日本国召喚 独立艦隊の奮闘   作:yyyyyyyyyyyyyyyyyyy

58 / 64
高評価、ありがとうございます!うれしいです。


第56話 グラメウス大陸大掃除作戦⑤

1月 16日 午後3時頃 グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ―――

 

「...............。」

 

背の高い一人の男が、病院から出て行く。その足取りは重かった。

 

彼...グラ・カバルは先日、議会で行われた帝位継承会議で敗れ去っていた。それも、ものの見事な惨敗という結果でだ。あの時のことを思い出すだけで、彼はこの上なく情けない、みじめな気分にさせられる。

 

父親のグラルークスはずっと眠り続けている。病状の進行は緩やからしいが、このままではいずれ力尽きてしまうだろう。しかし彼の病気は帝国の医療技術では治すことが出来ないのである。

 

 

 

「ああ.......。」

 

不甲斐ない......。思わずため息がでる。もしかすると日本の技術をもってすれば、父の病気は治るのかもしれない。だが、弟のアデルはこのままでは世界中に戦争を挑んでしまうだろう。

 

彼は自身の無力さを嘆くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

同日  午後3時33分 グラメウス大陸 遺跡付近―――

 

(......!!!いったい......何が起きているんだ.....!?)

 

 

量産型魔王、ハネスは大いに混乱していた。放ったロッドが数匹をのぞいて全て反応が消えたからだ。しかも、何匹かは彼自身が直接操ったというのにもかかわらず瞬殺されている。リンクさせた視界に映ったのは、魔帝の戦闘機によく似た航空機の姿だった。姿は違えど、航空機を持っている国があるということに、彼はひどく驚かされていた。

 

(いつの間にやら、この世界の蛮族も技術を発展させたようだな。だが、速度は劣っている上に誘導魔光弾も持っていなかった。フン...やはり魔帝様には劣るな。)

 

 

そう言って、どうにか自分を落ち着かせる。魔帝を超える技術とはいかないまでも、どうやら彼の思った以上に、この世界は発展しているようだった。

 

 

その時だった。

 

ゴォォォォォ.....という低い音が遠くから聞こえてきた。

それを聞いたハネスは思わず立ち上がり、空の向こうを睨む。そこにはいくつものシルエットが浮かび、次第に近づいてくるのがわかった。おそらく、高度3,000メートルほどだろう。

 

 

「くそ!目障りな!!」

 

彼はそう吐き捨てると、指を何やら不思議な形に組む。すると、彼の目の前には直径2メートルほどの魔法陣が形成されてゆく。

 

「くたばれ!!」

 

その叫びと共に、魔法陣が光り輝く。すると、太いサーチライトのような光が空に向かって伸びていった。そしと、およそ5秒ほどで、それは霞んで消えていった。

 

しかし、残念ながら敵の航空機には当たらなかった。久しぶりに魔法を使ったせいか、どうやら腕がなまっているらしい。

 

「クソッ!」

 

ハネスは再び悪態をつくと、慌てて別の魔法の準備を始めるのだった。

 

 

 

 

 

「うおっ!!なんだあ!?」

 

一方、攻撃を受けた戦闘機隊はいきなりの攻撃に驚いてはいたが、幸いにも被害はなかったようだ。そして、「ヴァリー・フォージ」所属の隊員が原因を見つけたようだ。

 

 

『リーダー!あの岩の裏になんかキモいのがいるぜ!』

 

彼の通信を聞き、全員がその方向に視線を向ける。そこには、彼の言うとおり"なんかキモいの"......ハネスがいた。

 

『アイツが噂に聞く"魔王"か!!』

 

『どうするリーダー!!』

 

隊員達が急かすように通信を飛ばしてくるが、隊長は冷静に考える。少しの沈黙の後、彼は命令を出した。

 

「俺と......ジェイ、ついてこい。機銃とロケット弾で様子を見る。他の奴らは待機だ。もし一機でもやられたら即撤退。」

 

 

『『『『了解!!!!』』』』

 

敵の正体や能力がよく分かっていない今、油断は禁物だ。もしかすると、こちらを一瞬で全滅させられるほどの能力を持っているかもしれないのだから。それに、もしここでやられてしまっても、妖精である彼らは母艦の艦娘が死亡しない限りはまた戻ってくることが出来るのだ。

 

 

隊長の命令に従い、彼のF4Uと、「ジェイ」と呼ばれた妖精のF6Fが編隊から一旦離れる。そしてその2機は、唸りを上げ、急降下を始めた。

 

 

「気ィ抜くなよ!!」

 

『もちろんさリーダー!!』

 

 

2機の戦闘機は一直線に魔王を狙う。

 

 

 

 

 

 

―――「来たか!!!」

 

その様子に気づいたハネスは身構える。先ほどの攻撃でこちらの居場所がバレたのだろう。彼は今度は違った形で指を構え、何かを唱える。すると、魔法陣ではなく薄紫色のシールドのような物が、彼の周囲を覆うように展開された。どうやらこれが防御魔法の一つのようだ。

 

 

 

そして、その様子を2人のパイロットは見ていた。彼らは、隊長機のF4Uが前、その少し斜め後ろにF6Fという形を取っている。

 

 

「吹き飛びな!!」

 

そう叫ぶが速いか、トリガーを引いた。6丁の12.7mm機銃が火を噴き、曳光弾を交えながら飛んでゆく。続いて、ロケット弾10発もまとめて発射し、後ろのF6Fも同じ方法で攻撃を開始した。

 

 

 

 

「ぬがぁっ!!!」

 

弾丸が次々に降り注ぎ、地面が剥がされんばかりの勢いで波打つように突き刺さる。シールドを貫通はしないようだが、これでは動くこともできない。

 

ハネスは防御魔法は得意だが、攻撃魔法は先ほど使ったものしか出来ない。それに防御魔法を使用中は攻撃が出来ないので、今はただ守ることで精一杯だ。

 

「...!?」

 

さらに続いて、銃撃が止み、今度は2機の航空機の翼が光る。それを見て、ハネスは恐怖を覚えた。

 

 

「まさか、誘導魔光弾!?」

 

合計20発打ち出されたロケット弾が、彼の元に向かう。特に意味はないが、ハネスは思わず足腰に力を入れてしまう。もしあれが魔帝の誘導魔光弾と同様の物なら、シールドを破壊されてしまうかもしれない。

 

 

 

「ぐおっ!!!」

彼の周囲にロケット弾が着弾、爆発を起こし土煙と粉雪がもうもうと立ち上がる。およそ30秒ほど、ハネスのいた辺りは、ほとんど何も見えなくなった。

 

 

 

 

 

 

「さあ、どうかな?」

 

 

攻撃を終えた2機は、視界が晴れてゆくのを待つ。今の攻撃がどの程度効いているのか見極めなければならない。まあ、この程度で倒せるのならば楽なものだが―――。

 

『......ああ、やっぱりダメみたいですね。』

 

ジェイの言うとおり、土煙が晴れるとそこには変わりない魔王の姿があった。そして、相変わらずの不気味な見た目で、こちらを睨んでいる。雪を引っ剥がされた地面は歪な形に変貌していたが、魔王にはダメージはなさそうだ。

 

 

 

「.....そのようだな。一度母艦に戻ろう。全機撤退。」

 

『了解!』

 

再び編隊を組み直した戦闘機隊は、隊長の指示に従い母艦に戻っていった。

 

 

 

「くそ!!!」

 

去っていく戦闘機隊を黒い目で睨みながら、ハネスは悪態をつく。先ほどの攻撃は、どうやら誘導弾では無いようだが、それなりに威力はあった。この世界の野蛮人どもにまさかここまでコケにされるとは思っておらず、彼のイライラはとっくのとうに頂点に達している。

 

 

 

「猿どもめが!!!絶対に許さん!!」

 

 

そう叫ぶと、彼は遺跡の中へと入っていき、何やら準備を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

同日 午後4時頃  戦艦「スターリン」 露天艦橋―――

 

 

ちりん、と鈴のピアスが音を立てる。ここにきて雪が大人しくなったので、高橋はやっと一服できていた。彼曰く、寒いときに吸うたばこはなぜかおいしいらしい。

 

 

「なあキョースケ。前から気になってたんだが、お前のその耳、どうしたんだ?」

 

隣にいた艦娘「スターリン」が高橋の右耳を指さしてこう尋ねた。最近、彼は左耳にだけピアスをしていたが、右耳は下の三分の一ほどが失われていたのだ。それに首筋には銃創のような傷の跡がある。

 

 

高橋は自身の耳を触ると、こう答えた。

 

「...ん?ああ、これか。......ええと、たぶん5年前くらいの戦いで、敵にうっかり撃たれたんだ。耳の一部は吹っ飛ばされたが、幸い体には掠っただけだった。あん時は大変だったなあ....。」

 

「ふーん、昔にそんなことがあったのか。」

 

「ああ、そうだよ。男の勲章?かな。」

 

そう言うと、ゆっくりと白い煙を吐いた。

 

 

「あと、そのイヤリングはどうしたんだ?」

 

スターリンはもう一つ気になっていたことを尋ねた。前までは何も付けていなかったはずだが、そのピアスは少し古そうに見える。

 

「これは兄貴のさ。昔に買って、俺は右耳に、あいつが左につけてた。俺のはずいぶん前に、撃たれて吹っ飛ばされてどっか行っちまったんだがな。んで、これは最近フェン王国で見つかったらしい。」

 

スターリンは、これは少しまずいことを聞いてしまった、と思った。フェン王国での虐殺被害者の遺体は、パーパルディア皇国の兵士によって捨てられ、一人も回収できなかったらしい。

 

「......すまない。」

 

「気にすんなって。今度は....うっかり左耳を撃たれないようにしなきゃな。」

 

高橋はそう言って笑った。

 

ちょうどその時、魔王を攻撃していた戦闘機隊が帰ってきた。

 

「......さて、作戦会議といこうか。晃輔とペトロたちと合流しよう。」

 

「ああ。」

 

その様子を見ていた二人は、艦橋内に戻っていった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。