日本国召喚 独立艦隊の奮闘 作:yyyyyyyyyyyyyyyyyyy
11月14日 午後3時 神奈川県横須賀市
「少し待っていてください。」
門の前につき、赤松が門番になにやら話しかけている。そして少しして、重そうな門が開けられた。カイザルとラクスタルは少し身構える。昔の戦争で日本を焼き払い、圧勝した、アメリカという国。日本がいた世界での最強の国の一つと聞かされていた。看板に書いてある字は読めないが、おそらく"関係者以外立ち入り禁止"といったようなことが書いてあるのだろう。
門を通り抜けた瞬間、空気が変わったのを肌で感じた。
『この中は日本の領内にあるだけで、日本ではありません。』と、先ほど赤松が言っていたのを思い出す。
少し行くと、奥から一人の大きな男が歩いてきた。そして彼はこちらに来ると、赤松とハグを交わした。これにカイザルとラクスタルは思わずぎょっとしたが、異国の文化に文句を言うのは不躾だと、すぐに表情を戻した。
赤松とその男、ダニー・ハリス中佐はお互い笑顔だ。友人との久しぶりの再会を喜んでいるようだ。
「Issei!!!
(次のせりふからは日本語で書きますが、本人達は英語で話しています。)
「めちゃ元気さ!!ダニー、奥さんとうまくやってるかい?」
「Of course!!! レンジャーちゃんは元気にしてるか?」
ハリスはかつて横須賀鎮守府に在籍していた空母「レンジャー」と仲が良かった。横須賀鎮守府は在日米軍基地とも時々交流をしていたこともあり、赤松やその他艦娘達の顔を知っている者ばかりだった。
「ああ、ファッキン元気だぜ!!最近アメリカの艦娘もたくさん誕生したからな!!」
「手紙で読んだぜ!アイオワ級に、モンタナ級までいるんだろ!?いつかヨコスカに連れてきてくれよ!!」
「そりゃあいいかもな!!相談しとくよ!!」
やたらとテンションの高い話が終わるのを他の面々は黙って待っていた。
「...彼らはいったいどんなことを?」
「...まあ、簡単な世間話ですね。」
「それにしてもずいぶんと楽しそうですね。」
「おっと、お客さんがいるのを忘れてた。ついてきてくれ。イッセー、通訳頼むぜ。」
「あいよ。」
数分後、やけに騒がしい立ち話を終えた二人は、待っていたカイザル達を司令官室に連れて行った。
コンコン、とノックをすると、すぐに「Come in.」と聞こえてきた。ハリスはドアを開けて全員を部屋に入れ、中にいた男に敬礼する。
「大佐、お客様を連れてきましたよ!」
「ご苦労。....イッセイ、久しぶりだね。」
椅子に座っていた男、ジャスティン・リンドバーグ大佐は席を立ち、こちらに歩いてきた。
「お久しぶりです、リンドバーグ大佐。」
「それで...このお二方が、例のお客さんかな?」
「はい、そうです。グラ・バルカス帝国の方々です。」
リンドバーグはラクスタルとカイザルに向き直り、手を差し出して自己紹介する。
「初めまして、グラ・バルカス帝国の方。私はここの司令官を務めているジャスティン・リンドバーグと申します。階級は大佐です。」
「初めまして、リンドバーグ大佐。私はラクスタル・マクヘンリーと申します。戦艦『グレードアトラスター』の艦長をしています。階級は大佐です。」
「お初にお目にかかります。私はカイザル・ローランドと申します。階級は大将です。」
赤松の通訳を挟み、カイザルとラクスタルも挨拶した。それを聞いたリンドバーグは少し驚いた顔をしていた。
「あなたが例の"Yamato"....いや失礼、"Grade Atlastar"の艦長ですか...にしても、大将とは...冗談ではないですよね?」
「ええ、もちろんです。」
「そうですか....。とにかく、会えて光栄です。早速ですが、うちの大統領を見学していただきましょう。」
「.....大統領?」
「ええ、"George Washington"はうちの空母の名前です。アメリカ合衆国の初代大統領の名前です。」
「空母ですか!かつての大統領の名前を付けているのですね。」
「そうです。質問なのですが、グラ・バルカス帝国の軍艦にはどのような命名規則があるのですか?」
リンドバーグの質問にカイザルが答える。
「帝国の軍艦の名前の由来は...戦艦は過去の英雄の名前や地名、空母は過去の戦場、巡洋艦は山や川の名前、駆逐艦は軍人の名字や星の名前、といったところですね。ただし、例外もそれなりにありますが。たとえば『グレードアトラスター』は人名ではなく、"栄光を掴みし者"という意味です。これと似たような名付け方をされている空母や戦艦もあります。『バルサー』は"戦争を調停する者"、『ラス・アルゲティ』は"戦争を蔑む者"などですね。」
「へえ...そうだったんですか。『Warspite』と似てるな。」
これは日本側からしても初耳であった。
「説明ありがとうございます、では行きましょうか。今日の仕事はもう終わらせたので、私とダニーがご案内します。」
そして、彼らは部屋を出ていった。
港までは少し距離があるため、雑談をしながら歩いていく。
「なあイッセー。そういや『オワリ』は見ただろうけど『キイ』は今ドックにいるよな?彼ら、運が悪かったな。」
ハリスの質問に赤松は答える。
「ああ違うんだ、上から『きい』は見せない、という判断がおりたっぽくてさ。だからこのタイミングで点検してるんだ。自衛隊は一隻だけ戦艦を保有している、ということだけ伝えてる。」
「ふーん...そうなのか。」
数分後、彼らの前にそれは姿を現した。
「おお....!!!」
「これも大きい....!!」
リンドバーグは立ち止まり、振り返る。そして後ろに控える巨大な空母を親指でさし、こう言った。
「こいつが、空母"USS George Washington"です。どうぞ、こちらへ。」
彼らはタラップを上がって、中へと入っていった。
「広い....」
数十分後、カイザルらは飛行甲板の上にいた。グラ・バルカス帝国海軍の主力空母である「ペガスス級」よりも二周り以上は大きい船体と甲板を持っている。そして最近就役したばかりの最新鋭装甲空母「カプリコーネス級」でも全長は大きく劣る。そしてその甲板の上には多数のジェット戦闘機が誇らしげに軒を連ねていた。
カイザルはリンドバーグに尋ねる。
「この空母は我々から見ると、少し変わった形をしているように見えます。ジェット戦闘機を運用するのにはこのような形が最適なのですか?。」
赤松は通訳に難儀しつつもそれを訳し、どうにかリンドバーグに伝える。彼は通訳を引き受けた事を少し後悔していた。カイザルがずっと質問をするのでそれを英語にするのに疲れたからだ。そしてそれを後ろにいた高橋は巻き込まれないように息を潜めていたのだった。
一方、甲板の別の場所では、森高とハリス、ラクスタルが何かを見学していた。
「これは....機関銃の類....ですよね?見たところ数が少ないのですが、これで間に合うのですか?」
「ええ、もちろんです。足りるからこそ、これだけしか載せていないんですよ。」
その言葉の意味をラクスタルは噛みしめる。自分たちの常識は彼らには通じないのだ。どう考えたところでそれらしい答えが見つからなかった。
(機関銃の弾が目標を追いかける....いやいや、そんな恐ろしい物があってたまるか。それに、それならば対空火器は一つで十分だろう。)
ふと脳裏をよぎった恐ろしい考えを振り払い、ラクスタルは軍帽の向きを直した。
およそ一時間後、「ジョージ・ワシントン」の見学を終えた彼らは、基地の中にあるカフェで休憩をとっていた。
「....いかがでしたかな、私たちの艦隊は?」
レモネードを飲みつつ、リンドバーグはカイザルに尋ねる。その隣では、ハリスが名物のシナモンロールにありついていた。それには、クワ・トイネ公国産のシナモンがふんだんに使われている。
「チキュウで最強の国の戦力をお目にかかれて光栄です。質問なのですが、ここの軍隊は有事の際には行動するのですか?」
「私たちは、基本的に本国の指示があるまでは動きません。尤も、その本国はいなくなってしまいましたが...ですが、自衛隊との合同訓練等は引き続き行いますし、もちろん攻撃を受ければ反撃はします。」
「なるほど...ありがとうございます。」
その隣のテーブルでは、赤松がぐったりした様子で座っていた。さすがに可哀想だったので、森高が通訳を交代していた。
「はあああ、疲れた....」
「お疲れさん。お、来た来た。サンキューサンキュー。」
向かい側に座る高橋は、ウェイトレスからシナモンロールとコーヒーを受け取るとご機嫌な様子でかぶりつく。
「うまい!....けど甘いな。さすがアメリカ。」
赤松もレモネードを飲む。
「はあ、明日からやっと観光かあ。待ちくたびれたよ。」
この後、午後4時頃に横須賀基地を出た彼らは、再び東京で一泊し、翌日早朝、北海道へ向かったのだった。
グラ・バルカス帝国の軍艦名の由来もオリジナル要素です。ご注意ください。
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