GHOSTRIDER:Dog Eat Dog   作:雁野 命

10 / 12
Dog Eat Dog #10

真夏の昼間、普通なら夏休み中の学生が街中にあふれそうな時間帯だが、木組みの街を訪れた一騎は現代的な空気とは程遠いとは言え、そんな活気をまったく感じないことに違和感を覚えていた。

 

(……妙だ。元々、静かな街だが、流石に人気が無さ過ぎる)

 

「(然り、だが、()の気配が満ちる此の世界であれば()もあろう)」

 

(()()()()()()()()()()、とはどう言う意味だ?)

 

「(待て、少し探る……如何やら、奴は己の刻印を断割(たちわ)り此の世界に()いたと見える)」

 

気配に紛れて何をしたかは分からぬがな、と見解を述べたゴーストに対して一騎は納得しつつ頭を抱える。

 

(なるほど……いつもの事とは言え厄介な奴だ)

 

「(然り──っ!?一騎、罪人の気配だ、近いぞ)」

 

(まったく、儘ならんな……!)

 

辟易した様子の一騎だったが、罪人の気配を感じたゴーストの声と耳に届いた爆発音で即座に走り出す。案内に従って走る一騎は耳に届く連続した爆発音に戦闘の気配を感じていた。

 

(確認だが、気配は一つか?)

 

「(然り、罪人は一人の筈だ……尤も何らかの力で隠せぬ訳では無いがな)」

 

(なるほど……だが、どうやら先客がいるようだぞ)

 

『ジェットクリティカルストライク!』

 

「ぐおぁぁ!?」

 

目的地の路地に辿り着いた一騎の目の前には爆発とともに吹き飛ばされる怪人──スプラッシングホエールレイダーの姿とガトリングガンの掃射とミサイルを叩き込む必殺技──ジェットクリティカルストライクを放った仮面ライダースナイプ、コンバットシューティングゲーマーレベル3の姿があった。

 

「(ふむ……あの者からは罪人の気配は無い……が、件の猟犬の可能性も在るぞ)」

 

(何にせよ、まずは様子を見る……幸い、気付かれてはいないようだからな)

 

物陰に隠れて様子を見ている一騎には気づかない様子のスナイプは倒れている怪人だった男の無事を確認すると、軽く周囲を見渡してからそのまま逃げるようにどこかへと飛び去って行った。

 

(分割された刻印、謎の怪人に仮面ライダー……まったく、面倒な事をしてくれる)

 

「(然り、だが、此処で奴を狩る。そうであろう?)」

 

(当たり前だ。まずは情報を集める)

 

内心で頭を抱えた一騎だが、思考を切り替えると野次馬の集まり始めたその場を離れて情報収集に向かうのであった。

 

 


 

「……いらっしゃいませ」

 

情報収集のために()()()()()()喫茶店、ラビットハウスに訪れた一騎は薄水色のストレートロングヘアーの小柄な少女──香風智乃(かふうちの)、友人や家族からはチノと呼ばれる彼女の案内で席へと着いた。

 

「ご注文は?」

 

「ええと、それじゃ、オリジナルブレンドを一つお願いします」

 

「オリジナルブレンドですね。少々お待ちください」

 

注文を受けたチノが軽く頭を下げてから戻る姿を横目にあらかじめ幾つかの小道具を詰めた肩掛けのカバンを真横に置いた一騎は中から取り出した手帳へと目を向けるフリをする。

 

「(其れで、此処から如何する心算だ?)」

 

(まずはタイミングを待つ……流石に彼女一人では話は聞けそうにないしな)

 

「(……成程。ならば、我は気配を探る)」

 

(ああ、任せた……さて、後はどう出るか……)

 

内心で小さくため息を吐いた一騎だったが、従業員が使うであろう扉が開いた音で目だけをそちらに向けると、店の制服を着た濃い紫のツインテールの長身の少女──天々座理世(てでざりぜ)、リゼと呼ばれる少女は奥で着替えていたのか、申し訳なさそうにチノの方へと近づいていた。

 

「悪い、チノ。あとは私がやるよ」

 

「そうですか?それじゃ、このオリジナルブレンドをあちらのお客さんに持って行ってもらえますか?」

 

ああ、任せておけ、と二つ返事で了解したリゼは出来上がったコーヒーを一騎の元まで持ってきた。

 

「お待たせしました。オリジナルブレンドです」

 

「ありがとうございます。あ、少し待ってもらえますか?」

 

「はい?えっと、何かありましたか?」

 

「いえ、実は僕はこう言うものでして……」

 

「……フリーライター、ですか?」

 

「はい、フリーライターの外狩一騎と言います。それで……」

 

軽く立ち上がって呼び止めた一騎に対して訝し気な視線を向けるリゼだったが、差し出された名刺とカバンから取り出したカメラを見せる一騎の顔を見比べていると、いきなり店の入り口が開け放たれる。

 

「ただいまー!って、あれ?お客さん?」

 

「敵襲かっ!?って、なんだココアじゃないか」

 

「まったく……ココアさん、営業時間なんですからもう少し気を付けてください」

 

ごめんごめん、と軽く謝るココアと呼ばれた少女──保登心愛(ほとここあ)が店の奥の扉へと向かう姿を見送ったリゼは一騎を放置していたことを思い出して慌てて振り返ると手振りで座るように促す。

 

「えっと、それで、何の話でしたっけ?」

 

「はい、今この街に()()()()()()が出る、と言う噂を聞きまして……対したお礼は出来ませんが、何かお話を伺えると助かるんですけれど……」

 

「……まぁ、話ぐらいなら……けど、仮面ライダーか……私は街を守るヒーロー、ぐらいの話しか……チノ、何か知ってるか?」

 

「仮面ライダー、ですか?私も詳しくは知りませんけど、ウワサで聞いた仮面ライダーに変身できる道具を探してる、ってマヤさんが言ってましたね」

 

危ないから止めるように言ってるんですが、と作業する手を止めつつ心配そうにこぼすチノ。特に思い当たる様子が無いのかリゼも小さく考え込んでいると、従業員用の扉が開いて店の制服に着替えたココアが勢いよく入って来た。

 

「何の話?困りごとならお姉ちゃんに任せなさい!」

 

「ココアさん……いえ、困りごと、と言うか、ココアさんは仮面ライダーについて何か知ってますか?」

 

「うーん、仮面ライダーかぁ……市民を守る正義の味方で、正体は自衛隊の鬼軍曹、とか、元軍人で今はコックをしている、とか色んなウワサを聞くけど会ったことは無いかなぁ」

 

「何だそのよくわからん具体的な人物像は……?」

 

「……だ、そうです。お役に立てないようですみません」

 

「いえいえ、実在する、と分かっただけでも助かります」

 

申し訳なさそうに頭を下げるチノに対して、おいしいコーヒーもいただけましたからね、とメモをしながら飲み終えたカップを見せた一騎は外向けのさわやかな笑顔を浮かべると、それなら良かったです、とチノの表情が少し明るくなる。

 

「……外狩さん、仮面ライダーのことはあまり追わない方がいいと思います」

 

「リゼちゃん?どうしたの?」

 

「さっきチノも言ってましたけど、本当に危ないですから……何か理由がなければウワサを聞くだけで十分だと思います」

 

「……分かりました。ま、命あっての物種ですからね。それじゃ、そろそろ取材に行ってきますか」

 

ごちそうさまでした、また来ますね、と代金をテーブルに置いた一騎はカバンを片手に軽やかに店を出るとそのまま適当な路地へと入った。

 

「(此方(こちら)は空振りだ……さて、次は如何する?)」

 

(まずは宿を探す……流石に、この街で野宿は目立つからな)

 

「(成程。人の世は儘ならぬな)」

 

(……まったくだな)

 

内心で頭を抱える一騎だったが、小さくため息を吐くと宿を探しつつ街を調べるために歩き始めるのであった。

 


 

「ぐわあっ!?」

 

夜の帳の落ちた木組みの街、その裏路地は元々の街灯の少なさと人気の無さが相まってどこか不安になるような静けさに満ちていたが、その静寂を打ち破る大きな爆発音とともに吹き飛ばされる怪人──シュートロイミュードは元の中年男性の姿に戻ると戦闘のダメージかそのまま気絶していた。そして、その怪人を倒した一騎は戦闘の直後と言う以上にどこか疲れた様子だった。

 

(……これで、何戦目だ?)

 

「(4、否、5体目だ)」

 

(まさか、ラビットハウスを出てから連戦続きとは……早めに宿が見つかったのはせめてもの救い、か)

 

一つ大きなため息を吐いた一騎は宿への道を歩きながら、この一日の状況を振り返っていた。

 

「(然り、そして、其れが一騎の力で倒せる程度の怪人で在る事も僥倖だ)」

 

(それも気になるが……敵の数が多すぎる)

 

「(人心が乱れれば罪人も増えよう。増してや容易に超人に成れる、と在れば不思議ではあるまい)」

 

(それだけなら分かる。だが、レイダーにスマッシュ、ロイミュード、あまつさえライオトルーパーまで出てきたが、バグスターを見かけない……理由は分からんが、少なくともこの怪人は()に意図的に生み出されている物、と見て間違いはないだろう)

 

「(成程……では、スナイプは何者だ?件の猟犬にしては些か単純に見える。が、刻印の反応は無い──っ!?一騎!)」

 

(分かっている!)

 

考え込む二人だったが、突如、気配を感じたゴーストの警告と同時に近くの建物の陰に飛び込む一騎。そして、一瞬遅れて一騎のいた場所に弾痕が出来ると、飛び込んだ一騎を追うように弾丸が撃ち込まれ、一騎の隠れた壁に無数の弾痕が刻まれた。

 

「よく避けたな!外狩一騎!」

 

「……お前は──」

 

壁から顔を覗かせた一騎の視線の先、雲の少ない月に照らされた夜空に浮かんでいたのは両腕のガトリングガンを一騎に向けたスナイプの姿があった。

 

「そうだ、私は仮面ライダースナイプ……外狩一騎、いや、世界の破壊者ゴーストライダー!お前を倒す者だ!!」

 

「(一騎、如何する?)」

 

(死なない程度に加減して倒す……まったく、儘ならんな)

 

「来ないのならこちらから行くぞ!」

 

動かない一騎にしびれを切らしたのか、スナイプが一騎の隠れる真上まで飛ぶとそのままガトリングガンを連射する。小さく舌打ちした一騎は先程の路地裏まで飛び出ると全身が炎に包まれてゴーストライダーへと変身して追いかけて来た銃弾をヘルファイアで溶かしつくした。

 

「何だと!?」

 

「無駄だ、お前の力では勝てん」

 

「そんなことはっ!」

 

実力差を感じつつも何かに駆られるようなスナイプはジェットコンバットガシャットをベルトのキメワザスロットホルダーに挿入し、スイッチを二度押す。

 

『キメワザ!』

 

「……来るか」

 

「これで──」

 

『ジェットクリティカルストライク!』

 

「──どうだ!!」

 

昼間の怪人を倒したスナイプの必殺技、ジェットクリティカルストライク。大量のミサイルとガトリングガンの掃射がゴーストライダーを包み込みその姿を爆発と黒煙が覆い隠した。

 

「……やった、のか?」

 

「いや、まだだ」

 

「なっ……ぐあっ!?」

 

黒煙を裂いて飛んできたチェーンに絡め捕られたスナイプはそのままなすすべもなく地面に叩きつけられる。顔を上げたスナイプの視線の先には無傷のまま左手にチェーンを持つゴーストライダーの姿があった。

 

「ぐうっ、このっ」

 

「諦めろ、その足掻きは無意味だ」

 

「くっ、私は──があっ!」

 

動けないスナイプをチェーンで引き寄せたゴーストライダーはチェーンを解くとそのまま右のストレートでスナイプを殴り飛ばす。5mほど吹き飛ばされたスナイプはそのまま転がって行くが、ダメージのせいか起き上がるのもやっとのようであった。

 

「く、うぅっ」

 

「動くな」

 

「私は、負ける訳には……行かない!」

 

「ぬ……!?」

 

突如スナイプが跳ね起きたかと思えば、ゴーストライダーの目の前の地面を撃って目くらましをするとその姿が掻き消えており、何処かへと飛び去って行ったようだった。

 

「(……逃げられたな)」

 

(ああ……まったく、油断も隙もないな)

 

ゲームエリアが消えたことで破壊の後がなくなったことを確認した一騎はひとまず変身を解除する。

 

「(此のタイミングで仕掛けてくるとは……一体、如何言う心算だ……?)」

 

(それは分からんが、今の戦いでわかったことがある。おそらく、スナイプは猟犬ではない)

 

「(然り、其れは我も同感だが……では奴は何処に居る?)」

 

(分からん。しかし、奴のやることだ、何かしらの理由があるだろう……が、今は一度戻るぞ)

 

次の襲撃に備える必要があるからな、と心の中で呟いた一騎は今の状況を考えて難しい表情になるが、一度、深呼吸をして思考を切り替えると、準備のために宿へと戻るのだった。

 


 

翌朝、宿を出た一騎は少し中身の増えたカバンを肩にかけて時折カメラを構えつつ街を歩いていた。傍目には街の写真を撮っている旅行客か記者ぐらいにしか見えないが、実際には仮面ライダーと怪人の情報と現場の状況を照らし合わせているところであった。

 

(……どうやら怪人の種類と場所はランダムのようだな)

 

「(我も同感だ。そして、ライダーと怪人、何方(どちら)も夜間の出現率は低い)」

 

(そうだな……これは、少し厄介かもしれんな)

 

「(然り、加えて此の街では多少の衝撃で建物が崩れかねん……昼間に猟犬を狩るには些か骨が折れるぞ)」

 

(ああ。だが、そのための()()だ……最も、現状では付け焼刃程度だがな)

 

苦い顔になる一騎だが、それも当然である。日の光の下では一騎はゴーストライダーになることが出来ず、対策を取ったとしても限られた力では苦戦することは必至だからだ。

 

「(だが、やるしかあるまい。其れが我等だ)」

 

(当たり前だ……それより、スナイプの正体だが、おそらくこの世界の住人だ)

 

「(……成程。確かに、転生者でも猟犬でも無いのならば、そうなるか……ならば、何故、我等を狙う?世界の破壊者、と言っていたが……)」

 

(奴の手口を考えれば、おそらく、現地の人間を騙したか、人質か……その両方、と言う可能性もあるがな)

 

「(然り、我も同感だが……目星は付いているのか?)」

 

スナイプの正体について問われた一騎は手帳を開いて少し考え込むが、おそらく、と前置いてから口を開く。

 

(この街で戦う技能を持っていて俺たちを追跡できる人間。そして、人質の有無に関わらず猟犬の口車に乗せられそうな人間、となればおおよそ見当は付くはずだ)

 

「(成程。ならば早速──と言う訳には行かぬ様だ)」

 

(敵、か……まったく、儘ならんな)

 

確信へと迫りつつある二人だったが、突如、目の前に現れた怪人──ニードルスマッシュへと視線を向けると戦いを始めるのであった。

 


 

早朝、開店前のラビットハウスに二つの人影があった。一つはカウンターでグラスを拭く大人の雰囲気を漂わせた男性──香風(かふう)タカヒロであり、カウンターの向こうのもう一つの人影へと視線を向けていた。

 

「今朝はずいぶん早いが……何かあったのかい?」

 

「……いえ、何も」

 

気遣うように問いかけるタカヒロに対して少し言いよどむもう一つの人影。申し訳なさそうに答えるその姿にタカヒロは小さくため息を吐く。

 

「そうか……ところで、頼まれていた物が届いているよ」

 

「本当ですか!?」

 

「ああ、これだ」

 

タカヒロの言葉に喜色を浮かべるもう一つの人影。タカヒロが苦笑交じりにカウンターの下から取り出した紙袋が二人の間に置かれると、もう一つの人影が間髪入れずに紙袋を手に取った。

 

「これがあれば……」

 

「浮かれるのはいいが、あまり皆を心配させない方がいい」

 

「はい……でも、これで皆を救えます!」

 

大事そうに紙袋を抱えて喜ぶ人影にタカヒロは労わるような視線を向けるが、一転して申し訳なさそうな表情になる。

 

「君にこんな事を任せてしまって済まない……だが、この世界を頼む、()()()

 

「はい!私が必ず、ゴーストライダーを倒して皆を守ります!」

 

タカヒロの言葉に力強く返事を返した人影──リゼはその手に持つ紙袋へ一度、視線を向けると強い覚悟を胸に店を出るのであった。

 


 

「うわあっ!?」

 

「っ──させるか!」

 

「ぐげっ!」

 

怯える男性に向かって飛びかかるバットロイミュードを飛び蹴りで迎撃した一騎は着地と同時に周囲を見渡すと、助けた男性と同じように何人かの一般人とともに数体の怪人に取り囲まれていた。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「良いから下がっていろ!」

 

「は、はい!」

 

男性が大人しく後ろに回った姿を横目で見る一騎は即座に立ち上がってバットロイミュードへと構えを取るが、宿の前から公園まで二時間ほど戦い続けているその表情は険しいものであった。

 

(流石に分が悪いな……)

 

「(然り。だが、罪なき者を見捨てる訳には行かん)」

 

(それは分かっている……さて、どうしたものか)

 

「──危ないっ!」

 

「ふっ!」

 

バットロイミュードと向き合う一騎の死角から迫るライオトルーパーの姿に後ろからの警告が飛ぶが、それより早く反応した一騎は軽いサイドステップで振り下ろされたアクセレイガンを避けるとその手を掴んで捻り上げる。

 

「ぐっ!」

 

「こいつは借りていくぞ」

 

「ぐ、ううっ!がああっ!?」

 

力任せに振り解こうとするライオトルーパーだったが、アクセレイガンを取り上げた一騎に二度、三度と切り付けられて怯んだところを蹴り飛ばされるとそのまま倒れて変身が解除され気絶した男が姿を現す。

 

「うわああっ!?」

 

(次は……!)

 

ライオトルーパーを倒した一騎は息を吐く暇も無く後ろから聞こえた悲鳴に顔を向ける。その視線の先には腰を抜かした男性の前で右の拳を振り上げるクラッシングバッファローレイダーの姿があった。

 

「どけっ!」

 

「ぐおっ!?」

 

「っ……赤い服の男、この人を頼む!」

 

姿を見る前に駆け出していた一騎が飛び蹴りを放つが、体重の重いバッファローレイダーは一瞬体勢を崩すと一騎の方へと体を向けるが、声をかけられた男性だけでなく周囲の人間は誰も動けそうになかった。

 

(……だろうな)

 

「ぐおおっ!!」

 

「あ、危ないっ!」

 

雄たけびのような声を上げて一騎へと吶喊するバッファローレイダーの姿に誰かが声を上げる。背部ブースターの爆発的な推進力の乗った蹄型の打突武器バッファブロウによる常人では捉えることすら困難な一撃は生身の人間が受ければひとたまりもない──はずであった。

 

「お?──おおぉぉぉっ……!!」

 

「へ?」

 

誰かが間抜けな声を上げるが、それも無理はない。無傷のまま立つ一騎とその背後の地面に叩きつけられてから弾き飛ばされるバッファローレイダーも姿があったからである。常人には見えなかったが、交差する瞬間、振り下ろされる拳をアクセレイガンで滑らせて逸らした一騎はそのままの勢いを利用してバッファローレイダーを地面に叩き付ける。その結果が先ほどの光景であった。

 

(……アクセレイガン(これ)はもう使えんな)

 

「(残りは六体……此れならば──一騎!)」

 

「っ──伏せろっ!」

 

壊れたアクセレイガンを投げた一騎は呆けていた少年を狙うアイススマッシュに気づくと警告とともに駆け出した。

 

「え?うわっ!?」

 

自分の事だと思わなかったのか気付かないままの少年を地面に押し倒すと飛んでくる氷柱を防ぐために鎖を巻いた左手を突き出す。だが、飛んでくるはずの氷柱は連続して放たれた銃弾によって全て撃ち落とされていた。

 

「っ──あれは……!」

 

「見ろ!仮面ライダーだ!!」

 

上空に現れた一つの影、現れた仮面ライダースナイプの姿に危機に陥っていた人々は歓喜の声を上げていた。そんな人々と感情は違えど同じように空を見上げる怪人たちだったが、その中の一人、アイススマッシュが走りこんできた一騎によって蹴り飛ばされたことで怪人による包囲が崩れる。

 

「こっちだ、走れ!」

 

「は、はいっ!」

 

「ぐおおっ!!」

 

「させるか!」

 

一騎の言葉に我に返った人々は包囲の穴からそれぞれ走って逃げる。追いすがろうとする怪人たちであったが、スナイプの銃撃と一騎の妨害で足止めを受けたことで人々を取り逃がしていた。

 

(さて、少しはマシになったか)

 

「(では、反撃の時間だ)」

 

なおも銃撃を続けるスナイプを横目に起き上がったアイススマッシュに対して一騎は左手のチェーンを少し伸ばして構えていると、スナイプが近くにやってくる。

 

「お前、逃げなかったのか?」

 

「逃げる?罪人(こいつら)を倒すのが俺の仕事だ」

 

「仕事、か……まあいい、そいつは任せた!」

 

「言われずとも……!」

 

飛び立ったスナイプが怪人たちへ向かって行くと同時に目の前のアイススマッシュへと一騎が駆け出す。そして、どちらの戦いも一方的な展開で勝利を収めるのだった。

 


 

「(他愛も無いな)」

 

(数に任せた連中ならこんなものだろう……それより、問題は(スナイプ)だ)

 

「さあ、次はお前の番だぞ、ゴーストライダー」

 

戦いを終えて倒れる人々から離れた一騎の目の前に同じく戦いを終えたスナイプが飛んで来る。着陸して一騎と相対するその姿は闇討ちをした昨夜とは違い、戦士としての矜持のようなものを感じさせた。

 

「その前に聞きたい。なぜ、俺を狙う?」

 

「昨日も言ったはずだ。世界の破壊者であるお前を倒すと」

 

「なら、誰からそれを聞いた?……答えろ、スナイプ、いや、天々座理世」

 

正体を指摘されたスナイプは押し黙ったままガシャットを外して変身を解除するとそこには一騎の言った通りリゼの姿があった。

 

「……どうして、正体が分かったんだ?」

 

「確信を持ったのは戦いの中での動きと言葉だ……最初から違和感はあったがな」

 

「最初……ラビットハウスで会った時か?」

 

「お前は初対面の俺に()()()()()()()()()()と警告した。普通なら放っておくか、言ったとしても、怪人に気を付けろ、とでも言うだろう」

 

「それはそうかもしれないが……それがどうして?」

 

「敢えて仮面ライダーに言及した、と言うことは、()()仮面ライダーに会うと良くないことが起こる、と無意識に考えていた、そう考えるのが自然だ」

 

まあ、勘のようなものだがな、と付け加える一騎はどこか納得した様子のリゼに対して鋭い視線を向ける。

 

「では、答えてもらおう。俺の事を誰から聞いた?」

 

「……それは答えられない……だが、私はお前を倒して、世界を救わなければならない!」

 

「そうか……だが、その力で俺は倒せんぞ?」

 

「見せてやる!これが、私の新しい力だ!」

 

「む……!?」

 

『バンバンシミュレーション!』

 

力強く叫んだリゼは懐からガシャットギアデュアルβを取り出す。ダイヤルを回してバンバンシミュレーションにセットすると待機音声が鳴り響く。

 

「止めろ、その力は危険だ!」

 

「それでも私は……変身!!」

 

『デュアルアップ!』

 

「ぐ……ぐああっ!」

 

ゲーマドライバーを腰に着けたリゼがガシャットをセットしてレバーを引くとその姿は仮面ライダースナイプ、シミュレーションゲーマーレベル50への変身を遂げるが、その直後、強すぎる負荷にリゼが苦しみだした。

 

「(奴め、何と非道な!!)」

 

(……あまり苦しめたくはない、速攻で行くぞ)

 

「ハァ、ハァ……今度こそ、お前を倒す!」

 

苦しみながらもキメワザスロットのスイッチを押したリゼはゲームエリアであるドラム缶のようなものが並べられた採石場のようなフィールドに自分と一騎を転送させると両腕の主砲ユニット──オーバーブラストキャノンを構える。そして、響き渡る轟音とともに放たれた砲撃で戦いの火蓋は切って落とされた。

 

「くっ、流石に見え見えの攻撃は当たらないか」

 

「……」

 

紙一重で砲撃の余波を避けた一騎。力の制御で余裕のないリゼにはわからなかったが、一騎の表情には焦燥は感じられず、どこか哀れみのようなものが含まれているようだった。

 

「これで!どうだ!」

 

「っ……!」

 

「(一騎、何を狙っている?)」

 

(ゴーストライダーで戦うと彼女が危険だ。プランBで行く)

 

対策を使わず逃げに徹する理由を問うゴーストに答える一騎。その間も二発、三発と連続して放たれた砲撃を辛うじて回避する一騎は隙を見てはドラム缶を倒していたが、余計な動きと思考のせいか四射目の砲口が一騎へピタリと合わせられる。

 

「トドメだ!」

 

「いや、まだだ」

 

「──何だとっ!?」

 

砲撃の瞬間、倒れたドラム缶──アイテムボックスから出た黄色いメダル──高速化のエナジーアイテムを取った一騎は目にも止まらぬ速さで砲撃を回避した。

 

「このっ!」

 

再び連続して砲撃が放たれるが、ドラム缶の合間を縫ってそのことごとくを軽やかに回避する一騎。速度だけでなく、戦闘経験の差から来るその動きは最早ただの砲撃では捉えられないようであった。

 

「それなら──」

 

「む……」

 

「──これはどうだ!」

 

スナイプの叫びとともに肩に設置された四基のスクランブルガンユニットが宙に浮かんで一騎を取り囲むと一斉にミサイルや魚雷を発射した。巻き起こる爆発、それに伴う煙と砂塵でスナイプの視界が塞がれる。

 

「倒した、のか?……いや、何かがおかしい……まさか!?」

 

動きが無くなったことで一瞬安堵しかけるスナイプだったが、いつまでも視界が晴れず、むしろ暗闇に包まれていることに違和感を覚える。そして、気付くまでの短い油断が命取りであった。

 

「惜しかったな」

 

「なっ──うあっ!?」

 

突如、煙の中からのびてきたチェーンに絡め捕られそのまま引きずり込まれたスナイプは驚愕する。なぜなら、引きずり込まれた先にはあるはずのない暗闇と左手にチェーンを構えて立つ無傷のゴーストライダーの姿があったからである。

 

「このっ──ぐあっ」

 

引きずり込まれたスナイプはそのままゴーストライダーの頭突きを受けて一瞬、意識が飛ぶ。その隙にゴーストライダーはスナイプの右腕を空いた右手で払った。

 

「うぅっ……な、何を……?」

 

「今、楽にしてやる」

 

伸ばしたままの右手でゲーマドライバーのレバーを元に戻すとスナイプの変身が解除されて周囲の地形が元に戻るとともにゴーストライダーも変身を解除すると倒れかかったリゼに肩を貸した。

 

「一体……どうやって……」

 

「アイテムを使った、それだけだ……都合よく暗黒が出るとは思わなかったがな」

 

「そうか……私の負け、か」

 

「さて、答えてもらうぞ。世界を救う、とはどう言う意味だ?」

 

「それは──」

 

「それは、私から話そう」

 

「!?」

 

「お前は……!?」

 

解説をしながらリゼをベンチへと座らせた一騎は戦う前と同じ問いかけをするが、突如横合いからかけられた声に二人が視線を向けると、そこにはこの時間であれば店にいるはず香風タカヒロの姿があった。

 


 

「どうして、ここに……?」

 

「待て、こいつはお前の知っている香風タカヒロではない──いや、この世界の人間ですらない」

 

静かに佇むタカヒロに問いかけようとするリゼだったが、その動きを制止した一騎は庇うように一歩前に出る。

 

「ご明察だよ外狩一騎──いや、ゴーストライダーと言った方がいいかな?」

 

「!?タカヒロさんじゃないなら、お前は誰だ?」

 

「ふむ、そうだな──()()ならわかるんじゃないか?」

 

「女の人の声に変わった!?」

 

芝居がかった動きで喋るタカヒロの姿をした男は自らの声を女性──別の世界の住人である朝田詩乃のものへと変化させた。

 

「……やはり、あの時の猟犬だったか」

 

「正解!まあ、流石に露骨過ぎたか」

 

睨みつけるような一騎の視線と驚愕と混乱の籠もったリゼの視線に猟犬は、やれやれ、と言った風に肩を竦めるとその姿まで詩乃のものへと変化させた。

 

「……俺の前に姿を現した、と言うことは死ぬ覚悟が出来たようだな」

 

「まあまあ、そう慌てるなって。アンタも満足に変身できないんじゃ、俺の特典が気になるだろ?」

 

「……」

 

「だんまりかよ?まあ、俺は今、気分がいいんで勝手に喋らせてもらうけどな」

 

押し黙る一騎に対して一方的に喋る猟犬の姿は本来ならどこか滑稽に見えるはずだが、猟犬から発する目に見えない威圧感のようなものがその異様さを際立たせているようだった。

 

「まず、俺がどうやって生き延びたか教えてやろう。俺の特典はエボルト、ま、要は他人に寄生して対象を暗殺、ってだけの地味な能力なんだが……前回はそのおかげで詩乃を盾にして逃げ延びた、って訳だ」

 

「そんな……それじゃ、タカヒロさんは一体……?」

 

「なあに、タカヒロなら今もラビットハウス(おウチ)でぐっすり眠ってるよ……んじゃ、次はどうして俺がこの姿をしているか、って話だ。興味あるだろ?」

 

「……」

 

リゼの質問に答えつつも自分勝手に話を進める猟犬。その振る舞いは自身の特典であるエボルトにどこか重なっているようであった。

 

「やれやれ……まあ、俺があの世界を出た時点でお前たちに追われているのは気づいてたからな。積層世界で上手いこと時間を稼いでいる間にこの世界で色々と仕込ませてもらったのさ」

 

「あれは罠だったか」

 

「その通り!ま、あくまでオマケだったが、上手く使えそうだったんでこの世界でも転生者(エサ)を使って増やした怪人(コマ)を足止めに使わせてもらったぜ?」

 

「!?それじゃ、あの怪人はお前が!?」

 

「いちいち驚くなよリゼ?まあ、ただの人間には無理な話か……ともかく、タカヒロの体を間借りした俺はお前たちを戦わせている間に一芝居打たせてもらったってことだ」

 

()()()のためにな、と嬉しそうに言う猟犬は懐から特徴的なハンドルの付いたベルト──エボルドライバーを取り出して二人に見せびらかすようにチラつかせた。

 

「……なるほど。完全体になるために他の猟犬を呼んだか」

 

「またまた正解!ゴーストライダーに10ポイント!」

 

「共食いとは……畜生にも劣る行いだな」

 

「おいおい、お前だって似たようなもんじゃないか?」

 

「似たような、もの……?」

 

「……」

 

いっそ仰々しささえ感じさせる仕草の猟犬の返答に困惑するリゼと押し黙る一騎。その二人の姿を見た猟犬は皮肉気な笑みを浮かべていた。

 

「世界を正しく終わらせるため、なんて綺麗事を言ってるが、結局、ゴーストライダーの(その)力で世界を終わらせるんじゃ、猟犬(俺たち)転生者(あいつら)と何が違うんだ?えぇ?ゴーストライダーさんよぉ?」

 

「──知ったことか」

 

「は?」

 

「……え?」

 

芝居がかった口調で投げかけられた質問に対してする一騎の返答に思わず声を出すリゼと問いかけたまま固まる猟犬。吐き捨てるように出された一騎の返答だったがそれには続きがあった。

 

「俺は復讐のために戦っている。そこには大義も理想も無い。ただ、転生者(お前たち)を殺す、それが俺の戦いだ」

 

「……フ、ハハハハハ!これだから人間は面白い!お前は自分が悪だと認めるのか?!」

 

「そんな……!?」

 

一方的な一騎の返答に腹を抱えて楽しそうに笑う猟犬と対照的にリゼは絶望した様子を見せるが、違うな、と一騎は猟犬の言葉を一蹴する。

 

「俺は一人じゃない。ゴーストライダー(俺たち)は力無き者のために──次の被害者を出さないために罪人を殺す、それがゴーストライダー(俺たち)の戦いだ」

 

「外狩さん……!」

 

力強く宣言した一騎にリゼの瞳に希望が戻るが、今度は猟犬がつまらなさそうな表情を浮かべていた。

 

「ハッ!言ってくれるじゃないか?ま、復讐で戦ってるのはお前さんだけじゃないけどな」

 

「何だと……?」

 

SAOの(あの)世界でお前に負けて俺のプライドはズタズタになった……ま、それを取り戻すためにこれだけの苦労をしてまで完全体になった、ってことさ」

 

これで条件は五分、って訳だ、と猟犬はヘラヘラとした笑みを浮かべるが、それに対する一騎は怒りと決意の籠もった眼差しを猟犬に向けると真っ直ぐに指を差した。

 

「黙れ、お前はここで殺す」

 

「そう言うと思ってたぜ!」

 

『コブラ!ライダーシステム!レボリューション!』

 

一騎の視線と言葉を受けた猟犬は嬉しそうに凶暴な笑みを浮かべると両手に一つずつ持った小さなボトル──エボルボトルをエボルドライバーにセットすると右手でレバーを握って回転させる。

 

「変身」

 

猟犬の宣言とともにその体を黒い立方体が包み込んで暗黒空間に飲み込まれて一瞬姿が消える。その直後に猟犬居た地点を中心に周囲に小型の黒い立方体を飛び散らせながら白を基調としたアーマーを装着した破壊の化身──仮面ライダーエボル、ブラックホールフォームがその姿を現した。

 

「さぁ、かかって来い!──ま、変身できないお前には何も出来ないだろうけどなぁ!」

 

「……」

 

「さて、後はこの世界ごとお前を倒せば俺の勝ちだ──チャオ」

 

「させるか!」

 

生身のままの一騎に対して挑発するエボルはブラックホールを作り出そうとするが、その動きに気付いたリゼは咄嗟にゲーマドライバーの機能を使って三人をゲームエリアの採石場へと転送させるとスナイプレベル2へと変身して銃撃でエボルの行動を妨害した。

 

「おおっと!?何だ、リゼか……いいだろう、望み通りお前から消してや──」

 

「詰めが甘いのはその力のせいか?」

 

「──ぐおっ!?」

 

一瞬、スナイプへと視線を向けたエボルは攻撃のために右手をかざした姿勢のまま伸びて来たチェーンによって地面へと叩き伏せられる。そして、そのチェーンの始点にはゴーストライダーへと変身した一騎の姿があった。

 

「天々座理世、いい判断だ。あとは俺に任せろ」

 

「一騎さん!」

 

「バカな!?何故、太陽の下で変身している!」

 

「気が付かなかったか?仮想空間には本物の太陽は昇らない。偽りの太陽では俺たちを止めることは出来ない」

 

これで条件は五分、と言う訳だ、と冷たく言い放つゴーストライダーに対してエボルは憎らし気な視線を向けながら立ち上がる。

 

「クッ、だが、この世界が俺とお前の全力に耐えきれるかな?」

 

「無理だろうな。だが──」

 

「な──ぐおっ!?」

 

不敵に笑うエボルの言葉を肯定したゴーストライダーが一度、言葉を切って飛び上がると、その背後から来たヘルバイクに跨ってそのままエボルへとぶつかった。

 

「一騎さん!?」

 

「──お前の好きにはさせん」

 

「ぐ、この──」

 

エボルを先端に引っ掛けたまま進むバイクはその眼前に開いたゲートに飲み込まれる。そして、ゲートが閉じた後には呆然とするスナイプと炎の轍が残されているだけであった。

 


 

 

「ぐあっ!!」

 

ゲートを抜けて世界の狭間に出て来たゴーストライダーが急ブレーキをかけるとヘルバイクの先端に引っ掛けられていたエボルが慣性に従って薄っすらと見える地面を数m先へ転がって行った。

 

「ハッ、やってくれるじゃないかゴーストライダー……だが、こんな広い場所なら俺の力も──」

 

「言っただろう、お前の好きにはさせん、と」

 

「ぐえっ!?鎖、だと?」

 

起き上がったエボルが動き出す前にゴーストライダーが左手に巻きつけたチェーンが伸びてエボルの首に巻きついた。ヘルバイクを降りて向かい合うゴーストライダーとエボル、チェーンで繋がれた両者の間には一触即発の空気が流れていた。

 

「ハッ、チェーンデスマッチかよ……まったく、手の込んだことをしてくれるぜ」

 

搦手(からめて)には搦手、と言うことだ──さぁ、かかって来い」

 

「そうかい──なら、今日がお前の命日だ!」

 

言うが早いか左手でチェーンを引っ張ったエボルはそのままの勢いで踏み込むと右ストレートをゴーストライダーの顔面に叩き込む。

 

「これがお前の全力か?」

 

ゴーストライダーは一歩も動かず殴られたままの状態でエボルを見ると空いている右手でお返しとばかりにストレートを顔面に打ち返した。

 

「ぐあっ!!──ハハッ、そう来なくっちゃ、なぁ!!」

 

「ぬ……」

 

たたらを踏むエボルだったが、楽しそうに笑うと今度は左、右とワンツーパンチを繰り出すと、流石のゴーストライダーも後ずさる。

 

「まだまだぁっ!!」

 

「ぐ、ぬ」

 

今が好機と見たエボルは左で顔面にフックを放つと、右で胴体へのレバーブローのコンビネーションを放つと左のアッパーカットを顔面に叩き込んだ。

 

「さて、そろそろシメに入ろうかぁ!」

 

たじろいだゴーストライダーを見たエボルは三歩程バックステップしつつ戻した右手でドライバーのレバーを回転させて必殺技の準備をする。

 

『Ready go!』

 

「ゴーストライダー……これで終わりだ!!」

 

『ブラックホールフィニッシュ!』

 

高らかに宣言するエボルは右手にブラックホールのエネルギーを集中させるとそのまま踏み込んで右ストレート──ブラックホールフィニッシュをゴーストライダーの顔面へと叩き込む。

 

「フハハハハハ!勝ったぞ、見たか上位者ども!ハハハ──」

 

必殺の一撃を叩き込み、勝利を確信し高らかに笑うエボルだったが、ふと、自らの首元の鎖に目を向ける。

 

「──ん?そういえば、どうして鎖が燃えたまま──」

 

「なるほど、奴らは上位者と言うのか」

 

「は?──ぶげっ!?」

 

違和感に気付いたエボルだったが、時は既に遅く隙だらけの顔面にゴーストライダーの燃え盛る右ストレートが叩き込まれるとひとまずのチェーンの限界である数m先まで吹き飛ばされた。

 

「やるじゃねぇか……だが──」

 

「これ以上、お前に聞くべきことは無い」

 

「がっ──ぐあああっ!!」

 

ズレた顎を戻しつつ冷たく言い放ったゴーストライダーはチェーンでエボルを引き寄せると左の拳を右手で包んで振りかぶる。そして、無防備なまま飛び込んできたエボルへとダブルスレッジハンマーを振り下ろし地面へと叩きつける。

 

「ぐ、くそっ──がああぁっ!!」

 

うつ伏せに叩き落されたエボルが起き上がろうとするが、その前に踏み抜かんばかりのゴーストライダーの右足がその腰へと踏み下ろされると、その下にあったエボルトリガーが圧力に敗けて粉々になり、エボルはその力を失ってコブラフォームへと弱体化する。

 

「お、俺の力、が……」

 

「違うな、それはお前の力ではない」

 

「そう、簡単に──ぐああっ!?」

 

倒れ伏すエボルは悪態を吐こうとするが、それを意に介さず、ゴーストライダーはチェーンを使ってエボルを眼前へと引き上げるとその体を炎で包み込んだ。

 

「やめろ!俺は──」

 

「無駄だ、俺の眼を見ろ」

 

「ぐああぁっ!!あ、あぁ……」

 

ゴーストライダーは既に抗う力を失ったエボルに贖罪の眼(ペナンスステア)を覗き込ませる。炎に苦しむエボルはこれまで殺した転生者とその罪を一身に受けると自分を嘲笑う本物のエボルトの声を聞きながらその体と魂を焼き尽くされるのだった。

 


 

(……これで終わりか)

 

「(然り、良くやった、一騎)」

 

(……いや、どうやらまだの様だ)

 

「(何だと──これは、刻印が!?)」

 

チェーンを戻して一息を吐くゴーストライダーだったが、一瞬の違和感に緩みかけた気を引き締めると戻っていくはずの刻印が何処かへ引っ張られているようだった。

 

「くっ……」

 

「(ぬ!何だ此の異様な力は!?)」

 

何とか刻印の束にチェーンをかけるゴーストライダーだったが、あまりの力強さに徐々にどこかへ引きずり込まれていくようであった。

 

(……このままでは埒が明かん、飛び込むぞ)

 

「(一騎!?──已むを得ん、か……だが、確実に敵地だ、気を引き締めろ)」

 

(ああ、分かっている……まったく、儘ならんな)

 

状況を打開するべく敢えて敵地と知りつつ引かれるままに任せたゴーストライダーは暫くすると視線の先にある一つの世界に引き寄せられていることに気が付いた。

 

(……何だ、あの世界は?)

 

「(何と歪な……だが、大量の刻印の反応がある)」

 

よく見れば内包しているエネルギーのせいか普通の世界と違い一回りほど大きく大量の刻印のせいか歪な形をしており、どこか異様な雰囲気を持っているようだった。

 

「(あの世界、如何やら幾つかの世界を組み合わせているようだ)」

 

(なるほど、ならあの異常な量の刻印にも説明が付くな)

 

「(然り、だが、此処からでは内情は探れぬな)」

 

ゴーストライダーは超感覚で世界を探ってみるが、何かのベールで包まれているようにその中を見ることは出来ないようであった。

 

「(恐らく、此れが奴らとの決戦になるだろう……覚悟は良いか、一騎)」

 

(当然だ──俺はいつも通り奴らを狩る。それだけだ)

 

「(然り、では、行くぞ!)」

 

刻印に引かれるままだったゴーストライダーは自らゲートを開くと目の前の世界へと飛び込んでいくのであった。

†を使った読み飛ばし機能、使ってますか?

  • 使ってるし、必要
  • 使ってるけど、必要ない
  • 使ってないけど、必要
  • 使ってないし、必要ない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。