GHOSTRIDER:Dog Eat Dog   作:雁野 命

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Dog Eat Dog #12

ゴーストライダーとの戦いが終わった数時間後、日曜日の朝を迎えたマンションのリビングではつまらなさそうにライドウォッチを弄る総司と顔をしかめつつタブレットを操作する尊の前で不機嫌そうな表情で立つ斗真の姿があった。

 

「おい、報酬が貰えない、ってのはどう言う事だ?」

 

「……上位者からの指示だ。死亡した証拠を持って来い──だそうだ」

 

「ま、泣く子と上司には、ってことだ……面倒な事この上ないがな」

 

「正しくは、泣く子と地頭(じとう)、だ。それにこの場合は用法として正しくない」

 

「そうか?ま、細かいことは気にするな……で、何の話だったか?」

 

「……要するに、俺に死体を探して来い、って話だろ?つーか、それぐらいならその辺の連中にでもやらせとけばいいだろ?」

 

げんなりした様子で斗真に説明しつつ、どこかズレた会話をする二人だったが、対する斗真が当然の疑問を投げかけると尊の表情がさらに渋くなった。

 

「嘆かわしいが、報酬の支払いがなければほとんどの連中が動かん。それに、俺は街の管理と報酬の配分を考える仕事がある」

 

「それに、動き回って()に万が一があっても困る、ってことで足止めしかしてなかったお前にお鉢が回って来た、って訳だ」

 

ま、多少は働いてもらわんとな、と意地の悪そうな笑みを浮かべながらの総司の言葉に斗真は大きくため息を吐く。

 

「……わかったよ、んで、具体的にはどうすりゃいいんだ?」

 

「外狩一騎の死体、またはその一部を探せ。おそらく、倉庫街近くの海中か流されて海岸にでも打ち上げられているだろう」

 

斗真の方も見ずに指示を出した尊に対して、りょーかい、と適当に返事をした斗真はさっさと外へ出ると抜けるような青さの空を見上げて小さくため息を吐いた。

 

「ったく、もっと強い奴と戦える楽しい仕事は無いもんかねぇ……」

 

物騒な願いを一人ごちる斗真は協力してくれそうな何人かの転生者に連絡を入れると、億劫(おっくう)そうにしながら捜索へと向かうのであった。

 


 

(……ここは、どこだ?)

 

目が覚めた一騎は最初に覚えたのは違和感であった。倉庫街で吹き飛ばされて海中に落ちたはずの一騎がまず目にしたのは木目のある天井であり、次いで背中に感じる感触からベッドに寝かされていることに気づき、最後に外から差し込む光で今が昼を少し過ぎた辺りだと予想したところで傍らに浮かぶゴーストの姿が目に入った。

 

「(目覚めたか、一騎)」

 

(ああ、なんとかな……それより、これはどう言う事だ?)

 

「(其れは──)」

 

「──あっ!目が覚めたんですね?よかった……」

 

周囲を見渡した一騎は生活感を感じないことから、そこを来客用として使われているアパートの一室か何かだと当たりを付ける。すぐ脇にボロボロのワイシャツが丁寧に畳まれていることや怪我をしていた体が手当てをされていることを含めて内心でゴーストに問いかけるが、その前に開けられた部屋の扉から入って来た三つ編みをしたピンク色の髪の少女──(たまき)いろはは一騎の様子を見て安堵している様だった。

 

「……ええっと、あなたは一体?それに、ここはどこなんですか?」

 

「えっと、まず、私は環いろはと言います。それで、ここは私が下宿しているみかづき荘と言う所です」

 

「そうですか……僕は──」

 

「ゴーストライダーの外狩一騎さん、ですよね?そちらのゴーストさんとやちよさんたちからお話は聞いてます」

 

「……そうか。それで、どこまで知っている?」

 

最初は警戒を解くために穏やかな仮面で接するつもりの一騎であったが、いろはの言葉に一度ゴーストの方を見てから、内心で困惑しつつも狩人としての鋭い視線をいろはへと向ける。

 

「その、あなたがこの世界に来た理由と来てからの行動については知っています」

 

「なるほど。つまり、あの視線や地図はお前たちの仕業、と言う事か」

 

「はい……それで、倒れていたあなたを()()()()()が見つけてくれてほむらちゃんがここまで連れてきたんです」

 

「そうか、助かった。礼を言う──が、それより今、芳乃、と言ったな?お前たちは魔法少女だけではないのか?」

 

礼を言って起き上がろうとした一騎だったが、少なくともみかづき荘にまつわる人間の中では聞きなれない名前に問いを投げかけるといろはは一度、不思議そうにしたあと得心が行ったのか小さくほほ笑んだ。

 

「はい、芳乃ちゃんは346プロに所属するアイドルで他にも色々な所に味方がいるんです」

 

「(環いろは、先ずは他の者に報告すると良い。可能であれば一騎の食事も頼む)」

 

「はい!それじゃ、外狩さんが起きたことを皆さんに伝えてきますね」

 

あと、外狩さんの食事の用意もしておきます、といろはがゴーストに促されて部屋を出て行くと、一騎は小さくため息を吐いて頭を抱えた。

 

「(一騎、後は本人たちから聞くと良い)」

 

(……わかった。しかし、今回は斗真(アレ)の裏切り以外は予想外が多すぎるな)

 

「(成程、奴を遠ざけていた理由は其処か。だが、此度の()()()ならば問題はあるまい)」

 

(まずは事情を聞く。どうするかはそれからだ……それにしても、お前が共闘を良しとするとはな)

 

「(此度の件は其れだけの大事、と言う事だ)」

 

(守るべき者に頼らねばならんとは……まったく、儘ならんな)

 

ゴーストと相談を終えた一騎は状況に辟易しつつも怪我を感じさせない動きでベッドから起き上がると、ゲートから取り出した替えのシャツに着替えてから話を聞くために部屋を出るのであった。

 


 

 

(……マジかよ?)

 

昼下がりの気怠さを感じつつ、そろそろ昼飯かなー、などと海岸近くのコンビニの前で呑気に座っていた斗真は手元にあるタブレットを見て愕然としていた。それもそのはずである。タブレットの画面には今いるコンビニの数時間前の監視カメラの映像が流れており、その映像には死んだはずの一騎が少女に背負われて運ばれている姿が映りこんでいたからであった。

 

(あの攻撃で生きてるなんて、一体どんな手品を使った?──いや、それより今は手がかりを見つけないと)

 

一騎が生きていた衝撃で困惑する斗真だったが、役目を思い出して瞬時に頭を切り替えると痕跡を見つけるために映像を見る。だが、その映像から読み取れたのは一騎が生きていることと、運んでいるのが黒い長髪の少女であることだけであった。

 

(流石に、コレを報告して、はい終わり、って訳にはいかないよなぁ……しゃーない、少し癪だが、尊に頼むか)

 

『……何だ?俺は忙しいと言ったはずだが?』

 

成果の無さに落胆する斗真だが、一度、大きなため息を吐くと街の管理を引き受けている尊のスマホに連絡を入れると、数度のコール音の後に不承不承と言った様子で尊が応答した。

 

「……報告、いや、要請だよ」

 

『要請?おい、まさか──』

 

「ああ、お前の予想通り、一騎(ヤツ)は生きてる──それも仲間がいるみたいだ」

 

『仲間?以前の報告には協力者の話は無かったはずだが?』

 

斗真の報告に対してスマホ越しにも呆れ果てたような表情が目に浮かぶような尊の非難の声に、ただでさえ不機嫌だった斗真の表情が更に渋くなっていた。

 

「俺が知るかよ……ともかく、探すにももう少し情報が欲しい。映像の解析を頼めるか?」

 

『……いいだろう。ついでに監視システムで外狩一騎を探しておく。お前はそのまま痕跡を辿れ。おそらく、奴らのアジトに行ったはずだ』

 

「了か──あの野郎、切りやがった……ま、いいや。とにかく一度、集合をかけるか」

 

一方的に指示を出して通話を切った尊に対して不満を抱く斗真だったが、一度、深呼吸をして頭を切り替えると捜索を協力している転生者たちへと連絡を入れる。

 

(だが、これであのゴーストライダーと戦えるんだ──まったく、楽しみで仕方がないな!)

 

タブレットをバッグにしまった斗真は獰猛な笑みを浮かべると停めてあったバイクに乗って集合場所へと向かうのであった。

 


 

「あら、もう動けるのね」

 

部屋を出た一騎が気配の多い、居間として使われている一室を見つけてドアを開けると近くのソファーに座って本を読んでいた黒髪の少女──暁美(あけみ)ほむらが声をかけて来た。

 

「何とかな。それより、世話をかけた」

 

「別に構わないわ……知ってるかもしれないけど、暁美ほむらよ」

 

簡潔にあいさつを済ませたほむらに対して、知ってるだろうが、外狩一騎だ、と同じく簡潔に返した一騎は軽く周囲を見渡す。部屋の中にはお茶を飲んでくつろぐ少女──依田芳乃(よりたよしの)の姿があり、少し離れたキッチンには調理中の青いロングヘアーの少女──七海(ななみ)やちよと会話している黒髪でツインテールの少女──遠坂凛(とおさかりん)といろはの姿があった。そして、視線を戻した一騎の前にはいつの間にか手元の本に視線を戻しているほむらと近くに来ていた芳乃の姿があった。

 

「わたくし依田は芳乃でしてー。失せ物探しモノならお任せをー」

 

「ああ、外狩一騎だ。お前にも世話になった……それより何故俺を助けた?」

 

独特の口調で話す芳乃を気にする様子もなくあいさつを済ませた一騎は特異な才能を持つとは言え、ただのアイドルが危険な戦いに首を突っ込んでいることに疑問を感じて問いかけた。

 

「困っている人には力を貸しなさい……ばばさまのお言葉でしてー。ゆえにー、わたくしはーあの方と皆さまの幸せのため動いたまでのことー」

 

「……そうか、その戦いは俺が引き継ごう」

 

「ありがたきことでしてー。しかしー、()()になせることは限られるゆえー……外狩さんにはわたくしたちを導いて頂きたいのですー」

 

「む?それは──」

 

「それは私から説明します」

 

芳乃の返答に対して、どう言う意味だ、と問いかけようとした一騎の言葉は先程までいろはと話していた凛の言葉で遮られた。

 

「初めまして、外狩さん。私は遠坂凛です」

 

「外狩一騎だ。今回は世話になった、礼を言う」

 

「いいえ、私たちだけでは倒せない転生者を何人も倒して頂いてこちらこそありがとうございます」

 

「それは俺の使命だ、気にするな……それより、敬語は不要だ」

 

「そう?──それじゃ、まずはこれを見て」

 

頭を下げた一騎に対して優雅な動きで丁寧に礼を返す凛だったが、一騎の言葉を受けて砕けた口調になった凛は眼鏡をかけつつ一枚のメモを手渡す。そのメモには「SAO、バンドリ、ラブライブ、デレマス、プリヤ、まどマギ、マギレコ」と書かれていた。

 

「これは……この世界を構成する<原典>か」

 

「ええ、この世界はオーマジオウの特典を持つ常磐総司を核として、戦闘力を奪った原典で構成された世界よ……まあ、転生者たちの会話から得た情報だから、私たちにはどれがどの世界かは分からないけど」

 

「なるほど。それで、どうやって転生者の存在に気付いた?」

 

「最初は芳乃が同じ事務所のマキノの情報を擦り合わせた結果、複数の世界が混ざっていることに気づいたのが始まりだったわ」

 

「(ふむ、無理矢理組み込まれた故の世界の齟齬(そご)を只の人間が暴くとは……やはり、人の力は底が知れぬな)」

 

凛の言葉に感心するゴーストの言葉に、むふー、と得意げな表情をする芳乃の姿を横目に、続けてくれ、と一騎が先を促す。

 

「それで、細かい所を省くけど、芳乃たちが違和感に気づいたことで原典の封印に綻びが生まれた──そこから起動したルビーとサファイアを手にしたイリヤと美遊(みゆ)に巻き込まれる形で私とルヴィアが気付いた、ってこと」

 

「……なるほど。平行世界に干渉可能なカレイドステッキであれば綻びからこの世界の自身を起動させる程度は造作もない、と言う事か」

 

「あら、詳しいのね。ともかく、私たちの影響でこの世界にも魔力が存在するようになってまどかとμ's(ミューズ)の希が気付いたわ」

 

鹿目(かなめ)まどかは分かるが、もう一人が東條希(とうじょうのぞみ)だと?──いや、魔力の存在が強い世界なら儀式さえ正しければあり得ない事ではないのか……?」

 

「私の知る限りでは、魔術回路も持たない人間が魔術を使うのは不可能よ──ただ、この世界の転生者たちが深層心理で、希なら出来る、と思っているなら可能かもしれないわね」

 

少し考え込みそうになる一騎であったが、凛の考察を受けてひとまず納得すると視線で先を促した。

 

「それじゃ、続けるわね……それで、まどかと言う大きな因果をきっかけにほむらといろは、やちよさんが本来の自分を取り戻し始めたの──もっとも、その時にソウルジェムがあったのはいろはとやちよさんだけだったけど」

 

「待て、暁美ほむらは魔法を使っていたはずだが……?」

 

「(恐らく、我等の影響だ。短期間に転生者が減り、世界の修正力に刻印(リソース)を持って行かれた事で封印が緩んだのであろう)」

 

「なるほど。……しかし、これだけ揃えば転生者には気付けるだろうが、これまでよく見つからなかったな?」

 

「ええ、実は転生者たちの動きを予期して芳乃たちが同じ事務所のアイドルの力を借りて密かに私たちを集めていたの。そして、秘密裏にこの世界の謎を解いて転生者に対抗するためにこの<お茶会>と言うグループを結成した、と言う訳」

 

「……そうか。それで、転生者との戦いを俺たちに任せたい、と言う事か?」

 

「そうね──半分は当たり」

 

「半分、だと?」

 

説明を受けた一騎は彼女たちの目的を推察するが、凛はその答えに薄く笑って首を横に振ると、眼鏡を外して真っ直ぐに一騎に視線を向けた。

 

「外狩さん、転生者を倒すために、私たちと共闘しない?」

 

「……なるほど。さっきの言葉はそう言う意味か──ゴースト、知っていたな?」

 

「(然り。恐らく、我の予想が正しければ此度の世界、我等のみでは全ては救えぬ──ならば、我は共闘すべきだと考えたまでの事)」

 

「そうか……だが……」

 

凛とゴーストの言葉を受けた一騎が他の策を考え込むが、周囲の他の<お茶会>のメンバーから注がれる視線に一度、大きくため息を吐いた。

 

「……わかった。その申し出を受けよう──ただし、可能な限り転生者との戦いは避けろ。それは俺たちの仕事だ」

 

「オーケイ、契約成立ね。それじゃ、外狩さん、これからよろしく」

 

一騎の返事に対して満足そうな笑みを浮かべた凛が右手を差し出すと一騎は諦めたようにその手を握り返した。

 

「さて、契約も済んだことだし、少し遅いけどお昼にしましょうか」

 

「ああ……ところで、遠坂凛。契約、と言ったが、魔術は使っていないだろうな?」

 

「まさか?貴方相手に試す程バカじゃないわ」

 

「……そうか。いや、俺たちにはその手の魔術は効かん。下手に使っていれば事だったが、使っていないのならば問題は無い」

 

「え、ええ。気を付けるわ……芳乃と希(あの二人)、実は未来視でも持ってるのかしら……」

 

何気なく告げられた一騎の言葉に思うことがあったのか何事かを呟きつつ動揺している様子の凛だったが、一騎はその呟きを気にせずに昼食を摂るのであった。

 


 

「──あとの礼装や晶葉(あきは)たちのど、ドローン?とかの道具類はルヴィアの屋敷に置いてあるわ……これで全部だけど、他に聞きたいことは?」

 

遅めの昼食を終えて夕方まで情報を擦り合わせていた一騎と凛だったが、<お茶会>の戦力を聞いた一騎は眉をひそめていた。周囲にいたメンバーはそれぞれの方法で時間を潰しており、その中には偵察から戻っていた銀髪と赤い目の少女──イリヤスフィール・フォン・アインツベルンとその傍に浮かぶカレイドルビーの姿もあった。

 

「……一応、確認するが、すぐに戦力が増える可能性はあるか?」

 

「時間があれば宝石のストックを増やせるけど、そのぐらいかしら?あとは、貴方の影響でソウルジェムを持つ魔法少女が増えている可能性はあるけど、当てには出来ないわね……いっそ、英霊召喚でも出来れば別なんでしょうけど」

 

「そこまでする必要は無い……いや、今は時間が無い、と言った方が正確かも知れんがな」

 

「まあ、その辺は流石に相手も無能じゃない、ってことね……それで、猶予はどれぐらいかしら?」

 

「おそらく──既に時間切れだ」

 

『あー、聞こえるか外狩一騎!その建物は完全に包囲されている!大人しく出て来い!』

 

一騎の言葉が終わるかどうかと言うタイミングでみかづき荘の外から響く拡声器の声に一騎以外のメンバーが一斉に反応する。そして、この状況を予期していた一騎だけが声の主が斗真であることに気づいていた。

 

『三分だけ待つ!大人しく投降するならそこのイレギュラーは見逃してやる!いいな、三分だぞ!』

 

「っ!?まさか、こんなに早いなんて……!?」

 

「ここは奴らの作った街だ。監視網ぐらいはあるだろう……それに、俺たちは目立つからな。僅かでも痕跡があれば、見つけ出すのは造作もあるまい」

 

「それもそうね……それじゃ、私とイリヤで外狩さんをサポートしつつ陽動をかけるから、ほむらは芳乃をお願い。やちよさんといろははかく乱を──」

 

「その作戦は無しだ──可能な限り転生者との戦いは避けろ、と言ったはずだぞ?」

 

一方的な通告を受けて動揺するメンバーだったが、冷静に状況を分析する一騎の言葉で落ち着きを取り戻すと、外を覗き見た凛が指示を出し始める。だが、その言葉は突如かけられた一騎の一言で遮られ、メンバーの視線が一騎に注がれる。

 

「……アンタねぇ!こんな状況でどうやって戦闘を避けろ、って言うのよ!?」

 

「俺に策がある。少し暁美ほむらを借りるぞ」

 

「私?……私は構わないけど、今の私に止められる時間は十秒程度よ?」

 

「いや、それだけあれば十分だ」

 

怒りの籠もった抗議をする凛だったが、頭に巻かれた包帯を取りながら告げられた一騎の言葉に視線をほむらに向けると当の本人も困惑しているようだった。

 

「……本当に何とかなるんでしょうね?」

 

「ああ、もちろんだ──では、手短に説明するぞ」

 

訝し気な視線を向ける凛に対して端的に答えた一騎はゲートから取り出した所々が破れたいつものライダースジャケットを羽織りつつ作戦を説明するのだった。

 


 

裏手側を中心にみかづき荘を取り囲む十人近い転生者たちはそれぞれに緊張した面持ちをしているが、二人の供を連れて正面玄関から数m程離れた所に立ち獰猛な笑みを浮かべる斗真はその中でも際立って異彩を放っていた。

 

「な、なあ、ホントに俺たちだけで勝てるのかよ……?」

 

「おいおい、こっちは十二人の腕利きの転生者、対して向こうは手負いのゴーストライダーと数人の魔法少女──どうしたって負けはねぇだろ?なあ、斗真?」

 

「ま、雄也(ゆうや)の言う通りだ。それに、時間的に向こうは変身できないんだ、もう少し気楽に行こうぜ?」

 

「そ、それもそうだよな!悪い二人とも手間かけさせたな」

 

「ったく、雅樹(まさき)は少しビビりすぎだっての──ところで、あとどのくらいだ?」

 

張り詰めた空気に耐え切れなくなったのか、斗真の後ろにいたゲーマドライバーを腰に巻いた少年──雅樹が不安そうな声を上げるが、トライチェイサーに跨る少年──雄也の分析と斗真の言葉に安堵のため息を吐いた。そんな雅樹の姿に呆れた様子の雄也だったが、ふと気になって残り時間を尋ねると即座に雅樹が手元のスマホを確認する。

 

「えーっと、あと一分だな──って、あれ?玄関って開いてたか?」

 

「は?お前何言って──」

 

「ッ!?しまった!?」

 

「ぐえっ!?」

 

誰も気付かない間に開いていた玄関に気付いた三人は違和感を覚える。その中で斗真だけはある可能性に気付いたが、既に時は遅かった。次の瞬間、玄関から先程までいなかったはずの一台のバイクがフルスロットルで飛び出すと、三人の脇をすり抜けるタイミングで一瞬アクセルを緩めた一騎はチェーンを放り投げて直撃した雅樹を昏倒させ、そのまま走り抜けた。

 

「な──」

 

「クソッ、ゴーストライダーだ!全員、追いかけるぞ!!」

 

「おい、イレギュラーはどうすんだよ!?」

 

「んなもんほっとけ!ヤツが最優先だ!」

 

一瞬の交錯だったが、一騎の姿を確認した斗真は他の仲間に声をかけると倒れたままの雅樹を放置して追跡を開始した。

 

「(停止した時間で加速して玄関から出る──如何なるかと思ったが、第一段階は成功だな)」

 

(ああ……しかし、やっておいて何だが、ここまで乗ってくるとはな)

 

遅れて付いてくる十一人の転生者を尻目に嘆息する一騎。それもそのはずである、<お茶会>のメンバーを守るために一騎が使ったのは作戦とも呼べない稚拙なトリックで囮となる事であり、まさか全員が追跡に来るとは思っていなかったからである。

 

「(然り。だが、未だ太陽は昇っている、油断はするな)」

 

(分かっている──いつも通り使命を果たす、それだけだ)

 

「(む、仕掛けてくるようだぞ?)」

 

「喰らえ!──って、うおおっ!?」

 

ゴーストと会話をしつつ広い大通りを走っていた一騎に対して背後から仮面ライダーウィザード、フレイムスタイルのウィザーソードガンによる銃撃が飛んでくる──が、チェーンを落としつつ車体を倒した一騎が真横にある脇道に入ったことであっさりと回避すると、続いて曲がろうとしてチェーンに引っかかったウィザードはクラッシュしてしまいそのまま近くの電信柱へと激突した。

 

「(先ずは一つ、否、先程の奴を含めて二つか)」

 

(順調、と言うべきか……まあいい、このまま行くぞ)

 

「チッ、生身だからって油断するな!」

 

「おう!射撃がダメなら接近戦よ!おりゃ!──って、あれ?」

 

住宅街を抜けつつ斗真の声に答えた仮面ライダークローズは一騎の左に並ぶと右手に構えた専用の剣──ビートクローザーを横薙ぎに振るうが、一騎が一瞬早くアクセルを緩めたことで刃の軌道から外れる。

 

「阿呆め」

 

「ぬおおっ!?」

 

「おい、ウソだろおおっ!?」

 

追撃を考えていなかったのか動きの止まったクローズに対して呆れたように吐き捨てた一騎はそのまま車体に蹴りを入れると、完全にバランスを崩したクローズがクラッシュし、後ろから一騎に追撃しようとしていたアマゾンアルファも巻き込まれて脱落していった。

 

「(四つ。ふむ、悪くないペースだ)」

 

(ああ……しかし、こいつ等、敵の呼吸を読む気はあるのか?)

 

「隙ありっ!──なんだとおおっ!?」

 

元の速度に加速した一騎がふと背後を見た瞬間に仮面ライダーゼロワン、ライジングホッパーが右からアタッシュカリバーを振り下ろすが、一騎がそのまま加速した事でその一撃は空を切り、追い抜きざまにハンドルの一部を溶かされた事で操作が出来なくなったゼロワンはそのまま横転した。

 

「(五つ──だが、気は抜くな。恐らく、此れは前座だ)」

 

(だろうな。こいつ等には殺意が足りん……それに、斗真(アレ)が消極的なのが気になる──っ!?)

 

倒した──と言っても一時的に脱落させただけの転生者たちを分析する一騎だったが、気配を感じて回避行動をとると先程までのルートだと直撃していたであろう複数のエネルギー弾が飛んできていた。

 

「お、よく避けたな?だが、空からなら反撃できないだろう!」

 

(ホークガトリングか……流石に本気を出してきたか)

 

「(然り。では、作戦を次の段階へ進めるぞ)」

 

チラリと後ろを見て空を飛ぶ仮面ライダービルド、ホークガトリングの姿を捉えた一騎は車体を倒しつつ減速してすぐ脇にあるアーケードへと侵入するのであった。

 


 

「はぁ?アーケードに入っただと?──チッ、いいからそのまま足止めしとけ!」

 

万が一に備えて変身せずに追跡部隊の後方で指揮に専念していた斗真だったが、無線から聞こえる部下たちの報告ともうすぐ沈む夕日を見つつ、自らの浅慮を呪っていた。

 

(そのまま殺すかいい感じに生け捕りにして状態を見極めてから戦うつもりだったが──クソッ、あの無能どもめ)

 

「だいぶ気が立ってんな、大丈夫かよ?」

 

「……ああ、ま、何とかな」

 

副官として隣を走る雄也の言葉に何とか表面上は落ち着きを取り戻したように見せる斗真は小さく深呼吸をする。

 

(ともかく、ゴーストライダーにならなくとも一騎は手強い──変身したらどれだけ強くなるか……)

 

「しかし、どうする?現行の戦力じゃ流石に厳しいぞ?」

 

「ハッ、冗談だろ?こっちだってゴーストライダーだ。それに、向こうは手負いでこっちは無傷、そう簡単には負けねーよ」

 

「……分かったよ。んじゃ、最後はリーダーに任せて、俺も削りに行ってくるわ」

 

ヘルメットの下で不敵に笑う雄也に対して、任せた、と斗真が力強く頷くと、バイクの上で構えた雄也が、変身、と叫び仮面ライダークウガ、アメイジングマイティに変身して数十m先に見える商店街の跡地へと飛び込んでいき姿が見えなくなる──そして、大きな爆発音が響いた。

 

「……やられたか。ま、アルティメットでも無けりゃそんなモンか」

 

ゆっくりと独り言を言いながら闇に包まれた跡地へ入った斗真は自らの予想の正しさを裏付けるような大量の焦げ跡と周囲に舞う灰を見てゴーストライダーの力を感じたが、そこには落胆も絶望もなくただ純粋な興奮だけが胸中に渦巻いていた。

 

(これでようやくゴーストライダーと──本当の強敵と戦える……!)

 

「仮にも仲間の死にそんな笑みを浮かべるとは──随分と業を重ねて来たようだな」

 

「っ!?」

 

突如、目の前の闇の中からかけられた声に目を向けるとそこには一騎の姿があった。よく見れば、ライダースジャケットの所々が破れていたが、おそらく、今の戦いで出来た傷は一つもないようであった。そして、一騎の指摘で顔を触った斗真は自分が獰猛な笑みを浮かべていることに初めて気づいた。

 

「なあ、一騎。今、俺は笑ってるのか?」

 

「ああ、まるで獣だな」

 

「ハッ、上等だ!俺もお前も所詮は猟犬──野良犬(お前)番犬()、どっちが上か証明してやらぁ!!」

 

「……そこまで堕ちていたか。ならば、俺たちが引導を渡してやる──来い、外道」

 

宣言と共に両者が炎に包まれると無傷のゴーストライダー──斗真が勢いよく飛び出してジャケットの所々が敗れたゴーストライダー──一騎に対して殴りかかる。

 

「おら、よっ!」

 

「ぬん!」

 

勢いよく振りぬかれる斗真の右の拳を左手でブロックした一騎はカウンター気味に右の拳でアッパーを放つ──だが、その拳は斗真が左足を引いて半身になったことで空を切る。

 

「ハッ、どうした?その程度か、よっ!」

 

「ぐっ……!?」

 

お返しとばかりに放たれた斗真の左のボディブローが一騎の腹部に決まり、呻き声を上げた一騎はたたらを踏んで数歩後ずさった。

 

「どうやら、昨日のダメージが残ってるみたいだな?──チェインブロウ!!」

 

「む、う……!?」

 

数歩分離れた一騎の首に伸ばしたチェーンを巻き付けた斗真はそのまま左手でチェーンを引っ張ると、引き寄せられた一騎の顔面に右ストレートが決まり、その勢いで頭を揺らされた一騎の顎が外れて完全に動きが止まった。

 

「コイツでトドメだ!──インフェルノストライク!!」

 

一連の攻撃で勝利を確信した斗真が全力を籠めて炎を集中させた右の拳が無防備な一騎の胴体に突き刺さり大爆発を起こす。瞬間的な威力だけなら尊の持つ乖離剣・エアにも匹敵する一撃、当たれば一騎であっても無傷では済まない──はずだった。

 

「もう終わりか?」

 

「──え?」

 

爆発の煙がおさまったあとには先ほどよりジャケットの破損が増えた以外は大きな違いの無い一騎の姿があった。理解が追い付かずに思考が停止する斗真を置いて一騎は悠然と外れたままの顎を元の位置に戻した。

 

「では、俺の番だ」

 

「は──あ?」

 

瞬間、無造作に振るわれた一騎の()()()が斗真の顔面に突き刺さる。その威力は棒立ちだった斗真が3mほど後ろに吹き飛ばされるほどであり、その衝撃に呆然とする斗真は何とか倒れずにいたが、顎が外れた事にも気付かないでいた。

 

「どうした?その程度か?」

 

「え?何でこんなに差──ぐおっ!?」

 

悠然と近づいた一騎の()()()()()()()()が目の前の現実を受け入れられないでいる斗真の()()に決まる。呻き声を上げた斗真は踏ん張ろうとするが、勢いが強くそのまま後ろに倒れそうになる。

 

「まだだ」

 

「うお──おぶっ!?」

 

倒れそうになる斗真の()に伸ばしたチェーンを巻き付けた一騎はそのまま左手でチェーンを引っ張ると、引き寄せられた斗真の()()()()()()()()が決まり、その勢いで頭を揺らされた斗真の動きが完全に止まった。

 

「さて、最後は──こうだったか?」

 

「いっ──ぐあああっ!?」

 

一騎が同じような動きで力を籠めて炎を集中させた()()()が無防備な斗真の胴体に突き刺さり大爆発を起こす。全力には見えない一撃だが、その威力は明らかに先程の斗真のインフェルノストライクを上回っており、爆炎がおさまった後には仰向けに倒れたまま動けない斗真の姿があった。

 

「ぐ……ううっ」

 

「ふむ、まだ息があるか」

 

「……どうやって、俺の一撃を、防いだ?」

 

「簡単だ。俺の方が強い、それだけの事だ」

 

「く、ははは……マジかよ?」

 

息も絶え絶えの斗真の質問に事も無げに答えた一騎はそのまま襟首をつかんで斗真を持ち上げる。その返答に圧倒的な力の差を感じた斗真は最早、笑うしかなかった。

 

「質問は終わりか?」

 

「そうだな……それじゃ、最後に、一つだけいいか?」

 

「何だ?」

 

「こいつを見ろ!──ペナンスステア!!」

 

「む──」

 

斗真の言葉を聞くために顔を近づけた一騎に対して斗真はペナンスステアを覗き込ませる──が、しかし。

 

「それで、何を見ればいい?」

 

「──え?」

 

斗真の困惑も無理はない。これまで数多くの罪を暴き悔い改めさせてきたペナンスステア、必殺とも呼べるその力が目の前にいる一騎には通用しなかったからである。

 

「……なるほど。やはり、()()の声も聞こえていない様だ──まったく、これでゴーストライダーを名乗るとはな」

 

「……アンタ、何言ってんだよ?!俺は、まだ──」

 

「黙れ外道。潔く、俺の眼を見ろ」

 

「ぐ──うあああっ!?」

 

一騎の贖罪の眼(ペナンスステア)を覗き込まされた斗真はこれまでに犯した罪と今の世界に与えた苦しみを与えられてその魂と肉体を焼き尽くされた。

 

(……っ!?そうか、外狩一騎は──ゴーストライダーは……)

 

そして、焼き尽くされる最後の瞬間に外狩一騎とゴーストライダーの全てを理解して篝斗真と言う存在は消滅するのであった。

 


 

「(ふむ……一騎の仲間になれるやも、と思ったが、些か早計だったか)」

 

(お前を認識できない時点であり得ないだろう……それに、転生者狩りの同類など居ない方がいい──それより、面白いことが分かったな)

 

ゴーストライダー同士の戦いを終えて変身を解いた一騎は妙な感想を抱くゴーストに対して白い目を向けつつ、斗真から読み取った情報を思い返していた。

 

「(然り。だが、其れよりも我は一騎の精神力に驚かされた──よもや人の身で贖罪の眼(ペナンスステア)に耐えようとは)」

 

(またそれか?所詮は偽物の力だ。この程度なら<お茶会(あいつら)>の中にも出来る奴はいるだろう)

 

子供の成長を喜ぶ親のような態度のゴーストに呆れた様子の一騎だったが、一度、深呼吸をしてから気持ちを切り替える。

 

(この話はこれで終わりだ──合流場所に急ぐぞ)

 

「(うむ。だが、我の予想通りであった故、先程の()()()が効くであろう)」

 

(そうだな──っと、忘れていた)

 

「(む?まだ何か在ったか?……それは──)」

 

「このジャケットは貰って行くぞ」

 

呼び出したバイクに跨ろうとした一騎はゴーストライダーに変身しつつ、灰の山から斗真のジャケットを拾い上げると、灰を払ってからジャケットを着替えた。

 

「(盗みか?罪人め)」

 

(違うな、これは慰謝料だ)

 

「(成程。ならば致し方あるまい)」

 

軽口を言い合うゴーストと一騎は変身したままバイクに乗るとそのまま合流地点へ向けて走り出す。そして、あとには灰の山と戦いの痕が残されており、ゴーストライダーの行く先を示す炎の轍が夜空へと続いていた。

 


 

「おい、尊!これはどう言う事だ?!」

 

ゴーストライダー同士の戦いが終わった少し後、転生者たちが拠点として使っていたマンションは騒然とした空気に包まれており、ロビーでは転生者たちの指揮を執る尊に対して詰め寄る総司の姿があった。

 

「俺の部下たちから、()に襲われている、と言う報告がひっきりなしに来ているぞ!」

 

「抑えられていた特典に対応する敵が溢れ出した──つまり、斗真(あのバカ)が勝手に突っ走ってやられた、と言う事だ」

 

「……なるほど。それで、どうするつもりだ?」

 

「既に対策は取った。今は敵に対応する転生者を充てて対処させている」

 

激昂した様子の総司だったが、尊の返答にひとまず気を落ち着かせると、次いで返された言葉を聞いて大きく一度頷いてから訝し気な視線を向けた。

 

「そうか──では、ここの連中は何をしている?」

 

「これも対策だ……ゴーストライダーに対しての、だがな」

 

「うん?それは、どう言う事だ?」

 

「奴は俺たちを狙ってここに来る。ゆえに、敵を持たない転生者を集めた、と言う訳だ」

 

「なるほど。だが、こいつらが何の役に立つ?」

 

「確かに、戦力としてはたかが知れているが、まぁ、盾代わりにはなるだろう」

 

「ふむ。まぁ、俺の活躍の邪魔だけはさせるなよ?ハッハッハッ──っ!?」

 

「っ!?」

 

尊の説明を受けて得心が行った総司は機嫌が良さそうに高笑いをするが、突如、中庭から聞こえた大きな着地音に遮られる。立ち込める砂煙は衝撃波でガラスの割れたロビーにまで広がっており、突然の事態に転生者たちの間には動揺が広がる。

 

「もう来たか──総員、戦闘態勢を取れ!!」

 

「チッ、俺より目立つ登場をするか外狩一騎……いや、ゴーストライダー!!」

 

混乱する転生者たちは尊と総司の言葉でそれぞれに戦闘準備を整える。そして、転生者たちが固唾を呑む中、砂煙が晴れると地面の抉れた中庭には転生者たちを睥睨しながら悠然と立つゴーストライダーの姿があった。

 

「随分と数を揃えたものだな──それほど俺が怖いか?」

 

「ハッ、それは(コイツ)が勝手にやったことだ──それより、貴様、ついに本性を見せたな?」

 

「……何の話だ」

 

「とぼけるなよ?この世界の仕組みについては知ってるだろう?」

 

「知っている。それがどうした?」

 

意地の悪い笑みを浮かべる総司の言葉に不快そうな空気を漂わせながら返答するゴーストライダーだったが、その様子を気にも留めずに総司は面白そうに笑みを深める。

 

「なら、復讐に駆られたお前は、敵に襲われるこの世界の住人(無辜の民)を見捨ててここに来た、ってことだろう?これが貴様の本性と言わずして何とする!」

 

「……」

 

「どうした?あまりの衝撃に言葉も出ないか?ハッハッハッ──」

 

「浅はかな考えに呆れ果てただけだ──その程度、俺が考えないとでも思ったか?」

 

「ハッハッハッ──は?」

 

精神的優位に立ったと感じて高笑いする総司だったが、心底呆れたような声のゴーストライダーの返答に動きが止まった。

 

「俺たちには協力者がいる……不本意だがな」

 


 

「クソッ、キリがねぇ!!」

 

ゴーストライダーがマンションに到着する少し前、突如、怪物の溢れた街はパニックに包まれていた。頼るべき警察は早々に壊滅し、尊の指示で戦う転生者たちも敵の数に圧倒されつつある正に阿鼻叫喚の地獄絵図と言うべき状況であったが、そんな中、運悪く激戦地に配置された転生者──仮面ライダーオーズは倒した敵には目もくれずに悪態を吐きながら敗走していた。

 

「つーか、他の連中はどうしたんだ?……まさか、やられたんじゃ──ぐああっ!?」

 

一瞬、気の緩んだオーズに対して物陰から放たれたイカのグロンギ──メ・ギイガ・ギの火炎弾が直撃し、既に限界だったオーズの変身が解除されてそのまま青年は地面に倒れこむ。

 

「しまっ──」

 

「伏せて!──弾けろっ!」

 

目の前に迫るギイガの姿に、終わった、と感じた青年だったが、直後に響く少女の声で目を伏せると、目の前には吹き飛ばされたギイガと青年を庇う凛の姿があった。

 

「遠坂、凛?」

 

「流石に、この程度じゃ倒れないか……ねえ、後ろの貴方、戦える?」

 

「え、っと、数秒あれば、何とか」

 

「それじゃあ──」

 

私が時間を稼ぐ、と言いかけた凛だったが、その言葉を言い終わる前に真上から素体ホラーが飛び降りてくる。

 

「あ──」

 

気配を感じて上を見るが時すでに遅く、既に避ける暇は無く、正面には火炎弾を放とうとするギイガの姿もあり、完全に()()と言える状態──のはずだった。

 

「『刺し穿つ(ゲイ)──」

 

「──今のは!?」

 

「──死棘の槍(ボルク)』!」

 

「あれは……!?」

 

まず、違和感を感じたのは凛。落ちてくるはずの素体ホラーが()()()に吹き飛ばされたと思えばその姿が掻き消えていた。ついで、正面を見ていた青年は赤い槍を持った青い装束の戦士──ランサー、クー・フーリンがギイガの心臓を刺し貫く後ろ姿を目撃していた。

 

「さて、二人とも怪我は──っ!?」

 

「うわっ!?──って、あれ?」

 

一先ずの危機を脱した凛と青年だったが、倒れる青年の背後──ちょうどランサーの死角になる影から素体ホラーが這い出て青年と凛を襲う──直前で遠方から飛来した光る矢に貫かれてその姿が霧散した。

 

「アーチャーか……まさか、またあの野郎と一緒とはな……ともかく、オレはサーヴァント、ランサーだ。二人とも怪我は無いな?」

 

「アーチャーにランサー……ってことは、外狩さんの言った通り、本当にはぐれサーヴァントが出てるのね」

 

「おっ?そこまで知ってるなら話は早い。嬢ちゃん、オレと契約する気はないか?」

 

「ええ、いいわよ──それじゃ、()()()()()()()()()

 

「は?おい、今なんか──」

 

自ら契約を願い出たランサーだったが、妙に即決してにこやかな表情の凛に違和感を覚えるが、時すでに遅く、よく見れば掲げている左手には令呪のような物が一画消費されているようだった。

 

「よし、これで契約成立!」

 

「ちょ、待て待て待て!何だその怪しげな令呪モドキは!」

 

「あ、()()?これはゴーストライダーの力を使って無理矢理サーヴァントを維持するって言う……まあ、呪いの一種ね」

 

「呪い!?いやまあ、確かに魔力は確保できてるけどよ……いきなり味方のサーヴァント呪うとか、とんでもねぇマスターだな」

 

本当に効くのねー、とどこか呑気に呟く凛に対して辟易しつつも周囲への警戒は怠っていないランサーだったが、そんな中で青年は戸惑うばかりであった。

 

「さて──それじゃ、まずはアーチャーを確保しましょうか」

 

「えぇー……マジか?」

 

「ええ、少なくともこちらには駒が足りない──あの制圧力、出来れば仲間にしておきたいの」

 

「ま、その点に関しては問題ないだろうよ──それより、坊主、お前はどうする?」

 

「俺は……」

 

即席のマスターである凛との相談を終えたランサーは戸惑うばかりだった青年の意思を尋ねるが、突然の事態に心を決めかねているのか、青年はどう返すべきか答えあぐねていた。

 

「行くわよ、ランサー!──それじゃ、貴方、命を粗末にしないようにね」

 

「あいよ!──じゃあな、坊主、せいぜい生き残れよ」

 

返答を待つ気が無かったのか号令を出した凛を抱えて飛び去るランサーの後ろ姿を眺めていた青年だったが、一度、大きく深呼吸すると、決意を秘めた目でどこかへと向かって行くのだった。

 


 

「なるほど。イレギュラーの力を借りたか──考えたものだ」

 

「チッ、味なマネを……!」

 

「この世界の事はこの世界の者に任せた、それだけの事だ。そして──」

 

部下からの連絡で状況を把握して感心する尊と目論見が外れて歯噛みする総司だったが、そんな二人に対して冷たく言い放ったゴーストライダーは一度、言葉を切ると強い意志を籠めた視線を向ける。

 

「──転生者(お前たち)を狩るのは俺の仕事だ」

 

「ハッ、どうやら一度、俺たちに負けたことを忘れたみたいだなぁ!」

 

「っ!?総司が変身する時間を稼げ!」

 

「「「「了解!」」」」

 

ゴーストライダーの宣言に激昂した総司が歩きながら考え無しにオーマジオウに変身しようとするが、その動きを察知した尊の指示で近くに居た転生者たちが動き出す。

 

「行くぞ!」

 

「おう!」

 

最初に動き出した干将と莫邪を握った青年と仮面ライダーマルスはタイミングを合わせてゴーストライダーの右側から武器を構えて飛びかかる。

 

「はああっ!」

 

「うおおっ!」

 

続いてその対応に動くであろうゴーストライダーの動きを見越した仮面ライダーエターナルと仮面ライダーダークキバが左側から攻撃を仕掛ける──はずだった。

 

「そんなっ!?」

 

「バカなっ!?」

 

「動きが単純だ──もっとも、速さを重視するなら仕方がないがな」

 

完璧なタイミングで動いたはずの四人だったが、その動きはゴーストライダーの両手から伸びたチェーンで絡め捕られたことで完全に封じられてしまっていた。

 

「このっ!」

 

「放せっ!」

 

「ああ、放してやろう──地獄へとな」

 

銘々に喚く転生者たちだったが、ゴーストライダーの宣言と共にチェーンを伝って流された業炎によって断末魔を上げる間も無く焼き尽くされる。

 

「呆気ない奴らだ」

 

「だが、仕事は果たしたぞ?──変身」

 

『最高!最善!最大!最強王!逢魔時王!』

 

「安心するのは早い」

 

「お前もなぁっ!」

 

転生者たちの稼いだ一瞬を使ってオーマジクウドライバーを装着した総司がオーマジオウへと変身しようとするが、倒した転生者たちに冷たく吐き捨てるゴーストライダーはその隙を逃さずにチェーンを伸ばそうとする。だが、その動きをいつの間にか黄金の鎧を装着していた尊が王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)からいくつかの宝具を射出して牽制する。

 

「……どうやら、お前もその力に引きずられているようだな」

 

「貴様、俺の財を──ぐおっ!?」

 

しかし、牽制に放たれたはずの宝具はゴーストライダーのチェーンに絡め捕られると逆にヘルファイアで強化されて打ち返される。対応の遅れた尊は咄嗟に別の宝具で相殺するが、その陰に隠れるように伸びて来た左手のチェーンに絡め捕られた。

 

「借り物の宝具だと言う事を忘れたか──まったく、慢心とは恐ろしいな」

 

「(然り。だが、此のままでは焼く前に変身が終わるぞ?)」

 

「ぐっ!だが、例え縛られていても──」

 

「お前を焼くのは後だ──少し向こうへ行っていろ」

 

「なっ──うおおっ!?……」

 

絡め捕られたまま宝具を撃ちだそうとする尊だったが、勢いよくチェーンを振り回したゴーストライダーはハンマー投げの要領で中庭の吹き抜けから尊を遠くへと投げ飛ばした。

 

「(成程。一先ず分断は出来たか)」

 

(ああ──だが、少し面倒だな)

 

「まったく、アイツは肝心なところで役に立たんな──まぁ、元々、アテにはしていないがな」

 

尊たちを分断させたゴーストライダーは変身の完了したオーマジオウと静かに睨み合う。一触即発の空気の流れる中、一連の流れを見た転生者たちは恐怖で近づけず、周囲を取り込むだけにとどまっていた。

 

「クソッ、やってられるか!俺は逃げるぞ!」

 

「あっ!?この──俺も連れていけ!」

 

「お前ら──クソッ、俺だって巻き込まれるのはゴメンだ!」

 

耐え切れなくなった一人が叫んでから逃げ出すと、同じ考えだった他の転生者たちも一斉に騒ぎながら逃げ出していき、しまいにはゴーストライダーとオーマジオウだけが向かい合っていた。

 

「どうやら、取り巻きは逃げ出したようだな」

 

「抜かせ。貴様など俺一人で十分よ」

 

「そうか──なら、さっさとかかって来い、三下」

 

「ッ!?──ハッ、上等だ!真の王の力を見せてやろう!!」

 

ゴーストライダーの挑発に激昂したオーマジオウは吠えた勢いのまま右手をかざすとゴーストライダーの前方の空中に時計の文字盤が浮かぶと、そこからタトバキックを放つ仮面ライダーオーズが現れてそのままゴーストライダーへと向かって行く。

 

「単純だな」

 

「それはどうかなぁ!」

 

向かって来たオーズに対してゴーストライダーは地面から獄炎を吹き上がらせてその一撃を防ぐが、それを予想していたオーマジオウはゴーストライダーの左側、数m程離れた所に今度は仮面ライダーブレイド、キングフォームの必殺技──ロイヤルストレートフラッシュを放つ状態で召喚させる。

 

「無駄だ」

 

「ハッ、これでもか!」

 

視界の外から切り上げで放たれた光刃を右前方へステップして回避したゴーストライダーはその勢いのまま前方へ飛び込もうとする。だが、それすらも想定済みだったのかオーマジオウはスピードロップを放つ仮面ライダードライブ、タイプスピードをゴーストライダーの飛び込む先の正面に出現させる。

 

「お前の動きは──」

 

「なっ──」

 

ドライブによる神速の一撃はゴーストライダーが着地点の手前で()()()()()()()()()()()タイミングで半歩左にステップしたことで避けられる。これだけでも驚愕に値するが、そのままドライブの脇をすり抜けざまに殴り飛ばしたゴーストライダーは無造作に右手を上にあげてチェーンを伸ばすと、その先に浮かび上がりかけていた時計の文字盤が爆発で掻き消され、周囲にチェーンの一部が散らばっていった。

 

「──既に見た」

 

「何だと……!?」

 

困惑するオーマジオウだったが、苦し紛れにゴーストライダーの後方へクリムゾンスマッシュを放つ仮面ライダーファイズを召喚する。が、ポインターが当たる直前にまるで見えているかのように軽く体を捻るだけで回避され、見当はずれの方向にクリムゾンスマッシュを放ったファイズの姿が掻き消える。

 

「どう言う事だ……!?」

 

驚愕しつつもゴーストライダーの正面にライジングカラミティタイタンを放つ仮面ライダークウガ、ライジングタイタンフォームを召喚し、真上に仮面ライダー龍騎を召喚してドラゴンライダーキックを放とうとするが、チェーンを両手で持ってライジングカラミティタイタンの剣先を逸らしたゴーストライダーはそのままクウガと立ち位置を入れ替わると、前方にステップしつつ振り向きもせずに龍騎へとチェーンを振るって発動を妨害する。そして、そのまま技が不発に終わったクウガと龍騎の姿は消えていった。

 

「一体、何が起こっていると言うのだ?!」

 

オーマジオウが驚愕するのも無理はない。先程のレジェンドライダーによるコンビネーション技は模擬戦以外では一度も使っていない対ゴーストライダー用に考案したとっておきだったが、その全てが通用しなかったどころか当たりもしなかったからである。

 

「言っただろう、既に見た、と」

 

「既に……まさか!?」

 

「ああ、斗真(ヤツ)の記憶で見せてもらった──もっとも、英雄の再現を並べただけの技とも呼べないものにはいらぬ対策だったがな」

 

「貴様っ……!」

 

冷たく言い放つゴーストライダーに対し怒りを露わにするオーマジオウだったが、力の差を見せられたためかただ吠える姿を晒すだけであった。

 

「まだプライドがあるのならお前の全力を見せてみろ──プライドがあれば、だがな」

 

「ッ!?いいだろう──」

 

『終焉の刻!』

 

なおも挑発を続けるゴーストライダーに対して激昂したオーマジオウはベルトのスイッチを入れてエネルギーを高めつつ中庭へ出る。

 

「滅べ!ゴーストライダー!!」

 

『逢魔時王必殺撃!』

 

跳躍したオーマジオウがゴーストライダーの周囲に展開されたジオウの文字のエネルギーを右足に集約させて放つ必殺のキック──逢魔時王必殺撃。一度はゴーストライダーを倒した究極の一撃がチェーンを巻いた左腕を盾にしただけのゴーストライダーに炸裂し周囲を閃光が包み込んだ。

 

「ふむ、確かにまともに当たれば厄介な技だが──」

 

「なっ──これはどうなっている!?」

 

驚愕するオーマジオウだが、それも当然である。閃光がおさまると目の前には五体満足で立つゴーストライダーの姿があり、自分の体が地面や外壁から伸びるチェーンによってキックの姿勢のままゴーストライダーの眼前に縫い留められていたからであった。

 

「こうなってしまってはどうにもできまい」

 

「このっ!放せ下郎!」

 

「無駄だ。その鎖はこの世の道理では壊せん」

 

どうにか脱出しようと足掻くオーマジオウだが、ヘルファイアで強化されたチェーンはびくともせず、どうすることも出来ないでいた。

 

「では、次はこちらの番だ」

 

「しまっ──ぐげえっ!?」

 

冷たく言い放ったゴーストライダーは右の拳を左手で包んで腕を組むとヘルファイアを纏わせたダブルスレッジハンマーをもがくオーマジオウの胴体へと振り下ろし地面へと叩き落した。

 

「そ、そんな……あ、アブソリュートスロウンを抜くなん──ぐえっ!?」

 

「人の呪術で俺たちの攻撃を防げると思ったか?」

 

あらゆるダメージを萎縮させるはずの特殊エネルギーフィールド──アブソリュートスロウンをはじめとした絶対的な防御を抜ける一撃に困惑するオーマジオウだったが、ゴーストライダーがその隙を見逃すはずもなく腰のオーマジクウドライバーにヘルファイアを纏った右足が踏み下ろされる。

 

「ふむ、ベルトは──」

 

「ぐあっ!?」

 

「なかなか──」

 

「ぐええっ!?」

 

「頑丈だな!」

 

「ぐああっ!?」

 

圧倒的な破壊力を持つゴーストライダーの攻撃に一度は耐えたオーマジクウドライバーだったが、二発、三発と続けざまに加えられる攻撃にヒビが入り、四発目で完全に破壊されたことでオーマジオウの変身が解けるが、ドライバーとともに衝撃を受け続けた総司はまともに動けないでいるようだった。

 

「ぐ、うう……オーマジオウには、自己再生があるはずなのに……」

 

「ヘルファイアは魂を焼く炎だ。肉体は癒せても魂は簡単には癒えん──さぁ、裁きの時だ」

 

「おっと、それにはまだ早いんじゃないか?」

 

倒れ伏して動けなくなった総司に対して説明しながら引き上げようとするゴーストライダーだったが、その動きは背後からかけられた尊の声によって遮られた。

 


 

 

「ふむ、思ったより早かったな」

 

「た、尊……!」

 

「総司、随分と無様な姿じゃないか?いつもの減らず口はどうした、ん?」

 

「くっ……」

 

ヴィマーナに乗りながらゴーストライダーと総司を見下ろす尊の姿は常よりもどこか楽しげな様子であったが、倒れ伏す総司は悔しそうに歯噛みするしかなかった。

 

「さて、本来なら総司(ソイツ)を守るべきだが……オーマジオウのない総司(ソイツ)に価値は無い」

 

「た、尊……?何の、つもりだ?」

 

ゆっくりと立ち上がった尊は右手を虚空に伸ばすと黄金の波紋を立たせて円柱状の刀身の突撃槍のような剣──乖離剣・エアを取り出し魔力を集中させていく。

 

「何、ここでゴーストライダーを倒さなくてはオーマジオウ()のないこの世界は終わる──ならば、お前を助ける理由は無い」

 

「そ、そんな……」

 

「まぁ、そう言う訳だ──死して拝せよ!『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』!!」

 

魔力が臨界に達し放たれた乖離剣・エアの最大出力はあらゆる「死の国」の原典である生命の記憶の原初の光景を再現したものであり、特典としてギルガメッシュの力を持つ尊の切り札であった。上空から振りかざすように放たれた一撃は一直線にゴーストライダーへ向かって行き爆音と閃光が周囲を包み込んだ。

 

「ふはははは──」

 

「手品は終わりか、道化よ?」

 

「──は?」

 

勝利を確信し高笑いをする尊だったが、目の前の現実に理解が追い付かず、その動きが止まった。だが、究極の一撃を受けて消し飛んだはずのゴーストライダーが左腕を盾にして悠然と立っていた衝撃を考えれば無理もないことであった。

 

「貴様、何故だ!?何故、無事でいる!?」

 

「知れたこと──地獄の再現で()()()()()が殺せるものか」

 

「本物だと……まさか、貴様、特典ではなく、本物の……!?」

 

「本、物……?」

 

ゴーストライダーの言葉から一つの結論に辿り着いた尊は恐怖で顔面が蒼白になるが、痛みと衝撃で頭の回らない総司は困惑するばかりであった。

 

「無駄話が過ぎたな──では、こちらの番だ」

 

「く、くそっ!冗談じゃ──ぶげえっ!?」

 

ゴーストライダーの宣言に逃げ出そうとする尊だったが、ゴーストライダーの左手から伸びたチェーンが首に巻きついてその動きを封じる。そのままゴーストライダーの目の前まで引きずり落とされた尊は抵抗も出来ずに右ストレートを顔面に叩き込まれる。

 

「逃がさん」

 

「ぐえっ!?ちくしょ──おごっ!?」

 

吹き飛ばされそうになった尊だが、ゴーストライダーは無慈悲にも首に巻きついたままのチェーンを引いて眼前に引き寄せると腹部へと打ち上げるような右のボディブローを放つ。防御が間に合わなかった尊の鎧の腹部が砕けてその体はくの字に折れ曲がって数mほど浮き上がった。

 

「墜ちろ」

 

「ごがあっ!?」

 

うつ伏せの状態で落ちる尊は息も絶え絶えと言った様子だったが、それを意に介さず、ゴーストライダーは左拳を右手で包んだダブルスレッジハンマーを頭に目掛けて叩き込む。当然ながら避けることも出来ずに直撃した尊はそのまま地面へと叩きつけられる。

 

「う、ああ……」

 

「ここまでか──では、これで終わりだ」

 

「ぐ、があああ……あ、あぁ……」

 

ゴーストライダーは倒れ伏す尊を眼前に引き上げると、抵抗する力が残っていない尊に贖罪の眼(ペナンスステア)を覗き込ませる。そして、この世界で歪めた幾つもの魂の報いと自身の犯した罪を一身に受けてその魂ごと肉体が焼失した。

 

「さて──次はお前だ」

 

「ひいっ!?く、来るな、バケモノ!──ぐえっ!?」

 

灰となって消えた尊の姿に恐慌状態になった総司は後ずさって逃げようとするが、悠然と近づくゴーストライダーは首を掴んで眼前へと引き上げる。

 

「黙れ──さあ、俺の眼を見ろ」

 

「い、嫌だ!死にたく、な……い……」

 

暴れようとする総司だったが、抵抗もむなしく贖罪の眼(ペナンスステア)に引き寄せられる。そして、これまで踏みにじった英雄(ライダー)たちの無念とこの世界を歪めた罪、自身の犯した過ちを一身に受けて尊の後を追うようにその魂ごと肉体を焼失させるのだった。

 


 

戦いが終わったしばらく後、ガールズバンドのライブのチラシで溢れる夜の東京。そのはずれにある使われていないはずの倉庫に一人の青年が周囲を窺いつつ入って行くと、中には十人ほどの転生者たちが会合のために集まっていた。

 

「おー、遅かったな?」

 

「悪い、もう始まってたか?」

 

「いや、まだだ──しっかし、俺たちを集めた連中は何をするつもりなのかねぇ」

 

「それは──」

 

出迎えた男の言葉に安堵した青年は疑問に答えようとするが、その言葉を遮るようにコンクリートの壁がぶち破られ入って来たアマゾンオメガが灰になっていた。

 

「な、何だ!?」

 

「あ、あそこに人影が!?」

 

混乱に包まれる転生者たちの前にコンクリートの壁を溶かしながら燃え盛る髑髏──ゴーストライダーがその姿を現すと、転生者の一人がその前に出る。

 

「お前は一体、何者だ?!」

 

「俺はゴーストライダー。転生者(お前たち)を狩るものだ」

 

地獄の底から響くような声で答えたゴーストライダーは獄炎を地面から吹き上げると使命を果たすべく転生者たちへと向かって行くのであった。

 

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