハートの絵文字が描かれていた。
「ははっ、一丁あがり!!」
「あれ、でも向こうはハートの意味知らないんじゃないか?」
「そういやそうかもな!!まあ察してくれるだろう!」
のんきな二人であった。
「...あのパイロットはいい腕をしているな。」
「ええ、そのようですね。しかしあの記号はどういう意味なのでしょうか。」
「おそらく歓迎とか、そういった類のものだろう。少なくとも悪い意味ではないだろうね。」
吉川の操る零式水観を見送りつつ、カイザルとラクスタルはそれぞれ話す。既に彼らはかなり佐世保に近づいており、あと数分もすれば本土が見えてくるだろう。
そして数十分後、グレードアトラスターは佐世保まであと3kmの地点まで来ていた。巨大な基地と凄まじい数の艦艇が停泊しているのが見える。
「接岸準備。引き続き向こうの駆逐艦の指示に従って動け。」
「了解。」
指示を出し、だんだんとはっきり見えてくる佐世保に目を凝らす。
「かなり大きい基地だな。....!?あれは、もしや!?」
見えてきた艦艇の中には明らかに見覚えのある姿がある。シグナス級戦艦に加え、ヘルクレス級戦艦、オリオン級戦艦、タウルス級重巡洋艦、モノセロス級重巡洋艦にキャニス・メジャー級軽巡洋艦までいる。
「本当に、一体どうなっているんだ....」
ラクスタルは双眼鏡から目を離すと、顔を洗いに一度艦橋を後にした。後は接岸するだけなので、彼が指示を出さずとも乗組員たちはうまくやるだろう。
実際のところそこにいるのは、長門型戦艦、肥前型戦艦、金剛型戦艦、妙高型重巡洋艦、蔵王型重巡洋艦、そして阿賀野型軽巡洋艦なのだが、当然ラクスタルの知るところではない。日本からしてもどうして似ているかは全く分かっていないので、致し方ないことではあるだろう。
艦内の設備で作られた炭酸水の瓶を冷蔵庫から取り出し、蓋を開けて口に流し込む。その瞬間、船に少しの揺れが走り、停止したのが分かった。続いて、錨を下ろす音とタラップが動く音が聞こえてくる。どうやら無事に停泊したようだ。
ラクスタルは一気に残りを飲み干すと、艦橋に急いで戻っていった。
「無事到着しましたね。下船の準備は出来ていますか?」
「はい、大丈夫です。」
「よし、では行きましょうか。」
使節団5人とラクスタル、そしてカイザルはタラップに向かう。いよいよ日本との接触とあって、少しの緊張が走る。帝国は以前のイルネティア王国における小競り合いもあり、それについて問われないか少しばかり不安だった。
意を決して、ラクスタル達はタラップを下り、ついに日本本土に足を着けた。
大きく延びをしながらラクスタルは思う。
(空気が、おいしいな....)
グラ・バルカス帝国では工場からの排気煙等による環境汚染が問題となっていた。そして同じく大気も汚されており、帝都ラグナの空はいつも澱んでいる。日本も恐らく同じような物だと思っていたがそれは外れたようだ。少なくともここの空気は澄み渡っている。どうやっているのだろうか、出来れば教えてほしいものだ。
彼らが辺りを見回していると、向こうから4人の男が歩いてくるのが見える。
その内の一人が前に出てきて帽子を取り、軽く一礼して話し出す。
「グラ・バルカス帝国の皆さん、ようこそ日本へ。私は森高千鶴と申します。先ほど通信をした者です。」
カイザルは彼に目をやり、どのような男か考える。
(優しそうだが、優秀そうな男だ...立ち居振る舞いに一切の隙がない。それにしても随分と若いな)
続いて他の男達も自己紹介を始める。
「初めまして。私は吉川晃輔と申します。森高の同僚です。この2人もそうです。」
まずは一番背の高い、精悍な顔立ちの男が話す。続いて一番背は低いが眼光の鋭い男が短く挨拶する。
「高橋京介と申します。初めまして。」
最後に髪を後ろにまとめた男が自己紹介する。
「赤松一誠と申します。よろしくお願いします。」
グラ・バルカス帝国側も自己紹介を始める。
「初めまして、私はシエリア・オウドウィンと申します。この使節団のリーダーを務めます。今回日本国との交流を認めてくださり、本当にありがとうございます。」
それを聞き、吉川は一人思い出す。
(なんだ、まともそうじゃないか。イルネティアの時のあの怒りっぽいヤツじゃなくて良かったぜ。)
「あ....あの、どうしました?何かお気に障ることでもしましたでしょうか?」
気づけばシエリアが心配そうにこちらを見ていた。いつの間にか彼女を睨みつけていたらしい。
「ああいや、これは失礼しました。以前にあなたの国の外交官と揉めた事がありましてね、それを思い出していたのです。」
これを聞いたシエリアと外交官達の顔色が変わる。
「そ...それにつきましては、本当に申し訳ありませんでした。まさかそんな事になるとは思っておらず....」
吉川はこの言葉に笑って返す。
「ははは、お気になさらず。私にも彼を怒らせた落ち度がありましたしね。互いにそれは水に流しましょう。」
これに使節団は安堵したようだ。その中には以前イルネティアで怒るダラスを必死に制止していた若い男の姿もあった。一段落したところで、ラクスタルとカイザルも自己紹介する。
「私はラクスタル・マクヘンリーと申します。この、『グレードアトラスター』の艦長をしています。」
「初めまして、私はカイザル・ローランドと申します。一応、帝国海軍大将など務めております。」
これに日本側はひどく驚かされた。まさかここまでの高級将校が来るとは思っていなかったのだ。
「たっ....大将!?」
「ああいや、まあそれは形式的なものです。ただの一人の野次馬とでも思っていただければ結構ですよ。」
「は....はい、分かりました。では到着してすぐのところ悪いですが使節団の皆様は移動していただきます。車が待っていますのでそれに乗ってもらいます。榛名、案内を頼む。」
「お任せください!」
黒髪の女性が出てくると、使節団を駐車場に連れて行った。帝国が日本にいる間は、一部を除き艦娘達は常識的な軍服に身を包んでいる。
カイザルは森高に尋ねる。
「彼女も軍人なのですか?」
「ええ、戦艦『榛名』の艦長をしています。」
「なんと...あの若さで、しかも艦長とは。さぞ優秀な軍人なのですね。」
「ええ、とても優秀ですよ。私たちも移動しましょうか。こちらへどうぞ。」
森高が手招きすると、ラクスタルとカイザルはそれについて建物へ向かっていった。
本格的な交流は次回から。
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