日本国召喚 独立艦隊の奮闘 作:yyyyyyyyyyyyyyyyyyy
11月18日 グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ 海軍本部―――
「.....で、どうだった?」
帝国海軍大将にして、特務軍司令長官であるミレケネス・ワイズマンは報告を聞いていた。
「はい、最大速度は36ノットを記録しました。これはペガスス級を上回っています。しかし、旋回半径は少し悪化していました。」
彼女は手渡されたレポートに目を通す。帝国海軍の空母として初めて飛行甲板に装甲を張った「カプリコーネス」級は計画では500kgまでの急降下爆撃、そして800kgまでの水平爆撃に耐えられるとされていた。搭載数は53機の予定だ。
「いいじゃないか。頼もしい限りだ。」
目の前に鎮座する船体を見上げ、そう誇らしげに呟いた。
「......他の新兵器の試験結果はどうだった?」
ミレケネスは振り返り、兵士に尋ねる。
「えー、新型試作誘導爆弾『ブローセンX』は成功です。しかし、照準については非常に難しく、誘導員の技量によるところが大きいです。威力につきましては良好で、標的の軽巡洋艦に命中し、一発で轟沈させました。」
「ほう...そうか。しかし、いかに高高度から発射するとはいえ、低速で目標の近くを飛ばなくてはならない。つまり敵の護衛機に狙われやすくなるのでは?」
「.....はい、それにつきましては確かに懸念事項の一つです。ですが、我らの技術ではこれが限界です。情けない話ではありますが、今の時点では見えない敵を狙うなど
それを聞いたミレケネスはため息をついた。
「まあ、仕方なかろう。それで、もう一つは?」
「酸素魚雷も、おおよそ良好です。雷跡を視認するのは非常に難しく、威力も問題ありません。ですが、不発がありました。10本のうち1本は作動しませんでした。」
「そうか。それはなるべく改善できるよう努力してほしい。単純に、高くつくからな。」
「はっ、了解しました!」
「では私は執務室に戻る。邪魔したな。」
「はいっ!!」
自室に戻るミレケネスの表情は明るいものではなかった。
(新兵器を開発したとはいえ....いや、現時点でも、前世界までの敵なら難なく倒すことができていただろう。しかし、この世界にはまだわからない事が多すぎる.....。特に、日本と神聖ミリシアル帝国.....。神聖ミリシアル帝国は単純に、能力が未知数だ。魔法という物がどの程度の力なのか全くわからない。少なくとも技術だけで見れば、我々と同程度かそれ以下の軍艦を持っている。そして日本.....この世界では文明圏外の新興国と扱われていたようだが、少なくとも列強国をいともたやすく下す力がある。グレードアトラスターを上回る大きさの戦艦に、多数の空母....。そして、未確認情報ではあるが、ジェット戦闘機を持っているかも知れない.....。とにかく、全てが未知数だ。絶対に先走るようなことは避けねば.......!!!)
そんなことを考えながら私室のドアをあけると、中には先客の姿があった。
「お帰り、姐さん。」
「......どうした、ヴァネッサ。何か用か。」
ミレケネスを『姐さん』と呼んだのは、海軍少将ヴァネッサ・ランドルフだった。日焼けした美女で、軍では非常に少ない女性将校であり、そしてミレケネスの片腕とも言える存在だ。
「別に何も?ただ男達がずっと話しかけてくるのがうっとうしかっただけさ。」
「......はあ、やれやれ。お前もそろそろ気を付けないと私のように婚期を逃すことになるぞ。」
これを聞いたヴァネッサはいかにも面倒臭そうな顔をしてソファに寝ころんだ。
「......私はそんな物に興味は無いもの。それに昔の姐さんだってそうだったでしょう?」
「........あの時は戦うことしか頭になかったしな.....この歳になった時のことなんて考えてなかった。お前は若い内にここまで上り詰めたんだ。私よりチャンスはあるだろう。」
「イヤよ。」
あっさりと拒絶されて、ミレケネスは少しがっかりしつつも、それ以上繰り返すのをやめた。図らずもヴァネッサを軍の世界に引き込んでしまったことに、ミレケネスは少し負い目を感じていた。
「そうか.....まあいい。今日の仕事は終わったしな。少し話に付き合ってくれ。」
「ええ、もちろん。お茶を淹れるわ、少し待ってて。」
「ああ、ありがとう。」
ヴァネッサがお茶を用意し、それを口に含みつつ話を始める。
「―――というわけで、お前も聞いているだろうが、日本は、帝国以上の技術を持っているかもしれない。」
「聞いてるわ。あの写真も見たしね。」
「十中八九真実であると.....私は考えている。いずれにせよ、使節団が帰ってくれば分かることだ。彼らが有益な情報を持ってきてくれれば良いのだが.....。」
「そうね......過激派のバカが変な気をおこさないよう、私も注意しておくわ。」
「頼む。カイザルがいない今、抑止力が弱まっている。悔しいが私だけでは力不足なんだ....。」
同じ頃、海軍本部のとあるドック―――
ここでは、エル・ドラード級戦艦1番艦「エル・ドラード」と、シグナス級戦艦3番艦「ジャコビニ・クレサーク」、そしてグレードアトラスター級戦艦2番艦「ヴォルフ・ハリントン」が点検および改装を受けていた。
「ほうほう、こいつぁ中々イカしてやがるな。」
改装中の「ジャコビニ・クレサーク」を見上げ、艦長アーウェン・パリッシュ大佐はこう呟いた。現在、彼の乗艦であるこの戦艦は、主砲を41cm三連装砲から46cm連装砲に変える改装を行っていた。シグナス級戦艦計4隻のうち、1番艦「シグナス」と、3番艦「ジャコビニ・クレサーク」にこの改装を行っていた。
「はい、46cm砲は頼もしいですね。」
副長のウィスター・グラッドストン少佐も嬉しそうだ。
「そうだな。......日本....噂によればケイン神王国以上の強敵だとか....燃えるな!!!」
艦長パリッシュと副長グラッドストンは過激派でも穏健派でもなく、ただ戦いが好きないわゆる「バトルジャンキー」だった。しかしその性格のため、どちらかというと過激派に傾いていた。前世界でも数々の武勲を打ち立てている歴戦の猛将であり、日本や神聖ミリシアル帝国と戦ってみたいという気持ちが隠せないでいた。とはいっても、決して軍の規律を乱すような問題行動を起こすような人間ではなかったので、あくまで事の経過を注視していた。
「―――点検は終わったか?」
「はい、終了しました。全て問題ありません。」
「そうか、ありがとう。」
別のドックでは戦艦「エル・ドラード」の艦長、アイヴァン・ボルドウィンカー少将が点検を終えた乗艦を眺めていた。彼の乗るこの戦艦は全6隻ある同型艦の栄えあるネームシップだ。もうすぐ60になろうとしているベテランの彼は、以前はオリオン級戦艦1番艦「オリオン」に乗っていたが、前世界における戦争で沈められてしまっていた。しかもこれは不運なことに、ケイン神王国によって轟沈させられた、戦闘行動中の唯一の戦艦となってしまった。そのため彼は艦隊司令官の座を辞し、空席だったこの戦艦の艦長となった。
生き残ったボルドウィンカーはこの事を「人生で最悪の屈辱」として、ずっと気にしていた。この時失った片足を義足に変えて、彼の次の乗艦は「戦艦の完成形」とも言われたエル・ドラード級になり、今まで以上に戦意を燃やしていた。残念ながら憎いケイン神王国はもういないが、まだ戦うことは出来る。
(神聖ミリシアル帝国、そして日本......いつか戦火を交えることとなれば......この私が全力で相手をしてやろう。)
彼は一人そんなことを考えるのであった。
翌日、神聖ミリシアル帝国 首都ルーンポリス
「うーん.......分からない。」
技官ベルーノが仕事机で唸っていた。その手に写真が握られており、机の上にも魔写がいくつか並べられていた。
「どうした、そんなに悩んで?」
休憩時間になり、別の部屋にいた同僚が声をかけてくる。ベルーノは彼に写真を見せる。
「これは、日本から送られてきた魔写......いや、写真なんだが。」
「ああ、日本から買い付けたとか言う魔導戦艦か。こいつがどうかしたのか?」
「......んで、これが日本の戦艦。こっちがグラ・バルカス帝国の戦艦だ。それがムーの新型戦艦だ。」
「それも知っている。日本とグラ・バルカス帝国の戦艦はそっくりというか、見分けがつかないな。こいつら本当は仲間なんじゃないか?」
ベルーノは首を横に振った。
「いや、それは無いだろう。日本の人たちは非常に友好的だったし、距離が離れすぎている。」
「ふーん......まあいいや。それで?」
「ここを見てくれ。」
ベルーノは写真に写る船体の膨らみを指さす。
「......それがどうしたのか?」
「この膨らみは遺跡から発掘された魔導戦艦の設計図にも記されていた物だと思う。そして、これらの戦艦にも全て装備されている。我々はこれを不必要な装備として建造した魔導戦艦にも装備しなかったが、どうやらそうではないらしい。」
同僚はよくわからない、といった表情だ。それを気にせずベルーノは続ける。
「......つまりこれは、必要な装備って事だ。尤も、何の為なのかは分からないが。」
「来年にまた日本の人間が来るんだろ?その時に聞けばいいじゃないか。」
「うん、そうだな。そうしてみるか。」
「しかし、魔導戦艦は美しいな。それに比べ、機械動力艦は優雅さの欠片もないな......。」
ベルーノは同僚を諫める。
「見た目では強さは測れないんだぞ。もしかしたら日本とグラ・バルカス帝国は我々より強いかもしれないんだ。」
「さすがにそれはないだろう!!神聖ミリシアル帝国より強い国なんているわけないさ!!」
同僚はそう言うと部屋を出ていった。そこに一人残されたベルーノは考える。
(違う......日本やグラ・バルカス帝国は自分たちだけで技術を発展させてきたが、神聖ミリシアル帝国は過去の遺物をコピーすることしかできていない......!!それに、技術もムーに追いつかれているかもしれないんだ!!もう猶予は無いのかもしれない!!)
彼は祖国の現状に危機感を抱いていたのだった。だがしかし、そのような人間は非常に少ないのも現実なのであった。
その頃 日本国 北海道小樽市―――
「うーん、これは美味い。生の魚とは......少し怖かったが、こんなにも美味いものだったとは......」
カイザルが初めて食べた寿司に舌鼓を打っていた。生の魚を食べるという文化はこの世界では日本以外には無い。もちろん、グラ・バルカス帝国の二人からしても初体験だった。
「ほほう...うん、これは美味しいですね、大将。」
「こいつは最近仕入れたトーパ王国産の本マグロですよ!大間のマグロより安いが味は負けてません。」
「へえ...トーパ王国の..知らなかったなあ。」
その隣では森高が鮪を食べてご機嫌な様子だった。カイザルとラクスタルらは久しぶりの休暇を満喫していたのだった。
年末ですね......今年の投稿はこれで終わりになると思います。
引き続き評価、感想をお待ちしております。作者のやる気があがるので是非、よろしくお願いします。
見たい組み合わせは?
-
大和型vsGA級
-
紀伊vsGA級
-
長門型vsヘルクレス級
-
金剛型vsオリオン級