拙い文章ですが、どうか生暖かい目で見守って貰えると幸いです。
ところでケストレルのHGいつ出るんですかね
────それは、偶然が重なって起きた必然だったんだと思う。
その日は、「偶然」にも大学の講義が早く終わり、「偶然」別の道を通って帰り、「偶然」その途中にあったガンダムベースに寄ろうと思い立ったのだ。そして、「偶然」店内の映像端末で流れていた映像に……心を、奪われてしまった。
そこでは、首の無い騎士みたいなガンプラが、まるでファンタジーに出てくる竜のようなガンプラと壮絶な勝負を繰り広げていて……
「きれい……」
綺麗だった。ボロボロになりながらも竜の喉元を突き破らんとする騎士の姿が、オールレンジ兵器を操りながらそれを迎え撃つ竜の姿が、どうしようもないほど美しかったのだ。
────これが、私こと虹橋 空とGBNの出会いなのでした。
GBN──────正式名称を「ガンプラバトル・ネクサス・オンライン」と言うらしい──────は、フルダイブ型のMMORPGゲームである。その最大の魅力は、ダイバーギアさえあればガンプラがなくともログインができる事であり、ガンプラを作ったことが無い・作るのが苦手な人でも気軽にガンプラバトルが楽しめるのだ。(Wi○iより抜粋)
次の日、大学終わりの帰り道にて。
「……てな訳でGBNを始めたいんだけど、なんでキミはそんなにぷるぷるしてるの?」
「…………ついに、ついに決心してくれたんだね空ぁぁぁぁ!! いやあ嬉しいよ……一緒にやろうと言い続けてはや2年、たまに無視されたりして私の努力も無駄じゃなかったって訳だ!」
とはしゃいでるのは須藤 友奈、私のかけがえのないズッ友だ。
「それでそれで、機体は何にするの!? やっぱ王道のガンダムタイプ? それとも量産型?」
「ちょっ、まだそこまでは……」
「じゃあ今からガンダムベース行こうよ! よし決まりー!!」
「キミそんなに押し強かったっけぇ!?」
……まぁ、そんな訳で2日連続やってまいりましたガンダムベース。
「……にしてもガンプラなんて作るの何年ぶりだろ。ね、友奈のオススメはどの機体が……っていないし!?」
きっと好きな機体が売ってたんだろう、箱を10個ほど抱えレジに向かう友奈の姿が遠くに……待って10個? 買いすぎ……でもないか。
「さて、と。私もなんか見つけなきゃなー」
そう呟きながら大量のガンプラが陳列されている棚を見ていると、ふと右下に置いてある箱が目に入った。ちょっと気になったので手に取ってみると、そこには黒い羽付きのガンダムが描かれていて……えーっと、
「ぐ……ぐり……?」
「おっ、[グリンブルスティ]とはいい眼を持ってますなぁ」
「うわぁビックリした!?」
「ははは、ごめんごめん。そんなに驚くとは思わなくって」
振り向くと、両手いっぱいに紙袋を持った友奈がいた。……なんか増えてる?
「……それ、ちゃんと作るんだよね? もう家に置き場少ないよ?」
「だいじょーぶだいじょーぶ!」
「本当……? ならいいんだけど……あ、それでグリンブルスティって? 確か北欧神話の猪かなんかの名前だった気がするんだけど」
「よくぞ聞いてくれましたぁ! ガンダム[グリンブルスティ]ってのはね、ガンダム[ケストレル]の元になった機体なんだけど、あっケストレルってのはZガンダムの外伝漫画の主人公機なんだけどね、あぁグリンブルスティに戻るんだけどなんといってもその魅力は機動性でそのままだとパイロットが持たないってことでとある理由でエゥーゴに譲渡されたグリンブルスティを改修したのがケストレルなんだけど」
「ごめんもう少し簡潔に」
「めっちゃ速いガンダム」
「おっけーざっくり理解した」
Zの外伝かー、そこまでは把握してなかったなぁ……なんて事を考えてたら、友奈が近くの棚から普通のHGの倍以上あるんじゃないかって大きさの箱を持ってきた。
「ところでその友奈が何食わぬ顔で持ってきたどデカいガンプラは……」
「これ? フルアーマー・ケストレル」
「ふるあーまーけすとれる」
……解説が長かったので要約すると、ケストレルは追加装備で性能が変化するらしく、そのてんこ盛り形態がフルアーマー・ケストレルなのだとか。なるほど、ストライカーパックとかG-セルフ的なアレか。
「……決めた。私、この子にする」
「お、随分あっさりと決まったね」
「まぁ、ね。この子がすごく気になるってのもあるんだけど……その……折角友奈が教えてくれたんだから、その気持ちに応えたいなって」
「空……!! うぅ……こんないい子に育ってくれて、お姉さん嬉しいよぉ……」
「同い年だよね?」
そんなこんなで[グリンブルスティ]とフルアーマー・ケストレル、あと色々と買い込んで、デザインを書き出すのに1ヶ月、思い描いたモノを作るのに1ヶ月半ほどかかり……
「……やっっっとできたぁ……!!」
──────苦節2ヶ月半、ついに私のガンプラが完成したのだ。
「……ログインする時声掛けてって友奈言ってたけど……」
正直、早く動かしたい。その気持ちが強くて強くて、こっそりログインする事にした。これは仕方ないことなんだ、うん。そんな訳で、少し前に作ったアカウントでログインする。
「ここがGBN……なんか、めっちゃ近未来って感じ……」
基本的な流れは普通のMMORPGと同じらしいので、ちょうど初心者用ミッションがあると言って話しかけてきたなんか胡散臭そうなチャラ男(個人の感想です)からミッションを受注する。
「えーっと……? 指定されたパーツを回収して届ける……お使いミッションね、なるほど。んで場所は……ハードコア……ハードコア?」
ハードコアと聞いて、とある動画が脳裏をよぎった。パペット?みたいなのがドラムを叩いているのだが、早回ししてるのかそのスピードが異常な程に早かったのだ。なぜだかそれが無性に面白くて、よく友奈と見て笑ってたなぁ……
「パペットでも群生してるのかな……」
そんなことを考えながら出撃ゲートへと向かい、見上げる。そこには……
「おおお……!!」
私の作り上げた、私だけのガンプラ。ガンダム[フェンリル]が立っていた。
特徴的な一対の羽はそのままに、腰部にケストレルのブレイク・バインダーが、背部にシスクードのブースターが追加され、カラーリングもティターンズカラーから濃い群青色に変えた。他にも色々と弄ったんだけど、それはまたあとで。そんな丹精込めて作り上げた相棒がそこにいることに思わず涙しつつコクピットに乗り込み、軽く動かして感覚を確かめる。
「やっぱGPDとは結構勝手が違うな……まぁ慣れるっしょ。よっし、行きますか!」
「ソラ、ガンダム[フェンリル]、出撃します!」
こうして私は、これから何度もお世話になる事になるハードコアディメンション・ヴァルガに突撃するのであった、まる。
誤字脱字等の報告、感想あればよろしくお願いします。