日本国召喚 独立艦隊の奮闘 作:yyyyyyyyyyyyyyyyyyy
1月16日 午前9時 トーパ王国基地
「......よーし、出発だ。」
戦艦「ペトログラード」から吉川が通信を入れると、エセックス級空母5隻を中心とした艦隊はグラメウス大陸へ向かって出港した。
一応護衛として戦艦及び巡洋艦は配備されているものの、今回のメインは艦載機による攻撃なので、あまり出番はないだろう。クラーケンのような大きく凶暴な海魔は実は数はあまり多くないらしく、おそらく10匹もいないだろうと言われていた。
船の中で、吉川はペトログラードは今回の作戦についておさらいをしていた。二日前の打ち合わせで、トーパ王国から伝えられた情報が記されたノートを見ている。
「.....えーと、まあ今回はあんまキツい作戦じゃないけど、厄介なのがいるかもしれないらしいな。」
熱い味噌汁を飲みながら、吉川はとあるページを見せる。
「......ん?量産型魔王?なんだこれ。」
まだ朝だというのに好物のアイスを食べつつ、ペトログラードはノートを覗く。そこには、日本語で書かれた説明の他に、やや不鮮明だが人型の生物の写真が貼られていた。
「ふーん.....古代の生物兵器...。これが?」
彼女は"はずれ"と書かれた棒をちょっぴり不機嫌そうに咥えながら、まじまじとノートを見つめている。
「ああ。まあ100パーセント確実な情報ではないが、目撃情報から察するにこいつの可能性が高いらしい。グラメウス大陸の鉱山の近くには古代遺跡があるんだが、鉱山を調査していた日本企業の人間が遠くから撮影したらしい。その人の証言は文献に残ってるこいつと一致したんだ。」
「...ふーん。」
「まあそれで、こいつは以前に自衛隊が倒した魔王よりは弱いらしい。とは言っても、魔物を操る能力を持っているらしい。....ということは、魔物の活性化の原因は多分こいつだ。だからこいつを倒せば、たぶん一件落着だ。」
「......なるほどね。そいつは爆弾やら機銃掃射で倒せるのか?」
彼女の疑問に吉川は少し困った顔をした。
「うーん、それはちょっとわからん。けど、以前の魔王はロケランやら戦車の砲やら喰らって死んだらしいから、爆撃は効くんだろ。」
「なるほど、じゃあこの編成で大丈夫なのか。」
「うん、そうそう。あっそうだ、ちょっと風呂借りるぞ。」
そして、吉川は急に席を立つとそう言って部屋から出ていった。その様子をペトログラードは狐につままれたような顔をして見ていたが、到着時間まではまだ余裕があるので何も言わなかった。
一人になった彼女は部屋のテレビを付けると、撮りためていた映画の続きを見始めるのだった。
同日 午前10時 佐世保鎮守府―――
「......はい、もしもし。こちらは佐世保鎮守府です。」
部屋で執務にあたっていた森高の、机の電話が鳴った。
『・・・・・・・・・・・・・・・・。』
「...はい。...えっ!?本当ですか?はい、はい.....ありがとうございます。分かりました、失礼します。」
そう言って、受話器を置いた彼の表情は明るいものではなかった。その様子を同じ部屋にいた扶桑とサラトガが心配して声をかけると、森高はゆっくりと話した。
「......上は、どうやら核兵器の保有を考えているらしい。」
「........えっ?」
それを聞いたサラトガの表情も変わった。それもそのはず、彼女は過去、日本に落とされるはずだった原子爆弾の標的として使われた船の一人なのだ。更に言えば、サラトガは敵国に沈められたのではなく、自分の祖国の手で沈められた。これを人間に例えるとしたら、親に殺されるようなものだ。こんなことを良い思い出として捉えるなんて有り得ない。
艦娘達には、個人差はあれど前世......つまり実艦だった頃の記憶がある。当然、作られなかった船である計画艦は除くが、彼女たちは何らかのトラウマを抱えていることがあった。
今、森高の隣にいるサラトガもそうだ。レキシントン級航空母艦の2番艦である彼女は、戦後老朽化を理由に原爆の実験に用いられ、一度目の生涯を閉じた。同じ実験で使われた船は、長門、酒匂、ペンサコーラや、現在フェン王国に駐在しているアーカンソー、プリンツ・オイゲンなどがいる。
そしてかなり昔のことだが、悪夢にうなされるサラトガを、森高が隣にいてやって夜通し慰めるということが何回かあった。今ではかなり落ち着いたが、ときおりその悪い夢を見ることも未だにあるらしい。
しかし日本政府にもそれなりの理由がある。原因は、他でもない古の魔法帝国、ラヴァーナル帝国だ。近年復活するとされるこの国は、コア魔法......つまり核ミサイルを保有し、それを実際に使用するような連中らしい。
日本は「抑止力が実際に使われるようなことがあってはならない」ということは当然理解している。使ってはいけないが、しかし保有はするべきと考えはじめているのだ。
「........まだ決定はされていない。それと、これは機密事項だ。鎮守府の外に情報が出ないようにしてくれ。」
何ともいえない空気になってしまい、複雑な心境で森高らは仕事に戻るのだった。
同日正午 「世界の門」 沖合約3km地点―――
「........第一次攻撃隊発進。」
高橋が指示を出し、「イントレピッド」「ヴァリー・フォージ」「ボクサー」「ゲティスバーグ」「イオー・ジマ」の5隻のエセックス級空母から次々とF6F戦闘機、F4U戦闘機、SBDドーントレス爆撃機、TBDアヴェンジャー雷撃機が飛び立っていく。
彼らは、手始めに世界の門の近くに溢れた魔物を機銃掃射で駆除し、次により奥側に進んで鉱山までの道を開く予定だ。
「おお、行った行った。」
第一次攻撃隊を見送った吉川は、そう呟くと艦内へ戻っていった。彼の乗る「ペトログラード」他、戦艦と巡洋艦らは空母を囲むように展開し、水中に目を光らせている。
100機を超える規模の航空隊は、誇らしげに翼をはためかせ去っていった。
同日 午後2時頃 グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ―――
「......私は、絶対に反対です。」
「ほう.....何故だ?」
大将カイザル・ローランドは帝王府に呼び出されていた。そして彼は皇太子...いや、帝王となったグラ・アデルと一対一で話をしていた。まだ若いとはいえグラルークスの血を継いだ男であり、高い身長と鋭い瞳のおかげか、カイザルが思っていたよりも皇族としての風格があった。
「帝国主義は時代遅れであります。これからは各国と協調していくべきなのです。」
臆せず自身の意見を述べる。しかし、グラ・アデルも負けてはいなかった。
「......ふん、貴様も老いたらしいな。」
「....。」
カイザルは押し黙るが、アデルは構わず続ける。
「そもそも世界制覇とは、グラ・バルカス帝国建国以来の悲願であるぞ。世界が変わった程度で、おいそれとやめるわけにはいかぬ。」
「....しかし、この世界には我々よりも上の国があるかもしれないのです。」
こう言ってったところで、アデルは鼻で笑うだけだった。
「貴様が言っているのは、日本のことだろう?......はっ、戦争に一度負け、他国によって力を奪われた国などに我が国が劣るなどありえぬよ。それに、我が国にはあの兵器があるではないか。それを使えば、どんな国でも一撃で滅ぶさ。」
「...なっ!?あれは絶対に使っていいものではありません!!あれは、死神の兵器です!!」
「落ち着けカイザル。とにかく、貴様も帝国軍人であるからには、私の命令には従ってもらうぞ。」
結局、アデルを説得することは出来なかった。当然、帝王府から出て行くカイザルの足取りは重い。
(あの男は...駄目だ!!何も見えていない!!それに、あの兵器..."ソドム"だけは使ってはならない!!絶対にだ!!)
カイザルは世界との戦争を回避する方法を探すべく、必死に模索し続ける。しかし、彼の苦悩はこれからもしばらく続くのであった。
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