次の日の朝、朝食を済ませた私とアリスは玄関先にいた。
「それじゃあちょっと出掛けてくるわね」
「いってらっしゃい」
「フフフ、良い子にして待ってるのよ?」
「私は一体何歳なんだ・・・」
「うそうそ。お昼までには戻ってくるからね」
「はーい」
今日は朝からアリスはお出掛けだ。
なんでも、友人宅は大きな図書館らしく、色んな本(魔道書メイン)があるらしい。
そして今日、そこで借りていた本を返しにいくらしい。
私もいくかどうか聞かれたが、少し気になることがあるので断った。
ずいぶんと残念そうにしていたのは気のせいだろうか?
しかし興味がないわけではないので今度行くときに一緒にいく約束をした。
そしたらアリスは蘇った。
ホントによくわからん。
アリスは玄関を開けて外に出て、閉じようとしたときに再び開けて顔だけ覗かせて言った。
「寂しくなったらいつでも呼びなさいね」
「ホントに私を何歳だと思ってるんだ・・・」
「もぅ!可愛くないわね!帰ってきたらモフモフの刑ね」
「うげぇ・・・」
そういってアリスは今度こそ友人宅へ出掛けていった。
アリスを見送った一時間後、私は家の前で機械義足をつけて立っていた。
私は少し前傾姿勢にし、後ろで踏ん張るような体制にした。
昨日の魔法教育のお陰で少し可能性が見えてきた。
仮説ではあるがこの義手義足は魔力で動くのではないだろうかと言うことだ。
前に動かしていたときのわずかな記憶だが、似たような感覚で動かしていた気がするのだ。
(さて、進展ありますように・・・)
祈るような気持ちで脚の方に魔力が流れるようなイメージで力を込めた。
力を込め始めて数分だったか、数秒かもしれない。
さほど時間がたたずして、少し良い兆しが見えてきた。
「・・・うん?」
足元の方から小さな風が吹き上がっているような気がした。
見ると義足の中のタービンがゆっくりと回っていた。
「おぉ!これは!」
少しずつではあるが、タービンは回る速度を早めていた。
「良いぞ!いい感じだ!」
私はどんどんと魔力を送ってタービンの回る速度を早めようとした。
しかし・・・
「・・・はぁ、はぁ・・・お、思ったより・・・疲れる・・・」
私の体力が減るのと比例せず、タービンの回転速度の上がり方はとても緩やかであった。
「な、なんでこんなに・・・回んないの・・・少し・・・休憩・・・」
私は少し休憩するために魔力を送るのをやめた。
そうするとタービンは30秒もせずに動きを止めた。
誠に遺憾である。
「な、なんでだぁ・・・」
私はふらふらと歩きながら家の日陰に入って大の字で寝そべった。
「空は・・・こんなに青いのに・・・」
どれくらいたっただろうか。
ふと頭元に何者かの気配を感じた。
首だけ気配の方に向け、その正体を確認した。
そこには黒い服を着た少女がいた。
目が合うと、少女はにっこりと笑ってこう言った。
「ねぇ。食べていい?」
「何をかは知らんが、別にいいんじゃないか?」
このときの私は、これが自分の事だとは微塵も思わなかった。
そりゃそうだ。
相手は何処からどう見ても少女である。
まさか妖怪だとは思わない。
私は、重大な失態を犯してしまった。
「そっか!それじゃあいただきまーす!」
「え!?」
ガチン!
鈍い金属の音が響く。
少女が金属の腕に噛みついていた。
ようやく自分が食べられそうになっていると理解した私は咄嗟に腕で防ごうとしたのだ。
生の人間であったら確実に腕はなくなっていた。
「痛ーい!ちょっと何するのさ!」
「そりゃ食われそうになったから防いだのさ」
「食べていいって言ったじゃん!」
「まさか自分のことだとは思わんだろ!」
「むー!こうなったら消してやる!」
私はなにかを察知して咄嗟にその場を飛び退いた。
そこには黒く大きな球体があった。
「な、なんじゃこりゃ!?」
「あーあ、避けられちゃった!でも逃がさないよ!」
「やばっ!」
私は途端に森の方へ逃げ始めた。
時折黒い塊が飛んでくる。
あれに当たったらどうなるのかは分からないが、当たったら食べられるんだろうなと言うことは想像できた。
なんとか義足が使えれば・・・。
私は重い義足をなんとか動かして走った。
やがて、森を抜けて湖の畔へやってきた。
「さ、寒!」
湖の畔は謎の寒さで包まれていた。
季節に抗ったこの寒さに疑問を思いつつも走る足を緩めないように気合を入れる。
後ろを振り返れば先程の妖怪は森から出てこようとしない。
何故だ?。
そして振り返ると同時に、異様なものが目に入った。
そこには氷の塊があった。
走っていて気づかなかったがかなりの大きさである。
おそらくヴィーゼと同じぐらいの高さはあるだろう。
呆気に取られて呆然と立っていると再び何かを察知し、慌てて回避した。
私の立っていたところに今度は氷が降ってきた。
当たっていたら食べられたどころか酷い死に方をしていたかもしれない。
そして攻撃してきた主の声が聞こえた。
「こんなところに人間がくるなんて!面白いじゃないか!どれ、この最強なあたいがあそんでやるぜ!」
陽気な声に振り返るとそこには水色のワンピースを身に纏った羽の生えた少女が空中で静止していた。
ずいぶんとあの羽は便利そうである。
悠長にそんなことを考えていると氷が飛んできた。
「うわっと!」
「おらおら!ボサっとしてると死んじゃうよ?」
「なんでこんなことに・・・うわ!」
私は理解が追い付かず、ただひたすらに飛んでくる氷を走って避け始めた。
何て日だ!
私は湖の周りをひたすら走る、後ろから氷が降ってくる、それを避ける。
ただただ地獄だ。
やがて、足がもつれて転んだ。
そこに氷の弾が飛んできた。
咄嗟に腕で防いだ。
「なんだお前?人間なのに奇妙な体してるな!まだまだ楽しめそうだ!」
「・・・嘘だろ・・・」
私は慌てて立ち上がり再び走り始めようとした。
その直後、私のすぐ後ろに氷の塊が着弾し、地面が大きくえぐられた。
身体が空中に投げ出された。
地面に叩きつけられ、立ち上がろうにも体に力が入らず、たてなくなった。
すると、私の真上に先程の比ではない巨大な氷の塊が現れた。
「ははは!所詮は人間か!やっぱりさいきょうのあたいには勝てないか!じゃ!」
くそ!
折角助けられた命、こんなところで・・・
いや、まだ諦めてはいけん!
何とかせねば・・・
私は混沌とする頭を落ち着かせるように目を瞑った。
「さぁ、死ね!」
せめて義足が動けば・・・
動かない原因は・・・考えろ・・・
考えろ・・・
考えろ・・・
あれ?
これって実はすごく単純な・・・
いやまさかな・・・
でもこれならいける!
私の頭のなかで様々な仮説が立つ。
そしてそこでもつれた糸がほどけるようにスッと答えにたどり着いた。
なるほど、これが火事場の馬鹿力ってやつか。
人間崖っぷちの方が冴えるのかな。
私は疲れた身体に鞭打った。
正直一度味わった極限状態に比べれば大したことなどない。
さっき力が入らなかったのは死への恐怖心だ。
しかしそんなもの、今の私には必要ない。
「ッフ。実験に失敗は付き物さ!ダメなときは・・・」
迫ってくる氷の塊は、私にとってスローモーションに見えた。
その間、私は脚に大量の魔力を込め、脚に組み込まれたある部品をイメージした。
そしてその部品に火が灯る魔法をイメージし、踏ん張った。
結果。
脚から大量の炎と熱風を吹き出し、その反動で身体を氷の塊の下から外へ想像もつかない速度で投げ出した。
「え!?な、なんだ!?」
「実験は成功。さて、次なる実験と行こうか」
「な、なんでおま、え!?」
氷を落としてきた少女は、目の前で起こっていることに驚きを隠せず、慌てふためいていた。
それもそうだ。
なぜならば、私の脚の裏からは炎が噴出されているだけでなく、その力を利用して羽で飛んでいる少女の目の前にいるのだから。
「ねぇあんた。仮説は実証してはじめて真実となるって言った人がいるんだが、その人って正しいと思うか?」
「え?な、なに言ってるんだ?」
「私は正しいと思うね。なぜならば物事は実践してこそ得られるもの。失敗も成功も、結果と言う大事なデータになるからね」
「お、お前、い、逝かれてるんじゃねぇの?」
「さて、実験に付き合ってもらおうか。私を襲った反撃を兼ねて」
自己主張が激しすぎたどころが会話が成り立っていなかったがこの際どうでもいい。
私は正当防衛を行うまでだ。
その一環として実験を行うだけだ。
私の義手や義足はこの前までのただの文鎮とはまるっきり異なり、今は私の思った通りに動くだけでなく、形を変形できるハイテクマシーンへと変貌を遂げていた。
脚から噴出される熱風は脚を動かせば自由に空中を滑空でき、腕は単に腕の機能を備えるだけでなく、思った通りに部品を組み替えて変形させ、用途に応じた武器や道具になる。
機能は分解時に予想済みだ。
あとは答え合わせと行くだけだ。
私は腕を左腕を変形させ、キャノン砲に変形させた。
キャノン砲にはエンジンで発電された電気が充電されていく。
「ば、化け物・・・だ・・・」
「そうかもしれないな。だが、私から言わせればあんたも大概、化け物だよ」
そう言った後、私はトリガーをひいた。
超高電圧のその弾は、不快な低周波と何かが砕けるようなバリバリとした爆音を奏でながらその少女を世界の果てまで吹き飛ばした。
弾が過ぎ去ったあとは、小鳥のさえずりと夏の熱風、そして私の脚から出る甲高い爆音が辺りをこだましていた。
「充電時間数秒であの威力か。この機関凄いな・・・」
私は義手を見ながら呟いた。
分解したことによってわかった機能のひとつ、キャノン砲。
エンジンで発電した電気で充電し、その電気を魔力で包み込んで電気エネルギーの弾を生成し、電磁誘導によって超高速で相手にぶつける。
人間に当たればそれはそれは恐ろしいことになる。
今回は正当防衛で使ったが正直使わない方がいいことがわかった。
その他にも普通の人間に当てればオーバーキル過ぎる機能が盛りだくさん・・・なんてこったい。
最大の欠点は義手は電気がないと動かない。そしてその電気は全て脚のエンジンが発電している。
つまりこのエンジンが動かないと何も出来ないのである。
ちなみにエンジンが動いた理由は別紙にて添付する。
私は頭のなかで長々と考え事をしながらさっきの少女がぐちゃぐちゃにした畔に着陸した。
そして私は歩き出した。
自分の帰る場所を目指して。
私の心は実に軽かった。
義手義足の謎が解けたのは大きな成果だ。
しかしそれ故に問題もある。
オーバーパワー。
あまりにも日常生活には力が強すぎる。
やはり戦闘専用だな。
しかしそういうのに思考を巡らせるのもまた楽しみのひとつ。
これからの生活が楽しくなりそうだ。
さて、アリスは帰ってるかな?
何から話そうか。
話す話題がたくさんだ。
さて、ちょっと彼のエンジンについてのマニアックな解説(ぶっちゃけこの小説(?)でしたかったことの説明になりますw)。
彼の魔道エンジンはジェットエンジンとほぼ同じです。
唯一の違いは点火及び燃焼するものが違うだけです。
このエンジンを起動させるにはちょっとした操作が必要で、点火を念じて魔力を送り込まないとなりません。
そして彼はその念じることをしなかったがために起動できなかったわけです。
因みにこのエンジンには高出力発電機が組み込まれており、義手と義足はその電力によって武器等の展開を行う。
そしてそれらを容易に制御できるように使用者の脳の一部を借りて処理を行っている。
(この義手をフルで使うと人間としての演算能力も高くなるが余り負荷を掛けて使うと・・・)
最後まで読んでいただきありがとうございます!
感想等あればどしどし書いてやってください!
これからも気まぐれで更新していきます!