日本国召喚 独立艦隊の奮闘   作:yyyyyyyyyyyyyyyyyyy

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うっかり下書きが消えてたので遅くなりました。少し長くなってます。


第59話 グラメウス大陸大掃除作戦⑧

午前9時32分―――

 

 

「......見つけたぜ!」

 

一人の男が吼える。

 

発艦より一時間と経たずに、攻撃隊は目標に接近していた。彼らの視線の先には、まるでアリの行列のようないくつもの黒点が確認できる。間違いなく、あれが報告にあった魔物の群れだ。

 

 

「攻撃開始!!」

 

 

隊長機からの号令のもと、彼らは遂に攻撃を開始した。

 

 

 

 

 

同じ頃 戦艦「スターリン」艦内―――

 

 

「キョースケ、パピコ食うか?」

 

「......おう、くれ。」

 

艦娘「スターリン」は慣れた手つきでアイスを二つに割ると、片方を高橋に投げて渡した。

 

相変わらずやることもない高橋とスターリンは、艦内のとある部屋で時間をつぶしていた。外は寒く、雪も降っているが、当然部屋は空調が効いている。そしてその暖かい部屋で食べるアイスクリームの美味しさといったら、えもいわれぬものだ。

 

 

 

「おまえ、そんなもん読むのか?」

 

 

受け取ったアイスを口にしつつ、高橋は前の席にどっかりと座っているスターリンに声をかける。

 

彼女がアイスを食べながら読んでいるのは、プロイセンの有名な哲学者であるカール・マルクスについて書かれた本だった。社会主義という思想に大きな影響を与えた人物について書かれた書籍を、「スターリン」の名を持つ彼女が読んでいる風景は、なんともいえないシュールさを醸し出している。

 

 

 

「......私には、似合わないか?」

 

 

彼女はちょっぴり不服そうにそう言うと、本を閉じた。どうやらスターリンは、少し勘違いをしたようだ。

 

 

「あーいや、違う違う。お前がその本を読んでるのがな...。」

 

 

「ああ、そういうことか。...だが、名前が同じだけで私はあの男とは特に繋がりはないんだぞ。」

 

 

スターリンはそう言うと、またアイスを一口食べた。

 

ここで高橋は一つ、彼女に尋ねてみる。

 

「まあ、分かってるけどさ。......そういやお前は、資本主義と社会主義なら、どっちの方がマシだと思ってるんだ?」

 

彼の切り出したこの質問に、スターリンは少しの間黙ってから、こう答えた。

 

 

「......私からすれば、社会主義はクソで......。」

 

「ほう?」

 

「.......資本主義はチンカスだな。」

 

そう言い終わると、彼女は足を組み直した。一方の高橋は、この例えにあまりピンとこなかったらしい。それに、余りにも下品な答えだったので少し表情が歪んでいるように見える。

 

「きったねぇ例えだな...。つーかそれ、なにが違うんだ?どっちも大して変わんねぇだろ。」

 

 

彼のこの言葉に、スターリンは少し呆れたような表情を作ってこう返した。

 

「それは違うな。私は、クソを口に入れるのは絶対にごめんだ。...つまりは、そういうことさ。資本主義の方がマシってことだよ。」

 

「......ほう、そうなのか。」

 

「ああ、そうさ。そもそも、社会主義がクソだってのは、歴史が嫌というほど証明してくれているだろう。前の世界の地球で、結局社会主義を貫けた国はないに等しい。ソ連のやり方も、結局スターリンが雇い主の資本主義と変わらん。私も姉さんも作られなかったのは、他ならぬスターリン(クソッタレ野郎)の采配のせいだしな。」

 

 

このように一通り文句をぶちまけると、彼女はまたどっかりと座り直した。彼女の名前の由来は、かの有名な"ヨシフ・スターリン"から来ている。しかし彼女は彼のことを嫌っているらしく、自身の名前もあまり気に入っていないようだ。曰く、『フルネームで付けられてたら改名していた』のだとか。

 

 

佐世保に所属している様々な国の艦娘の中でも、ソ連は未成及び計画のみで終わった艦が多い。何故かというと、大量の軍艦を欲していたスターリン自身が大量の技術者を粛正してしまったことも一因である。自分の政策で自国の首を絞めてしまっていたのだ、なんとも皮肉なことである。結局開発は停滞を重ね、大戦中に運用できた戦艦に至っては旧式のガングート級と、イギリスから供与されたリヴェンジ級戦艦の「ロイヤル・サブリン」など少数に留まるという有様だった。多数あった計画は、結局ほとんど全てが水の泡となってしまったのである。

 

 

しばらく黙って聞いていた高橋は、食べ終えたアイスを捨ててから口を開く。

 

「......まあ、そんなカッカすんなよ。とっくの昔に亡くなった爺さんにキレても意味がないだろ。」

 

「分かってるよ。.....まだ休んでていいのか?」

 

「ああ。今日は晃輔に任せとけ。けどまあ、何かあれば動ける準備はしとけよ。」

 

「ああ、了解だ。」

 

そう言うと、スターリンは一度部屋を出ていった。

 

 

 

 

9時34分―――

 

 

「.....くそっ!!」

 

 

魔物達の行列の一番後ろの方で、ハネスは舌打ちした。あの不気味な音がしたと思ったいなや、前の方で猛烈な爆発が連続して起きた。それだけで、なにが起きたかは理解できる。

 

「はっ!」

 

ふと空を見上げると、3機の天の浮舟が彼のほぼ真上に陣取っているのが見えた。そしてそれは、向きを変えると真っ直ぐに落ちてくる。

 

 

そして、それは何か黒いものをこちらに放った。おそらく魔導爆弾のようなものだろう。

 

 

次の瞬間、ドン!という腹に響く音が鳴る。

 

 

「くっ......ぐおあっ!?」

 

咄嗟に防御魔法を貼ろうとしたが、詠唱が少し遅れてしまった。彼の目の前で猛烈な爆発が起き、大きな体が空高く打ち上げられる。たちこめる土煙に混ざり、魔物の腕や足の破片などが降ってきた。

 

 

「う.........。」

 

 

大きな衝撃こそあったものの、アーマー及び彼自身にはダメージはない。やはり自分以外の魔物達はあの攻撃には耐えられないようだったが、所詮寄せ集めの囮達だ、自分さえ残ればよいのだ。

 

奥の手中の奥の手ではあるが、彼にはある考えがあった。それは、一言でいえば自爆だ。彼の持てる限りの魔力をアーマーの心臓部に集中させ、故意に暴走させる。コア魔法には流石に劣るが、それでも半径1kmほどを焼け野原に変えることができるだろう。欠点としては、チャージに一時間ほどかかることだ。

 

 

プライドの高い彼としては、こんな事は絶対にやりたくはない。それでも、偉大なる魔帝様の覇道の障害になりうる存在は除かねばならぬのだ。

 

再び決意を固めると、彼はまた歩みを進めるのだった。

 

 

 

およそ30分後 戦艦「ペトログラード」艦橋内―――

 

 

―――「で、結局どうなんだ?いけそうか?」

 

『ザコは問題なさそうだ。爆弾で始末できてるぜ。だが、さっきはビームが飛んできた。おそらく例の魔王だな。』

 

艦橋では、吉川が攻撃隊のリーダーと話をしていた。

 

「そうか、分かった。魔王については引き続き警戒を続けてくれ。生き返れるからって無茶はしすぎるなよ。」

 

『任せろ、サー。』

 

 

ここで一旦通信が切られる。吉川は通信機を置くと、またどっかりと座り直した。

 

 

「......で、どうだって?」

 

彼の隣に座っていた艦娘「ペトログラード」が彼に話しかける。

 

「とりあえず、普通の魔物は機銃やら爆弾やらで十分だ。だがな......。」

 

言葉をそこで切り、吉川は腕を組む。

 

「......魔王か?」

 

「ああ、そうだ。なんかパワーアップしてるらしいぞ。あの鎧みたいなのは本当に強化アイテムだったっぽいな。機銃どころか、爆弾もあまり効いていないのかもしれん。」

 

「......そうか。大丈夫なのか?」

 

彼女の顔が少し不安げなものになった。相手が未知の存在である以上、何が起きるか分かったものではないのだ。それに魔王ハネスの目標は、十中八九自分たちだ。一方で、吉川はあまり心配していないように見えた。

 

 

「なーに、そんなに緊張するな。この世に無敵なんてものはありゃしないんだからな。」

 

「......ああ、分かっている。全て問題ないさ。」

 

「よし、それでいい。」

 

こう言うと、吉川は再び通信機を手に取り、指示を出した。

 

 

『えー、こちら吉川だ。全艦に告ぐ。向けられる限りの砲門を大陸に向けておけ。』と。

 

 

これに従い、空母以外のすべての艦が大陸に向けて、砲を指向した。

 

 

 

 

 

「なんか飲むか?」

 

「......うーん、ゆず茶を頼む。」

 

「渋いな...。ああそうだ、なんか音楽かけといてくれよ。」

 

「何かリクエストはあるか?」

 

「せっかくだし、シューベルトの『魔王』でも...。いやまて、あれは確かバッドエンドだったな。だめだ。.......やっぱりユニコーンでもかけといてくれ。明るいやつな。」

 

「わかった。」

 

 

通信機をおいた吉川は立ち上がり、ペトログラードに声をかける。彼女の答えを聞くと、彼は一旦部屋を出ていった。吉川のリクエストを聞いた彼女も、スマートフォンを操作し始めた。少しすると、艦橋内には陽気なロックが流れ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日 午前10時5分頃 佐世保市某所―――

 

非常に広大な佐世保鎮守府では、八幡製鉄所のように、物資の運送などのために専用線が敷設されている。そして、そこではかつての軍の工廠のように蒸気機関車やディーゼル機関車が使用されていた。

 

 

佐世保鎮守府は当然、一般人の立ち入りは禁じられているため、その中身はあまり公にされていない。しかし、搬入などに使われる専用線は一部が外からも見え、またJR佐世保線と接続していることもあり、その場所では今日も多くの鉄道ファンが集まりカメラを構えていた。

 

 

 

「まだか?」

 

「そろそろ来るはずだ。」

 

カメラマンたちが貨物用の時刻表とにらめっこをしている。まもなく引き継ぎが行われるはずだ。

 

そして間もなく、遠くから煙が見えてきた。それに気づいた彼らは、反射的にカメラを構える。

 

 

「げっ、あれは!?」

 

見えてきたその姿に、どよめきがあがる。

 

「パシナ号だ!!間違いない!!」

 

誰かが思わず叫ぶ。

 

紅く、大きな動輪に、流線型の優美なボディ。やってきたのは、かつての南満州鉄道で活躍したパシナ型蒸気機関車だった。

 

「すげぇ!!」

 

一斉にシャッターが切られ始める。しかしパシナ号はそれを気にも留めず、黙々と作業を終えると、貨車を引いて去っていった。

 

「なんでここにパシナ号が?」

 

「いや、ここではいろいろな国の蒸気が目撃されているらしいぞ。何がいてもおかしくない。」

 

「どうなってるんだ........。」

 

残されたカメラマンたちは、夢でも見ていたかのような表情で、ただその様子を見届けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「ええ~......。」

 

そしてその頃、佐世保鎮守府内にある巨大な車庫の前では、森高が驚きとも呆れともとれる表情で立っていた。彼の視線の先には、世界の著名な蒸気機関車が肩を並べ、休んでいた。

 

「イギリスの『マラード』、『LNERフライング・スコッツマン4472号』に......ドイツの『52形』『01型』...。」

 

彼が思わず口に出した以外にも、中国の前進型などもある。その全てが、1067mm用に若干のスケールダウンはされていたが、それでも凄まじい迫力だ。

 

「......大淀。これはいったい、どうしてこうなったんだ?」

 

ずれてしまった制帽を直しながら、森高は隣に控える艦娘「大淀」に尋ねる。

 

「ええと.....各国の娘達が工廠の妖精に頼んで.....」

 

 

「晃輔と一誠は許可を?」

 

鉄道に関しては、赤松と吉川の担当であった。

 

「はい、『どんどんやれ』と......。」

 

「なるほどねえ......。あいつらならしょうがないか。資源は足りてるのか?」

 

「それに関しては問題ありません。クイラ王国からほとんどタダに近い価格で購入できています。」

 

「そうか....。じゃあ、問題ないか。」

 

森高はこれ以上悩むのは無駄だと気づいた。転移後、日本によるインフラ整備の一環として佐世保も協力していた。ロデニウス大陸など各国に蒸気機関車を輸出しているのだ。

 

人件費がほぼかからないので、価格はかなり抑えられている。ほかの重工業メーカーは客貨車及び機関車を製造しているが、現在の日本で蒸気機関車を製造できる場所はここ佐世保と東北にある、とある企業だけだ。そして後者の方も、今ではほぼ製造を行っていない。というわけで、佐世保で色々な機関車が日々製造されているのだ。資源が豊富ということと、文明レベル、そして日本からの観光資源として蒸気機関車にもニーズがあった。

 

 

「......そろそろ戻ろう、大淀。」

 

「はい、千鶴さん。」

 

二人は機関庫を離れていった。




今度やる予定の番外編は、後半にふれた「新世界の鉄道事情」というものにしようと思っています。

お粗末様でした。
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