日本国召喚 独立艦隊の奮闘 作:yyyyyyyyyyyyyyyyyyy
午前11時36分 佐世保鎮守府―――
提督の一人である森高千鶴と艦娘「大淀」は機関庫から執務室に戻る途中、話をしていた。
「......最近、寮では特にトラブルはないかい?」
「はい、大丈夫です。」
「そうか。ならよかった。.....そういや、グラ・バルカス帝国からは何もないのか?もう二ヶ月は経つというのに。」
大淀も返す。
「......今のところは、なにも連絡がないようです。政府内でもちょっとした不安の種になっているようですが......。」
「そうか、どうしたんだろうな....。」
森高が少し困ったような顔をしていたそのとき、駐車場の方から特徴的なエンジンの音が聞こえてきた。
「あの音は.....まさか!悪い大淀、先に部屋に行っててくれ。」
「えっ、はい!」
戸惑っている彼女を置いて、森高は駐車場へと走っていった。
「おいダンテ、どっか行くのか?」
そして今まさに真っ赤な車に乗り込み、鎮守府から出ようとしていた艦娘「ダンテ・アリギエーリ」に、近くにいた「キーロフ」が声をかけていた。
前者はクリストフォロ・コロンボ級戦艦の3番艦、後者はキーロフ級巡洋艦の1番艦である。そして、「ダンテ・アリギエーリ」はウェーブのかかった茶色のショートヘアに少しのそばかす、「キーロフ」はストレートロングの黒髪が特徴だ。
アリギエーリは振り返ると、こう返す。
「ああ、博多に行くところだ。用事があるなら乗せていくぞ?」
「いや、遠慮しておく。んで、お前は何をしに行くんだ?」
「ああ、タトゥーをいれようと思ってな。ここと......ここらへんにな。どうだ?イカすだろう?」
彼女はスマホのアルバムを開くと、キーロフにデザインを見せた。どうやら彼女は左腕、背中、そしてデリケートゾーンの辺りにもガッツリ墨をいれるつもりらしい。
それを見たキーロフは少し苦い顔をして、アリギエーリにこう告げた。
「提督達の気を引くつもりだろうが......あまりお勧めはしないぞ。タトゥーは日本じゃウケが悪い。」
「えっ、そうなのか?」
アリギエーリはいかにも意外そうな表情になった。彼女からしてみれば、タトゥーはファッションの一環に過ぎないのだ。
「ああ。それに......温泉にも入れなくなるし、駆逐艦連中にも逃げられるぞ。前に妹が1回タトゥーを入れたことがあったが、結局3ヶ月で消したよ。」
「そうなのか...うーん、参ったなあ。どうしようか......。」
アリギエーリが悩み始めていたその時、森高がその場にやってきた。
「あっ、やっぱりか!!待ってくれダンテ、流石にそれで外出するのは遠慮してくれ。」
ダンテ・アリギエーリが乗っているのはかの有名なF40....を妖精に頼んで作らせたものだろう。転移してからは外国製の車は供給が途絶えたこともあり、プレミア価格で取り引きされたり、強盗が多発したりと散々な状況であった。そんな状況でこの車で出かけると、トラブルの種になるかもしれない。.....というより、法に触れてしまうので絶対にだめだ。
「いや、たった今外出はやめにしたよ。」
「えっ、そうか。ならいいんだが......。」
「それと聞きたいんだが......。タトゥーは日本人には人気がないのか?」
車から降りたアリギエーリは森高にもタトゥーのデザインを見せる。森高はそれをまじまじと見つめると、少し申し訳なさそうにこう答えた。
「うーん......確かにそうだな。申し訳ないが、俺も少し苦手だ。」
「そ.....そうなのか......。」
ダンテ・アリギエーリは少なからずショックを受けたようだった。しかし10秒ほど俯いていたと思いきや、すっと顔を上げて森高に向き直り、こう言い放った。
「まあいい。それより千鶴よ、あとでやけ酒するからつき合ってもらうぞ。」
そして森高も、彼女があまり落ち込んでいないことに安堵すると、ふと腕時計に目をやりこう告げた。
「ああ、分かったよ。その様子なら、まあ大丈夫そうだな。......そろそろ昼ご飯の時間だな、みんな中に入ろう。」
「今日の献立は?」
「ええと......牡蛎のフライだったかな?.......多分。まあ、行ってみれば分かるよ。」
彼に促され、周りにいた艦娘たちも動き出す。今日の佐世保は清々しい日本晴れで、空気も澄んでいた。
「.......ん?あれは........。」
森高はふと歩みを止め、上に目をやる。透き通るようなその空には、少し変わった機影が一つ。珍しい逆ガル翼の銀の機体に、赤い日の丸。九試単座戦闘機の姿がそこにはあった。恐らく、また誰かが引っ張り出したのだろう。あの機体は、数年前、とある映画の公開記念イベント用に製造したものだ。
(眩しいな.........。)
彼はまた視線を前に向けると、艦娘たちとともに歩いていった。
その頃、防衛省のとある会議室では話し合いが行われていた。
「おそらく、件の不明潜水艦はこの国のものだと考えられます。」
一人の男が、資料を広げて話している。先日、戦艦ネルソンとロドニーのレーダーが捉えた国籍不明の潜水艦についての報告が行われているのだ。
「......アニュンリール皇国、もしくはグラ・バルカス帝国か.........。」
ここから別の男が説明を引き継ぐ。
「はい、衛星写真によってこの2国に潜水艦らしき物があることは把握しています。そして、この世界の大国である神聖ミリシアル帝国及びムーは潜水艦を保有していません。ですので、今のところ潜水艦を所持しているのはこの2国のみと思われます。」
「.....そうか。しかし、なぜこの海域にいたのかが分からないな。」
「はい、仰るとおりです。まあ、未知の生物の可能性も無いわけではありませんが。」
「アニュンリール皇国.......。確か、来年の国際会議に出席するはずだったな?」
「そうです。」
「うーん......この国は謎だらけだな........。」
アニュンリール皇国、南方世界の長として先進11ヶ国会議に呼ばれている国だ。非常に広大な土地を支配しているが、外交には消極的で、実質の鎖国状態に近い体制をとっている。後進国であるかのように認識されているが、日本は衛星写真により発展した都市や、多数の大型軍艦、潜水艦、回転翼機らしきものを確認していた。しかし、なぜ彼らがこのようなやり方をしているのか、全くの謎であった。
ひとまずは、来年の会議にて接触を試みようという考えに至った。
午後12時36分 アニュンリール皇国 港湾都市テル・エル・アマルナ
ここはアニュンリール公国の本土であるブランシェル大陸の港湾都市、テル・エル・アマルナだ。そしてここにはアニュンリール皇国海軍本部が置かれており、広大な軍港には数多くの軍艦が肩を寄せ合っている。
「.........ふむ。これが.......。」
そしてその海軍本部内のとある部屋で、濃い白髭を生やした壮年の男性が机に肘を突きながら、一枚の魔写を見つめていた。
彼の名前はサラック・マハディー。アニュンリール皇国海軍本部所属の軍人である。階級は中将、皇国海軍第一艦隊指揮官だ。皇国の軍人の中でも、屈指の情報通として彼の名は知れ渡っていた。アニュンリール皇国人の例に漏れず、彼の背にも実体化した翼がついている。
「..........。」
少しして、彼はその魔写から視線を外す。そして、ゆったりとした手つきで葉巻を火をつけて、それを優雅にくゆらせる。そしておもむろに立ち上がると窓を開けて、荘厳美麗な港に目をやった。
「うむ......。」
彼の視線の先には、アニュンリール皇国海軍の最新鋭魔導戦艦である「バド・ティビラ」級戦艦が3隻、停泊していた。それぞれ1番艦「エン・メン・ル・アナ」2番艦「エン・メン・ガル・アナ」、そして3番艦「エン・シパド・ジット・アナ」だ。魔法帝国のアダマン級魔導戦艦を基に開発され、長砲身の40.6cm三連装砲を主武装としている。アニュンリール皇国の軍艦の銘々規則は、神聖ミリシアル帝国のそれとは違い、文献に残る魔帝........ラヴァーナル帝国の人物名等からとられていた。
港にはこの他にも、ギルガメシュ級戦艦「メスキシェル」、「エンメルカル」や、サルゴン級航空母艦「マニシュトゥシュ」、「ナラム・シン」、アクシャク級軽巡洋艦「イシュ・イル」、「ウルル・サニラー」、キシュ級駆逐艦「パブム」、「プアナム」、「アルウィウム」など、数多くの魔導軍艦の姿がある。この国の軍艦の総数は、間違いなく神聖ミリシアル帝国を上回っているだろう。
ふう、と白い煙を吐き出しながら、マハディーは再び魔写を見つめ、眼前に並んでいる魔導艦とネルソンとを見比べる。
(大きさは.......ほぼ同等だろう。黒い煙を吐いているのは......ムーと同じか?主砲も....もしかすると同じくらいの口径か。ということは、40cmクラス......。)
熱心に考え事をしていたそのとき、部屋の扉をノックする音がした。おそらく秘書だろう。壁の時計に目をやると、そろそろ会議の時間だった。
「どうぞ、入りなさい。」
「失礼いたします。」
入ってきたのは、やはり秘書だった。年若い光翼人の女性で、いかにも芯の強そうな見た目をしている。
「会議の時間だろう?もう準備はできているよ。」
その秘書に声をかけると、彼女は少し不機嫌そうな顔をしてこう言った。
「私の仕事を奪うおつもりなのでしょうか?」
「ははは、悪いね。さあ、もう行こう。」
マハディーはいかにもわざとらしい表情を作ると、葉巻を灰皿できっちりともみ消した。そして秘書を連れ、ゆったりとした足取りで部屋を出ていった。
誰もいなくなった部屋の机の上には、大量の魔写と、なにやらびっしりと書き込まれたノートが残されていた。
12時58分 グラメウス大陸沖4km地点
『......第二次攻撃隊、帰路に就きます。目標殲滅には至りませんでした。』
戦艦「ペトログラード」「スターリン」に通信が入り、昼食で使った食器を洗っていた吉川は顔を上げた。どうやら第二次攻撃隊も魔王を倒すことは出来なかったらしい。
「......了解。まあ仕方ないな。全機無事に帰ってきてくれればそれでいいさ。」
『......で、どうするんだ?』
「スターリン」から、いかにもダルそうな声で高橋が話しかけてきた。吉川はちょうど洗い物を終えると、艦隊に指示を出した。
「目標がここから15km以内に入ったら砲撃開始だ。魔王が粉々になるまで弾をぶち込んでやれ。準備はいいよな?」
『問題ない。』
『平気です!』
『いつでもOK!』
....と、次々に返事が返ってくる。先ほど指示を出していたので、当然ではあるが。
「よし、じゃあ偵察機の報告をゆっくり待とう。」
哀れな魔王を肉塊にする、死のカウントダウンが始まった。
アニュンリール皇国の軍艦の名前は古代シュメール王の名前からとっています。国名の由来がシュメールの神からきているようでしたので。
アニュンリール皇国はまだ情報が少ないので、原作ではどうなるのか楽しみです。
タイトルと関わる内容が少ししかなくて申し訳ないですが、一応魔王は次回でおさらばの予定です。