日本国召喚 独立艦隊の奮闘 作:yyyyyyyyyyyyyyyyyyy
1月16日 午後5時 戦艦「ペトログラード」会議室――
「さあて.....どうしたもんかね。」
会議室には長机を囲み、今回参加している全ての艦娘達と、2人の提督が座っている。彼らは戦闘機隊の報告を聞き、これからの作戦についての話し合いをしていた。
吉川はガンカメラによって撮影された魔王の写真を、なんともいえない顔つきで見ていた。写真にはシールドを展開し、その裏からこちらを真っ黒な目で睨みつけるハネスの姿がはっきりと写されている。
「機銃と......ロケット弾は.......おそらく効果なし....かあ。爆弾ならどうかな?」
緑茶を飲みながら、写真を机に戻す。出席している他の面々も、写真などの各種資料に目を通していた。その気になれば全艦による艦砲射撃も出来るのだが、そうするとおそらく遺跡や鉱山も木っ端微塵にしてしまう可能性が高いので、それはなるべく避けたい。
ここで、1人の艦娘が手を挙げた。
「アレク、何か?」
彼女は軽巡洋艦娘「アレクサンドル・ネフスキー」だ。非常に腰の据わった性格と、スラヴ系を思わせる整った顔立ちが特徴の艦娘である。名前が長いので、よく略称で「アレク」と呼ばれていた。
高橋に指され、彼女は意見を述べる。
「......ひとまずは、様子を見るべきかと思います。遺跡や鉱山を傷つける訳にはいきませんし、時間には余裕があります。向こうから襲ってきたら、全力で反撃すればよろしいかと存じます。」
言い終わると、再び行儀良く椅子に座った。
「うーん.....遺跡にこもってる内は様子を見て、出てきたら攻撃か.....。まあ補給も出来るし。何か他に意見ある奴いるか?」
高橋の言葉に答える者はいなかった。つまり、とりあえずはそれでいいだろうということだ。
というわけで、ひとまずは偵察機を常時飛ばして様子をうかがうことにしたのだった。
同日 午後7時 戦艦「リットリオ」艦内―――
「.........リットリオ。」
「どうかしましたか?」
現在、「リットリオ」の他、艦隊では夕食の時間だった。今艦内で働いている妖精達も食堂に集まっている。その中のとある机では、赤松が目の前に並べられたイタリア料理の数々を目の前にして固まっていた。1月7日に出港してから今日で9日目になるが、当然食事は全てイタリア料理であった。これは、日本人の赤松にとってはなかなかにつらい。既に限界に近づきつつあった。
彼は机にだらんと倒れたまま、向かい側に座るリットリオにこう言った。
「リットリオ.......ソロソロニホンショクタベタイ......オレシンジャウ.......。ミソシルノミタイ.....。」
何故か片言で話始めた赤松に、少しばかり戸惑うリットリオではあったが、彼の気持ちは分からなくもない。彼女はにっこりと笑うと、こう返した。
「分かりました、料理長に伝えておきますね。ミソはあるんですか?」
それを聞いた赤松は跳ね上がるように体を起こした。
「よっしゃ!寒いから辛口味噌を乗せといたよ。」
すっかりご機嫌になった彼は、夕食をあっという間に平らげてしまった。その後、入浴などを済ませ、あとは寝るだけとなった赤松とリットリオは、艦内の小さなバーで酒を飲みつつ話をしていた。壁に掛けられたレトロ調な時計は、午後10時を少し過ぎた頃を指している。
「......ふう。」
ロックグラスを呷ると、赤松は一息つく。その隣には、ワイングラスを片手にリットリオが座っていた。
彼はスマートフォンを何やらいじくると、リットリオにある写真を見せる。
「見てみなよこれ。京介たちはこんなのと戦ってるらしいぜ。」
そこには、F4Uのガンカメラによって撮影されたハネスの写真があった。
「これはまた......不思議な生き物ですね。」
リットリオは、興味深そうにその写真をのぞき込む。前の世界.....地球にはこのような生き物はいなかった。
「なんか、防御力が高いんだとさ。シールドみたいなのを使ってロケット弾を弾いたとか。」
「想像もつかないですね.....。」
赤松は煙草に火を付け、ゆっくりとくゆらせる。
「まあ、陸自さんなら、前みたいに戦車で倒せるんだろうな。俺たちがやるよりずっと楽に、な。」
「.........。そうですね.......。」
政府は以前、例外的に魔王ノスグーラ戦に陸自を派遣させたが、少なくとも転移の原因が分かるまでは自衛隊は領海より外には出さないという方針を取っていた。虎の子である自衛隊を外に出している時に、万一元の世界に戻るようなことがあると困るからだ。逆に言えば、積極的に外に出されている佐世保の戦力は最悪いなくなっても構わない、という事だ。誰も口にはしないが、暗黙の了解として全員がそのことを理解している。しかし、あまり気分のいい事では無かった。
「......早いとこ、転移の原因を知りたいねえ。」
火を消すと、赤松はそう呟いた。
「....さてと.......まだ、寝るには少し速いかな。スマブラでもしようか。」
「はい。」
2人はバーを後にした。
翌日 1月17日 早朝6時頃 日本国 東京都某所―――
冬だということもあり、まだほんの少し薄暗い。朝靄がうっすらとかかっている相模湾を、彼女......戦艦娘「キング・ジョージV世」は感慨深げに眺めていた。
今からおよそ70年前に、彼女は妹の「デューク・オブ・ヨーク」や、アメリカの戦艦「コロラド」「ミズーリ」などと共に、太平洋戦争の終結を見届けた一人だ。彼女ら5姉妹は、船体の改装を行っている間に休暇をもらって、ここに来ていた。
「あのときから随分、変わったな......はは、そりゃあそうか。70年も経ったんだからな。なあ、デューク。」
「ええ、そうですね......。」
彼女たち「キング・ジョージV世級」が艦娘として誕生したのは数年前のことで、ここに来たのは今日が初めてだった。かつての敵国であった日本で、人の姿をして生きているなんて、まったく不思議な話だ。
「......さて、そろそろ行こうか。ツキジで朝飯でもいこうか。」
長女がそう言うと、彼女たちはそこから去っていった。
同日 午前7時頃 グラメウス大陸 遺跡地下
「........これを使うか。」
ハネスは武器庫にあった、あるものを見ていた。
そこには、人型の、白く無機質な物体が佇んでいる。顔にあたる部分は透明で、中に入ると外が見渡せるように作られている。内蔵された魔導エンジンにより、魔力を発生して保存するほか、操作者の魔力を増幅して放てる。さらに手や足の力も何倍にも増幅できる、古の魔法帝国製兵器。汎用人型陸戦補助兵器「MGZ型魔導アーマー」だ。高さおよそ2m、全幅1.2mで、後背部に魔導兵器を搭載可能であり、防御力も、生身に比べると遥かに向上する。これがあれば、防御魔法を使わなくとも十分だろう。
彼がこの魔帝の兵器を身に纏うと、物々しい見た目に拍車がかかった。
「あとは.......。」
武器庫から出たハネスは、机の上にあったディスプレイを操作する。
「ゴブリンが5000に......オークが1000.....少ないな。」
彼が見ているのは、更に下層の部屋に保管されている生物兵器達のリストだった。空を飛ぶ敵を相手に戦えるとはとても思えないが、弾除けくらいにはなってくれるかもしれない。それに、ハネス一人で敵の大元を潰せれば問題はないはずだ。
敵はおそらく海から.....つまり艦隊がいるのだろう。そこまでたどり着き、強烈な魔法をお見舞いしてやろう。そうしなければ、彼の気が済まない。
「フフフフフ.......許さんぞ、猿ども.....!!!」
彼は、1人ヒステリックに笑うのだった。
同日 午前9時頃 佐世保鎮守府―――
「うーん.....。」
森高が1枚の紙に目を通していた。先日連絡があったムーでの合同観艦式に誰を参加させるか、彼は考えていた。どうやら、神聖ミリシアル帝国の艦隊も参加するらしいので、この世界の列強国を相手になるべく自分たちの存在をアピールしておきたいところだ。
「......行くかい?」
彼は同じ部屋にいた艦娘「扶桑」に話しかける。
「はい、慶んで。」
彼女は微笑みを浮かべ、そう返した。
「うん、じゃあ山城にも聞いてみようか。あとはどうしようかな......。」
佐世保は、今日も平和だった。
たぶんここらへんが終わったらすぐ会議にすると思います。