GHOSTRIDER:Dog Eat Dog   作:雁野 命

11 / 12
※前後編ではありますが、話の展開上、今回の†は通常と同じ数となっております。


Dog Eat Dog #11

(夕方か……悪くはないな)

 

「(然り。だが、気を抜くな、一騎)」

 

(ああ、分かっている)

 

ゲートを潜り抜けた一騎は日の沈み始めた、冬の夕方の街はずれに出ていた。辺りを見回して警戒する一騎だが、何かの倉庫の跡地には狙い通り周囲に人気は無く、状況を見極めるにはうってつけであった。

 

(特に目立つものはないが……何か見えるか?)

 

「(否、此方も反応が多過ぎて絞り切れん)」

 

(まあ、そうなるか……となると虱潰(しらみつぶ)しに探すしかない、か)

 

肉眼では内包された世界を確認できる特徴が見当たらないことから、超感覚を持つゴーストに聞く一騎だったが、その返事も芳しくはなく小さくため息を吐いた。

 

「(然り。だが、多少、手間は省けたようだぞ)」

 

「……さて、いつまで隠れているつもりだ?」

 

「ほう、良く気が付いたな」

 

押し黙っているようにしか見えない一騎が呼びかけると、返事とともにその周囲を腐った目をしたまったく同じ容姿の十人の少年──比企谷八幡たちが取り囲んだ。

 

「(成程。()の世界のシステムを流用し、欠片とエネルギーで尖兵を作ったか)」

 

「……また、お前たちか」

 

「また、とは何だ!」

 

「今の俺たちは初対面だぞ!」

 

「まあ、基本は変わらないけどな!」

 

げんなりした様子の一騎だったが、それに気付く様子もなく口々に文句を言う八幡たち。だが、彼らの持つ刻印の欠片は紛れもなく本物であり、その事実が一騎により強い疲労感を感じさせているのであった。

 

「……御託はいい、さっさと来い」

 

「いいだろう──」

 

「「「「「「「「「「デュアッ!」」」」」」」」」」」

 

辟易する一騎の言葉に一人の八幡が前に出て懐から取り出した眼鏡をかけると、それに合わせて他の八幡たちも眼鏡をかけつつ全員で声を掛け声を出す。すると、まばゆい光が全員を包み、光がおさまるとセブンスーツを纏った戦術部隊がその姿を現した。

 

「……まったく、進歩の無い奴らだ」

 

「行くぞ、ゴーストライダー!」

 

「そこまでだ!」

 

「(……む?)」

 

「ッ!?誰だ!?」

 

スペシウムソードを構えて臨戦態勢を取るセブンたちに呆れた様子の一騎。どこかちぐはぐな空気の中、突如、横合いからかけられた威圧感のある声にその場の注目が集まると、そこには燃える骸骨──ゴーストライダーの姿があった。

 

「貴様はゴーストライダー!くそっ、合流する前に倒す作戦が台無しじゃないか!」

 

「外狩一騎、ここは俺に任せて逃げろ!」

 

「(まさか!?我等以外のゴーストライダーだと!?)」

 

(どうやらそうらしいが……まったく、儘ならんな)

 

様子を窺う一騎に対して声をかけたゴーストライダーがセブンたちと一進一退の戦いを繰り広げるが、その戦いを見た一騎は小さくため息を吐くと目の前の戦場へと歩き始める。

 

「何やってる!戦えないなら早く逃げろ!」

 

「わざわざ殺されに来たか!なら、望み通り殺してやる!!」

 

チェーンで足止めをしつつ二体ほど倒したゴーストライダーだが、その脇を抜けて飛び出したセブンの一人が強化された超人的な身体能力でスペシウムソードを振るう。生身の人間を殺すには十分すぎる威力を持つ一撃は無防備に歩く一騎を真っ二つに切断する──はずだった。

 

「な──ぬあっ!?」

 

「言っただろう、進歩がない、と」

 

突如、衝撃を感じて転んだセブン。スペシウムソードを持った手を掴んだ一騎がそのまま勢いを使ってセブンを地面に投げ倒すと、そのまま取り押さえつつスペシウムソードを取り上げていた。一連の流れは見る者が見ればかつての積層世界で別の八幡との戦いの焼き直しのようであった。

 

「このっ!離せ!!」

 

「まずは一つ」

 

「がっ……」

 

関節を押さえられているため、想像以上に力が伝わらず体をよじるのがやっとのセブンに対して冷たく言い放った一騎が手に持ったスペシウムソードでバイザーの比較的脆い目の部分を貫くと小さく悲鳴を上げたセブンは絶命し、その姿が霧散した。

 

「なるほど、死体は消えるのか」

 

「そんな、一瞬で……!?」

 

「これが、ゴーストライダーの実力、か……」

 

「さて、次はどいつだ?」

 

「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」

 

戦慄するセブンたちと驚嘆するゴーストライダーに対し、スペシウムソードを手放した一騎がゆっくりと冷たい視線を向けると、味方と思われるゴーストライダーですらたじろいだ。

 

「う、うわあぁぁぁっ!!」

 

「遅い」

 

恐慌に陥ったセブンの一人が向かってくる一騎に対してスローイングナイフを投げつけるが、あっさりとチェーンで絡め捕った一騎はそのままヘルファイアを纏わせたスローイングナイフを投げ返す。

 

「ひっ──」

 

「二つ」

 

「ぐえっ」

 

恐怖と混乱で動けなくなったセブンの影をなぞって飛ぶ燃え盛るスローイングナイフがバイザーを貫くと二人目のセブンも倒れ伏して消えた。

 

「く、くそっ、怯むな!」

 

「おっと、俺を忘れてもらっては困るな!」

 

「ぐあっ!!」

 

「うげっ!!」

 

何とか持ち直した一人を筆頭に一騎と戦おうとする残りのセブンたちだったが、その動きを制するようにゴーストライダーが手近な二人を殴り倒しつつ、もう一人へと立ちはだかった。

 

「三つ……少しはマシな動きになったか」

 

「(然り。だが、此の程度では実力は測れぬ)」

 

「ぐああっ!!」

 

ゴーストライダーの動きに評価を下す一騎はそちらに気を取られたセブンの一人に近づくと、その体で日陰を作りスーツ越しにヘルファイアで肉体を焼き尽くす。

 

「こ、このままじゃ……」

 

「これで終わりだ!」

 

「「「がああっ!!」」」

 

残った三人が後ずさりして固まったところをチェーンでまとめたゴーストライダーがそのまま三人をヘルファイアで焼き尽くして戦いはひとまず終わりを告げた。しかし、ゴーストライダーを見る一騎の視線は鋭いままだった。

 

「さて、一つ問う。俺の事を知っている様だが、お前は何者だ?」

 

「初めまして、俺は()()()()のゴーストライダー、篝斗真(かがりとうま)。ま、詳しいことはウチで説明するからついて来てくれ」

 

「(一騎、此れは……)」

 

(付いて行くしかない、か──っ!?)

 

変身を解除し笑顔で告げる少年──斗真が話も聞かずに歩く姿に辟易しつつも進もうとする一騎は視線を感じて周囲を見渡す、が、何処にも監視者の姿を見つけることは出来なかった。

 

「(?一騎、如何かしたのか?)」

 

(……いや、何でもない)

 

「おーい!来ないなら置いてくぞー!」

 

「……まったく、儘ならんな」

 

勝手に先を行く斗真に遅れないように後を追う一騎。だが、そんな二人の後ろ姿を物陰から見つめる人影に気付く者はいないのであった。

 

 


 

「(ぬ……転生者の反応だ)」

 

(またか?……これは面倒だな)

 

冬の昼間、通勤や通学中の時間を過ぎて落ち着き始めた平日の街中を一騎がバイクで走りまわっていた。勿論、ただ闇雲に走っている訳ではなく、転生者を見つけるために反応の強い場所を探しているが、目当ての転生者を見つけたはずの一騎はフルフェイスの下で浮かない表情をしていた。

 

「(然り、数は多い、が、此度は()()()も居る。然程、問題にはならんと思うが?)」

 

(斗真(アレ)を頼るだと?正気か?……ともかく、一度、情報を整理するぞ)

 

ゴーストの言葉に顔をしかめた一騎は内心で頭を抱えつつも、昨夜聞いたもう一人のゴーストライダーの話を思い返すのだった。

 


 

「着いたぜ。ようこそアジトへ──って、言っても俺の家だけどな。あ、住んでるのは俺だけだから気にしなくていいぜ」

 

戦いの後、徒歩でバイクの修理工場の併設された一軒家に案内された一騎はそのままリビングに通されると、目の前に立つどこか気の抜けた態度の斗真に冷たい視線を向けていた。

 

「……それで、説明してもらえるんだろうな?」

 

「思ったよりせっかちなんだな……ま、心配しなくても説明するから、適当に座って待っててよ」

 

あ、コーヒーとお茶どっちがいい?、とキッチンへ向かう斗真の言葉に内心で頭を抱える一騎は小さくため息を吐くと、好きにしろ、とだけ答えて食卓の椅子へと座った。

 

「(此奴、余程の大物か、それとも……)」

 

(おそらく馬鹿の方だろう……少なくとも俺にとってはな)

 

「はいよ、粗茶ですがどーぞ、ってね……つーか、そんな難しい顔してどうした?」

 

「……いや、なんでもない」

 

二人分の湯呑を持ってきた斗真は一騎の答えに、ふーん、と興味なさそうに返すとそのまま向かいの席へと座った。

 

「──さて、んじゃ、何から話そうか?」

 

「お前は何者で俺の事をどこで知ったか教えろ」

 

「さっきも言っただろ?俺はアンタと同じゴーストライダーで、この世界の転生者と戦ってたらアンタの話を聞いた事があったんだよ」

 

「なるほど。では、何故あの場に都合よく現れた?」

 

「そりゃ、刻印とゲートの反応を辿ったらアンタが居た、ってだけの話でただの偶然だって……つーか、これ尋問?」

 

「……そうか。いや、この聞き方は生まれつきだ、気にするな」

 

気にするな、っていわれてもなぁ、と頭を掻く斗真だったが、それを意に介さない一騎は、次の質問だ、と冷淡に言葉を続ける。

 

「ここは複数の世界が混ざっているようだが、どうなっている?」

 

「そうだな……まず、アンタの予想通りここは百人近い転生者を集めて作られた複合世界だ」

 

「そこまでは分かっている。他に何か情報はないのか?」

 

「生憎、俺が倒した転生者から他に聞き出せたのは、この世界はゴーストライダー──つまり、俺を()と見立てることで特典による敵の発生を抑えているらしい、ってことだけだ」

 

あとはさっぱり、と肩を竦める斗真がひとまずの説明を終えたとばかりに茶を飲んで一息つく間、その様子を黙ったままじっと見ていた一騎は小さくため息を吐いた。

 

「(大した情報は無い様だな)」

 

「……一つ聞かせろ、お前はどうやってゴーストライダーになった?」

 

「疑り深いなぁ……まあ、いいけどさ。俺はアンタと同じ上位者や他の転生者に反対している立場の人間だった。まあ、アンタと違ってすぐには力が無かったんでな、しばらくは魂だけの状態で封印されてたんだ」

 

「……」

 

「んで、ある日、俺の刻印が反応したと思ったら、この世界の敵としてゴーストライダーをやることになってた、って訳さ」

 

納得してもらえたか?と真っ直ぐに一騎を見て問いかける斗真に対して、一騎は鋭い視線を向けたまま、一応はな、と素っ気ない返事を返した。

 

「さて、最後の質問だ。この世界の()はどいつだ?」

 

「核?何だそりゃ?」

 

「……世界を混ぜたからこそ、その世界の中心となる刻印を持つ転生者がいるはずだ。心当たりはないか?」

 

「うーん……まあ、流石にアイツ等も敵に弱点を言うほどバカじゃないからなぁ」

 

さっぱりわからん、と再び肩を竦める斗真に対して、だろうな、と短く返す一騎は予想していたのか冷たい視線を向けていた。

 

「……アンタ、友達少ないだろ?」

 

「想像に任せる」

 

「そうかよ……そういえば、アンタのことは何て呼べばいい?」

 

「……好きにしろ」

 

「あいよ、んじゃ、一騎先輩、質問がないなら飯作るけど、何か食いたいモンあるか?」

 

「俺はいい、核を探してくる」

 

一騎の態度に呆れつつも立ち上がりかけた斗真だったが、一瞬早く立ち上がった一騎の言葉に動きが止まる。

 

「は?先輩、夕飯どうすんだよ?」

 

「時間が惜しい。食事なら探しながらでも出来るだろう」

 

「あー……もしかして俺も行く感じ?」

 

「……お前は転生者を狩らないのか?」

 

「え?いやー、俺は学校とバイトがあるから今日は無理かなー、って」

 

ダメ?と小さく首を傾げた斗真に対して冷たい視線を向ける一騎、二人の間にはただ静かな沈黙が流れるだけであった。

 


 

休憩がてら手近なコンビニでバイクを停めていた一騎は昨夜のやり取りを思い出して内心で頭を抱えていた。

 

(情報はともかく、少なくとも、斗真(アレ)を軸に作戦は立てられん)

 

「(然り。だが、戦力に違いはあるまい)」

 

(それもどうだかな……ん?)

 

一騎は正午過ぎまで続けた調査の結果、核の居場所はおろか、転生者の正確な総数すら掴めていないことに小さくため息を吐くが、ふとどこかから飛んできた紙飛行機が足元に落ちたことに気づくとそれを拾い上げた。

 

「(子供の悪戯であろう、捨て置け)」

 

(……いや、どうやら違うようだ)

 

「(何?……此れは、住所と地図?)」

 

(それも、転生者の刻印が描かれている……罠、にしてはあからさま過ぎるが、どうしたものか)

 

一騎の行動を訝しむゴーストだったが、広げられた紙飛行機が刻印とどこかのビルと思われる住所が記された地図で作られていたことでその声には困惑が感じられていた。対する一騎もどこかその地図の真意を測りかねているようであった。

 

「(……否、迷う必要はあるまい。罠ならば其れを打ち砕き奴等を狩る。そうであろう?)」

 

(……そうだな。まあ、虱潰しに探すよりはマシか)

 

「(然り、であれば、行くぞ、一騎)」

 

ああ、と内心で返事をした一騎は適当に折りたたんだ地図をポケットへしまうと記された場所へ向けてバイクを走らせるのであった。

 


 

放課後、授業から解放された生徒たちが部活や帰宅など、それぞれの目的に動き始める中、机に突っ伏している斗真はどこか疲れたような表情をしていた。

 

(ったく、勝手に出てったまんま朝になっても帰ってこないとか……ホント、何なんだあの人は?)

 

頭を掻きながら小さくため息を吐いた斗真は、ひとまずバイトに行くか、と内心で一人ごちて立ち上がるとスクールバッグを肩にかけて3-Aを出た。が、その直後、目の前にいる人物を見て苦虫をかみつぶしたような顔になる。

 

「ゲッ、総司かよ……」

 

「ハッ、ご挨拶じゃないか斗真、いや、ゴーストライダー?」

 

「ばっ!……その名で呼ぶんじゃねーよ。()()を忘れたのかよ?」

 

意地の悪そうな笑みを浮かべた少年──総司を引き連れてコソコソと廊下の端へ移動する斗真は誰かに会話を聞かれないかヒヤヒヤしているようだった。

 

「何、ここでやり合うつもりはないさ。ただ、お前が慌てる姿が面白くてつい、な」

 

「ホント、悪趣味な奴……んで、何の用だ?」

 

「いや、3-A(そのクラス)にいる俺のハーレム要員を見に来ただけだ」

 

「……お前、マジで協定のこと忘れてない?」

 

呆れたような口ぶりの斗真に対してあからさまに不機嫌な表情になる総司。面白いように表情の変わる総司の姿は高校生にしてはどこか幼さを感じさせるようでもあった。

 

「わかっている。ゴーストライダーが居る限りこの世界の人間には手を出さない……まったく、面白くもない協定だ」

 

「……最初に、勝者への景品だ、とか言ってノリノリで作ったのはどこのどいつだよ」

 

「何か言ったか?」

 

「別にぃ~?それより、俺これからバイトだから行ってもいいか?」

 

「好きにしろ。俺はもう少しヒロイン(景品)を見てから帰る」

 

おちょくられた仕返しか、協定、忘れるなよ、と念を押して煽る斗真だったが、既に眼中にないのか斗真に目もくれない総司に辟易しつつもバイトへと向かう。が、ふと何かを思い出したのか総司が斗真の方へと目を向けた。

 

「……おっと、そうだ。一つ言い忘れていた」

 

「あん?まだ何かあんのかよ?」

 

「先ほど聞いたんだが、協定を無視してゴーストライダーが暴れているらしいぞ?」

 

「……マジかよ?」

 

「ああ、今は西地区のビルにいるようだ。まったく、優秀な先輩がいると大変だなぁ?ハッハッハッ」

 

意地の悪い笑みを浮かべた総司の言葉を受けて慌てて飛び出す斗真。離れていく背中に対して何事かを言われたようだが、斗真の耳には入っておらず、急いで校門を出た斗真は目立たないところで呼び出したバイクに乗って現場へと向かうのだった。

 


 

夕方も近くなり人通りの少なくなったビルの並ぶ薄暗い通りに着いた一騎はその中のビルの一つの前でバイクを降りた。

 

(ここが地図のビルか……一見するとただの雑居ビルだが)

 

「(然り、此処には転生者の反応が在る……が、向こうの方が早かったようだ)」

 

(チッ、雑魚共か)

 

「おい、お前、そこで何をしている?!」

 

後ろからかけられた聞き覚えのある声に面倒くさそうに振り返った一騎の前には予想通り三人ほどの八幡(戦闘員)の姿が立ちはだかっていた。

 

「お、お前はゴーストラ──ぶべっ!」

 

「五月蝿い」

 

真っ先に一騎に気づいた一人の顔面を振り向いた勢いのまま右フックで殴り、脳震盪でダウンさせた一騎はすぐさま視線を走らせると手近なもう一人へステップで距離を詰める。

 

「な──んがあっ!」

 

「ああ、一号と二号が──ごふっ!?」

 

二人目に近づいて左のアッパーカットでダウンさせつつ、驚いたままでいる最後の一人に距離を詰めてみぞおちへの強烈なボディブローで立て続けにダウンさせた一騎は油断なく周囲を見渡す。

 

(呆気ない、が、本命はこの後か)

 

「(然り、来るぞ!)」

 

『カイガン!オレ!』

 

「そりゃあ!」

 

突如、真上から変身音とともに降りて来た仮面ライダーゴースト、オレ魂がガンガンセイバーのブレードモードで切り下ろすが、その動きを察知していた一騎は前に飛び込んで回避すると、そのまま開け放たれているビルの内部へと飛び込んで行った。

 

「チッ、すばしっこい奴!」

 

直後にガンモードに切り替えようとする仮面ライダーゴーストだったが、ビル内部の暗さで目標を見つけられないことから即座に闘魂ブーストゴーストアイコンをドライバーにセットする。

 

『一発闘魂!闘魂カイガン!ブースト!』

 

「よっしゃ、命、燃やすぜ!」

 

「違うな」

 

「え?──うおっ!?」

 

ハンドルを押し込み、闘魂ブースト魂への変身を終えた仮面ライダーゴーストは突如、ビルの内部から伸びて来たチェーンに絡め捕られてビルの中へと引きずり込まれる。当然、逃れようともがく仮面ライダーゴーストだったが、半実体化しようにも何故か絡みついたチェーンをすり抜けることが出来なかった。

 

「クソッ、一体何が──」

 

「燃やすのは俺だ」

 

「なっ!?──ぐああっ!」

 

混乱から立ち直れない仮面ライダーゴーストに対し冷たく言い放ったゴーストライダーはチェーンで巻かれたままの相手に贖罪の眼(ペナンスステア)を覗き込ませると、情報を取得してからその魂と肉体を焼き尽くした。

 

「まずは一つ、か」

 

「(然り。だが、此の場には他の反応は無い)」

 

(なるほど……罠ではなかったようだが、動きは向こうに知れたか)

 

「(ぬ、監視カメラか……随分と地味な手を使うものだ)」

 

周囲に敵の気配がないことを確認して変身を解いた一騎は敵の規模から、ひとまずはこの情報は相手にとっても予想外だったと結論付けて外に出ると、ダウンしていた三人の首の骨を折って止めを刺す。

 

(さて、ここからどうするか)

 

「(まずは次の拠点を落とすべきであろう)」

 

(そうだな、なら──)

 

「一騎先輩、何やってんだよ!?」

 

「……何の用だ?」

 

次の目標を定めた一騎とゴーストの前にバイクに乗った斗真が現れるが、あまりにも慌てた様子に一騎は怪訝な表情を向ける。

 

「何の用、って、アンタが人の話も聞かずに()()を破るからだろうが!」

 

「協定?ああ、出がけに聞かされた、あのふざけた決まり事か」

 

「ふざけた、だと……!?あれはこの世界を守るために必死で──」

 

「転生者が譲歩してもゴーストライダー(俺たち)が容赦する必要はない……もし、お前がこのふざけた決まり事を俺にも守らせるつもりなら、俺がお前を裁く」

 

「ッ──!?」

 

怒りに燃えていたはずの斗真だったが、生身のはずの一騎から放たれる圧倒的な殺気に呑まれて動けなくなる。その様子を見た一騎は小さくため息を吐くと不意に殺気を抑えた。

 

「……お前がやる分には好きにするといい。だが、俺は転生者を狩る。何かあったら俺のせいだとでも言っておけ」

 

「一騎先輩、俺は……」

 

「俺は核を探すために次の拠点を落とす……お前にその気があるなら転生者の刻印と情報を持ってこい」

 

じゃあな、と呼び寄せたバイクに乗った一騎が次の拠点へ向けて走り出すと、残された斗真もバイクに乗ってどこかへと走り出したが、その表情からは大きな迷いが見て取れるのであった。

 


 

日がほとんど沈み夜の気配の濃くなった時間、いつものコンビニでバイトをしている斗真だったが、目の前のレジの向こうを見るようなその表情は未だに大きな迷いを感じさせるようだった。

 

「ねえ、斗真、本当に大丈夫?」

 

「──え?俺、そんなにヤバそうに見えた?」

 

「うん、こんな感じ」

 

「……うわぁ、確かにこれはヤバそうだわ」

 

同じシフトになることが多い友人でもある茶色のウェーブロングの髪の少女──今井(いまい)リサから見せられた直前の自分の写真は心配されても仕方がないと納得できるものであった。

 

「──で、何があったの?今ならお客さんもいないし、アタシでよければ聞くよ?」

 

「うーん……例えばさ、リサは自分のやりたいことが友達のやりたいことを邪魔するとしたら、自分と友達、どっちを優先する?」

 

「何それ?引っ掛け問題とか?」

 

「いや、例えばの話だって──んで、どう思う?」

 

うーん、と考え込むリサに対して、失敗したかな、と内心で客が来ないか気にする斗真だったが、そんな心配をよそに結論が出たのかリサが斗真へ向き直った。

 

「そうだなぁ……アタシなら友達を取るかな」

 

「まあ、リサはそう言うよな」

 

「でも、もし、斗真が本当にしたいことなら、友達の邪魔にならない程度にやったらいいんじゃないかな?」

 

「……ホント、リサは面倒見の鬼だな」

 

「鬼って何よ──」

 

「──危ない!」

 

表情の柔らかくなった斗真の冗談で笑いあう二人、だが、そんな他愛のない日常の一ページは入り口のガラス戸が叩き割られたことで終わりを告げた。

 

「……おいおい、アイツ、諦めたんじゃなかったのかよ?」

 

「あ、ありがと……でも、何が──」

 

「あー、とりあえず、ヤバい奴なのは確かだな」

 

「え、っと、とりあえず、警察呼ぶ?」

 

困惑するリサを庇って伏せた斗真が入り口にいるガラス戸を破った張本人である赤を基調としたコウモリのライダー──仮面ライダーキバ、キバフォームを覗き見ながら内心で頭を抱えていた。

 

「いや、まずは俺がバイクでアイツを引き付けるから、リサは奥に入って隠れてから警察を呼んでくれ」

 

「でも、それじゃ斗真が……」

 

「大丈夫、俺、約束破ったこと無いだろ?」

 

「……わかった。絶対、無事に逃げてね?」

 

小さな声で会話を終えてこっそりとスタッフルームへと隠れようとするリサとは逆に姿を晒して入り口へと進む斗真に対してキバの視線が向けられる。

 

「貴様、よくも抜け駆けを!」

 

「抜け駆け、って単に友達とバイトのシフトが被ったから悩みを相談しただけだろ?」

 

「うるさい!おまけに僕のリサに抱き着くなんて!」

 

「いや、俺は庇っただけだし、お前はただのストーカーだろ!?つーか、庇ったのもお前が原因だからな!?」

 

勝手に激昂するキバに律儀にツッコミを入れつつ横目でリサが隠れたことを確認した斗真は小さくため息を吐いた。

 

「まあいい、協定なんて知ったことか!ここでお前を倒す!」

 

「どいつもこいつも協定を無視しやがって──いいぜ、かかって来な。変身!」

 

掛け声とともにゴーストライダーへと変身した斗真はタックルをしてキバを弾き飛ばすと、そのまま自分もコンビニの外へと飛び出した。

 

「クッ、だが、この程度で──」

 

「済むわけねぇだろっ!チェインブロウ!」

 

「ぐっ──ぐえっ!」

 

立ち上がったキバの首にチェーンをかけたゴーストライダーは勢いよくチェーンを引っ張ると、そのまま引き寄せたキバの顔面に右ストレートを叩き込んだ。

 

「グッ、この……」

 

「アンタの罪を悔い改めな!ペナンスステア!」

 

「ぐ──ぐあああっ!!」

 

軽い脳震盪に陥ったキバの襟首を掴んだゴーストライダーがペナンスステアを覗き込ませると、キバは己の罪によってその魂ごと体を焼き尽くされていった。

 

「ふぅ、これでなんとか──」

 

「残念ながら、ならないんだよなぁ」

 

「っ!?誰だ!?」

 

一息つこうとしていたゴーストライダーだったが、突如、横合いからかけられた声に目を向けると、そこには赤と青のツートンカラーの戦士──仮面ライダービルド、ラビットタンクフォームの姿があった。

 

「勝利の法則は決まった、ってな」

 

「……ホント、協定って何なんだろうな──クソッ、こっちだ!」

 

「あっ!?待てコラァ!!」

 

やる気満々と言いたげなビルドの姿に大きなため息を吐いたゴーストライダーは、ひとまずコンビニへの被害を抑えるために呼び出したバイクに乗って広い場所へとビルドを誘導し始めるのであった。

 


 

深夜の河川敷、本来なら静けさに包まれる平和な場所だが、今はゴーストライダーの周囲を取り囲む赤、青、黄の怪盗のような衣装の戦士──ルパンレンジャーのVSチェンジャーから鳴り響く銃声と離れた所に倒れ伏す転生者たちの姿で戦場の様相を呈していた。

 

「くらえっ!」

 

「無駄だ」

 

「「「ぐあああっ!」」」

 

一斉に放たれる銃撃を防御もせずに無視したゴーストライダーは右手のチェーンでルパンレンジャーを一纏めにして爆発させると、気絶して変身の解除された三人の転生者を放置して背後にいる残りの転生者へと視線を向ける。

 

「さあ、次はどちらだ?」

 

「くそっ!仕方ない、プランBで行くぞ!」

 

「分かった!うおおおっ!」

 

視線を向けられた金色のアーマーに赤い複眼の戦士──仮面ライダーアギト、グランドフォームが合図とともに構えを取ると、横にいた白いコートの青年がガロの鎧を召喚してゴーストライダーへと跳びかかった。

 

「せいっ!てやあっ!」

 

「ぬ……」

 

「今だっ!」

 

牙狼剣による連続攻撃でゴーストライダーの動きが止まったタイミングでバックステップしたガロが声をかけると、その背後でライダーキックの構えを終えたアギトの視線がゴーストライダーを捉えて飛び上がった。

 

「はぁーーっ!!」

 

「その程度で俺を倒せると思ったか?」

 

「何っ!?──ぐえっ!」

 

大地のエネルギーの集約されたライダーキックを受けたゴーストライダーだったが、これまでの戦績を考えれば当然と言うべきか無傷であり、お返しとばかりに片手で軽く受け止めたままのアギトを力任せに地面に叩きつけた。

 

「このっ!アギトを放せっ!!」

 

「そうか──なら、返してやろう」

 

「え?──うわっ!?」

 

「がっ!?」

 

激昂して切りかかろうとするガロだったが、ゴーストライダーが投げつけたアギトを受け止めきれずそのまま地面に倒れこんだ。

 

「ぐ、おい!だいじょ──」

 

「よそ見をするな」

 

「「ぐええっ!」」

 

立ち上がる前にアギトの無事を確認しようとしたガロだったが、その前に二人まとめて踏み下ろされたゴーストライダーの右足に踏みつぶされて動けなくなる。

 

「ぐうっ、このっ」

 

「流石に鎧は頑丈だな──だが、これで終わりだ」

 

「「ぐ、うあああっ!」」

 

右足で踏みつけたままの二人に対して贖罪の眼(ペナンスステア)を覗き込ませたゴーストライダーは情報を読み取ると二人の魂と肉体を焼き尽くした。

 

(これも空振り……やはり、拠点の場所は分かっても核についての情報は無いか)

 

「(然り。如何やら、奴等は実働部隊には何も教えていない様だな)」

 

(なら、いくら雑兵を調べても意味は無い、と言うことか……まったく、儘ならんな──ん?)

 

「(如何した、一騎──此れは、如何言う事だ?)」

 

周囲に敵の姿が無くなったことで変身を解除して情報を整理していた一騎だったが、ふと違和感を感じた右手を開くと何やら折りたたまれた紙が握られていた。

 

(……ゴースト、周囲に反応は無かったのか?)

 

「(然り。あの瞬間、確実に刻印の反応は無かった。だが、現に手元に其れが在る……一体、何が起こっているのだ?)」

 

(分からん、が、何にせよ悪意のあるものではなさそうだ──見てみろ)

 

「(此れは──地図か……成程、手の込んだ事をするものだ)」

 

周囲を警戒しつつも困惑する二人だったが、開いた手元の紙が昼間の地図と同じように刻印とどこかマンションと思われる住所が記された地図であることから、どこか納得をした様子であった。

 

「(此の場所は奴等の情報にも在った拠点のようだが……此処に何かが在るのか?)」

 

(どうだろうな。だが、昼間の地図といい俺たちに転生者を倒させたいだけかもしれんな)

 

「(成程。ならば我等の成す事は一つだ)」

 

(ああ、奴らを見つけて狩る。それだけだ──ん?着信か)

 

周囲に倒れる転生者を燃やして止めを刺しつつ次の行動を決めた二人だったが、振動を感じてスマホを取り出した一騎は斗真からの着信であることを確認して通話を始めた。

 

『あ、もしもし、一騎先輩?今どこにいる?』

 

「外だ……何だ?やる気になったのか?」

 

『……まぁ、そんなとこ。とりあえず、いくつか手に入れた情報があるんで戻ってきてもらえるか?』

 

「(一騎、夜明けも近い。一度、態勢を整えるぞ)」

 

「……わかった、一度そちらへ戻る」

 

んじゃ、またあとで、と勢いよく通話を切った斗真に対して小さくため息を吐いた一騎は転生者を燃やし尽くしたことを確認すると、地図の住所の方を一瞥してからバイクに乗って斗真の家へと戻るのであった。

 


 

(ここも居ない、か……どう言うことだ?)

 

翌朝、と言ってもすでに昼に近い時間帯になってはいたが、地図に書かれたマンションの見える屋上で周囲を観察する一騎は辺りに人が住んでいないことに違和感を感じていた。

 

「(周囲に生命の反応は無い。が、あの建物には複数の強力な転生者が居る……此れは当たりを引いたかもしれんぞ?)」

 

(そうだな……ここまで露骨に人払いされていればさもありなん、だな──それより、あそこに核はいるか?)

 

「(分からぬ。此処からでは他の反応に紛れて絞り切れんな)」

 

(結局、虱潰し、と言うことか……まあ、最初よりは幾分かマシか)

 

「(然り。だが、斗真の情報も役に立つものだな)」

 

(……お前、少し斗真(アレ)の肩を持ち過ぎじゃないか?)

 

マンションの様子を窺いつつ現状の分析を終えた二人だったが、斗真の話を出したゴーストに対して一騎は大きくため息を吐いた。

 

「(確かに、斗真の実力は低いが奴からは転生以外の罪の気配は無い。そして、仮にも協力者であれば評価はせねばなるまい)」

 

(なるほど。お前の基準ではそうなるか……とは言え、無駄話もここまでか)

 

「(然り。だが、雑兵とは言え気を抜くな)」

 

分かっている、と一騎が内心で返事をすると屋上のドアが開きG36(アサルトライフル)を構えた三人の八幡(戦闘員)を従えた仮面ライダーグリスが姿を現した。

 

「「「動くな!」」」

 

「そう言われて止まる奴がいるか」

 

「あっ!?待て!」

 

グリスの姿を確認した一騎は警告を無視して冷たく言い放つとそのまま柵を飛び越えて屋上から飛び降りた。慌てて柵を越えて下を覗き込んだ四人だったが、その眼前には建物で作られた日陰の中を落ちながら屋上へとチェーンを伸ばすゴーストライダーの姿があった。

 

「愚か者め」

 

「──くそったれ!」

 

「カシラ!?」

 

「ダメだ、撃てない!」

 

伸ばされたチェーンが巻き付いたグリスはゴーストライダーの力に耐えられず屋上から引き落とされるが、八幡たちはそのまま地面へと落ちていく二人を眺めているしか出来なかった。

 

「タダでやられるかよっ!!」

 

『スクラップフィニッシュ!』

 

「遅い」

 

「──なっ!?」

 

落ちていく中で必殺技を放つべくドライバーのレンチを下ろしたグリスだったが、それを予期していたゴーストライダーはベルトを燃やし尽くして破壊したことで変身が解除されて本来の青年の姿に戻ってしまった。

 

「では、情報をいただくぞ」

 

「ぐ、がああっ……あぁ……」

 

驚愕した表情のまま青年に贖罪の眼(ペナンスステア)を覗き込ませたゴーストライダーは情報を読み取った魂ごと体を燃やし尽くすと、灰を撒き散らしながら地面へと着地して追撃に備えるが、屋上には何の動きも感じられなかった。

 

(……追撃がない?いや、気配自体が消えたか)

 

「(然り。如何やら奴等は親である転生者が死ぬと消える様だ)」

 

(なるほど。まあ、それも道理か……それより、奴ら、あそこにそれなりの人数を揃えているな)

 

「(然り。このままでは少々、我等に分が悪いな)」

 

(なら、いつも通り準備をするだけだ)

 

周囲に敵がいないことを確認して変身を解除した一騎は拠点を制圧する準備を整えるために近くに止めてあったバイクに乗って街中へと向かうのであった。

 


 

「……ふぅ」

 

夕方、普段より客の少ないファーストフード店のキッチンでバイトをしている斗真は表面上いつも通りに仕事をしているものの、その内心では強い疲労感を感じていた。

 

(うーむ、流石に徹夜で戦ってそのままバイトはしんどい……休んどきゃよかったかなぁ?)

 

「斗真君、疲れてるみたいだけど、大丈夫?」

 

「彩か……あー、ちょっと徹夜で働きっぱなしでな……」

 

「あー、そういえば、コンビニのバイトもやってるんだっけ」

 

ヒマがあるのか声をかけて来たピンク色の髪をしたどこか人目を惹く少女──丸山彩(まるやまあや)が斗真の返答を聞いて、うーん、と何事かを考えながら斗真の顔を観察していた。

 

「えーっと、俺の顔に何か付いてた?」

 

「え!?あ、ううん!その、そういえば、昨日()()()()()()()()()()()()()事故があった、って聞いたけど、もしかしてそのせい?」

 

「え?あ、ああ、そうそう!いやー、その件で朝までてんてこ舞いでさー」

 

「ええ!?それじゃ、斗真君、本当に一晩中働いてたんだ……」

 

(あぶねー、そういえば、修正力で事故、ってことになってたの忘れてたわー)

 

いやー、まいったなー、と勢いで押し切ろうとする斗真に流される形で、なるほど、と得心の行った様子の彩に安心する斗真だったが、ふと店の外に強い気配を感じて動きが止まる。

 

「斗真君?」

 

「あー、ちょっと調子悪くなってきたかも」

 

「え、大丈夫!?きゅ、救急車とか呼んだ方がいい?!」

 

「いや、そこまではいいから!つーわけで、ちょっと早退するけど、後のこと頼めるか?」

 

「え?うん、それはもちろん大丈夫だけど……」

 

じゃ、よろしくなー、と軽い調子で彩に任せると、さっさと店長に報告して手早く着替えた斗真が店を出ると先程の気配をより強く感じて警戒を強めた。

 

「さあ、出て来いよ!こっちは準備万端だぜ!」

 

「そうか、その割には時間がかかったようだがな」

 

「っ!?総司!?……そうか、お前が来た、ってことはそう言うことなんだな?」

 

「ああ、その通りだ──さあ、今こそ盟約を果たす時だ」

 

斗真の前に現れた総司が交わす言葉は無くなったとばかりに口を閉ざすと、二人の間には一時の沈黙が流れる。そして、一陣の風が吹くと二人は同時に動き出すのであった。

 


 

日が沈み始め、逢魔時(おうまがとき)とも呼ばれる時間帯に一騎の見張っていたマンションのロビーのソファーには二人の青年が座っていたが、片方は吹き抜けのある中庭を眺めながらくつろぐ軽薄そうな遊び人、もう片方はどこか落ち着かない様子で周囲を警戒する真面目そうな大学生とその姿から見受けられる印象は対照的であった。

 

「ふあ……あふぅ」

 

「……おい、退屈なのは分かるが、一応、警備らしくしてくれよ……」

 

「ああ、悪い悪い。いやぁ、こう何時間も座りっぱなしだと、流石に眠くなってきてなぁ」

 

ヘラヘラと悪びれた様子もなく笑う軽薄そうな男に対して真面目そうな男はピリピリしつつも呆れたようにため息を吐いた。

 

「……気を抜くのは勝手だが、そのままゴーストライダーに殺されても俺は知らないぞ?」

 

「分かってるって、流石にそんなヘマはしないっての……しっかし、本当にゴーストライダーは来るのかねぇ?」

 

「ちゃんとメッセージ読んでないのかよ?……昼間、警備班のグリスがやられてるんだ、来るに決まってるだろ」

 

そうか……、とどこか寂し気な表情を浮かべた軽薄そうな男は一度、深呼吸をすると元の表情に戻るが、その中には真剣さが含まれているようであった。

 

「ま、そう言うことなら気合を入れ直すとするか」

 

「……アンタ、ソシャゲのお知らせとか読まないタイプだろ」

 

「お、よく分かったな?ま、どうせ必要なら改めて強制的に読ませるだろ?」

 

「……よく分かったよ、次からはアンタと違う班に──」

 

してもらう、と言いかけた真面目そうな男だったが、その言葉は爆発音とともに玄関をぶち破って入って来た一台の燃え盛る骸骨──ゴーストライダーの乗るヘルバイクによって遮られる。

 

「「なっ──」」

 

驚愕して動けない二人だったが、侵入してきたゴーストライダーはヘルバイクから降りて軽く周囲を見渡してから数m先にいる二人へと視線を向けた。

 

「どうした?見ているだけか?」

 

「っ!?行くぞ、グリスの弔い合戦だ!変身!」

 

『complete』

 

「チッ、こちらロビー、ヤツが来た!!──変身っ!」

 

『花道・オンステージ!ジンバーレモン!』

 

ゴーストライダーの挑発に軽薄そうな男一瞬で仮面ライダーカイザに変身してソードモードのカイザブレイガンを取り出すと、本部に報告を入れた真面目そうな男も後に続いて仮面ライダー鎧武、ジンバーレモンアームズに変身する。

 

「うおおっ!」

 

右手で順手に持ったカイザブレイガンを両手で握り直したカイザは飛び出した勢いのまま、微動だにしていないゴーストライダーの左肩から右脇腹にかけて袈裟懸けに切り下ろす──筈だったが、その光刃は無造作に挙げられたゴーストライダーの左手で軽く握り止められていた。

 

「遅いな」

 

「何っ!?」

 

「下がれっ!」

 

『burstmode』

 

驚愕するカイザだったが、ゴーストライダーの視線が背後から放たれた鎧武の射撃に向いた瞬間にガンモードにして光刃を消すとそのままバックステップしてゴーストライダーから距離を取って鎧武と並び立った。

 

「先走るな!」

 

「悪い、少し熱くなった」

 

「……奴は強い、冷静に行かないと俺たちもやられるぞ」

 

「ああ、分かってる……まずは距離を取って時間を稼ぐ!」

 

「了解だ!」

 

作戦会議を終えた二人は左右に分かれて走り出すと鎧武は手元のソニックアローで、カイザはカイザブレイガンとブラスターモードのカイザフォンでそれぞれ射撃を始めてゴーストライダーの足止めにかかる。対するゴーストライダーは大したダメージは無いようだったが、攻撃によって動きを制限されつつあるようだった。

 

「よしっ、これなら何とか……」

 

「なるほど、自分の実力は弁えているようだが──」

 

「なっ──」

 

策が成功しそうなことに一瞬、安堵するカイザだったが、ゴーストライダーがおもむろに左腕を横薙ぎに振るった瞬間に衝撃を感じて困惑する。そして、混乱から立ち直れないまま、鎧武とともに壁に叩きつけられた。

 

「──戦力差は理解できていなかったようだな」

 

「「ぐあああっ!」」

 

ゴーストライダーが伸ばしたチェーンによってまとめて壁に叩きつけられた二人はそのままチェーンを伝わったヘルファイアによってまとめて燃やされて魂ごと焼き尽くされるのだった。

 

「(まずは二つ──だが、直ぐに次が来るぞ)」

 

(ああ、そのためにわざわざ目立つ方法で来た、そうで無くては困る……流石に建物ごと燃やすのは骨が折れるからな)

 

「(然り。だが、その必要は無さそうだ)」

 

「居たぞ!ゴーストライダーだ!!──うげぇ!!」

 

悠然と歩くゴーストライダーを見つけた仮面ライダーブレイドが頭を叩きつぶされる断末魔の叫びをきっかけに階段やエレベーターだけでなく、吹き抜けを降りたのか中庭からも多種多様な転生者たちが現れてゴーストライダーの周囲を取り囲んで行く。

 

「三つ、いや──」

 

「この野郎っ!よくも仲間を──ごふっ!?」

 

ゴーストライダーの背後から怒声とともに飛びかかって来た死覇装(しはくしょう)を身に纏った青年は始解状態の斬月を大上段に振りかぶってそのまま袈裟懸けに切り下ろそうとするが、振り向きざまに半身になって回避したゴーストライダーはそのままカウンター気味に放たれた業炎を纏った右拳が青年の腹に突き刺さる。燃えながら吹き飛ばされた青年は壁に叩きつけられてそのまま燃え尽きていった。

 

「──これで四つだ」

 

「クソッ、また一人やられたぞ!」

 

「一斉にかかるぞ!」

 

『exceed charge』

 

『ROCKET-DRILL-LIMIT BREAK』

 

『スキャニングチャージ!』

 

『マキシマムドライブ!』

 

『ライジングインパクト!』

 

ファイズの合図をきっかけにライダーたちは一斉にキックを放つ。一つ一つが必殺の威力を持つ攻撃であり、微動だにせずその全てが直撃したゴーストライダーは爆発四散する──はずであった。

 

「有象無象が勝てると思ったか?」

 

「そんな!?」

 

「バカな!?」

 

彼らの驚愕ももっともである。あれだけの攻撃を受けたはずのゴーストライダーがその場から一歩も動かずに無傷で受け止めていたからであった。

 

「今、地獄を味合わせてやる」

 

「「「「「うわああっ!!」」」」」

 

驚愕から立ち直れていないライダーたちに対して無慈悲に言い放ったゴーストライダーの足元から地獄の釜の蓋が開いたように業炎が吹き上がる。熱気とともに立ち上った火柱に包まれたライダーたちが離れた転生者たちの視界から一瞬見えなくなるが、火柱がおさまった後にはゴーストライダーが悠然と立つのみで、ライダーたちは灰すら残さず焼失していた。

 

「ライダーが一瞬で燃え尽きただと……!?」

 

「さぁ、次はどいつだ?」

 

「「っ!?」」

 

ゆっくりと視線をめぐらすゴーストライダーの姿に威圧されたのか蛇に睨まれた蛙のように動けなくなる転生者たち。既に勝負は決したように見えたその時、一騎のスマホが振動したことを感じたゴーストライダーの動きが一瞬止まった。

 

「……ぬ?」

 

「!?今だ!一時撤退するぞ!!」

 

ゴーストライダーの注意が逸れた一瞬を見逃さなかったスパイダーマンがウェブを放って足止めを行うと、それに合わせて転生者たちは蜘蛛の子を散らしたように逃げて行った。

 

「逃がすか……!」

 

「(待て、一騎……如何やら斗真から着信のようだ)」

 

(斗真からだと?……チッ、仕方がない)

 

逃げ出した転生者たちを追いかけようとするゴーストライダーだったが、斗真からの着信を無視する訳にも行かないため、周囲に危険がないことを確認しつつ、変身を解いてスマホを取り出した。

 

「……おい、何の用だ?」

 

『篝斗真は預かった、返してほしければメールの場所まで来い』

 

「お前は何者だ?……チッ、切れたか」

 

スマホから聞こえたボイスチェンジャー越しの声と突如切れた通話に眉をひそめた一騎だったが、直後に届いたメールに添付されたロープで巻かれて転がされている斗真の写真と埠頭の倉庫までの地図を見て内心で頭を抱えた。

 

(……結局、こうなったか)

 

「(そのようだ。して、一騎、如何するつもりだ?)」

 

(不本意だが、行くしかないだろう……まったく、儘ならんな)

 

転生者が逃げ、斗真が捕まった現状に辟易する一騎だったが、大きくため息を吐いて気持ちを切り替えると後始末をつけるためにバイクに乗って埠頭の倉庫へと向かうのであった。

 


 

 

夜の帳が下りた埠頭の倉庫街を走る一台のバイクがその中の一つ、灯りの漏れる倉庫の前で停車した。その倉庫はメールに添付された地図に書かれた場所であり、バイクを降りた一騎は周囲を見渡すが周囲に人影は無く、目に見える範囲では罠の類も無いようであった。

 

(……さて、鬼が出るか蛇が出るか)

 

「(何れにせよ衝突は避けられぬであろう。気を引き締めろ、一騎)」

 

(ああ、分かっている……中に入るぞ)

 

改めて気合を入れ直した一騎が鍵のかかっていなかったドアから倉庫内に入るとシャッターの前に転がされたロープで巻かれた斗真の姿が目に入った。

 

「(随分と簡単に見つかるものだな)」

 

(一応、罠を警戒するぞ……おそらく、無用だろうがな)

 

「(其れは如何言う事だ?)」

 

すぐにわかる、と内心で答えた一騎は警戒しつつ斗真に近づくが、何事もなく斗真の下へとたどり着くと周囲に意識を向けながら状況を確認すると、斗真の体には特に異常はないものの、意識を失っているようだった。

 

「(ふむ……如何やら怪我は無いようだ)」

 

(だろうな──それより、黒幕のお出ましのようだ)

 

「よく来たな外狩一騎、いや、ゴーストライダーよ!」

 

気配を察知した一騎が声の方に視線を向けると、倉庫内中央のコンテナの後ろから金の鎧を着た青年とオーマジオウが姿を現した。

 

「なるほど。お前たち、いや、オーマジオウ(お前)がこの世界の核か」

 

「ほう、よく分かったな?流石はゴーストライダー、と言った所か」

 

「それだけ分かれば十分だ。人質を使わないならさっさと終わらせるぞ」

 

ゴーストライダーに変身した一騎は並び立つ青年とオーマジオウに相対するが、オーマジオウは肩を竦めるだけで、青年もニヤニヤと笑みを浮かべているだけだった。

 

「せっかちな奴だな……まあいい、俺の名前は常磐総司(ときわそうじ)ゴーストライダー(お前)を倒す者だ」

 

「俺は関崎尊(かんざきたける)、同じく、貴様を倒す者だ」

 

「そのセリフは聞き飽きた。俺を倒すつもりなら行動で示してみろ」

 

一歩前に出たオーマジオウ──常磐総司に続いて金の鎧の青年──関崎尊もわざわざ自己紹介とともに宣言をするが、そんな二人の行動を意に介さずゴーストライダーは冷たく言い放った。

 

「ハッ、良いだろう!そんなに死にたければ望み通り殺してやる!」

 

「まったく、熱くなりやすい奴め──もっとも、俺も同じだがな!」

 

あっさりと挑発に乗ったオーマジオウはさらに一歩を踏み出し、尊も右手を虚空に伸ばすと黄金の波紋を立たせて円柱状の刀身の突撃槍のような剣──乖離剣・エアを取り出す。

 

「出し惜しみはしないか……ならば、こちらも──っ!?」

 

「(何だと!?)」

 

初手から全力で来る転生者たちを前に相対するゴーストライダーはチェーンを叩きつけて機先を制そうとするが、その動きは背後から伸びて来た──倒れていたはずの斗真が変身したゴーストライダーのチェーンによって防がれていた。さらに、尊が放った天の鎖によって、動きの鈍っていたゴーストライダーは完全に動けなくなっていた。

 

「おっと、危ない危ない。ついでにこいつも喰らってもらおう」

 

「(ぬぅ、此れは天の鎖か……!?)」

 

「悪いけど、アンタにはここで死んでもらう……ま、戦えないのは不本意だけどな」

 

「なるほど。やはり初めから転生者(そちら)側だったか」

 

「ハッ、所詮は負け犬の遠吠えだ!──さあ、これで終わりだ!」

 

『終焉の刻!』

 

ゴーストライダーの言葉を一蹴したオーマジオウがベルトのスイッチを入れてエネルギーが高まっていくと、尊も天の鎖を維持したままエアに魔力を集中させていく。そして、二つの力が臨界に高まり、ついにその時が来た。

 

「ゴーストライダーよ、滅びの時だ!」

 

『逢魔時王必殺撃!』

 

「ぐ、うう……」

 

まず、放たれたのはオーマジオウの必殺技。跳躍したオーマジオウがゴーストライダーの周囲に展開されたジオウの文字のエネルギーを右足に集約させて放つ必殺のキック──逢魔時王必殺撃。その威力は凄まじく、余波だけで倉庫のシャッターが吹き飛ばされ、ゴーストライダーの足元の地面が抉れるほどであった。

 

「受けよ!『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』!」

 

「ぬ、がああっ!!」

 

続けざまに放たれた乖離剣・エアの最大出力はあらゆる「死の国」の原典である生命の記憶の原初の光景を再現したものであり、特典としてギルガメッシュの力を持つ尊の切り札であった。地面を抉りながら切り上げられた文字通り世界を切り裂くその一撃はオーマジオウを裂けるようにゴーストライダーに直撃し、爆音と閃光が倉庫を包み込む。そして、全てがおさまるとゴーストライダー、外狩一騎の姿はそこにはなく、倉庫の屋根が吹き飛ばされて壁の一部が残されているのみであった。

 

「フン、他愛のない。チリ一つ残さず消え去ったか」

 

「ああ、どうやらウワサほどでもなかったようだな──おい、いつまで倒れてるつもりだ?」

 

「だったらもうちょい待ってくれよ!こっちは逃げるのに必死だったんだからな?!」

 

「ハッ、次はもう少し位置取りを考えておくんだな……ま、もうそんな相手もいないだろうがな。ハッハッハッ」

 

爆発の跡の前に並び立つオーマジオウと尊は余波で飛ばされた斗真に対して冷たく言い放つが、強敵を倒した彼らの顔には余裕の笑みが浮かべられており、戦闘の終わった倉庫街にはオーマジオウの高笑いが響いているのであった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。