魔物や危険な植物が生い茂る森、「魔法の森」。
普通の人間であれば、好んで立ち入ることがなく、昔から危険だといわれているばしょである。
そんな森の中を私、金田隆二は人の住む地域を目指して彷徨っていた。
この森を寝る間を惜しんで彷徨って三日、正直私の体力は限界に近かった。
私は森の中で見つけた適当な切り株に腰掛け、手をキャノン砲に変形させて少し休んでいた。
ヴィーゼが最後にくれた義手や義足の使い方も三日もすれば多少思うように使えるようになった。
この義手や義足はただの機械義手ではなく、変形させることによって様々な機能が使えるどこから来たのか分からないオーバーテクノロジーの塊である。
しかし、普通に歩く分には大したことはないが、変形させて武器を展開させたりすると莫大な魔力を消費してしまうことが分かった。
お陰で今の私は意識が朦朧としてきている。まともに判断できる状態ではない。
おまけに身長に対しての義手義足の大きさが微妙に大きいので元の腕と比べて非常に違和感がある。
ヴィーゼよ、君には僕はそんなに大きく見えていたのかい?
とは言ってもせっかく作ってくれた代物だ。大切に扱いたいところだ。
悠長なことを考えている私だが何度も言うとおり、私の体力はもう限界である。
こんなことを考えておかないと意識が飛びそうである。
早く人のいるところにたどり着きたいところであるが、私は絶賛迷子である。焦りと意識低下で思考回路が渋滞している。
この世に生を受けて13年、あっけなかったなぁ・・・。
いやいやいやいや!ここであきらめてどうする金田隆二!
せっかく父さんや母さん、ヴィーゼが命懸けで守ってくれた命、ここで絶やすわけにはいかんきん!体力も少しは回復したしさぁ行くぞ!
そう思って切り株から重い腰を上げ、力の入っていないような足がずっしりと体を支え、一歩一歩とゆっくりと歩き始めたとき、後ろから不気味な声がした。
「ガルゥゥゥゥ・・・」
恐る恐る後ろを振り返ると、そこにはオオカミのような漆黒の毛を纏い、しかし頭は三つある化け物がいた。
人の住まう地域をめざして早三日、この魔物は終始私の行く手を阻み、そして幾度となくこの腕の拳で撲殺してきたが、正直今の私には対抗するために使う体力など残っていなかった。
しかし、心と思考回路の渋滞が決壊し、私は全くもって思ってもない行動を取っていた。
「またお前かぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」
私の口からはこれでもかと言う位の叫び声をあげ、おまけに足は気づけばジェットエンジンに変形し、ただでさえも少なかった魔力を注ぎこんでアフターバーナーを焚いて魔物から一気に距離を取った。
こうして旅が始まった時点で10あった体力が叫んだことにより5になり、魔力が温存に温存を重ねていたのにスタート時から20使い、残りは10。(多分!)
あぁもうダメだ!お仕舞だ!
私は即座にジェットエンジンを脚に戻した。
地面を滑って減速し、よろけながら走り出した。
まずい!視界がぼやけてる!
それでも私は走った。
後ろから犬のような呼吸と地をけって四足で走る音がする。
追いつかれて当然だ、状況はさっきより悪化し、さっきよりまともに走れない。
ついには追いつかれ、後ろからどつかれた。
私の体は宙を舞い、木にぶつかる。
「ぐほぁ!!」
背中に衝撃が来て、地面に這いつくばる体制になった。
地に這いつくばりながら相手のほうを見た。
化け物はすごい勢いでこっちに突っ込んできた。
このとき、妙な違和感を覚えた。
相手の足音が2つ聞こえる・・・
あぁもう末期か・・・
私はそう思いながら突っ込んできた魔物を首の根元から殴り飛ばした。
吹っ飛んだ魔物は反対側の木にぶつかって消失した。
これによって体力は3・・・立っているのがやっとか。
そのとき、どこからともなく声が聞こえた。
「危ない!後ろ!」
私は反射的に後ろを振り返ると同時に右腕をキャノン砲に切り替えていた。
そしてキャノン砲に残りの魔力をありったけ詰め込み、放った。
キャノン砲の照準の先には、もう一体の同じ魔物がいた。
その魔物はキャノン砲から放たれたエネルギーの弾に包まれ、消し飛んだ。
ついでに後ろにあった森の木々も一部消し去ってしまった(まぁ仕方ない!)。
そして、魔力は0となり、体力は1となった。
腕のキャノン砲を格納したと同時に私は倒れこんだ。
あぁ・・・父さん、母さん、ヴィーゼ、折角命懸けで守ってくれたけどダメだったよ・・・今からそっちに行くね・・・
薄れゆく意識の中、私はそう心の中で思っていた。
「・・かり・・い!だ・・・うぶ!?」
遠のく意識のなかで私はうっすらと誰かをみた。
金色の髪の、青い服の女の人だ。
私に話しかけているようだがよく聞こえない。
その姿は母に似ていた。
私に語り掛けているようだ。
そしてその人は私を抱きかかえた。
どこか懐かしいぬくもりを感じた。
「かぁ・・・さ・・・ん」
そこで私は意識を手放した。
ーーー彼が魔物と対峙していた頃----
七色の人形遣いと呼ばれる少女アリス・マーガトロイドは、庭先で魔法の練習をしていた。
「・・・と。こんなものかしら」
「シャンハーイ」
すると、彼女のそばにいた人形が何かに反応した。
「上海?どうしたの?」
尋ねると、人形は森の方を指さした。
「シャンハーイ」
すると、少女のような甲高い声と聞いたこともない轟音が響き渡った。
「何かしら、行ってみましょう!」
声の質からただ事ではないと察したアリスは、即座に声のするほうへ向かった。
そこには異様な光景が広がっていた。
オオカミのような魔物が人を襲おうとしているようだ。
そして、その相手はと言うと、木の根元で這いつくばっていた。
それはどこか中性的な顔立ちの少年であった。
しかし、どこかおかしい。
顔や体は普通の人だ。
しかし、その彼の手足は明らかに人ではなかった。
「何あの子の手、鎧?」
手足が鉄で出来ており、しかし異様なかたちであった。
そして何とか立ち上がったと思うと、突進してくる魔物を拳で普通の人間ではありえない距離まで殴り飛ばした。
「・・・すごい!っは!危ない!後ろ!」
殴り飛ばすのを待ちわびていたといわんばかりに、後ろからもう一匹の魔物が彼に襲い掛かった。
そして次の瞬間、アリスは言葉を失った。
彼の右腕が金属がぶつかる音を立てながら変形し、見たこともない形になった。
「・・・え?」
そして魔物を一瞬で消し飛ばした。
「なんて威力・・・」
魔物だけでなく、後ろにあった木々もついでと言わんばかりに消し飛ばした。
そして少年が倒れた。
「いけないわ!」
アリスはすかさず駆け寄った。
「大丈夫!?しっかりしなさい!」
アリスは少年をみて驚愕した。
服はいたるところに誰かの血や魔物の返り血で汚れ、引きずられたような跡が残る。
何より腕や足が痛ましかった。
肩の根元から腕にかけて機械仕掛けになっていた。
そして足は太ももの半分がなく、残り半分から機械仕掛けになっていた。
両方とも腕や足にめり込むように取り付けられている。
その痛ましい姿に思わずアリスは抱きしめていた。
すると少年は静かにつぶやいた。
「かぁ・・・さ・・・ん」
そして少年の目から雫が一滴垂れた。
アリスは少年をさらに抱き寄せ、つぶやいていた。
「もう大丈夫よ。よく頑張ったね。えらいよ」
優しく少年の頭を撫で、アリスはこの少年を保護することに決めた。
「さぁ人形たち、この子を運ぶのを少し手伝ってくれる?」
アリスの一声に、人形たちは少年を囲い、魔法で宙に浮かせた。
そして、アリスの自宅へ運んでいくのであった。
「にしてもこの子、かわいい顔してるわね」
そっとアリスはつぶやきながら・・・
なかなか表現がうまくできんなぁ・・・
ぴえん!